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第37話 『フクロウ警部とシンメンタール』
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参上! 怪盗イタッチ
第37話
『フクロウ警部とシンメンタール』
喫茶店のあるビルの2階。そこに三人の動物が集まっていた。
「イタッチさん、今回はどうするんですか? ニュースでもやってましたけど、シンメンタールさんが捜査に協力するらしいですよ」
パソコンを操作しながら、アンがイタッチに尋ねる。イタッチは印刷したアゲート美術館の構造を確認していた。
「シンメンタールか。厄介な相手かもな。だが、俺は盗むと言ったお宝は諦めない。絶対に盗んでみせる」
イタッチの言葉を聞き、隣に座ってニンジンのスナック菓子を齧っていたウサギが質問する。
「シンメンタールってそんなに凄いのか?」
ウサギの名前はダッチ。イタッチの相棒であり、中華マフィアのボスだ。
ダッチの質問にイタッチは頷く。
「ああ、数々の事件を解決してる」
「どんな事件だ?」
ダッチが首を傾げると、イタッチが答える前にアンがパソコンの画面をダッチに見せた。
「シンメンタールさんが解決した大きな事件は、ジャスミンによるテロを未然に防いだり、雪山で起きた殺人事件を解決したり、最近だと透明人間って言われてるほど、隠れるのが上手な通り魔を逮捕したみたいです」
アンはネットで紹介されているシンメンタールの実績をダッチに伝える。しかし、ダッチはピンと来ていないようで、口をポカーンと開けている。
「ん~、なんかすげーやつなのかー」
「ダッチさん、絶対分かってないですよね」
「おう」
ダッチの返事に呆れつつ、アンはパソコンを元の位置に戻した。
ダッチはまたお菓子を食べ始め、口に咥えながらイタッチに尋ねた。
「んで、計画はどうするんだ? 俺はよくわかんねーが、このままの計画で行くのか?」
イタッチは顎に手を当てて、目を細める。
「フクロウ警部が相手なら、当初の作戦で行くんだが、シンメンタールも加わるとなると作戦を変える必要があるな。フクロウ警部とシンメンタール、厄介な相手が組んだもんだ」
⭐︎⭐︎⭐︎
5日の午後8時30分。アゲート美術館にフクロウ警部達が到着した。
フクロウ警部を出迎えたのは、美術館の館長であるニホンイノシシのノイシ館長。ノイシ館長は深くお辞儀をする。
「よく来てくださいました。フクロウ警部殿」
「協力感謝します。ノイシ館長」
「いえいえ、感謝を述べるのはこちらです。イタッチに狙われたビッグムーンストーン。それを守ってくださるというのですから。しかし、シンメンタールさんは本当に来るんですか?」
ノイシ館長はニュースを見ていたのか、シンメンタールについて聞く。すると、フクロウ警部は頷いた。
「ええ、もうすぐ来るはずですよ」
フクロウ警部がそう答えたと同時に、美術館の前にパトカーが止まる。そしてパトカーからネコ刑事とコン刑事が出てくる。パトカーから出た二人は、後部座席の扉を開けると、中からシンメンタールとラーテルが出てきた。
シンメンタールが現れると、美術館を囲っていたテレビ局の人々や野次馬が一気に盛り上がる。
それだけシンメンタールの人気があるということだろう。テレビ局の記者が警官達を押し切って、シンメンタールの前に立つ。
そしてマイクを向けて質問をした。
「シンメンタールさん、今回はイタッチとの初の対決となりますが、自信はどれくらいありますか?」
シンメンタールは記者に対して、ニコリと笑いかけると、
「怪盗イタッチは、僕とフクロウ警部の手によって逮捕される。楽しみに待っていてください」
シンメンタールはそれだけ言い残し、美術館へと向かう。記者達はまだ質問をしたいようで、シンメンタールに近づこうとするが、警官達が記者を抑えていく手を塞いだ。
シンメンタールとフクロウ警部は握手をする。
「よろしく頼むよ。シンメンタール」
「ああ、頑張ろう、フクロウ」
二人の固い握手を記者達はカメラで激写する。フラッシュで眩しい中、二人は美術館へと入った。
アゲート美術館は三階建てで、それぞれの一つの階に二つのフロアが用意されて美術館だ。
それぞれのフロアが特殊なテーマを持った装飾がなされており、そのテーマにあったお宝が展示されている。
例えば、一階には海をイメージしたフロアがあり、壁一面が青く染められており、床には海藻や貝殻のイラストが描かれている。そんなフロアに置かれているお宝は、「ビーナスの夢」「海の秘宝、ブルーアクアストーリー」「クラーケンの眼」と様々な展示品がある。
そして今回イタッチが狙ったお宝があるのは、三階にある宇宙エリア。そこにビッグムーンストーンが展示されている。宇宙エリアには宇宙船を模した装飾物や星々をイメージした壁紙で作られたエリアだ。
その宇宙エリアの最南にあるのが、ビッグムーンストーンの飾られている展示室。窓もなく、出入り口は一つしかない展示室であり、扉も緊急事態になるとシャッターが閉まり誰も出られなくすることができる。
そのビッグムーンストーンの展示室に、フクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事、そしてシンメンタールとラーテル。
皆を集めたシンメンタールは今回の作戦について告げる。
「イタッチがお宝を手に入れるためには、必ずこの部屋に一つしかない扉から入るしかない。他の部屋にも警備員は待機してるが、ここに戦力を揃えたのは、この展示室でイタッチと捕まえるため」
