上 下
128 / 208

第128話 『空の上の襲撃者』

しおりを挟む
怪盗イタッチ大作戦!!



著者:ピラフドリア



第128話
『空の上の襲撃者』



 窓を覗くと夜空に浮かぶ月が映る。地上で見る景色と違い、普段よりも月が大きく見える気がする。



「絶景の景色ですね。警部」



「そうだな。これが仕事じゃなければ、月見でもしたいところだ」



 フクロウとネコは窓を見終わると、飛行船にいる警備員の配置を確認する。



「しかし、イタッチも今回は派手に予告状を出しましたね」



「イタッチも面倒なことをやる。飛行船に乗る前にテレビの取材に捕まっちまった」



「警部、すごい勢いで囲まれてましたよね」



 今回のイタッチからの予告状は、飛行船で輸送される『クロックロック』を盗むというものだった。
 しかし、今回の予告はいつもよりも大々的に宣伝しており、世界中のメディアにばら撒かれたのだ。



「捜査の妨害が目的でしょうか」



「どうだろうな。俺には別の目的があるように思える……」



「別の目的?」



「まるで、何かを誘き出しているような……」



 フクロウ警部達が飛行船の廊下を歩いていると、二人の前方から一人の警備員が走ってくる。



「はぁはぁ、警部!! 大変です!!」



「何があった?」



「ロビーにイタッチが現れました!!」



「なんだと!?」



 警備員の報告を受けて、フクロウ警部とネコ刑事は走ってロビーに向かう。その二人を見送り残った警備員は、廊下を進み飛行船にある倉庫にたどり着いた。
 警備員は身体を覆っている折り紙を剥がして真の姿を現す。



 現れたのは赤いマントをイタチ。イタッチはアンの作ったセキュリティーカードで扉を開けて、倉庫の中へと入った。
 中にある品々を確認しながら、目的のものを探す。



「あった、これだな」



 そしてついに発見した。



「これがクロックロックか」



 美術品の中に一際輝く宝石を発見する。手に入れたイタッチは、手のひらサイズの箱にしまい、マントの中に隠した。
 イタッチが倉庫から脱出しようと振り向いたと同時に、



「よくも騙したな!! イタッチ!!」



「おっと、戻ってくるのが早いな」



 倉庫の入り口を塞ぐようにフクロウ警部が現れた。後ろには大量の警備員を連れて、今にも飛びかかってきそうな状況だ。



「さぁ、大人しく観念するんだな」



 フクロウ警部は手錠を持ち、イタッチにじわじわと近づいていく。
 イタッチは倉庫を見渡すが、そこは出入り口の一つしかない密室。



「さぁ、出口はないぞ……諦めるんだな」



 イタッチの目の前まで来たフクロウ警部は、手錠をイタッチにつけようとする。しかし、その時だった。



「何者だお前達…………ぐぁぁっ!?」



 船内から警備員の悲鳴が聞こえ、それと同時に銃声が鳴り響く。



「何が起きて…………あっ!?」



 その悲鳴に反応し動揺していたフクロウ警部。イタッチのその隙にフクロウ警部の足に足を引っ掛けて転ばせ、そのまま倉庫の出口に向かう。



「取り押さえろ!!」



 フクロウ警部は外にいる警備員に命令を出す。警備員は一斉に飛びかかり、イタッチを捕らえようとするが、イタッチは紙のようにスラリスラリと警備員の隙間を通り抜ける。



「追うぞ!!」



 立ち上がったフクロウ警部は、警備員を連れてイタッチを追う。イタッチの向かう先、そこは……。



「警部、イタッチが向かってる方向は……」



「ああ、騒ぎの方だな」



 今だに悲鳴と銃声が聞こえる方向へイタッチは逃走していく。この騒ぎとイタッチは関係があるのか。



 イタッチ達は飛行船を移動し、騒ぎの中心に合流した。そこには黒い衣装に身を包んだ動物達がおり、彼らは警官を襲っていた。



「警部、大変です!! 彼らは……」



 襲撃者と戦闘をしていたネコ刑事が合流して、フクロウ警部の元に駆け寄る。



「あの模様……まさか」



 合流したフクロウ警部は襲撃者の服につけられた模様を見て、彼らの正体にすぐさま気づいた。



「VIPERか!! なぜ奴らがここに!?」



 襲撃者の服には蛇の模様が描かれており、彼らは警備員と交戦していたが、イタッチが現れると、



「同胞よ、鎮まれ!!」



 襲撃者中からオラウータンとハリネズミが出てきて、襲撃者は一度警備員を襲うのをやめる。



「獲物が現れた……。エリソンやるか?」



 オラウータンはハリネズミの顔を見ると、確認を取る。ハリネズミは頷くと、



「ええ任せて。私が取り返してみせる」



 ハリネズミはそう言ってナイフを持つと、前に出た。
 襲撃者の中で唯一の女性の彼女はナイフを手にイタッチに近づく。



「貴様がイタッチだな。クロックロックは返してもらうぞ」



「お前達のものじゃないだろ?」



「いいや、元々我々のものだ!!」



 ハリネズミがイタッチにナイフを持って襲いかかる。イタッチはハリネズミの攻撃を左右に避けて、簡単に躱した。



「はやい……」



 ハリネズミは何度もナイフで突き刺そうとするが、イタッチには掠ることもなく。全く当たる気配がない。



「エリソン、時間だ!!」



 苦戦していたハリネズミだったが、時計を見ていたオラウータンがハリネズミに向けて合図を出す。すると、飛行船の後方で爆発が起きて、飛行船は大きく揺れた。



 襲撃者と戦闘していた警備員は揺れに倒れて、陣形を崩す。その崩れた場所を狙い、オラウータンが警備員を倒して外につながる扉までの経路を作った。



「エリソン急げ!!」



「ああ!!」




 ハリネズミはナイフで攻撃すると見せかけて、蹴りでイタッチの体制を崩させる。爆発で足元の不安定だったイタッチは、簡単に体勢を崩して、倒れそうになるイタッチからハリネズミはお宝を盗み出した。



「返してもらったぞ、父の形見を!!」



 ハリネズミはクロックロックを手に、扉の前で待つオラウータン達と合流する。



「逃すな! 追え!!」



 フクロウ警部が襲撃者を捕まえようと走り出すが、オラウータンが扉を開けるとすでに飛行船の側をヘリコプターが並走していた。



 襲撃者達はヘリコプターに乗り込んで、すぐさま飛行船から離れる。襲撃者を追おうとしたフクロウ警部は、飛行船から落ちそうになるが、ネコ刑事が手を出して落ちそうになったフクロウ警部を助けた。



「無茶しないでください、警部!!」



「助かった…………そうだ、イタッチは!! せめて奴を捕まえて奴らの正体を!!」



 フクロウ警部はハリネズミに転ばされていたイタッチを探すが、すでにその場から姿を消している。



「に、逃げられたァァァァァァァァァァ!!!!」



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-

半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

本当にあった怖い話

邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。 完結としますが、体験談が追加され次第更新します。 LINEオプチャにて、体験談募集中✨ あなたの体験談、投稿してみませんか? 投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。 【邪神白猫】で検索してみてね🐱 ↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください) https://youtube.com/@yuachanRio ※登場する施設名や人物名などは全て架空です。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

パラダイス・ロスト

真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。 ※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

処理中です...