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第22話 『vs怪鳥』

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参上! 怪盗イタッチ



第22話
『vs怪鳥』




 怪鳥が飛行し、ダッチとパウラは空を見上げる。
 怪鳥は羽を羽ばたかせるのではなく、広げて宙に浮いており、何かの機械で飛行しているようだ。



「逃げる気か……いや、違う!?」



 怪鳥がクチバシを開くと、そこには機関銃がセットされており、ダッチ達に向けて弾丸が発射される。



 ダッチは隣にいるパウラを抱えて、右へと飛び跳ねて弾丸を躱す。しかし、怪鳥は身体全体の向きを変えて、ダッチ達を追いかけるように狙いを定める。



「あの岩陰まで走れ!」



 ダッチはパウラを降ろして、二人で岩陰を目指して走る。弾丸が背後で地面を抉る中、どうにか走り切り、岩を盾にすることができた。
 ダッチ達が隠れると、怪鳥は撃つのをやめてその場で静止する。



「くそ。なんなんだよ、アイツは……」



 目的も正体も分からない。とにかくこちらを攻撃してくる謎の存在に、ダッチは困惑する。



「おいウサギ、どうにかしろ!!」



「ウサギって呼ぶな!! ……ッチ、考えてもしょうがねぇ、やるしかねぇか」



 ダッチはコートを脱ぐと、パウラに投げ渡す。



「そいつを持ってろ。絶対に汚すなよ、俺の故郷じゃ、三十万元するコートだ」



「何をする気だ、ウサギ」



「あのバカドリをぶった斬るんだよッ!!」



 ダッチは刀を抜くと、岩陰から飛び出す。そして怪鳥に向かって走り出した。
 ダッチが向かってくるのを察知すると、怪鳥は機関銃を発射する。しかし、ダッチは刀で弾丸を弾いて、怪鳥の真下まで接近した。



「おらよぉ!」



 そして飛び上がると、機関銃を切断して、怪鳥のクチバシに飛び乗った。



「さっきの様子からして、この距離で音波を聞けば、壊れるだろ!」



 ダッチは怪鳥の上で刀を横にする。そして小刻みに揺らし始めた。すると、刀が甲高い音が鳴り始める。
 それは洞窟の壁面すら揺らがせる。パウラは両手で耳を塞ぐが、それでも防ぎ切ることができず、離れた場所にいたパウラすら、意識を朦朧とさせる。



 しかし、怪鳥は音波を聞いても反応がない。



「ど、どうなって……」



 ダッチが困惑していると、怪鳥の背中からアームが伸びてくる。そしてダッチのことを鷲掴みにして捕まえた。



「クソ、なんで音波が効かない……」



 怪鳥にダッチが捕まり、さらにもう一つアームが現れて岩陰に隠れていたパウラも捕まえる。
 怪鳥はクチバシの前に二人を並べると、目のような部分を光らせた。
 そしてそこから映像が飛び出す。空中に映し出された映像には、テキストのみが映し出され、




