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第15話 『イタッチとフクロウ』
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参上! 怪盗イタッチ
第15話
『イタッチとフクロウ』
「……ここがアイスキングの王の間か……」
階段を登り、フクロウ警部は王の間にたどり着いた。しかし、玉座はあるが、そこにアイスキングの姿はない。
他に誰かいないかと部屋を見渡してみると、赤いマントの人物が倒れていた。
「あれは……イタッチか!?」
フクロウ警部は倒れているイタッチに駆け寄る。
「……この傷は」
イタッチのお腹には大きな傷があり、刺されてできた傷のようだ。
「俺はお前を逮捕するのが夢だった……。だが、何やってんだ、イタッチ!!」
倒れたイタッチを見下ろして、フクロウ警部は叫ぶ。全身の力が抜けて、イタッチの前で座り込む。そしてポツリポツリと涙を流した。
「お前がアイスキングに負けるものか、これを計画なんだろう、なぁ、イタッチ!!」
フクロウ警部は倒れたイタッチに話しかけるが、返事はない。
「……お前がいなくなったなら、俺は警官を続ける意味はないじゃないか! 俺はずっとお前を追って、それが生き甲斐でもあった……」
フクロウ警部は頭に被っていた帽子を脱ぎ、地面に叩きつける。柔らかい帽子は、グニャリと曲がって、音も出さずに地面に落ちる。
「……ん、これは」
帽子を地面に叩きつけた時、下を見たフクロウ警部は何かが落ちていることに気がついた。それは折り紙でできた身体。イタッチの身体の一部であった。
その形はまるで穴の空いたイタッチの身体に、スッポリとハマりそうな形であり、フクロウ警部がそれを手に取ると、それは生暖かい。
「もしや、イタッチ……」
フクロウ警部は折り紙を、イタッチの身体にはめる。すると、折り紙が光を放ち、イタッチの身体と同化した。
「フクロウ……」
「イタッチ!? 意識が戻ったのか!?」
折り紙がイタッチの身体と同化したことで、イタッチの傷は治る。そして意識を取り戻したイタッチの目の前にはフクロウ警部がいた。
「まさか、お前に助けられるとはな」
「バカを言うな! 俺は、俺は助けたわけじゃ、グスン…………ないわァァァァァ!!」
「そうだとしてもだ。俺はお前が来たおかげで助かった。ありがとな、フクロウ」
寝っ転がった姿勢から立ち上がったイタッチは、フクロウ警部に手を伸ばす。
「バカやろう!! 今回だけだ、今回だけだぞ!!」
フクロウ警部はイタッチの手を握ると、イタッチに引っ張られるように立ち上がる。
そして向かい合った二人は熱い握手をした。
「ああ、今回だけだ。今回だけだが、フクロウ、協力してくれ」
「ああ、任せておけい! 俺とお前が協力すれば、神にだって勝てる!!」
フクロウ警部は腕で涙を拭いながら、イタッチと共に屋上を見上げた。
屋上ではダッチとアイスキングが激闘を繰り広げていた。アイスキングは杖の先端に氷の刃を作ることで、薙刀を作り出すと杖を振ってダッチに襲いかかる。
ダッチも刀で応戦をするが、風邪で体力が減ってきていることもあり、防御で精一杯になっていた。
「どうした、さっきまでの威勢がないな!」
「ッチ。うるぜぇよぉぉ、寒いんだよ、チクショー!」
アイスキングが能力を行使しているからだろうか。屋上の温度はさらに下がり始めていた。
ダッチとアイスキングが戦う中。アンに看病を受けていたネージュが目を覚ます。
「……アン、ちゃん…………」
「ネージュさん。やっと意識が戻りましたか!」
ネージュは身体を起こし、周囲を見渡す。そしてダッチとアイスキングが戦っている姿を見つけた。
「な、なんで、あの人が……」
本来なら風邪でアジトにいるはずの、ダッチとアン。なぜ、その二人が氷の城にいるのか、驚いているネージュ。
そんなネージュにアンは微笑みながら説明をする。
「そうですね、本当は行かせる気はなかったんですよ、でも、あの人は頑固ですから」
アンは嬉しそうにダッチの背中に目線をやる。
「ダッチさんは誰よりも仲間想いで、自分のことなんて後回し……。あなたやイタッチさんのことが心配だったんですね、……どうしても行くって言うから負けちゃいました。でも、そんなところが世界一カッコいいんです!!
