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第2話 『お宝を手に入れろ!』
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参上! 怪盗イタッチ
第2話
『お宝を手に入れろ!』
喫茶店の営業時間が終わり、空が暗くなり始めた頃。イタッチとダッチ、アンの三人は二階にあるアジトに集まっていた。
喫茶店の二階はイタッチの自宅であり、アジトとしても使っている。そこにアンは住み込みで喫茶店を手伝いながら、部屋を貸してもらっている。
「それでどんなお宝を見つけたんだ?」
喫茶店の正装から、怪盗衣装に着替えたイタッチが、ちゃぶ台の前に座るダッチに尋ねる。
ダッチはコートの内ポケットから、一枚の紙を取り出す。そしてそれをちゃぶ台の上に置いた。
「これは……客船の招待状か?」
「四神に届けられた招待状だ」
四神とはダッチがボスを務める中華マフィアの名前だ。アジア最大の組織であり、後継者争いで勢力は下がったが、現在はダッチがあとを継いで組織を運営している。
そんな組織に届けられた招待状であるが、ダッチが怪盗の仲間であることは知られている。つまりは──。
「内容はお前に向けてだ」
「俺に……か……」
イタッチが紙を拾い上げる。そこには桜の木とその下でくつろぐ女性の絵が描かれた絵画が写真に写っている。
「コイツは……」
「知ってるだろ。この絵画はブロッサム。世には出回っていない幻の絵画だ。持ち主はスペインの資産家、ミラネス公爵。招待状も彼からだ」
「ミラネス公爵か……」
「招待状の内容は地中海で行われる豪華客船によるツアー。ブロッサムはそこで展示される、そしてそこに招待されたということは……」
「ミラネス公爵からの挑戦状ってわけか」
イタッチは招待状をテーブルに叩きつける。
「良いぜ。その挑戦、乗ってやろう。ダッチ、それで良いか?」
「ああ、問題ない」
ダッチの返事を聞いた後、次はアンに目線を向ける。
「アンはどうだ?」
「オーケーですよ!! アシストは任せてください!!」
「よし、なら、ブロッサム、頂いてやろうじゃないか!!」
豪華客船フィレンツェは2000人以上の乗客を乗せて、出港した。
フィレンツェにはバーやレストランだけでなく、ショッピングやゴルフ場、温泉など数多くの施設が用意されており、乗客は施設を自由に使うことができる。
乗客は資産家や政治家などで、すべてミラネス公爵が招待した著名人ばかりだ。
だが、二人だけ、招待を受けていない人物が紛れ込んでいた。
「コラァァァ!! 俺を出さないか!!」
「無理ですよ、警部……」
客船の後方にあるフロアには、警備のための施設があり、そこには牢獄が設置されていた。その牢獄に警察服を着たフクロウとネコが閉じ込められていた。
「イタッチから予告が届いたという情報は入ってる。俺はイタッチを捕まえに来たんだァァァ!!!!」
牢屋の中で叫び続けるフクロウ警部。そんなフクロウ警部達の入れられた牢屋の前に、高そうなスーツを着たフェネックが現れる。
フェネックの指には宝石のついた指輪がいくつも付けられており、腕を組んでフクロウ警部達のことを見下ろす。
「君達のことは知っているよ。フクロウ君」
「なら、俺を出さないか!! ミラネス公爵!!」
「やれやれ、これだから愚民は困る。言葉を慎みたまえ、ワタシの一言で君達を海に捨てることもできるのだよ」
「グヌヌ……」
ミラネス公爵に睨まれ、フクロウ警部は叫ぶのをやめて、地べたに座り込む。そんなフクロウ警部を見て、ミラネス公爵はニヤリと笑う。
「しかし、君達は勤勉だな。まさか、密航までして、イタッチを捕まえようとするとは……」
「ミラネス殿が協力をしてくれないからですよ」
「ふむ。ワタシの警備は完璧だ。だからこそ、君達の協力は断った。だが、気に入ったよ、フクロウ君……」
