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第E6話 『期待の新人』
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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない? 番外編
著者:ピラフドリア
第E6話
『期待の新人』
仕事が終わり、上司と二人で一人の部下が会社を出る。
「お疲れ様です。克己さん。これから帰りですか」
「ああ、お前もか。……そうだな、これからいっぱいどうだ?」
上司に近くにある飲み屋に寄らないかと誘われるが、部下は頭を下げる。
「本当、ごめんなさい。今回は用事があって……。また後日お願いします」
「そうか、それは残念だ」
上司と別れた男性は駅とは反対側へと歩いて行き、あるところに立ち寄った。
「あ、先輩!」
建物に入るとサンドバッグを殴っていた青年が男性に気づき駆け寄ってきた。
「ハヤカワ!! どうだ、元気にしてたか?」
男性は拳を丸めるとハヤカワの胸に拳で突く。
「はい! 近々試合もありますよ」
「そうか、それは良かった」
ハヤカワに案内されて男性は中に入り、壁際に用意されているベンチに座る。
「先輩の方はどうですか? プロへの誘いもあったのに、結局やめて会社員になったんですよね」
「ああ、良い上司もいて営業も調子が良い」
男性は職場での話をしばらく話す。そして近況をある程度話すと、ある話を始めた。
「しかし、克巳先輩は良い人なんだが、最近大変なことが変わってな」
「なんですか?」
ハヤカワが質問すると、その質問にすぐに答えた。
「この前突然、SM系の店を知らないかって、聞かれたんだよ」
「マジですか……」
「マジだ。それがある時に自分のそういう面に気づいたらしく。ハマってしまったらしいんだ」
「でも、その人って家族いるんですよね……」
「ああ、この前家族に知られたらしくて、少し雰囲気が危ないらしい…………」
心配の困ったことを相談し終えると、それとほぼ同タイミングでリングの上にいるミットを持った男性が二人を呼んだ。
「ハヤカワ~、ミカミ~、どうだ? リング使うか?」
二人はヘッドギアとグローブを付け、リングに上がる。
「1ラウンド3分だ。良いな」
レフェリーをやってくれるジムに通う一番年上の人が、説明をする。
二人はリングの端にそれぞれ立つと、ゴングを鳴らし、スパーリングを開始した。
ハヤカワは姿勢を低くしてステップを踏むと、素早く動いてミカミに接近する。
リングの外で様子を観戦していた男性はその様子を見て驚く。
「早い!」
驚く男性の隣の男性が腕を組み解説をする。
「ハヤカワの強みは速さだ。瞬発力なら世界にだって通用するはずだ」
見守られる中、距離を詰めたハヤカワのラッシュがミカミを襲う。
ミカミはガードを固めて、防戦一方だ。
「おいおい、ミカミさん押されてるよ。久しぶりにスパーは厳しいんじゃ」
「いや、違う」
腕を組んでいる男性の予想通り、すぐに展開が変わる。
ミカミはハヤカワの攻撃リズムを身体で覚えると、ハヤカワの一瞬の隙を狙い、ミカミはカウンターを直撃させた。
ミカミの鋭いストレートに、ハヤカワの身体はのけ反り、ふらふらと下がる。
ミカミはハヤカワに追撃を加えようと、距離を詰めるが、ハヤカワは素早くステップを踏んで追撃から逃げた。
距離を取ったハヤカワ。ミカミは深追いすることはなく、一歩退いた場所で様子を見る。
「なんでミカミさんは追わないんだろう」
「追えないんだ。ハヤカワのスピードについて行こうとすれば、逃げられる。下手に追えば体力を失うだけだ」
「でも、そうしたら手が出せないんじゃ」
しかし、観戦者の予想を上回る動きをミカミは見せる。
ミカミは勢いよく追うことはしなかったが、ゆっくりとステップ踏みながらハヤカワに近づく。