アンが熱弁する中も、ダッチはアイスキングの攻撃を刀で受け止める。刀を横にして振り下ろされた杖をつけ止めたところで、ダッチはネージュが起きていることに気づいた。
「起きたか、新人!! ならさっさと手伝え!! 俺から相棒の座を借りといて、休むのかァ?」
ダッチは刀に押し付けられていた杖を振り払う。そしてアイスキングに刀を振った。しかし、アイスキングはダッチの攻撃を杖で受け止める。
ダッチがネージュに叫んだ言葉を聞き、アンは笑いながら、
「ダッチさん、鼻水垂らしながらそんなこと言っても、カッコよくないですよ~!!」
「うるせー! クソガキ!!」
鼻水の先端か軽く凍らせながらも、アンに言い返すダッチ。
戦いながらも、そんな会話をする二人を見て、ネージュはふふと頬が緩んだ。
「分かりました! ダッチさん、私も手伝います!」
「ネージュさん、大丈夫ですか?」
「うん! かなり良くなったよ。それに任せっぱなしにはできない!!」
ネージュはアンの頭を撫で、
「行ってくる」
っと伝えると、アイスキングへと向かって走り出した。
走った勢いをそのままにアイスキングへと蹴りかかる。
「ネージュ……お前」
「兄上ッ!!」
アイスキングは蹴り飛ばされて、体制を崩す。そこにダッチが刀を振り下ろして、アイスキングの身体に傷ができる。
「くっ!?」
しかし、アイスキングは傷口に杖を当てて、出血を止める。さらに杖を大きく振り回して、ネージュとダッチに同時に攻撃をした。
だが、二人は後ろに一歩下がって、アイスキングの攻撃を避ける。
「良い判断だ。ネージュ!」
「ダッチさん、あなたも!」
二人は息を合わせて、アイスキングに攻撃を仕掛ける。ダッチは刀を振り、ネージュは蹴る。
最初は反撃をしていたアイスキングだが、二人の息が合わさっていくと、防御をするので精一杯になり始めた。
「な、なぜ……。ネージュ!! お前は王国の復活を願わないのか!!」
「願いません!! あなたの願う国の復活は人々の犠牲の上に成り立つもの!! 私はそんなもので国を復活させたくはない!!」
「ネージュァッ!? ぐっ!?」
ネージュに蹴り飛ばされ、アイスキングはふらつく。そんなアイスキングにダッチは刀を振り下ろす。
「アンタが何を望んで、何をしようとしているかは知らない。だが、予告状、お前が手に入れようとする世界は、俺達が盗んでやる!!」
「がぁぁぁっ!?」
刀で斬られ、アイスキングは顔から腹まで直線に傷ができる。
フラフラになりながらも、アイスキングは杖の先端に刃を、またしても変形させる。そして今度は斧に作り替える。
「俺はアイスキング、世界を凍らせて支配する王……俺は、俺はァァァァァ!!」
アイスキングは叫びながら、ネージュは切り掛かった。ネージュは避けようとするが、氷の地面で足が滑り転んでしまう。
「あっ、しまっ……」
アイスキングが斧を振り下ろし、ネージュを切り倒そうとしたが、ダッチが横から現れ、杖を握るアイスキングの両腕を刀で切り落とした。
腕と共に杖が地面に落ち、氷の地面が赤く染まる。
「……お、俺の腕……」
「アイスキング、アンタの執念は褒めてやるよ。アンタも道を正してくれる仲間がいれば、変わってたんだろうな……」
両腕を無くしたアイスキングだが、まだ諦めていなかった。武器も持たずに、大きく口を開けてダッチに噛みつこうと最後の足掻きを見せる。
ダッチは刀を構えると、向かってくるアイスキングの首に向けて横に刀を振った。
「さらば、アイスキング」
刀がアイスキングの喉を切り裂き、アイスキングの首元から真っ赤な雨が降った。
第15話
『イタッチとフクロウ』
「……ここがアイスキングの王の間か……」
階段を登り、フクロウ警部は王の間にたどり着いた。しかし、玉座はあるが、そこにアイスキングの姿はない。