ミラネス公爵はパチンと指を鳴らす。すると、執事服を着たヤギが素早く登場して、布に包まれた鍵をミラネス公爵に手渡す。
「せっかくの機会だ。フクロウ君、君の力をワタシに貸してくれるかい」
「当然ですよ。ミラネス殿、必ずやイタッチを捕まえて見せます!!」
「ならば、協力してもらおう」
ミラネス公爵は牢屋の鍵を開けて、フクロウ警部とネコ刑事を解放する。
牢屋からやっと解放された二人は、身体を伸ばした。
「それでは早速、我々はイタッチを……」
フクロウ警部はイタッチの捜索に行こうとするが、ヤギが前方に立ち塞がる。ヤギは頭をぺこりと下げて、ミラネス公爵に目線を向けるようにフクロウ警部達に告げた。
「ゴホン……。フクロウ君、ここから先についてだが、ワタシの指示に従ってもらうよ。この船はワタシの物だ、それに君達は本来は招かれざる者、今回はワタシの下についてもらう」
フクロウ警部とネコ刑事は顔を合わせる。そして少し考えた後、
「分かりました。ミラネス殿、今回はあなたの指示に従いましょう」
「では、フクロウ君、ついて来てくれ」
フクロウ警部達はミラネス公爵に案内され、船内を移動する。辿り着いたのは、警備室の奥にある大きな部屋。
「お先にどうぞ」
ミラネス公爵はフクロウ警部とネコ刑事を先に入れると、部屋の扉を閉じる。
「え?」
さらに扉が閉じると同時に鍵がかかった。
「ミラネス公爵!? どういうつもりですか!?」
フクロウ警部達は扉を叩き、向こう側にいるミラネス公爵を呼ぶが、扉を開けることはしない。
扉につけられた丸いガラス越しに、ミラネス公爵はニヤリと笑った。
「ご協力感謝しますよ。フクロウ君、では、どうか、最終チェックに付き合ってください」
背後でガシャリと何かが落下した音が聞こえる。
「ちょ、ミラネス殿!? これは……。うぁぁぁあっ!?」
客船にある中央のパーティ会場。そこには数百人もの乗客が集まり、食事や会話を楽しんでいる。
「イタチさん!!」
普段のフード付きのパーカーとは違い、高そうなドレスを着たアンがイタチの元へ駆け寄る。
「どうした、アン」
「これすごく美味しいですよ!!」
アンは皿に美味しそうな焼き魚を乗せている。
「そうだな、じゃあ、俺も貰ってこようかな」
イタチは席を立ち、料理を取りに行く。しばらくして料理を乗せて、イタチが戻って来た。
イタチはテーブルに料理を置いて、アンの向かいに座る。
「それでイタチさん、こんな呑気にしてて良いんですか? お宝はこの船にあるんですよね」
「あるとも。しかし、せっかく招待してくれたんだ、向こうも準備してるだろうし、今回は正面から勝負してやろうと思ってな」
「正面から勝負……ですか」
食事を終え、イタチは周りの人物を見渡す。
「有名人ばかりだな」
「皆さん、ミラネス公爵に招待されてるんですよね」
「ああ、交流を深めるのが目的だろうな。だが、それだけじゃない」
「他にもあるんですか?」
「俺がやられるところを見に来てるんだ」
「イタチさんを!?」
「単純に遊びとして面白半分が多いだろうが、中には俺を嫌ってる連中もいるだろうしな」
イタチは口元を拭くと、立ち上がる。
「さてと、そろそろダッチと合流しようか」
二人は会場から抜け出し、個室へと戻る。部屋は三人部屋で、家族用という感じだ。部屋に戻ると、部屋の中央でダッチが床に座り、刀の手入れをしていた。
「よぉ、イタッチ、アン、戻って来たか」
「ダッチ、もう戻ってたか」
「軽く挨拶をして後は部下に任せて抜け出して来た」
イタッチ達はダッチの仲間として潜入した。しかし、四神として呼ばれているため、ダッチもそれに応えるべく、部下を連れて知り合いに挨拶をしていた。
「部下と傘下の連中には、騒ぎが起きる前に船から脱出するように言っておいた。あいつらの心配はいらないだろう」
「そうか、それじゃあそろそろ始めようか」
