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第88話 『裏切り者に天罰を』
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霊能力者のレイちゃんは、ダメ、無能、役に立たない?
著者:ピラフドリア
第88話
『裏切り者に天罰を』
両手を広げていたスキンヘッドは両手を握りしめる。そして両手に力を入れると、両手にエネルギーを集めてグローブのようにした。
「俺はフェリシア様の助力により、悪霊を取り込むことで霊力を手に入れた!! これで姉さん、アンタを超えてみせる!!」
スキンヘッドから凶々しい霊力が溢れ出る。
悪霊を取り込んだということは、加藤さんと同じことをしたってことだ。悪霊を取り込むことで肉体の強化。
それにより加藤さんはパワーアップを遂げていた。
だが、そんな加藤さん以上にスキンヘッドからはヤバい力を感じる。私ですら感じられる力の違い。加藤さんの悪霊よりも遥かに上の力を持つ悪霊を取り込んだということだろう。
スキンヘッドは京子ちゃんへとゆっくりと歩み出す。
「姉さん、俺はアンタには一度もケンカで勝ったことなかったな。だが、それも今日で終わり……」
京子ちゃんの目の前に立つとスキンヘッドは足を止めた。
「俺はアンタを倒して、そして兄貴も超える」
拳を持ち上げ構えたスキンヘッドは、無防備に木刀を握って立っているだけの京子ちゃんに、殴りかかる。
真っ直ぐ京子ちゃんの顔を狙ったストレート。あれだけの力を込めた攻撃だ。例え京子ちゃんであっても、まともに喰らえば立っていられない。
「京子ちゃん!!」
本来ならスキンヘッドの攻撃の方が先に届くのだろう。だが、相手が相手だ。
「おい誰に勝つだァ?」
次の瞬間。スキンヘッドは地面に埋まっていた。ツルツルの頭だけを残して、植えたのは突然京子ちゃんだ。
スキンヘッドのパンチよりも早く、木刀を振り上げて下ろす。その動作を一瞬のうちに行い、肉眼でとらえられないスピードで、スキンヘッドを瞬殺した。
ここはボス戦前の感動の戦いだと思っていた私達は、大きく口を開けて固まる。
てか、裏切ったとはいえ、容赦がなさすぎる。瞬殺だし、先程倒した敵とほぼ同じ倒し方。
敵とか元味方とか、京子ちゃんには関係ないのかしら!?
スキンヘッドすら瞬殺した京子ちゃんは、奥にいる赤髪の女性に木刀を向けた。
「アンタがフェリシアか?」
瞬殺されたスキンヘッドに赤髪の女性も驚いて、ツルツルの頭に目線を向けて固まっていたが、京子ちゃんの声に我に帰る。
「俺の部下を倒すなんてなァ。やるみたいだなァ」
フェリシアはスキンヘッドにそれなりの信頼を置いていたのか。やられたことへのショックが大きいらしい。
「お前が親玉でいいんだな」
「そうだとも俺が全て仕組んだことだァ。アンタの身辺を見張ってたのも、そこの幽霊を連れ去ったのも、全ては悪霊を取り込むだめだァ」
フェリシアは両手の力を抜き、ぶらりと下に降ろす。そして脱力した姿勢のまま、首だけを上げて京子ちゃんを睨む。
下から見上げるように睨むフェリシアの表情は、獲物を狙う捕食者のように鋭く光っている。
「悪霊を取り込むか。そうしてそこまでの力を手に入れたのか」
「そういうことだァ」
フェリシアからはスキンヘッドや加藤さんほど強力な霊力を感じてはいなかった。弱いとは言えないが、そこまでじゃない。私は勝手にそう思い込んでいた。
フェリシアはゆっくりと息を吸い込む。そして脱力させていた身体をゆっくりと持ち上げていく。フェリシアの姿勢がまっすぐになった時。息を吸うのをやめて、力を抜くように吐き出した。
「っ!?」
息を吐くと同時に、私はフェリシアの溢れ出る霊力に全身が凍りつくような寒気を感じた。生命の危機を感じ、身体は震えることすらできず。石になったかのように硬直する。
「なんて力だ。あれが悪霊を複数取り込んだ人間の霊力」
頭の上にいる黒猫が、フェリシアから溢れ出る力に口を震わせながら呟いた。その呟きに私は気になる言葉を見つける。
