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第52話 『吸血鬼と探偵』
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参上! 怪盗イタッチ
第52話
『吸血鬼と探偵』
あるところに一人の少年がいました。彼は人よりも才能を持ち、幼い頃から様々なことを覚えていきました。
やがて成長した彼は、人々のためにその才能を使い、その時代以上の物を作り出していきました。
しかし、彼の才能はその時代では早すぎたのです。
最初は生活が楽になり、彼を慕っていた人々も彼を恐れるようになり始めました。村人は彼から距離を置き、遠ざけ始めたのです。
みんなのためにと力を使った彼ですが、人々の態度に彼は自信を無くしました。
さらに彼に対する村人の行動は過激になり、彼の才能を恐れた村人は彼を追い払ってしまったのです。
才能はあっても、まだ若かった彼は村を追い出されたことで、まともな食事もできず、痩せていきました。
そんな彼は森の中でとある人物と出逢います。その人物は村人から魔女と言われて恐れられていた金髪の女性。
女性は餓死しそうになっていた彼に手を差し伸べる。
この時の魔女は軽い気持ちで、助けたことに深い意味などなかったのだろう。ただの気まぐれで差し伸ばした手であったが、この二人はそれから何十年、何百年と共に過ごすことになる。
⭐︎⭐︎⭐︎
「シンメンタールさん、これって……」
日記を見つけて読んでいたシンメンタールとラーテル。ラーテルは日記の内容に動揺する。
「どうやらこれがこの屋敷の真実だったみたいだね」
シンメンタールは読み終えた日記を閉じる。
「さてと、ラーテル君。君に頼みがあるんだが、やれるかい?」
「シンメンタールさんからの頼み……。はい、やってみせます! その頼みってなんですか?」
「おそらくはこの屋敷でまだ無事なのは、僕達とイタッチだけだ。他のメンバーはやられたと考えて良いだろう」
「やられた……吸血鬼にですね…………」
シンメンタールは頷く。そしてボールペンとメモ帳を取り出すと、メモ帳に文字を書く。そしてメモ帳のページを破ってラーテルに渡した。
「ここに怪盗イタッチがいる。日記の内容をイタッチに伝えて、吸血鬼にされた人達を元に戻すんだ」
「はい!」
シンメンタールはラーテルに日記も渡す。
「今回の事件の解決の鍵は、君とイタッチだ。頼んだよ」
「シンメンタールさん?」
なぜか、自分のことを言わないシンメンタール。その姿にラーテルは疑問を感じる。
「シンメンタールさんはこれからどうするんです?」
ラーテルが尋ねると、シンメンタールはニコリと笑う。
「僕は……君をイタッチの元へ届ける」
廊下の方から足音が聞こえてくる。そして扉が開き、吸血鬼にされたフクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事、ダッチ、アンの五人が現れた。
シンメンタールは彼らに向かい合うと、ボールペンを握りしめる。
「まさか!? ダメですよ、シンメンタールさんも一緒に!!」
「大丈夫。君ならやれるさ、僕も適任だ」
「シンメンタールさん!!」
シンメンタールが何をしようとしているのか察したラーテルは、シンメンタールを止めようと呼びかける。しかし、シンメンタールは覚悟を決めているようだった。
「シンメンタールさん…………分かりました。必ずイタッチに届けます」
シンメンタールの覚悟を知り、止められないと判断したラーテルはこの場をシンメンタールに任せることにした。
「ラーテル君、真実を届けてくれ!」
「はい!!」
ラーテルは部屋の出口を目指して走り出す。しかし、入り口は吸血鬼達が立ち塞がっている。
吸血鬼達がラーテルに襲い掛かろうとしたが、それをシンメンタールが止めた。
「覚醒なしだと、体の負担が大きいがッ!!」
シンメンタールはボールペンで空中に文字を書く。
「全員動くな!!」
全員動くなという文字を空中に書いて、吸血鬼達にルールを与える。