他に誰かいないかと部屋を見渡してみると、赤いマントの人物が倒れていた。
「あれは……イタッチか!?」
フクロウ警部は倒れているイタッチに駆け寄る。
「……この傷は」
イタッチのお腹には大きな傷があり、刺されてできた傷のようだ。
「俺はお前を逮捕するのが夢だった……。だが、何やってんだ、イタッチ!!」
倒れたイタッチを見下ろして、フクロウ警部は叫ぶ。全身の力が抜けて、イタッチの前で座り込む。そしてポツリポツリと涙を流した。
「お前がアイスキングに負けるものか、これを計画なんだろう、なぁ、イタッチ!!」
フクロウ警部は倒れたイタッチに話しかけるが、返事はない。
「……お前がいなくなったなら、俺は警官を続ける意味はないじゃないか! 俺はずっとお前を追って、それが生き甲斐でもあった……」
フクロウ警部は頭に被っていた帽子を脱ぎ、地面に叩きつける。柔らかい帽子は、グニャリと曲がって、音も出さずに地面に落ちる。
「……ん、これは」
帽子を地面に叩きつけた時、下を見たフクロウ警部は何かが落ちていることに気がついた。それは折り紙でできた身体。イタッチの身体の一部であった。
その形はまるで穴の空いたイタッチの身体に、スッポリとハマりそうな形であり、フクロウ警部がそれを手に取ると、それは生暖かい。
「もしや、イタッチ……」
フクロウ警部は折り紙を、イタッチの身体にはめる。すると、折り紙が光を放ち、イタッチの身体と同化した。
「フクロウ……」
「イタッチ!? 意識が戻ったのか!?」
折り紙がイタッチの身体と同化したことで、イタッチの傷は治る。そして意識を取り戻したイタッチの目の前にはフクロウ警部がいた。
「まさか、お前に助けられるとはな」
「バカを言うな! 俺は、俺は助けたわけじゃ、グスン…………ないわァァァァァ!!」
「そうだとしてもだ。俺はお前が来たおかげで助かった。ありがとな、フクロウ」
寝っ転がった姿勢から立ち上がったイタッチは、フクロウ警部に手を伸ばす。
「バカやろう!! 今回だけだ、今回だけだぞ!!」
フクロウ警部はイタッチの手を握ると、イタッチに引っ張られるように立ち上がる。
そして向かい合った二人は熱い握手をした。
「ああ、今回だけだ。今回だけだが、フクロウ、協力してくれ」
「ああ、任せておけい! 俺とお前が協力すれば、神にだって勝てる!!」
フクロウ警部は腕で涙を拭いながら、イタッチと共に屋上を見上げた。
屋上ではダッチとアイスキングが激闘を繰り広げていた。アイスキングは杖の先端に氷の刃を作ることで、薙刀を作り出すと杖を振ってダッチに襲いかかる。
ダッチも刀で応戦をするが、風邪で体力が減ってきていることもあり、防御で精一杯になっていた。
「どうした、さっきまでの威勢がないな!」
「ッチ。うるぜぇよぉぉ、寒いんだよ、チクショー!」
アイスキングが能力を行使しているからだろうか。屋上の温度はさらに下がり始めていた。
ダッチとアイスキングが戦う中。アンに看病を受けていたネージュが目を覚ます。
「……アン、ちゃん…………」
「ネージュさん。やっと意識が戻りましたか!」
ネージュは身体を起こし、周囲を見渡す。そしてダッチとアイスキングが戦っている姿を見つけた。
「な、なんで、あの人が……」
本来なら風邪でアジトにいるはずの、ダッチとアン。なぜ、その二人が氷の城にいるのか、驚いているネージュ。
そんなネージュにアンは微笑みながら説明をする。
「そうですね、本当は行かせる気はなかったんですよ、でも、あの人は頑固ですから」
アンは嬉しそうにダッチの背中に目線をやる。
「ダッチさんは誰よりも仲間想いで、自分のことなんて後回し……。あなたやイタッチさんのことが心配だったんですね、……どうしても行くって言うから負けちゃいました。でも、そんなところが世界一カッコいいんです!!