「対策済み……だと」



 そこには対策済みという文字が書かれていた。



「逃げてからの短時間で、俺の音波が効かないようになったってのかよ……」



 ダッチがそう言ってテキストを理解すると、目の光が消えて映像が消える。そしてクチバシが開くと、そこには壊したはずの機関銃が修復されて戻っていた。



「こんな短時間で……なんなんだ、コイツは……」



 機関銃がダッチとパウラに向けられる。鷲掴みにされた状況で、逃げることもできない。



「すまねぇ、パウラ……」



 ダッチがそう呟きかけた時だった。



「ダァァァァァッチ!!!!」



 折り紙の剣が機関銃を切断する。さらにアームも切り落として、ダッチとパウラを解放した。



「イタッチか!? …………いや、あれは……」



 ダッチ達を解放した存在。それは30センチ程度の大きさの、イタッチだった。



「どうなってる!? なんでそんな小さく!?」



 ダッチがイタッチの姿に驚くと、小さなイタッチが説明する。



「俺じゃないよ、俺の本体はまだ寝てる。これはアンに折ってもらった俺のミニ分身だ。お前達をサポートするために来た」



「分身……折り紙か!!」



「そういうことだ」



 イタッチはダッチとパウラを解放すると、怪鳥に折り紙の剣を投げる。怪鳥のクチバシに剣が刺さると、剣から煙が出てきて怪鳥の視界を奪った。



「一時的な目眩しだが、効果はあるはずだ……」



 イタッチ達は一旦、怪鳥から距離を取る。そして煙で怪鳥の視界が塞がっている隙に、作戦会議をすることにした。



「分身とはいえ、お前の折り紙があればどうにかなるんじゃないか?」



 ダッチはミニイタッチに聞く。しかし、イタッチは首を横に振る。



「分身じゃ本来の力を出せない。それに持ってきたのはさっきの剣が最後だ」



「ッチ。じゃあ、どうすりゃ良いんだよ」



 半端キレ気味に尋ねるダッチに、ミニイタッチは冷静に答えた。



「お前の刀でコアを奪い取れ」



「コアってまさか……」



 煙で怪鳥の姿は見えないが、三人は怪鳥へと目線を向ける。煙の中にあるはずの、そのお宝を皆が見つめた。



「スカイブルーか」



「ああ、スカイブルーは怪鳥のエネルギー源になっている。それを奪い取れば、怪鳥は動きを止めるはずだ」



「…………クソ、ってことはまた、あのバカドリに近付かなけりゃ、行けねぇてことかよ……」



 ダッチの言葉を聞き、パウラはダッチの顔を覗き込む。



「怖いのか? ワタシが代わってやろうか?」



 ダッチは刀を小刻みに揺らしている。それを気づかれないように、もう片方の手で腕を押さえているが、ミニイタッチとパウラは勘付いていた。



「んなわけあるかよ……。テメェとの約束、果たしてやらぁ」



 ダッチは二人の前に立ち、怪鳥のいる煙へと身体を向けた。



「パウラ、もう一度、そのコートを絶対に汚すなよ」



「ダッチ……。ああ、任せておけ」



 煙幕が薄くなり、怪鳥の姿が見え始める。ダッチは刀を手に怪鳥と向かい合った。
 怪鳥をダッチに任せて、パウラとミニイタッチは岩陰へと走る。



 煙幕が完全になくなると、怪鳥はクチバシを開けて機関銃をダッチに向けた。ダッチは刀を鞘に収めると、深呼吸をして心身を落ち着かせる。
 機関銃から弾丸が発射される。ダッチは飛んでくる弾丸を、身体を横にし、しゃがみ、様々な方法で避ける。



 ダッチに当たらなかった弾丸は、地面にぶつかると破裂して、火花を散らす。さっきまでの弾丸とは違い、炸裂する弾丸になったようだ。



 ミニイタッチはパウラと共に岩陰に隠れながら、



「次々と対策をしてくるな。だが、それを読み切ったな、ダッチ……」



 もしも刀で防いでいれば、刀にぶつかった瞬間に破裂して、刀は折れてダッチもダメージを受けていただろう。
 何かしらの小細工をしてくると読んでいたダッチは、刀で対処するのではなく、躱すことに力を入れることにした。



 弾丸を避けながら、ダッチは怪鳥に近づく。そして空中にいる怪鳥の真下まで辿り着いた。
 ダッチは刀を抜き、膝を曲げる。そして姿勢を低くしてバネのように縮むと、勢いよく身体を伸ばして直角に飛び上がった。
 頭上にいる怪鳥に向けて刀を振り、怪鳥の身体を真っ二つに切断した。



 断面には怪鳥の命とも言える配線が詰まっているが、どの配線も生きているようにウネウネと動いている。
 時間があれば、切断した配線も繋ぎあって怪鳥は復活するだろう。だが、ダッチはその配線を無視して、怪鳥の胴体に飛び移る。
 そして怪鳥の背に刺さったスカイブルーと向き合った。



「コイツを叩き切れば、このバカドリは動きを止めるんだなァ」



 ダッチが刀を振り上げると同時に、空を飛んでいた怪鳥は二つに切られたことで空から落下して地面に墜落する。
 落下の衝撃で足元が揺れるが、ダッチは姿勢を崩すことなく刀を振り下ろした。



「ッチ、まだ邪魔をすんのかよ」



 スカイブルーまで後少しというところで、ガラスケースが現れてダッチの刀を防いだ。ダッチは再び刀を振り上げるが、振り下ろす前に怪鳥の左右の翼からアームが伸びてくる。
 アームの先端は人間の手のような形になっており、またしてもダッチを捕まえる気のようだ。



 だが、ダッチはアームを素早く避ける。アームは避けたダッチを追うが、動きが速すぎて捕えることはできなかった。
 ダッチが捕まらず、怪鳥はダッチを捕まえるのを諦めると今度は岩陰に隠れている二人を狙うことにした。



「パウラ、相棒!!」



 ダッチは岩陰に向かって叫ぶ。
 だが、アームはパウラによって止められた。パウラは背中に背負っていた剣を抜いて、アームを切り落とす。



「ワタシだって、雑魚じゃない。やれ、ダッチ!!」



 パウラ達が無事なのを確認すると、ダッチはガラスを破り、そして中にあるスカイブルーを切り落とした。




 ⭐︎⭐︎⭐︎




 スカイブルーを切り落としたことで、怪鳥は動きを止めた。ダッチはスカイブルーを手にして、パウラとミニイタッチを連れて集落に戻った。
 集落の入り口ではアンが出迎え、集落に入ると折り紙で作られたミニイタッチは力を失い、折り紙へと戻った。



「相棒、スカイブルーを手に入れたぜ」



 パウラの家に戻ると、包帯を巻いたイタッチが横になっていた。
 ダッチの言葉を聞き、イタッチは親指を立てる。



「よくやった、ダッチ」



「当然だぜ」



 その後、イタッチ達は集落を出た。パウラの話ではイタッチ達がいなくなって、翌日にフクロウ警部が現れて事情聴取をされたらしい。
 その際に怪鳥の残骸も見つかり、警察によって怪鳥の残骸は回収されたようだ。



 集落を出る時にパウラはダッチに礼を言おうとしたが、ダッチは最後まで言わせずに集落を去った。
 日本に戻ってから、ダッチはコートを忘れたと言っていたが、おそらくわざとだろう。







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