「悪霊を複数?」
「ああ、調べてて分かったことだ。奴は悪霊を捕らえ、取り込んでいた。リエを捕らえたのも目的はそれだ」
「リエを悪霊にして取り込むため……」
「そういうことだ」
私と黒猫の話を聞いていたリエは、怖くなったのか私に抱きつく。
リエは前から悪霊に怯えていた。そんな悪霊に自分がなる。そう考えただけで辛いのだろう。
フェリシアの溢れ出る力に私達は怯えるが、そんな中でも京子ちゃんは一歩をも退かない。
「ほぉ、その程度かよ。期待外れだ」
「期待外れかァ。言うなァ、早乙女。しかし、どれだけ強がろうとも、私には分かるぞ。お前が本当はビビっているのがなァ」
「誰がビビるか」
フェリシアはそう言って京子ちゃんを挑発しているが、本当に京子ちゃんはビビっているのだろうか。
私から見たらそんな様子はちっとも見えない。
京子ちゃんがビビっている姿というか、動揺している姿といえば、部屋中がスライムの残骸でいっぱいになった時は明らかに動揺していた。
しかし、今の京子ちゃんはそういう時のような動揺は見せない。静かにフェリシアを睨みつけていた。
フェリシアはニヤリと笑った後、高く飛び上がった。そして木刀を握りしめる京子ちゃんの元へと飛びかかる。
「その強がりはいつまで持つかなァ!」
飛びかかったフェリシアは、右手を広げた後爪を立たせるように指を曲げる。そして京子ちゃんに向かって引っ掻くように右手を振る。
京子ちゃんは身体を斜めに倒して、最小限の動きでフェリシアの引っ掻き攻撃を避ける。
悪霊を取り込んだと言っていたのに、ただの引っ掻き攻撃をしたフェリシアを見て、これならフェリシアも瞬殺だとホッとしたが。次の瞬間、フェリシアが引っ掻いた先にあった地面に、五本の鋭い穴が空いた。
フェリシアの引っ掻き攻撃は、風を切り、かまいたちを呼んで地面を抉り取ったのだ。
ただの引っ掻き攻撃ではない事をその威力から知った私は悲鳴を上げる。
「ひやぁぁぁっ!? なによあれ!!」
「だ、大丈夫です。京子さんなら勝ってくれますよ」
隣でリエも怯えながらも京子ちゃんの実力に期待する。
そうだ。ここに辿り着くまでに坊主やスキンヘッドなど多くの実力者を京子ちゃんは倒してきたんだ。きっと勝ってくれる。
私達が期待をする中。フェリシアの攻撃を避けた京子ちゃんは足を動かさず、その場で木刀を振ってフェリシアを横から殴ろうとする。
引っ掻き攻撃をして無防備だったフェリシアは、京子ちゃんの木刀を避けることができず、木刀が横腹に激突して吹っ飛んでいった。
ボールをバットで弾くように、人間を弾き飛ばした京子ちゃん。フェリシアはボールのように吹っ飛んで行き、部屋の壁に立て付けてあった絵画に激突した。
フェリシアがぶつかると、フェリシアは絵画と一緒に落下する。想定以上の京子ちゃんの強さに驚いたのか、ふらつきながら立ち上がったフェリシアは、自身が吹っ飛ばされたという状況のの見込めずにキョロキョロして驚いている。
そんな動揺を隠せないフェリシアに、京子ちゃんは木刀を向ける。
「なんだ。本当に期待外れだな……」
「この俺がァ。こんなあっさり……。こうなれば……」
フラフラだったフェリシアだが、背中から黒い羽を生やして羽を羽ばたかせて宙に浮く。
「早乙女。お前がどれだけ強かろうと、空中にいる俺は攻撃できないだろォ。今の一撃で倒し切れなかった事を後悔するんだなァ!!」
空を飛ぶフェリシアを私は見上げる。
「何で空飛んでるの!?」
なぜ、人に羽が生えて空を飛べているのか。そんな疑問にリエが答えた。
「あれは吸収した悪霊の能力ですね。悪霊を取り込むことであんなことができるようになるなんて……」
「てか、あの飛んでる子、こっち見てない」
空を飛んでいるフェリシアの目線が、京子ちゃんではなく、こちらを睨んでいるように見える。
気のせい、きっと気のせいだ。そんなはず……。
っと、思いたかったが、どう考えてもこっちを見ている。
「さぁ、そこの雑魚ども私の目を見ろ!」
イヤァァァ、やっぱりこっち見てた!!