イタチとアンは服を着替えていつもの服装になる。
イタッチは赤いマントを羽織りながら、ニヤリと笑う。
「ミラネス公爵、勝負だ」
第2話
『お宝を手に入れろ!』
喫茶店の営業時間が終わり、空が暗くなり始めた頃。イタッチとダッチ、アンの三人は二階にあるアジトに集まっていた。
喫茶店の二階はイタッチの自宅であり、アジトとしても使っている。そこにアンは住み込みで喫茶店を手伝いながら、部屋を貸してもらっている。
「それでどんなお宝を見つけたんだ?」
喫茶店の正装から、怪盗衣装に着替えたイタッチが、ちゃぶ台の前に座るダッチに尋ねる。
ダッチはコートの内ポケットから、一枚の紙を取り出す。そしてそれをちゃぶ台の上に置いた。
「これは……客船の招待状か?」
「四神に届けられた招待状だ」
四神とはダッチがボスを務める中華マフィアの名前だ。アジア最大の組織であり、後継者争いで勢力は下がったが、現在はダッチがあとを継いで組織を運営している。
そんな組織に届けられた招待状であるが、ダッチが怪盗の仲間であることは知られている。つまりは──。
「内容はお前に向けてだ」
「俺に……か……」
イタッチが紙を拾い上げる。そこには桜の木とその下でくつろぐ女性の絵が描かれた絵画が写真に写っている。
「コイツは……」
「知ってるだろ。この絵画はブロッサム。世には出回っていない幻の絵画だ。持ち主はスペインの資産家、ミラネス公爵。招待状も彼からだ」
「ミラネス公爵か……」
「招待状の内容は地中海で行われる豪華客船によるツアー。ブロッサムはそこで展示される、そしてそこに招待されたということは……」
「ミラネス公爵からの挑戦状ってわけか」
イタッチは招待状をテーブルに叩きつける。
「良いぜ。その挑戦、乗ってやろう。ダッチ、それで良いか?」
「ああ、問題ない」
ダッチの返事を聞いた後、次はアンに目線を向ける。
「アンはどうだ?」
「オーケーですよ!! アシストは任せてください!!」
「よし、なら、ブロッサム、頂いてやろうじゃないか!!」
豪華客船フィレンツェは2000人以上の乗客を乗せて、出港した。
フィレンツェにはバーやレストランだけでなく、ショッピングやゴルフ場、温泉など数多くの施設が用意されており、乗客は施設を自由に使うことができる。
乗客は資産家や政治家などで、すべてミラネス公爵が招待した著名人ばかりだ。
だが、二人だけ、招待を受けていない人物が紛れ込んでいた。
「コラァァァ!! 俺を出さないか!!」
「無理ですよ、警部……」
客船の後方にあるフロアには、警備のための施設があり、そこには牢獄が設置されていた。その牢獄に警察服を着たフクロウとネコが閉じ込められていた。
「イタッチから予告が届いたという情報は入ってる。俺はイタッチを捕まえに来たんだァァァ!!!!」
牢屋の中で叫び続けるフクロウ警部。そんなフクロウ警部達の入れられた牢屋の前に、高そうなスーツを着たフェネックが現れる。
フェネックの指には宝石のついた指輪がいくつも付けられており、腕を組んでフクロウ警部達のことを見下ろす。
「君達のことは知っているよ。フクロウ君」
「なら、俺を出さないか!! ミラネス公爵!!」
「やれやれ、これだから愚民は困る。言葉を慎みたまえ、ワタシの一言で君達を海に捨てることもできるのだよ」
「グヌヌ……」
ミラネス公爵に睨まれ、フクロウ警部は叫ぶのをやめて、地べたに座り込む。そんなフクロウ警部を見て、ミラネス公爵はニヤリと笑う。
「しかし、君達は勤勉だな。まさか、密航までして、イタッチを捕まえようとするとは……」
「ミラネス殿が協力をしてくれないからですよ」
「ふむ。ワタシの警備は完璧だ。だからこそ、君達の協力は断った。だが、気に入ったよ、フクロウ君……」
ミラネス公爵はパチンと指を鳴らす。すると、執事服を着たヤギが素早く登場して、布に包まれた鍵をミラネス公爵に手渡す。