吸血鬼になったフクロウ警部がルールを無視して動くと、全身に電撃が走ったような痛みが巡り、動けなくなりその場に倒れた。
フクロウ警部の姿を見た他の人物達はその場に停止して動かなくなる。その隙にラーテルは彼らの横を通り過ぎて、部屋から脱出した。
「シンメンタールさん、ありがとうございます!!」
「任せたよ」
ラーテルが部屋を出て行って姿を消し、残ったシンメンタールは吸血鬼がラーテルを追わないように、ボールペンに握りしめると足止めの準備を始めた。
「さて、どこまで時間を稼げるかな」
動かないようにしていた吸血鬼達だが、コン刑事がくしゃみをする。くしゃみをして動いてしまったことで、ペナルティを受けるかもと怯えていたがコン刑事には何も起こらなかった。
「おっと、ちょっと早すぎるな……。ルールの制限、バレちゃったかな」
⭐︎⭐︎⭐︎
屋敷の地下は迷宮のように入り組んでおり、屋敷の四倍の広さになっている。そんな屋敷の地下に降りたラーテルは、迷宮の中を順調に進んでいた。
「流石シンメンタールさん……」
ラーテルは迷宮を迷うことなく進めている。それはシンメンタールから渡されたメモがあったからだ。
地下へ降りたら、右と左に交互に進め。それがシンメンタールからの指示であった。その指示通りに迷宮を進んでいくと、地下に降りた階段とは違う階段を発見する。その階段を登ると、また屋敷の中に戻ってくることになる。
登った先にある部屋の扉を開くと、そこは大量の本が保管されている部屋であった。
そしてそこにいたのは、
「怪盗イタッチ!!!!」
並べられた本を読んでいるイタッチがいた。
「君はラーテルか!?」
「イタッチ、あなたに渡すものが……」
ラーテルはシンメンタールから受け取った日記をイタッチに渡す。
「日記……まさか…………」
日記を受け取り、内容を読んだイタッチはこの屋敷の主人について知る。
「やっぱりそういうことか」
「イタッチ、分かってたんですか?」
「ここにある本を読んで可能性としては考えていた。ダッチやフクロウをなぜ襲ったのか、その理由を知りたかったからな、そしてこの日記で確信に変わった」
イタッチは日記をマントの裏にしまう。
「さてラーテル、みんなを助けに行こうか」
「みんなを助けに……。はい!!」
第52話
『吸血鬼と探偵』
あるところに一人の少年がいました。彼は人よりも才能を持ち、幼い頃から様々なことを覚えていきました。
やがて成長した彼は、人々のためにその才能を使い、その時代以上の物を作り出していきました。
しかし、彼の才能はその時代では早すぎたのです。
最初は生活が楽になり、彼を慕っていた人々も彼を恐れるようになり始めました。村人は彼から距離を置き、遠ざけ始めたのです。
みんなのためにと力を使った彼ですが、人々の態度に彼は自信を無くしました。
さらに彼に対する村人の行動は過激になり、彼の才能を恐れた村人は彼を追い払ってしまったのです。
才能はあっても、まだ若かった彼は村を追い出されたことで、まともな食事もできず、痩せていきました。
そんな彼は森の中でとある人物と出逢います。その人物は村人から魔女と言われて恐れられていた金髪の女性。
女性は餓死しそうになっていた彼に手を差し伸べる。
この時の魔女は軽い気持ちで、助けたことに深い意味などなかったのだろう。ただの気まぐれで差し伸ばした手であったが、この二人はそれから何十年、何百年と共に過ごすことになる。
⭐︎⭐︎⭐︎
「シンメンタールさん、これって……」
日記を見つけて読んでいたシンメンタールとラーテル。ラーテルは日記の内容に動揺する。
「どうやらこれがこの屋敷の真実だったみたいだね」
シンメンタールは読み終えた日記を閉じる。
「さてと、ラーテル君。君に頼みがあるんだが、やれるかい?」
「シンメンタールさんからの頼み……。はい、やってみせます! その頼みってなんですか?」
「おそらくはこの屋敷でまだ無事なのは、僕達とイタッチだけだ。他のメンバーはやられたと考えて良いだろう」
「やられた……吸血鬼にですね…………」
シンメンタールは頷く。そしてボールペンとメモ帳を取り出すと、メモ帳に文字を書く。そしてメモ帳のページを破ってラーテルに渡した。
