参上! 怪盗イタッチ

ピラフドリア

文字の大きさ
上 下
46 / 74

第46話 『新たな敵の予感?』

しおりを挟む
参上! 怪盗イタッチ



第46話
『新たな敵の予感?』



 四神のメンバーに呼ばれたイタッチ達は、高級レストランで食事を楽しむ。
 皆が食事を終えた頃、ウンランはタイミングを見計らってある話を始めた。

「そろそろ~、本題と行こうか」

 ウンランがそう言うと、セイリュウとメイヨウは表情を引き締める。何やら重要な話があるらしい。

「お前達、チンヨウという武道家を知ってるか?」

「チンヨウ……聞いたことあるな」

 イタッチはその名前に聞き覚えがあるようで、顎に手を当てて考える。そしてその人物について思い出した。

「思い出した。イタリアの用心棒、チンヨウか」

「ああ、そのチンヨウだ」

 イタッチはその人物とは会ったことがない。しかし、有名な用心棒として名前を聞いたことがあった。
 中国出身の武術家であり、素手で武器を持った傭兵を50人以上倒したという逸話のある人物だ。
 しかし、ある時彼は四神と敵対してしまい、イタリアのギャングに保護してもらう形で亡命。その後はイタリアのギャングに雇われる用心棒になっていた。

 アンはパソコンでその人物について調べる。

「賞金もついてるんですね…………。え!? 3億!? こんなに高額の賞金が!? イタッチさんでもそこまでじゃないですよね」

 驚いているアンに、メイヨウが説明する。

「イタッチは知名度はあるけど危険はないからね。義賊としての要素が強いのよ。でも、チンヨウは違うわ。金さえ払えばなんでもやる。それがチンヨウという人物よ」

 アンがフルフルと震える中、イタッチはウンランに尋ねる。

「それでそのチンヨウがどうした?」

「消された」

「ん? チンヨウが誰かにやられたのか? だが、そう簡単にやられるようなやつじゃないだろ」

「ああ、俺達もそう考えて、イタリアのギャングに確認を取った。だが、確かな情報としてチンヨウが消されていたんだ」

「一体誰にだ……?」

 ウンランはアンの方へと顔を向ける。

「君は前にモカという人物の元にいたようだね」

「え、ええ……。イタッチさんと出会った時ですね」

「モカには弟がいた。同じ軍隊に所属して、実績を積んだ弟が……。名をマンデリン」

 ウンランがそこまで喋ると、メイヨウが携帯電話でデータをアンに送信する。
 アンはパソコンの画面をイタッチとダッチに見せる。
 画面にはマンデリンと思われる人物の写真があり、右目に傷のある二足歩行のヤギが写っていた。
 ウンランは話を続ける。

「前にチンヨウはモカの部下になることを拒んだ。資金が足りなかったからだ。軍規違反をして投獄されていたマンデリンは、監獄から出てから、そのことを知ったマンデリンはチンヨウを消した」

「そんな理由で……」

「マンデリンにとってはモカは大切な弟だ。その愛情が歪み、彼は今暴走している。そしてそんな彼が次にターゲットにするのは……」

 ウンランはアンの方へと目線を向けた。

「君だ」

「私ですか!?」

「マンデリンはモカの敵討ちをするつもりだ。あの時の関係者を片っ端に消している。俺達はその情報をいち早く入手したから、こうして伝えにきたんだ」

 ウンランがメイヨウに視線で指示すると、アンに新たなデータが送られる。

「どこまで役に立つかはわからないが、マンデリンの経歴をまとめておいた。もしも奴と戦うことになったら、これを参考にしてくれ」

「ウンランさん……ありがとうございます!!」

 アンが礼を言うと、ウンランはニコリと笑う。

「さぁ、そろそろデザートを注文しようか!」

「まだ食べるんですか!? ウンランさん!?」


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 ロシア、モスクワ。ビルが立ち並ぶ街で、黄色に背中のカブトムシのグラントシロカブトが街を歩く。
 二つ足で歩き、残りの四つの腕は前で組んでいる。

 そんな彼と向かいからスーツの人物が歩いてくる。そしてその人物はグラントシロカブトと肩をぶつけた。

「失礼……」

 ぶつかった後、二人はしばらく何もなかったかのように歩き続ける。だが、5歩進んだところで、グラントシロカブトの様子に異変が起きる。
 両足の力を失い、その場に倒れ込む。

「な、……なにが…………」

 そのまま倒れたグラントシロカブトは意識を失った。
 グラントシロカブトが倒れたことで、他の通行人達が心配して駆け寄る。救急車が呼ばれる中、グラントシロカブトと肩をぶつけた人物はその場から離れていく。

「モカ……お前の望んだ未来…………。それはそうだったよな…………。ふふふふ……しかし、本当に軍には感謝しなければな。この力をくれたことを……なぁ、モカ」







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

桃太郎にならなかった話

ジミー凌我
児童書・童話
昔々おじいさんとおばあさんが住んでいました。 もし、おじいさんがあそこでああしていたら。 もし、おばあさんがあそこでああしていたら。 もし、桃太郎がきびだんごを持っていなかったら。 桃太郎という話にはならなかったかもしれない話。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

おっとりドンの童歌

花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。 意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。 「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。 なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。 「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。 その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。 道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。 その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。 みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。 ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。 ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。 ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?

こちら御神楽学園心霊部!

緒方あきら
児童書・童話
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。 灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。 それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。 。 部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。 前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。 通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。 どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。 封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。 決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。 事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。 ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。 都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。 延々と名前を問う不気味な声【名前】。 10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。 

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

ゆうれいのぼく

早乙女純章
児童書・童話
ぼくはゆうれいになっていた。 ゆうれいになる前が何だったのか分からない。 ぼくが帰れる場所を探してみよう。きっと自分が何だったのかを思い出して、なりたい自分になれそうな気がする。 ぼくはいろいろなものに憑依していって、みんなを喜ばせていく。 でも、結局、ゆうれいの自分に戻ってしまう。 ついには、空で同じゆうれいたちを見つけるけれど、そこもぼくの本当の居場所ではなかった。 ゆうれいはどんどん増えていっていく。なんと『あくのぐんだん』が人間をゆうれいにしていたのだ。 ※この作品は、レトロアーケードゲーム『ファンタズム』から影響を受けて創作しました。いわゆる参考文献みたいな感じです。

ことみとライ

雨宮大智
児童書・童話
十才の少女「ことみ」はある日、夢の中で「ライ」というペガサスに会う。ライはことみを「天空の城」へと、連れて行く。天空の城には「創造の泉」があり、ことみのような物語の書き手を待っていたのだった。夢と現実を行き来する「ことみ」の前に、天空の城の女王「エビナス」が現れた⎯⎯。ペガサスのライに導かれて、ことみの冒険が、いま始まる。 【旧筆名:多梨枝伸時代の作品】

火星だよ修学旅行!

伊佐坂 風呂糸
児童書・童話
 火星まで修学旅行にきたスイちゃん。どうも皆とはぐれて、独りぼっちになったらしい。困っていると、三回だけ助けてもらえる謎のボタンを宇宙服の腕に発見する。  次々と迫り来るピンチ!  四人の心強い味方と仲良くなったスイちゃんは力を合わせ、数々の困難を乗り越えて、修学旅行のメインイベントであったオリンポス山の登頂を成功させる事はできるのでしょうか。  

処理中です...