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第128話 『空の上の襲撃者』
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怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第128話
『空の上の襲撃者』
窓を覗くと夜空に浮かぶ月が映る。地上で見る景色と違い、普段よりも月が大きく見える気がする。
「絶景の景色ですね。警部」
「そうだな。これが仕事じゃなければ、月見でもしたいところだ」
フクロウとネコは窓を見終わると、飛行船にいる警備員の配置を確認する。
「しかし、イタッチも今回は派手に予告状を出しましたね」
「イタッチも面倒なことをやる。飛行船に乗る前にテレビの取材に捕まっちまった」
「警部、すごい勢いで囲まれてましたよね」
今回のイタッチからの予告状は、飛行船で輸送される『クロックロック』を盗むというものだった。
しかし、今回の予告はいつもよりも大々的に宣伝しており、世界中のメディアにばら撒かれたのだ。
「捜査の妨害が目的でしょうか」
「どうだろうな。俺には別の目的があるように思える……」
「別の目的?」
「まるで、何かを誘き出しているような……」
フクロウ警部達が飛行船の廊下を歩いていると、二人の前方から一人の警備員が走ってくる。
「はぁはぁ、警部!! 大変です!!」
「何があった?」
「ロビーにイタッチが現れました!!」
「なんだと!?」
警備員の報告を受けて、フクロウ警部とネコ刑事は走ってロビーに向かう。その二人を見送り残った警備員は、廊下を進み飛行船にある倉庫にたどり着いた。
警備員は身体を覆っている折り紙を剥がして真の姿を現す。
現れたのは赤いマントをイタチ。イタッチはアンの作ったセキュリティーカードで扉を開けて、倉庫の中へと入った。
中にある品々を確認しながら、目的のものを探す。
「あった、これだな」
そしてついに発見した。
「これがクロックロックか」
美術品の中に一際輝く宝石を発見する。手に入れたイタッチは、手のひらサイズの箱にしまい、マントの中に隠した。
イタッチが倉庫から脱出しようと振り向いたと同時に、
「よくも騙したな!! イタッチ!!」
「おっと、戻ってくるのが早いな」
倉庫の入り口を塞ぐようにフクロウ警部が現れた。後ろには大量の警備員を連れて、今にも飛びかかってきそうな状況だ。
「さぁ、大人しく観念するんだな」
フクロウ警部は手錠を持ち、イタッチにじわじわと近づいていく。
イタッチは倉庫を見渡すが、そこは出入り口の一つしかない密室。
「さぁ、出口はないぞ……諦めるんだな」
イタッチの目の前まで来たフクロウ警部は、手錠をイタッチにつけようとする。しかし、その時だった。
「何者だお前達…………ぐぁぁっ!?」
船内から警備員の悲鳴が聞こえ、それと同時に銃声が鳴り響く。
「何が起きて…………あっ!?」
その悲鳴に反応し動揺していたフクロウ警部。イタッチのその隙にフクロウ警部の足に足を引っ掛けて転ばせ、そのまま倉庫の出口に向かう。
「取り押さえろ!!」
フクロウ警部は外にいる警備員に命令を出す。警備員は一斉に飛びかかり、イタッチを捕らえようとするが、イタッチは紙のようにスラリスラリと警備員の隙間を通り抜ける。
「追うぞ!!」
立ち上がったフクロウ警部は、警備員を連れてイタッチを追う。イタッチの向かう先、そこは……。
「警部、イタッチが向かってる方向は……」
「ああ、騒ぎの方だな」
今だに悲鳴と銃声が聞こえる方向へイタッチは逃走していく。この騒ぎとイタッチは関係があるのか。
イタッチ達は飛行船を移動し、騒ぎの中心に合流した。そこには黒い衣装に身を包んだ動物達がおり、彼らは警官を襲っていた。
「警部、大変です!! 彼らは……」
襲撃者と戦闘をしていたネコ刑事が合流して、フクロウ警部の元に駆け寄る。
「あの模様……まさか」
合流したフクロウ警部は襲撃者の服につけられた模様を見て、彼らの正体にすぐさま気づいた。
「VIPERか!! なぜ奴らがここに!?」
襲撃者の服には蛇の模様が描かれており、彼らは警備員と交戦していたが、イタッチが現れると、
「同胞よ、鎮まれ!!」
