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第41話 『探偵の夢』
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参上! 怪盗イタッチ
第41話
『探偵の夢』
──子供の頃、読んだ本。そこに登場した探偵は、あらゆる事件を解決して困っている人々を助けていた。
報酬は求めず、感謝の言葉だけが探偵を動かす動力。そんな探偵に一人の少年は憧れた。
⭐︎⭐︎⭐︎
都内にある事務所。そこでマットの上で牛が腕立て伏せをする。
「98、99、……100」
100回をやり終え、シンメンタールは力を失い、地べたに寝っ転がった。
「え、えぎぃ~」
疲れて寝転がるシンメンタールに、ラーテルは冷えたお茶を持ってくる。
「お疲れ様です。シンメンタールさん」
「あぁ、ラーテル君。ありがとう」
お茶を受け取ると、シンメンタールはお茶を一気飲みした。その様子を見て、ラーテルは首を傾げる。
「しかし、なんでシンメンタールさんはいつもトレーニングをしてるんです? 私達、頭を使えば良いだけじゃないんですか?」
「僕が目指してる探偵像は、どんな事件も解決できる探偵だからね。いざって時の力も必要だよ」
「ふぅ~ん、いざって時ですか……」
お茶を飲み終えたシンメンタールは立ち上がると、近くのテーブルに置いてあるボールペンを手に取る。そして大切そうにそのボールペンを握りしめた。
「そうさ……僕の親友との約束だからね」
⭐︎⭐︎⭐︎
時は現代に戻り──
ダッチの心配そうな声がフロア内に響く。イタッチはシンメンタールに関節技を決められて、動けない状態になっていた。
しかし、そんな状態でイタッチはダッチに叫ぶ。
「ダァァァァァッチ!! いいか、よく聞け!!」
「……相棒?」
「脱出するぞ。逃げる準備をしておけよ!!」
イタッチの言葉を聞き、ダッチの目つきが変わる。
「了解だぜ。相棒!!」
ダッチが刀を構え直し、フクロウ警部と向かい合う中、イタッチはシンメンタールに関節技を喰らいながら、手を伸ばす。
そして床に落ちているボールペンを拾い上げた。
「拾えたってことはもうルールは切れたってことか。ルールの適応は数秒か……」
「バレてしまったようだね。でも、もう君は逃げられないよ」
シンメンタールはさらにキツく、イタッチの腕を傾ける。イタッチは叫びそうになるくらい痛みを感じながらも、ボールペンで文字を書き始める。
そして完成した文字は『接触禁止』。
「「ぐっ!?」」
イタッチとシンメンタール。二人の身体に電撃が流れたような痛みが現れる。そしてその痛みで二人の体は硬直し、シンメンタールの技が一時的に緩くなる。
その瞬間を狙い、イタッチはシンメンタールの技を振り払い、関節技から抜け出した。
抜け出したイタッチはボールペンを見つめる。
「流石に神器に対する適応率が低いか。威力も持続時間もシンメンタールより短いな」
イタッチが立ち上がり、それに続くようにシンメンタールも立ち上がる。
「いや、神器を使えるだけですごいさ」
イタッチとシンメンタールは再び向かい合う。しかし、シンメンタールが動く前にイタッチはシンメンタールにボールペンを投げ返した。
ボールペンを返されて、シンメンタールは悔しそうに呟く。
「時間切れ……なのはお見通しか」
「覚醒状態だからこその神器の効力なんだろ」
1分が経過して、シンメンタールから溢れ出ていたオーラが消えていく。シンメンタールは疲労感からか、片膝をついた。
「悔しいな、僕の負けのようだね」
「良い戦いだったぜ。シンメンタール。またやろうぜ」
イタッチはそう言った後、マントの裏から折り紙を取り出した。そして折り紙の爆弾を作り出した。
イタッチが爆弾を地面に叩きつけると、煙が溢れ出してフロア内を煙が包み込んだ。
その煙はダッチやフクロウ警部達も包み込む。
「なに、煙幕だと!?」
フクロウ警部は視界を奪われて大慌て、コン刑事とラーテルも煙によって動けずにその場で立ち止まった。
しばらくして煙幕の効果が消えて視界が元に戻る。しかし、すでにイタッチとダッチの姿はなく、お宝もなくなっていた。
「ま、まただァァァァァ、やられたぁ」
フクロウ警部は頭を押さえて大声で叫び声を上げた。
⭐︎⭐︎⭐︎
イタッチにお宝を盗まれて、逃げられてしまったシンメンタールであったが、イタッチを後一歩というところまで追い詰めたということで、警察から感謝された。
今後も協力をしていこうということになり、シンメンタール達も時間がある時は、警察の力になることになった。
「シンメンタールさ~ん、そろそろお昼ですよ~、まだ寝てるつもりですか~」
事務所の机に突っ伏して、いびきを出しているシンメンタール。そんなシンメンタールの頭をラーテルはノートでコツンと叩いた。
「んぅ、ラーテル君。そろそろ朝ごはんかなぁ」
「昼ですよ!! もうなんでそんなに寝てるんですか!」
「ははは、そんなに経ってたか……。ちょっとシミュレーションしすぎたか」
シンメンタールは大きな欠伸をしながら、両手を伸ばす。
「シミュレーション? なんですか、寝てただけじゃないんですか?」