「なんでよ、なん……」
私はクルッと方向転換して逃げようとしたが、身体の自由が効かない。それどころか、頭も重たくなり思考が定まらない。
「なに……これ」
私の意思とは反して、私の身体は元の方向へと身体を向け直す。そして自由が効かないのは私だけではない様子。リエ、黒猫、楓ちゃんまでもが同じように身体が意思と違う動きをしているようで、それぞれがこの状況に混乱している。
「何ですか……これ」
「俺とミーちゃんの……身体に…………何をした」
「師匠……変です、身体がいうこと聞きません」
私達の姿にフェリシアは頬に手を当てて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「あなた達の身体は俺が操ったァ。俺の目を見た者は俺の支配下に置くことができる。俺はこういう手が好きでなァ。心が満たされる」
私達を操った!? そんな能力も持っていたのか。これも悪霊から得た能力なのだろう……。
しかし、この状況は非常にまずい……。
「私の下僕よ。早乙女を始末しろ!!」
フェリシアの命令に私達は逆らうことができず、京子ちゃんへと襲い掛かる。とはいえ、私やリエ、黒猫はほぼ戦力になっておらず。気をつけるべきなのか楓ちゃんくらい。
私の攻撃を京子ちゃんは回避する。さらに楓ちゃんの超スピードにも対応して攻撃を避けてみせる。
だが、
「仲間は攻撃できないよなァ。やはり操るのならその人の仲間が良い。実力者であっても、仲間を盾にされちゃァ、何もできない」
空中で傍観しているフェリシアは口元に手を当ててクククと笑う。
「前に手駒にしてたァ、執事もシスターも人質を取れば優秀な駒になったなァ。執事はお嬢さん、シスターは神父だったかァ、もしも裏切ったらそいつらが自害するように命令しておいたからなァ。まぁ、要らなくなったからどっちも捨てたがァ」
そうやって仲間を増やしてきたのか。
とはいえ、この状況は私達が危険だ。京子ちゃんは仲間だったスキンヘッドが裏切った途端、容赦なくボコした。ということは、私達も同じ運命を辿る可能性が高い。
私達は裏切ったわけではなく、操られてるのだが、京子ちゃんを攻撃してるのだ。となれば、容赦なく木刀で殴られてもおかしくない。
スキンヘッドと同じことになりたくない私は、フェリシアの自縛から抵抗しようとするが、どうやっても身体のコントロールができない。
避け続けていた京子ちゃんだが、ついに木刀を振り上げて構えてしまった。木刀を振り上げ、力を込める。
私達4人は構えたことお構いなしに、京子ちゃんへ特攻する。
これはボコボコになるパターンだ。もうダメだ。終わった。
京子ちゃんは両手で木刀を握りしめ、素早く木刀を振り下ろした。
著者:ピラフドリア
第88話
『裏切り者に天罰を』
両手を広げていたスキンヘッドは両手を握りしめる。そして両手に力を入れると、両手にエネルギーを集めてグローブのようにした。
「俺はフェリシア様の助力により、悪霊を取り込むことで霊力を手に入れた!! これで姉さん、アンタを超えてみせる!!」
スキンヘッドから凶々しい霊力が溢れ出る。
悪霊を取り込んだということは、加藤さんと同じことをしたってことだ。悪霊を取り込むことで肉体の強化。
それにより加藤さんはパワーアップを遂げていた。
だが、そんな加藤さん以上にスキンヘッドからはヤバい力を感じる。私ですら感じられる力の違い。加藤さんの悪霊よりも遥かに上の力を持つ悪霊を取り込んだということだろう。
スキンヘッドは京子ちゃんへとゆっくりと歩み出す。
「姉さん、俺はアンタには一度もケンカで勝ったことなかったな。だが、それも今日で終わり……」
京子ちゃんの目の前に立つとスキンヘッドは足を止めた。
「俺はアンタを倒して、そして兄貴も超える」
拳を持ち上げ構えたスキンヘッドは、無防備に木刀を握って立っているだけの京子ちゃんに、殴りかかる。
真っ直ぐ京子ちゃんの顔を狙ったストレート。あれだけの力を込めた攻撃だ。例え京子ちゃんであっても、まともに喰らえば立っていられない。
「京子ちゃん!!」
本来ならスキンヘッドの攻撃の方が先に届くのだろう。だが、相手が相手だ。
「おい誰に勝つだァ?」
次の瞬間。スキンヘッドは地面に埋まっていた。ツルツルの頭だけを残して、植えたのは突然京子ちゃんだ。
スキンヘッドのパンチよりも早く、木刀を振り上げて下ろす。その動作を一瞬のうちに行い、肉眼でとらえられないスピードで、スキンヘッドを瞬殺した。
ここはボス戦前の感動の戦いだと思っていた私達は、大きく口を開けて固まる。
てか、裏切ったとはいえ、容赦がなさすぎる。瞬殺だし、先程倒した敵とほぼ同じ倒し方。
敵とか元味方とか、京子ちゃんには関係ないのかしら!?