ハヤカワは左右に逃げようとするが、なかなか逃げられる。少しずつ下がっていき、気がつけば、端まで追い詰められていた。
「どうなってるんだ、ハヤカワが追い詰められてる」
「そうか、フェイントで逃げ場を塞いでるんだ」
「フェイントで?」
「ミカミさんはハヤカワが逃げたい位置を予想して、その場所をフェイントで逃げられないように塞いでるんだ」
「そんなことできるのかよ」
「やってるからハヤカワは追い詰められてるんだ」
追い詰められたハヤカワ。ハヤカワはジャブで牽制した後、左右に逃げようとするが、ミカミに逃げ場を塞がれて逃げられない。
逃がしてくれないと分かったハヤカワは、その場で戦うことを決める。
ガードを固めて、その場でステップを早める。
「ハヤカワのやつ、コーナーで戦う気か。無茶だ!?」
周りが驚く中、ミカミはラッシュでハヤカワを攻める。ハヤカワはラッシュをガードで受ける。
その様子を見ていた観覧者の一人が呟いた。
「似てる……」
「似てる? 何が?」
「最初のハヤカワの猛攻とミカミのガード。あの時とは立場も位置も違うが、似ているんだ」
「まさか、ハヤカワ……」
ハヤカワはガードの隙間から、ミカミの様子を伺う。そして、
「踏み込んだ!!」
「カウンターか!?」
ハヤカワのパンチが届く前に、ゴングが鳴らされた。
二人はレフェリーにタオルを渡されて汗を拭く。
「ハヤカワ、なかなか良い出だしだったな」
「先輩も良かったですよ」
二人は握手して抱き合って挨拶をして、リングを降りた。
シャワーを浴びて汗を流した二人は、駅まで一緒に帰っていた。
「先輩はまたやる気はないんですか」
「ない」
「ブランクも感じさせないか動き。帰ってきたら活躍できますよ!」
「ない」
はっきりと答えるミカミにハヤカワは寂しそうな顔をする。そんなハヤカワにミカミはあることを告げる。
「できないんだ。もう」
「え……」
「身体の限界だ。医者から辞めるように言われてな」
「そんな……」
「ま、今は今で楽しいさ。だから良いんだ」
駅に着くと、改札で2人は別れる。
「では俺はこっちなので」
「そうだったな。じゃあ、頑張れよ」
著者:ピラフドリア
第E6話
『期待の新人』
仕事が終わり、上司と二人で一人の部下が会社を出る。
「お疲れ様です。克己さん。これから帰りですか」
「ああ、お前もか。……そうだな、これからいっぱいどうだ?」
上司に近くにある飲み屋に寄らないかと誘われるが、部下は頭を下げる。
「本当、ごめんなさい。今回は用事があって……。また後日お願いします」
「そうか、それは残念だ」
上司と別れた男性は駅とは反対側へと歩いて行き、あるところに立ち寄った。
「あ、先輩!」
建物に入るとサンドバッグを殴っていた青年が男性に気づき駆け寄ってきた。
「ハヤカワ!! どうだ、元気にしてたか?」
男性は拳を丸めるとハヤカワの胸に拳で突く。
「はい! 近々試合もありますよ」
「そうか、それは良かった」
ハヤカワに案内されて男性は中に入り、壁際に用意されているベンチに座る。
「先輩の方はどうですか? プロへの誘いもあったのに、結局やめて会社員になったんですよね」
「ああ、良い上司もいて営業も調子が良い」
男性は職場での話をしばらく話す。そして近況をある程度話すと、ある話を始めた。
「しかし、克巳先輩は良い人なんだが、最近大変なことが変わってな」
「なんですか?」
ハヤカワが質問すると、その質問にすぐに答えた。
「この前突然、SM系の店を知らないかって、聞かれたんだよ」
「マジですか……」
「マジだ。それがある時に自分のそういう面に気づいたらしく。ハマってしまったらしいんだ」
「でも、その人って家族いるんですよね……」
「ああ、この前家族に知られたらしくて、少し雰囲気が危ないらしい…………」
心配の困ったことを相談し終えると、それとほぼ同タイミングでリングの上にいるミットを持った男性が二人を呼んだ。