「ここに怪盗イタッチがいる。日記の内容をイタッチに伝えて、吸血鬼にされた人達を元に戻すんだ」
「はい!」
シンメンタールはラーテルに日記も渡す。
「今回の事件の解決の鍵は、君とイタッチだ。頼んだよ」
「シンメンタールさん?」
なぜか、自分のことを言わないシンメンタール。その姿にラーテルは疑問を感じる。
「シンメンタールさんはこれからどうするんです?」
ラーテルが尋ねると、シンメンタールはニコリと笑う。
「僕は……君をイタッチの元へ届ける」
廊下の方から足音が聞こえてくる。そして扉が開き、吸血鬼にされたフクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事、ダッチ、アンの五人が現れた。
シンメンタールは彼らに向かい合うと、ボールペンを握りしめる。
「まさか!? ダメですよ、シンメンタールさんも一緒に!!」
「大丈夫。君ならやれるさ、僕も適任だ」
「シンメンタールさん!!」
シンメンタールが何をしようとしているのか察したラーテルは、シンメンタールを止めようと呼びかける。しかし、シンメンタールは覚悟を決めているようだった。
「シンメンタールさん…………分かりました。必ずイタッチに届けます」
シンメンタールの覚悟を知り、止められないと判断したラーテルはこの場をシンメンタールに任せることにした。
「ラーテル君、真実を届けてくれ!」
「はい!!」
ラーテルは部屋の出口を目指して走り出す。しかし、入り口は吸血鬼達が立ち塞がっている。
吸血鬼達がラーテルに襲い掛かろうとしたが、それをシンメンタールが止めた。
「覚醒なしだと、体の負担が大きいがッ!!」
シンメンタールはボールペンで空中に文字を書く。
「全員動くな!!」
全員動くなという文字を空中に書いて、吸血鬼達にルールを与える。
吸血鬼になったフクロウ警部がルールを無視して動くと、全身に電撃が走ったような痛みが巡り、動けなくなりその場に倒れた。
フクロウ警部の姿を見た他の人物達はその場に停止して動かなくなる。その隙にラーテルは彼らの横を通り過ぎて、部屋から脱出した。
「シンメンタールさん、ありがとうございます!!」
「任せたよ」
ラーテルが部屋を出て行って姿を消し、残ったシンメンタールは吸血鬼がラーテルを追わないように、ボールペンに握りしめると足止めの準備を始めた。
「さて、どこまで時間を稼げるかな」
動かないようにしていた吸血鬼達だが、コン刑事がくしゃみをする。くしゃみをして動いてしまったことで、ペナルティを受けるかもと怯えていたがコン刑事には何も起こらなかった。
「おっと、ちょっと早すぎるな……。ルールの制限、バレちゃったかな」
⭐︎⭐︎⭐︎
屋敷の地下は迷宮のように入り組んでおり、屋敷の四倍の広さになっている。そんな屋敷の地下に降りたラーテルは、迷宮の中を順調に進んでいた。
「流石シンメンタールさん……」
ラーテルは迷宮を迷うことなく進めている。それはシンメンタールから渡されたメモがあったからだ。
地下へ降りたら、右と左に交互に進め。それがシンメンタールからの指示であった。その指示通りに迷宮を進んでいくと、地下に降りた階段とは違う階段を発見する。その階段を登ると、また屋敷の中に戻ってくることになる。
登った先にある部屋の扉を開くと、そこは大量の本が保管されている部屋であった。
そしてそこにいたのは、
「怪盗イタッチ!!!!」
並べられた本を読んでいるイタッチがいた。
「君はラーテルか!?」
「イタッチ、あなたに渡すものが……」
ラーテルはシンメンタールから受け取った日記をイタッチに渡す。
「日記……まさか…………」
日記を受け取り、内容を読んだイタッチはこの屋敷の主人について知る。
「やっぱりそういうことか」
「イタッチ、分かってたんですか?」
「ここにある本を読んで可能性としては考えていた。ダッチやフクロウをなぜ襲ったのか、その理由を知りたかったからな、そしてこの日記で確信に変わった」
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