スキンヘッドすら瞬殺した京子ちゃんは、奥にいる赤髪の女性に木刀を向けた。
「アンタがフェリシアか?」
瞬殺されたスキンヘッドに赤髪の女性も驚いて、ツルツルの頭に目線を向けて固まっていたが、京子ちゃんの声に我に帰る。
「俺の部下を倒すなんてなァ。やるみたいだなァ」
フェリシアはスキンヘッドにそれなりの信頼を置いていたのか。やられたことへのショックが大きいらしい。
「お前が親玉でいいんだな」
「そうだとも俺が全て仕組んだことだァ。アンタの身辺を見張ってたのも、そこの幽霊を連れ去ったのも、全ては悪霊を取り込むだめだァ」
フェリシアは両手の力を抜き、ぶらりと下に降ろす。そして脱力した姿勢のまま、首だけを上げて京子ちゃんを睨む。
下から見上げるように睨むフェリシアの表情は、獲物を狙う捕食者のように鋭く光っている。
「悪霊を取り込むか。そうしてそこまでの力を手に入れたのか」
「そういうことだァ」
フェリシアからはスキンヘッドや加藤さんほど強力な霊力を感じてはいなかった。弱いとは言えないが、そこまでじゃない。私は勝手にそう思い込んでいた。
フェリシアはゆっくりと息を吸い込む。そして脱力させていた身体をゆっくりと持ち上げていく。フェリシアの姿勢がまっすぐになった時。息を吸うのをやめて、力を抜くように吐き出した。
「っ!?」
息を吐くと同時に、私はフェリシアの溢れ出る霊力に全身が凍りつくような寒気を感じた。生命の危機を感じ、身体は震えることすらできず。石になったかのように硬直する。
「なんて力だ。あれが悪霊を複数取り込んだ人間の霊力」
頭の上にいる黒猫が、フェリシアから溢れ出る力に口を震わせながら呟いた。その呟きに私は気になる言葉を見つける。
「悪霊を複数?」
「ああ、調べてて分かったことだ。奴は悪霊を捕らえ、取り込んでいた。リエを捕らえたのも目的はそれだ」
「リエを悪霊にして取り込むため……」
「そういうことだ」
私と黒猫の話を聞いていたリエは、怖くなったのか私に抱きつく。
リエは前から悪霊に怯えていた。そんな悪霊に自分がなる。そう考えただけで辛いのだろう。
フェリシアの溢れ出る力に私達は怯えるが、そんな中でも京子ちゃんは一歩をも退かない。
「ほぉ、その程度かよ。期待外れだ」
「期待外れかァ。言うなァ、早乙女。しかし、どれだけ強がろうとも、私には分かるぞ。お前が本当はビビっているのがなァ」
「誰がビビるか」
フェリシアはそう言って京子ちゃんを挑発しているが、本当に京子ちゃんはビビっているのだろうか。
私から見たらそんな様子はちっとも見えない。
京子ちゃんがビビっている姿というか、動揺している姿といえば、部屋中がスライムの残骸でいっぱいになった時は明らかに動揺していた。
しかし、今の京子ちゃんはそういう時のような動揺は見せない。静かにフェリシアを睨みつけていた。
フェリシアはニヤリと笑った後、高く飛び上がった。そして木刀を握りしめる京子ちゃんの元へと飛びかかる。
「その強がりはいつまで持つかなァ!」
飛びかかったフェリシアは、右手を広げた後爪を立たせるように指を曲げる。そして京子ちゃんに向かって引っ掻くように右手を振る。
京子ちゃんは身体を斜めに倒して、最小限の動きでフェリシアの引っ掻き攻撃を避ける。
悪霊を取り込んだと言っていたのに、ただの引っ掻き攻撃をしたフェリシアを見て、これならフェリシアも瞬殺だとホッとしたが。次の瞬間、フェリシアが引っ掻いた先にあった地面に、五本の鋭い穴が空いた。
フェリシアの引っ掻き攻撃は、風を切り、かまいたちを呼んで地面を抉り取ったのだ。
ただの引っ掻き攻撃ではない事をその威力から知った私は悲鳴を上げる。
「ひやぁぁぁっ!? なによあれ!!」
「だ、大丈夫です。京子さんなら勝ってくれますよ」
隣でリエも怯えながらも京子ちゃんの実力に期待する。
そうだ。ここに辿り着くまでに坊主やスキンヘッドなど多くの実力者を京子ちゃんは倒してきたんだ。きっと勝ってくれる。
私達が期待をする中。フェリシアの攻撃を避けた京子ちゃんは足を動かさず、その場で木刀を振ってフェリシアを横から殴ろうとする。
引っ掻き攻撃をして無防備だったフェリシアは、京子ちゃんの木刀を避けることができず、木刀が横腹に激突して吹っ飛んでいった。
