参上! 怪盗イタッチ

ピラフドリア

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第12話 『フクロウvsエンペラー』

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参上! 怪盗イタッチ



第12話
『フクロウvsエンペラー』



 フクロウ警部とエンペラーは向かい合う。フクロウ警部は拳銃を構え、いつでも発砲できる姿勢で、エンペラーは武器を持たず、全身の力を抜いた体制だ。



「フクロウ警部、君の力を見せてもらおうか!!」



 エンペラーはそう言うと、腰を曲げて姿勢を低くする。フクロウ警部はこの状態からどう動かれてもいいように、すぐに撃てるようにする。



 どう動いてくるか……。フクロウ警部が警戒する中、エンペラーが一歩踏み込む。



「──っ!」



 エンペラーの移動に合わせ、フクロウ警部は一発。威嚇で地面に向けて発砲した。
 弾丸が氷の床に沈み、氷の地面にヒビが入る。



 エンペラーは一歩進んだが、それ以上は踏み込むことはせず、その場で立ち止まると、



「フクロウ警部、どうした? 俺を撃たないのか?」



「我々の仕事は市民を守ること。人を傷つけることではない……」



 フクロウ警部は発砲した拳銃を離して、地面に捨てた。
 カランと音を鳴らして落ちた拳銃を見て、ネコ刑事は声を上げる。



「警部!? 何してるんですか!?」



 ネコ刑事が動揺する中、フクロウ警部は白い羽を丸めて拳を握るようにした。



「エンペラー君。今のは警告だ。君がそれ以上近づいてくるのならば、君を力尽くで逮捕する」



「警告? ふふふ、これが現代の警察か……。ぬるいぞ!! 俺達は世界を氷漬けにしようとしているんだ、手加減なんてされてたまるか!!」



 フクロウ警部の行動に激昂したエンペラーは、顔を真っ赤にしながら力強く踏み込んだ。
 そしてフクロウ警部に向けて、全力で走り出す。



「エンペラー君、そうか……。ならば、加減はしないッ」



 向かってくるエンペラーに、フクロウ警部は低い姿勢になって構える。左羽を前に出し、右羽はその後ろに待機させる。
 近づいたエンペラーは拳を大きく振り上げる。



 ダッシュのスピードもプラスされて、エンペラーの振り下ろす拳は物凄い加速を得る。これだけの加速があるのならば、木材の板などは簡単にへし折れるだろう。
 だが、フクロウ警部はその拳を完全にとらえていた。



 前に出していた羽でエンペラーの攻撃を、軽く払う。そしてその全身を前に出し、エンペラーの懐へと入り込んだフクロウ警部は、エンペラーの着ている服の襟を掴む。
 そしてエンペラーの身体を持ち上げて、背負い投げをした。



「なっ!? ──っ!?」



 エンペラーは訳も分からず、地面に叩きつけられる。フクロウ警部の腕力にプラスされて、エンペラーの加速していたスピードが威力に反映された。
 エンペラーは背中を強打して、氷の地面を滑る。そして壁に激突した。



「痛……なんだ、今の技は……。現代の武術か」



 フクロウ警部に投げ飛ばされ、動揺している様子のエンペラー。しかし、ダメージを受けながらも、ふらつく足を叩いて気合を入れる。
 そして立ち上がったエンペラーは、フクロウ警部に向かい合った。



「まさか、この俺が投げ飛ばされるとはな。だが、フクロウ警部、この俺がこの程度でやられると思うなよ……」



 エンペラーは全身に力を入れる。



「な、何をする気なんだ!?」



 ネコ刑事が見守る中。エンペラーは両羽を上に掲げて広げると、



「ストップタイム!!」



 エンペラーがそう叫ぶと、エンペラーの姿が消えた。そして次の瞬間。



「っ!?」



 フクロウ警部が殴られていた。エンペラーは消えたのではない、一瞬でフクロウ警部の前に移動して、フクロウ警部を殴っていたのだ。



 殴られたフクロウ警部は後ろによろめく。そして頭に被っていた帽子がゆらゆらと落下する。



「何が起きたんだ!? エンペラーが突然移動して、フクロウ警部の前に……っ!?」



 ネコ刑事が驚いていると、エンペラーは自慢げに語り出す。



「どうかな? 俺のストップタイムは? 一時的だが、俺は時を操ることができる。俺の身体から冷気を放出し、その冷気で時間を止める……。貴様らには絶対にできない技だ」




「時間を……止めた!?」



 ネコ刑事は説明を聞いて、両手をあげて驚く。しかし、フクロウ警部はやれやれと落ちた帽子を拾い上げる。



「時間を止めるか……。そのくらいどうってことない」



「なんだと……」



 帽子を拾ったフクロウ警部は帽子を深く被る。そしてエンペラーを睨みつけた。



「俺はイタッチと戦ってきたんだ。この程度のマジックなら、イタッチに何度も驚かされた!!」



「……泥棒ごときと一緒にしやがって……。絶対に許さん……」



 エンペラーはまたしても全身に力を入れる。また時間を止めるつもりなのだろう。



「ストップタっ……ぶぁあはぁぁっ!?」



 エンペラーは時間を止めようとしたが、エンペラーが止める前にフクロウ警部はエンペラーの原に正拳突きを放つ。



「なっ!?」



「どうやらその技には溜めが必要のようだな」



 フクロウ警部に殴られたことで、集中力が切れて、ストップタイムが発動できない。
 そんなエンペラーにフクロウ警部はさらに正拳突きを放った。何度も何度も正拳突きを喰らわせる。



「ぶはぁっ!? がほぉっ!? ぐぁっ!?」



 エンペラーはフクロウ警部の正拳突きで、腹を押さえながら地面に座り込む。そんなエンペラーをフクロウ警部は見下ろした。



「さて、そろそろ大人しく捕まる気になったかな? エンペラー君」



「…………はぁ、はぁ、この俺が…………」



 エンペラーは座り込みながら、全身に力を込める。



「やられるものかァァァァァ!!!!」



 エンペラーは時間を止めようとする。しかし、エンペラーが時間を止める前に、フクロウ警部は座り込んでいるエンペラーのことを掴む。
 そして持ち上げると、地面に叩きつけるように投げ飛ばした。



「がはぁぁぁっ!?」



 エンペラーは地面に背中を強打して、白目を向いて気絶する。気を失ったエンペラーにフクロウ警部は手錠を取り出して、拘束した。



「15時46分。確保」



 フクロウ警部はエンペラーを捕まえた。エンペラーを拘束して、フクロウ警部はネコ刑事にエンペラーを預ける。



「ネコ刑事、君は彼を連行してくれ」



「フクロウ警部はどうするんですか?」



「俺はもう一度上に登る。イタッチとアイスキングを逮捕してくる」



「……わかりました。気をつけて行ってくださいね、警部!」



「ああ、君もな」



 フクロウ警部はネコ刑事にエンペラーを任せて、エンペラーの降りてきた階段を駆け上って行った。








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