シンメンタールの言葉にフクロウ警部は頷く。
「ああ、この部屋に入った瞬間、奴を逮捕してやろう」
第37話
『フクロウ警部とシンメンタール』
喫茶店のあるビルの2階。そこに三人の動物が集まっていた。
「イタッチさん、今回はどうするんですか? ニュースでもやってましたけど、シンメンタールさんが捜査に協力するらしいですよ」
パソコンを操作しながら、アンがイタッチに尋ねる。イタッチは印刷したアゲート美術館の構造を確認していた。
「シンメンタールか。厄介な相手かもな。だが、俺は盗むと言ったお宝は諦めない。絶対に盗んでみせる」
イタッチの言葉を聞き、隣に座ってニンジンのスナック菓子を齧っていたウサギが質問する。
「シンメンタールってそんなに凄いのか?」
ウサギの名前はダッチ。イタッチの相棒であり、中華マフィアのボスだ。
ダッチの質問にイタッチは頷く。
「ああ、数々の事件を解決してる」
「どんな事件だ?」
ダッチが首を傾げると、イタッチが答える前にアンがパソコンの画面をダッチに見せた。
「シンメンタールさんが解決した大きな事件は、ジャスミンによるテロを未然に防いだり、雪山で起きた殺人事件を解決したり、最近だと透明人間って言われてるほど、隠れるのが上手な通り魔を逮捕したみたいです」
アンはネットで紹介されているシンメンタールの実績をダッチに伝える。しかし、ダッチはピンと来ていないようで、口をポカーンと開けている。
「ん~、なんかすげーやつなのかー」
「ダッチさん、絶対分かってないですよね」
「おう」
ダッチの返事に呆れつつ、アンはパソコンを元の位置に戻した。
ダッチはまたお菓子を食べ始め、口に咥えながらイタッチに尋ねた。
「んで、計画はどうするんだ? 俺はよくわかんねーが、このままの計画で行くのか?」
イタッチは顎に手を当てて、目を細める。
「フクロウ警部が相手なら、当初の作戦で行くんだが、シンメンタールも加わるとなると作戦を変える必要があるな。フクロウ警部とシンメンタール、厄介な相手が組んだもんだ」
⭐︎⭐︎⭐︎
5日の午後8時30分。アゲート美術館にフクロウ警部達が到着した。
フクロウ警部を出迎えたのは、美術館の館長であるニホンイノシシのノイシ館長。ノイシ館長は深くお辞儀をする。
「よく来てくださいました。フクロウ警部殿」
「協力感謝します。ノイシ館長」
「いえいえ、感謝を述べるのはこちらです。イタッチに狙われたビッグムーンストーン。それを守ってくださるというのですから。しかし、シンメンタールさんは本当に来るんですか?」
ノイシ館長はニュースを見ていたのか、シンメンタールについて聞く。すると、フクロウ警部は頷いた。
「ええ、もうすぐ来るはずですよ」
フクロウ警部がそう答えたと同時に、美術館の前にパトカーが止まる。そしてパトカーからネコ刑事とコン刑事が出てくる。パトカーから出た二人は、後部座席の扉を開けると、中からシンメンタールとラーテルが出てきた。
シンメンタールが現れると、美術館を囲っていたテレビ局の人々や野次馬が一気に盛り上がる。
それだけシンメンタールの人気があるということだろう。テレビ局の記者が警官達を押し切って、シンメンタールの前に立つ。
そしてマイクを向けて質問をした。
「シンメンタールさん、今回はイタッチとの初の対決となりますが、自信はどれくらいありますか?」
シンメンタールは記者に対して、ニコリと笑いかけると、
「怪盗イタッチは、僕とフクロウ警部の手によって逮捕される。楽しみに待っていてください」
シンメンタールはそれだけ言い残し、美術館へと向かう。記者達はまだ質問をしたいようで、シンメンタールに近づこうとするが、警官達が記者を抑えていく手を塞いだ。
シンメンタールとフクロウ警部は握手をする。
「よろしく頼むよ。シンメンタール」
「ああ、頑張ろう、フクロウ」
二人の固い握手を記者達はカメラで激写する。フラッシュで眩しい中、二人は美術館へと入った。
アゲート美術館は三階建てで、それぞれの一つの階に二つのフロアが用意されて美術館だ。
それぞれのフロアが特殊なテーマを持った装飾がなされており、そのテーマにあったお宝が展示されている。
例えば、一階には海をイメージしたフロアがあり、壁一面が青く染められており、床には海藻や貝殻のイラストが描かれている。そんなフロアに置かれているお宝は、「ビーナスの夢」「海の秘宝、ブルーアクアストーリー」「クラーケンの眼」と様々な展示品がある。
そして今回イタッチが狙ったお宝があるのは、三階にある宇宙エリア。そこにビッグムーンストーンが展示されている。宇宙エリアには宇宙船を模した装飾物や星々をイメージした壁紙で作られたエリアだ。
その宇宙エリアの最南にあるのが、ビッグムーンストーンの飾られている展示室。窓もなく、出入り口は一つしかない展示室であり、扉も緊急事態になるとシャッターが閉まり誰も出られなくすることができる。
そのビッグムーンストーンの展示室に、フクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事、そしてシンメンタールとラーテル。
皆を集めたシンメンタールは今回の作戦について告げる。
「イタッチがお宝を手に入れるためには、必ずこの部屋に一つしかない扉から入るしかない。他の部屋にも警備員は待機してるが、ここに戦力を揃えたのは、この展示室でイタッチと捕まえるため」
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