「まぁね、ちょっとリベンジの方法を考えてたんだよ」
「誰へのリベンジですか?」
「さぁね」
「なんだ、寝ぼけてただけですか~」
第41話
『探偵の夢』
──子供の頃、読んだ本。そこに登場した探偵は、あらゆる事件を解決して困っている人々を助けていた。
報酬は求めず、感謝の言葉だけが探偵を動かす動力。そんな探偵に一人の少年は憧れた。
⭐︎⭐︎⭐︎
都内にある事務所。そこでマットの上で牛が腕立て伏せをする。
「98、99、……100」
100回をやり終え、シンメンタールは力を失い、地べたに寝っ転がった。
「え、えぎぃ~」
疲れて寝転がるシンメンタールに、ラーテルは冷えたお茶を持ってくる。
「お疲れ様です。シンメンタールさん」
「あぁ、ラーテル君。ありがとう」
お茶を受け取ると、シンメンタールはお茶を一気飲みした。その様子を見て、ラーテルは首を傾げる。
「しかし、なんでシンメンタールさんはいつもトレーニングをしてるんです? 私達、頭を使えば良いだけじゃないんですか?」
「僕が目指してる探偵像は、どんな事件も解決できる探偵だからね。いざって時の力も必要だよ」
「ふぅ~ん、いざって時ですか……」
お茶を飲み終えたシンメンタールは立ち上がると、近くのテーブルに置いてあるボールペンを手に取る。そして大切そうにそのボールペンを握りしめた。
「そうさ……僕の親友との約束だからね」
⭐︎⭐︎⭐︎
時は現代に戻り──
ダッチの心配そうな声がフロア内に響く。イタッチはシンメンタールに関節技を決められて、動けない状態になっていた。
しかし、そんな状態でイタッチはダッチに叫ぶ。
「ダァァァァァッチ!! いいか、よく聞け!!」
「……相棒?」
「脱出するぞ。逃げる準備をしておけよ!!」
イタッチの言葉を聞き、ダッチの目つきが変わる。
「了解だぜ。相棒!!」
ダッチが刀を構え直し、フクロウ警部と向かい合う中、イタッチはシンメンタールに関節技を喰らいながら、手を伸ばす。
そして床に落ちているボールペンを拾い上げた。
「拾えたってことはもうルールは切れたってことか。ルールの適応は数秒か……」
「バレてしまったようだね。でも、もう君は逃げられないよ」
シンメンタールはさらにキツく、イタッチの腕を傾ける。イタッチは叫びそうになるくらい痛みを感じながらも、ボールペンで文字を書き始める。
そして完成した文字は『接触禁止』。
「「ぐっ!?」」
イタッチとシンメンタール。二人の身体に電撃が流れたような痛みが現れる。そしてその痛みで二人の体は硬直し、シンメンタールの技が一時的に緩くなる。
その瞬間を狙い、イタッチはシンメンタールの技を振り払い、関節技から抜け出した。
抜け出したイタッチはボールペンを見つめる。
「流石に神器に対する適応率が低いか。威力も持続時間もシンメンタールより短いな」
イタッチが立ち上がり、それに続くようにシンメンタールも立ち上がる。
「いや、神器を使えるだけですごいさ」
イタッチとシンメンタールは再び向かい合う。しかし、シンメンタールが動く前にイタッチはシンメンタールにボールペンを投げ返した。
ボールペンを返されて、シンメンタールは悔しそうに呟く。
「時間切れ……なのはお見通しか」
「覚醒状態だからこその神器の効力なんだろ」
1分が経過して、シンメンタールから溢れ出ていたオーラが消えていく。シンメンタールは疲労感からか、片膝をついた。
「悔しいな、僕の負けのようだね」
「良い戦いだったぜ。シンメンタール。またやろうぜ」
イタッチはそう言った後、マントの裏から折り紙を取り出した。そして折り紙の爆弾を作り出した。
イタッチが爆弾を地面に叩きつけると、煙が溢れ出してフロア内を煙が包み込んだ。
その煙はダッチやフクロウ警部達も包み込む。
「なに、煙幕だと!?」
フクロウ警部は視界を奪われて大慌て、コン刑事とラーテルも煙によって動けずにその場で立ち止まった。
しばらくして煙幕の効果が消えて視界が元に戻る。しかし、すでにイタッチとダッチの姿はなく、お宝もなくなっていた。
「ま、まただァァァァァ、やられたぁ」
フクロウ警部は頭を押さえて大声で叫び声を上げた。
⭐︎⭐︎⭐︎
イタッチにお宝を盗まれて、逃げられてしまったシンメンタールであったが、イタッチを後一歩というところまで追い詰めたということで、警察から感謝された。
今後も協力をしていこうということになり、シンメンタール達も時間がある時は、警察の力になることになった。
「シンメンタールさ~ん、そろそろお昼ですよ~、まだ寝てるつもりですか~」
事務所の机に突っ伏して、いびきを出しているシンメンタール。そんなシンメンタールの頭をラーテルはノートでコツンと叩いた。
「んぅ、ラーテル君。そろそろ朝ごはんかなぁ」
「昼ですよ!! もうなんでそんなに寝てるんですか!」
「ははは、そんなに経ってたか……。ちょっとシミュレーションしすぎたか」
シンメンタールは大きな欠伸をしながら、両手を伸ばす。
「シミュレーション? なんですか、寝てただけじゃないんですか?」
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