「ハヤカワ~、ミカミ~、どうだ? リング使うか?」
二人はヘッドギアとグローブを付け、リングに上がる。
「1ラウンド3分だ。良いな」
レフェリーをやってくれるジムに通う一番年上の人が、説明をする。
二人はリングの端にそれぞれ立つと、ゴングを鳴らし、スパーリングを開始した。
ハヤカワは姿勢を低くしてステップを踏むと、素早く動いてミカミに接近する。
リングの外で様子を観戦していた男性はその様子を見て驚く。
「早い!」
驚く男性の隣の男性が腕を組み解説をする。
「ハヤカワの強みは速さだ。瞬発力なら世界にだって通用するはずだ」
見守られる中、距離を詰めたハヤカワのラッシュがミカミを襲う。
ミカミはガードを固めて、防戦一方だ。
「おいおい、ミカミさん押されてるよ。久しぶりにスパーは厳しいんじゃ」
「いや、違う」
腕を組んでいる男性の予想通り、すぐに展開が変わる。
ミカミはハヤカワの攻撃リズムを身体で覚えると、ハヤカワの一瞬の隙を狙い、ミカミはカウンターを直撃させた。
ミカミの鋭いストレートに、ハヤカワの身体はのけ反り、ふらふらと下がる。
ミカミはハヤカワに追撃を加えようと、距離を詰めるが、ハヤカワは素早くステップを踏んで追撃から逃げた。
距離を取ったハヤカワ。ミカミは深追いすることはなく、一歩退いた場所で様子を見る。
「なんでミカミさんは追わないんだろう」
「追えないんだ。ハヤカワのスピードについて行こうとすれば、逃げられる。下手に追えば体力を失うだけだ」
「でも、そうしたら手が出せないんじゃ」
しかし、観戦者の予想を上回る動きをミカミは見せる。
ミカミは勢いよく追うことはしなかったが、ゆっくりとステップ踏みながらハヤカワに近づく。
ハヤカワは左右に逃げようとするが、なかなか逃げられる。少しずつ下がっていき、気がつけば、端まで追い詰められていた。
「どうなってるんだ、ハヤカワが追い詰められてる」
「そうか、フェイントで逃げ場を塞いでるんだ」
「フェイントで?」
「ミカミさんはハヤカワが逃げたい位置を予想して、その場所をフェイントで逃げられないように塞いでるんだ」
「そんなことできるのかよ」
「やってるからハヤカワは追い詰められてるんだ」
追い詰められたハヤカワ。ハヤカワはジャブで牽制した後、左右に逃げようとするが、ミカミに逃げ場を塞がれて逃げられない。
逃がしてくれないと分かったハヤカワは、その場で戦うことを決める。
ガードを固めて、その場でステップを早める。
「ハヤカワのやつ、コーナーで戦う気か。無茶だ!?」
周りが驚く中、ミカミはラッシュでハヤカワを攻める。ハヤカワはラッシュをガードで受ける。
その様子を見ていた観覧者の一人が呟いた。
「似てる……」
「似てる? 何が?」
「最初のハヤカワの猛攻とミカミのガード。あの時とは立場も位置も違うが、似ているんだ」
「まさか、ハヤカワ……」
ハヤカワはガードの隙間から、ミカミの様子を伺う。そして、
「踏み込んだ!!」
「カウンターか!?」
ハヤカワのパンチが届く前に、ゴングが鳴らされた。
二人はレフェリーにタオルを渡されて汗を拭く。
「ハヤカワ、なかなか良い出だしだったな」
「先輩も良かったですよ」
二人は握手して抱き合って挨拶をして、リングを降りた。
シャワーを浴びて汗を流した二人は、駅まで一緒に帰っていた。
「先輩はまたやる気はないんですか」
「ない」
「ブランクも感じさせないか動き。帰ってきたら活躍できますよ!」
「ない」
はっきりと答えるミカミにハヤカワは寂しそうな顔をする。そんなハヤカワにミカミはあることを告げる。
「できないんだ。もう」
「え……」
「身体の限界だ。医者から辞めるように言われてな」
「そんな……」
「ま、今は今で楽しいさ。だから良いんだ」
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