ボールをバットで弾くように、人間を弾き飛ばした京子ちゃん。フェリシアはボールのように吹っ飛んで行き、部屋の壁に立て付けてあった絵画に激突した。
フェリシアがぶつかると、フェリシアは絵画と一緒に落下する。想定以上の京子ちゃんの強さに驚いたのか、ふらつきながら立ち上がったフェリシアは、自身が吹っ飛ばされたという状況のの見込めずにキョロキョロして驚いている。
そんな動揺を隠せないフェリシアに、京子ちゃんは木刀を向ける。
「なんだ。本当に期待外れだな……」
「この俺がァ。こんなあっさり……。こうなれば……」
フラフラだったフェリシアだが、背中から黒い羽を生やして羽を羽ばたかせて宙に浮く。
「早乙女。お前がどれだけ強かろうと、空中にいる俺は攻撃できないだろォ。今の一撃で倒し切れなかった事を後悔するんだなァ!!」
空を飛ぶフェリシアを私は見上げる。
「何で空飛んでるの!?」
なぜ、人に羽が生えて空を飛べているのか。そんな疑問にリエが答えた。
「あれは吸収した悪霊の能力ですね。悪霊を取り込むことであんなことができるようになるなんて……」
「てか、あの飛んでる子、こっち見てない」
空を飛んでいるフェリシアの目線が、京子ちゃんではなく、こちらを睨んでいるように見える。
気のせい、きっと気のせいだ。そんなはず……。
っと、思いたかったが、どう考えてもこっちを見ている。
「さぁ、そこの雑魚ども私の目を見ろ!」
イヤァァァ、やっぱりこっち見てた!!
「なんでよ、なん……」
私はクルッと方向転換して逃げようとしたが、身体の自由が効かない。それどころか、頭も重たくなり思考が定まらない。
「なに……これ」
私の意思とは反して、私の身体は元の方向へと身体を向け直す。そして自由が効かないのは私だけではない様子。リエ、黒猫、楓ちゃんまでもが同じように身体が意思と違う動きをしているようで、それぞれがこの状況に混乱している。
「何ですか……これ」
「俺とミーちゃんの……身体に…………何をした」
「師匠……変です、身体がいうこと聞きません」
私達の姿にフェリシアは頬に手を当てて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「あなた達の身体は俺が操ったァ。俺の目を見た者は俺の支配下に置くことができる。俺はこういう手が好きでなァ。心が満たされる」
私達を操った!? そんな能力も持っていたのか。これも悪霊から得た能力なのだろう……。
しかし、この状況は非常にまずい……。
「私の下僕よ。早乙女を始末しろ!!」
フェリシアの命令に私達は逆らうことができず、京子ちゃんへと襲い掛かる。とはいえ、私やリエ、黒猫はほぼ戦力になっておらず。気をつけるべきなのか楓ちゃんくらい。
私の攻撃を京子ちゃんは回避する。さらに楓ちゃんの超スピードにも対応して攻撃を避けてみせる。
だが、
「仲間は攻撃できないよなァ。やはり操るのならその人の仲間が良い。実力者であっても、仲間を盾にされちゃァ、何もできない」
空中で傍観しているフェリシアは口元に手を当ててクククと笑う。
「前に手駒にしてたァ、執事もシスターも人質を取れば優秀な駒になったなァ。執事はお嬢さん、シスターは神父だったかァ、もしも裏切ったらそいつらが自害するように命令しておいたからなァ。まぁ、要らなくなったからどっちも捨てたがァ」
そうやって仲間を増やしてきたのか。
とはいえ、この状況は私達が危険だ。京子ちゃんは仲間だったスキンヘッドが裏切った途端、容赦なくボコした。ということは、私達も同じ運命を辿る可能性が高い。
私達は裏切ったわけではなく、操られてるのだが、京子ちゃんを攻撃してるのだ。となれば、容赦なく木刀で殴られてもおかしくない。
スキンヘッドと同じことになりたくない私は、フェリシアの自縛から抵抗しようとするが、どうやっても身体のコントロールができない。
避け続けていた京子ちゃんだが、ついに木刀を振り上げて構えてしまった。木刀を振り上げ、力を込める。
私達4人は構えたことお構いなしに、京子ちゃんへ特攻する。
これはボコボコになるパターンだ。もうダメだ。終わった。
京子ちゃんは両手で木刀を握りしめ、素早く木刀を振り下ろした。
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