襲撃者中からオラウータンとハリネズミが出てきて、襲撃者は一度警備員を襲うのをやめる。
「獲物が現れた……。エリソンやるか?」
オラウータンはハリネズミの顔を見ると、確認を取る。ハリネズミは頷くと、
「ええ任せて。私が取り返してみせる」
ハリネズミはそう言ってナイフを持つと、前に出た。
襲撃者の中で唯一の女性の彼女はナイフを手にイタッチに近づく。
「貴様がイタッチだな。クロックロックは返してもらうぞ」
「お前達のものじゃないだろ?」
「いいや、元々我々のものだ!!」
ハリネズミがイタッチにナイフを持って襲いかかる。イタッチはハリネズミの攻撃を左右に避けて、簡単に躱した。
「はやい……」
ハリネズミは何度もナイフで突き刺そうとするが、イタッチには掠ることもなく。全く当たる気配がない。
「エリソン、時間だ!!」
苦戦していたハリネズミだったが、時計を見ていたオラウータンがハリネズミに向けて合図を出す。すると、飛行船の後方で爆発が起きて、飛行船は大きく揺れた。
襲撃者と戦闘していた警備員は揺れに倒れて、陣形を崩す。その崩れた場所を狙い、オラウータンが警備員を倒して外につながる扉までの経路を作った。
「エリソン急げ!!」
「ああ!!」
ハリネズミはナイフで攻撃すると見せかけて、蹴りでイタッチの体制を崩させる。爆発で足元の不安定だったイタッチは、簡単に体勢を崩して、倒れそうになるイタッチからハリネズミはお宝を盗み出した。
「返してもらったぞ、父の形見を!!」
ハリネズミはクロックロックを手に、扉の前で待つオラウータン達と合流する。
「逃すな! 追え!!」
フクロウ警部が襲撃者を捕まえようと走り出すが、オラウータンが扉を開けるとすでに飛行船の側をヘリコプターが並走していた。
襲撃者達はヘリコプターに乗り込んで、すぐさま飛行船から離れる。襲撃者を追おうとしたフクロウ警部は、飛行船から落ちそうになるが、ネコ刑事が手を出して落ちそうになったフクロウ警部を助けた。
「無茶しないでください、警部!!」
「助かった…………そうだ、イタッチは!! せめて奴を捕まえて奴らの正体を!!」
フクロウ警部はハリネズミに転ばされていたイタッチを探すが、すでにその場から姿を消している。
「に、逃げられたァァァァァァァァァァ!!!!」
著者:ピラフドリア
第128話
『空の上の襲撃者』
窓を覗くと夜空に浮かぶ月が映る。地上で見る景色と違い、普段よりも月が大きく見える気がする。
「絶景の景色ですね。警部」
「そうだな。これが仕事じゃなければ、月見でもしたいところだ」
フクロウとネコは窓を見終わると、飛行船にいる警備員の配置を確認する。
「しかし、イタッチも今回は派手に予告状を出しましたね」
「イタッチも面倒なことをやる。飛行船に乗る前にテレビの取材に捕まっちまった」
「警部、すごい勢いで囲まれてましたよね」
今回のイタッチからの予告状は、飛行船で輸送される『クロックロック』を盗むというものだった。
しかし、今回の予告はいつもよりも大々的に宣伝しており、世界中のメディアにばら撒かれたのだ。
「捜査の妨害が目的でしょうか」
「どうだろうな。俺には別の目的があるように思える……」
「別の目的?」
「まるで、何かを誘き出しているような……」
フクロウ警部達が飛行船の廊下を歩いていると、二人の前方から一人の警備員が走ってくる。
「はぁはぁ、警部!! 大変です!!」
「何があった?」
「ロビーにイタッチが現れました!!」
「なんだと!?」
警備員の報告を受けて、フクロウ警部とネコ刑事は走ってロビーに向かう。その二人を見送り残った警備員は、廊下を進み飛行船にある倉庫にたどり着いた。
警備員は身体を覆っている折り紙を剥がして真の姿を現す。
現れたのは赤いマントをイタチ。イタッチはアンの作ったセキュリティーカードで扉を開けて、倉庫の中へと入った。
中にある品々を確認しながら、目的のものを探す。
「あった、これだな」
そしてついに発見した。
「これがクロックロックか」
美術品の中に一際輝く宝石を発見する。手に入れたイタッチは、手のひらサイズの箱にしまい、マントの中に隠した。
イタッチが倉庫から脱出しようと振り向いたと同時に、
「よくも騙したな!! イタッチ!!」
「おっと、戻ってくるのが早いな」