アンが熱弁する中も、ダッチはアイスキングの攻撃を刀で受け止める。刀を横にして振り下ろされた杖をつけ止めたところで、ダッチはネージュが起きていることに気づいた。
「起きたか、新人!! ならさっさと手伝え!! 俺から相棒の座を借りといて、休むのかァ?」
ダッチは刀に押し付けられていた杖を振り払う。そしてアイスキングに刀を振った。しかし、アイスキングはダッチの攻撃を杖で受け止める。
ダッチがネージュに叫んだ言葉を聞き、アンは笑いながら、
「ダッチさん、鼻水垂らしながらそんなこと言っても、カッコよくないですよ~!!」
「うるせー! クソガキ!!」
鼻水の先端か軽く凍らせながらも、アンに言い返すダッチ。
戦いながらも、そんな会話をする二人を見て、ネージュはふふと頬が緩んだ。
「分かりました! ダッチさん、私も手伝います!」
「ネージュさん、大丈夫ですか?」
「うん! かなり良くなったよ。それに任せっぱなしにはできない!!」
ネージュはアンの頭を撫で、
「行ってくる」
っと伝えると、アイスキングへと向かって走り出した。
走った勢いをそのままにアイスキングへと蹴りかかる。
「ネージュ……お前」
「兄上ッ!!」
アイスキングは蹴り飛ばされて、体制を崩す。そこにダッチが刀を振り下ろして、アイスキングの身体に傷ができる。
「くっ!?」
しかし、アイスキングは傷口に杖を当てて、出血を止める。さらに杖を大きく振り回して、ネージュとダッチに同時に攻撃をした。
だが、二人は後ろに一歩下がって、アイスキングの攻撃を避ける。
「良い判断だ。ネージュ!」
「ダッチさん、あなたも!」
二人は息を合わせて、アイスキングに攻撃を仕掛ける。ダッチは刀を振り、ネージュは蹴る。
最初は反撃をしていたアイスキングだが、二人の息が合わさっていくと、防御をするので精一杯になり始めた。
「な、なぜ……。ネージュ!! お前は王国の復活を願わないのか!!」
「願いません!! あなたの願う国の復活は人々の犠牲の上に成り立つもの!! 私はそんなもので国を復活させたくはない!!」
「ネージュァッ!? ぐっ!?」
ネージュに蹴り飛ばされ、アイスキングはふらつく。そんなアイスキングにダッチは刀を振り下ろす。
「アンタが何を望んで、何をしようとしているかは知らない。だが、予告状、お前が手に入れようとする世界は、俺達が盗んでやる!!」
「がぁぁぁっ!?」
刀で斬られ、アイスキングは顔から腹まで直線に傷ができる。
フラフラになりながらも、アイスキングは杖の先端に刃を、またしても変形させる。そして今度は斧に作り替える。
「俺はアイスキング、世界を凍らせて支配する王……俺は、俺はァァァァァ!!」
アイスキングは叫びながら、ネージュは切り掛かった。ネージュは避けようとするが、氷の地面で足が滑り転んでしまう。
「あっ、しまっ……」
アイスキングが斧を振り下ろし、ネージュを切り倒そうとしたが、ダッチが横から現れ、杖を握るアイスキングの両腕を刀で切り落とした。
腕と共に杖が地面に落ち、氷の地面が赤く染まる。
「……お、俺の腕……」
「アイスキング、アンタの執念は褒めてやるよ。アンタも道を正してくれる仲間がいれば、変わってたんだろうな……」
両腕を無くしたアイスキングだが、まだ諦めていなかった。武器も持たずに、大きく口を開けてダッチに噛みつこうと最後の足掻きを見せる。
ダッチは刀を構えると、向かってくるアイスキングの首に向けて横に刀を振った。
「さらば、アイスキング」
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