「せっかくの機会だ。フクロウ君、君の力をワタシに貸してくれるかい」
「当然ですよ。ミラネス殿、必ずやイタッチを捕まえて見せます!!」
「ならば、協力してもらおう」
ミラネス公爵は牢屋の鍵を開けて、フクロウ警部とネコ刑事を解放する。
牢屋からやっと解放された二人は、身体を伸ばした。
「それでは早速、我々はイタッチを……」
フクロウ警部はイタッチの捜索に行こうとするが、ヤギが前方に立ち塞がる。ヤギは頭をぺこりと下げて、ミラネス公爵に目線を向けるようにフクロウ警部達に告げた。
「ゴホン……。フクロウ君、ここから先についてだが、ワタシの指示に従ってもらうよ。この船はワタシの物だ、それに君達は本来は招かれざる者、今回はワタシの下についてもらう」
フクロウ警部とネコ刑事は顔を合わせる。そして少し考えた後、
「分かりました。ミラネス殿、今回はあなたの指示に従いましょう」
「では、フクロウ君、ついて来てくれ」
フクロウ警部達はミラネス公爵に案内され、船内を移動する。辿り着いたのは、警備室の奥にある大きな部屋。
「お先にどうぞ」
ミラネス公爵はフクロウ警部とネコ刑事を先に入れると、部屋の扉を閉じる。
「え?」
さらに扉が閉じると同時に鍵がかかった。
「ミラネス公爵!? どういうつもりですか!?」
フクロウ警部達は扉を叩き、向こう側にいるミラネス公爵を呼ぶが、扉を開けることはしない。
扉につけられた丸いガラス越しに、ミラネス公爵はニヤリと笑った。
「ご協力感謝しますよ。フクロウ君、では、どうか、最終チェックに付き合ってください」
背後でガシャリと何かが落下した音が聞こえる。
「ちょ、ミラネス殿!? これは……。うぁぁぁあっ!?」
客船にある中央のパーティ会場。そこには数百人もの乗客が集まり、食事や会話を楽しんでいる。
「イタチさん!!」
普段のフード付きのパーカーとは違い、高そうなドレスを着たアンがイタチの元へ駆け寄る。
「どうした、アン」
「これすごく美味しいですよ!!」
アンは皿に美味しそうな焼き魚を乗せている。
「そうだな、じゃあ、俺も貰ってこようかな」
イタチは席を立ち、料理を取りに行く。しばらくして料理を乗せて、イタチが戻って来た。
イタチはテーブルに料理を置いて、アンの向かいに座る。
「それでイタチさん、こんな呑気にしてて良いんですか? お宝はこの船にあるんですよね」
「あるとも。しかし、せっかく招待してくれたんだ、向こうも準備してるだろうし、今回は正面から勝負してやろうと思ってな」
「正面から勝負……ですか」
食事を終え、イタチは周りの人物を見渡す。
「有名人ばかりだな」
「皆さん、ミラネス公爵に招待されてるんですよね」
「ああ、交流を深めるのが目的だろうな。だが、それだけじゃない」
「他にもあるんですか?」
「俺がやられるところを見に来てるんだ」
「イタチさんを!?」
「単純に遊びとして面白半分が多いだろうが、中には俺を嫌ってる連中もいるだろうしな」
イタチは口元を拭くと、立ち上がる。
「さてと、そろそろダッチと合流しようか」
二人は会場から抜け出し、個室へと戻る。部屋は三人部屋で、家族用という感じだ。部屋に戻ると、部屋の中央でダッチが床に座り、刀の手入れをしていた。
「よぉ、イタッチ、アン、戻って来たか」
「ダッチ、もう戻ってたか」
「軽く挨拶をして後は部下に任せて抜け出して来た」
イタッチ達はダッチの仲間として潜入した。しかし、四神として呼ばれているため、ダッチもそれに応えるべく、部下を連れて知り合いに挨拶をしていた。
「部下と傘下の連中には、騒ぎが起きる前に船から脱出するように言っておいた。あいつらの心配はいらないだろう」
「そうか、それじゃあそろそろ始めようか」
イタチとアンは服を着替えていつもの服装になる。
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