倉庫の入り口を塞ぐようにフクロウ警部が現れた。後ろには大量の警備員を連れて、今にも飛びかかってきそうな状況だ。
「さぁ、大人しく観念するんだな」
フクロウ警部は手錠を持ち、イタッチにじわじわと近づいていく。
イタッチは倉庫を見渡すが、そこは出入り口の一つしかない密室。
「さぁ、出口はないぞ……諦めるんだな」
イタッチの目の前まで来たフクロウ警部は、手錠をイタッチにつけようとする。しかし、その時だった。
「何者だお前達…………ぐぁぁっ!?」
船内から警備員の悲鳴が聞こえ、それと同時に銃声が鳴り響く。
「何が起きて…………あっ!?」
その悲鳴に反応し動揺していたフクロウ警部。イタッチのその隙にフクロウ警部の足に足を引っ掛けて転ばせ、そのまま倉庫の出口に向かう。
「取り押さえろ!!」
フクロウ警部は外にいる警備員に命令を出す。警備員は一斉に飛びかかり、イタッチを捕らえようとするが、イタッチは紙のようにスラリスラリと警備員の隙間を通り抜ける。
「追うぞ!!」
立ち上がったフクロウ警部は、警備員を連れてイタッチを追う。イタッチの向かう先、そこは……。
「警部、イタッチが向かってる方向は……」
「ああ、騒ぎの方だな」
今だに悲鳴と銃声が聞こえる方向へイタッチは逃走していく。この騒ぎとイタッチは関係があるのか。
イタッチ達は飛行船を移動し、騒ぎの中心に合流した。そこには黒い衣装に身を包んだ動物達がおり、彼らは警官を襲っていた。
「警部、大変です!! 彼らは……」
襲撃者と戦闘をしていたネコ刑事が合流して、フクロウ警部の元に駆け寄る。
「あの模様……まさか」
合流したフクロウ警部は襲撃者の服につけられた模様を見て、彼らの正体にすぐさま気づいた。
「VIPERか!! なぜ奴らがここに!?」
襲撃者の服には蛇の模様が描かれており、彼らは警備員と交戦していたが、イタッチが現れると、
「同胞よ、鎮まれ!!」
襲撃者中からオラウータンとハリネズミが出てきて、襲撃者は一度警備員を襲うのをやめる。
「獲物が現れた……。エリソンやるか?」
オラウータンはハリネズミの顔を見ると、確認を取る。ハリネズミは頷くと、
「ええ任せて。私が取り返してみせる」
ハリネズミはそう言ってナイフを持つと、前に出た。
襲撃者の中で唯一の女性の彼女はナイフを手にイタッチに近づく。
「貴様がイタッチだな。クロックロックは返してもらうぞ」
「お前達のものじゃないだろ?」
「いいや、元々我々のものだ!!」
ハリネズミがイタッチにナイフを持って襲いかかる。イタッチはハリネズミの攻撃を左右に避けて、簡単に躱した。
「はやい……」
ハリネズミは何度もナイフで突き刺そうとするが、イタッチには掠ることもなく。全く当たる気配がない。
「エリソン、時間だ!!」
苦戦していたハリネズミだったが、時計を見ていたオラウータンがハリネズミに向けて合図を出す。すると、飛行船の後方で爆発が起きて、飛行船は大きく揺れた。
襲撃者と戦闘していた警備員は揺れに倒れて、陣形を崩す。その崩れた場所を狙い、オラウータンが警備員を倒して外につながる扉までの経路を作った。
「エリソン急げ!!」
「ああ!!」
ハリネズミはナイフで攻撃すると見せかけて、蹴りでイタッチの体制を崩させる。爆発で足元の不安定だったイタッチは、簡単に体勢を崩して、倒れそうになるイタッチからハリネズミはお宝を盗み出した。
「返してもらったぞ、父の形見を!!」
ハリネズミはクロックロックを手に、扉の前で待つオラウータン達と合流する。
「逃すな! 追え!!」
フクロウ警部が襲撃者を捕まえようと走り出すが、オラウータンが扉を開けるとすでに飛行船の側をヘリコプターが並走していた。
襲撃者達はヘリコプターに乗り込んで、すぐさま飛行船から離れる。襲撃者を追おうとしたフクロウ警部は、飛行船から落ちそうになるが、ネコ刑事が手を出して落ちそうになったフクロウ警部を助けた。
「無茶しないでください、警部!!」
「助かった…………そうだ、イタッチは!! せめて奴を捕まえて奴らの正体を!!」
フクロウ警部はハリネズミに転ばされていたイタッチを探すが、すでにその場から姿を消している。
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