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第四章 魔族大陸編
第156話 戦うのか戦わないのかどっちなんだい!?
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「過激派?」
「魔王オルト様は歴代最強と言われる魔王であるが、魔族は決して一枚岩ではないのじゃよ」
魔族には魔王オルトの思想に理解を示す穏健派と、魔族こそが世界を支配するべきという過激派で二分されている。
魔族領と人族領の境界線で小さな小競り合いはあるが、大きな戦争に発展しないのは、魔王オルトによる定期的な武力行使で過激派を蹴散らし解散させているからである。
「オルト様は戦をするより内政に時間を費やし、人の心を豊かにしたいとお考えじゃ」
「これは俺の偏見かもしれないが、魔族というのは好戦的で力が全てというイメージなんだが?」
クロのイメージする魔族に対する認識は人族では一般的であり、人族領にやってくる魔族は好戦的な者しか居ないため、そのような偏見を持ってしまう。
「ふむ、それは間違いではないが排他的な考えを持つ魔族の方が少ないのじゃ。その答えは最初に寄る村でわかるはずじゃ」
魔の森の中を進むと中腹あたりに村があるらしく、今日はそこで一泊する予定となっている。
「そろそろ見えてくる頃だと……あれじゃ! 若、今日はあの村で休憩となる」
目の前に現れたのは村とは思えない重厚な壁で囲われた城塞のような場所だった。
「止まれ! む? 人族とはまた珍しいな」
門番のような魔族が仁王立ちで二人の前に立ち塞がる。
見た目は人族と然程変わらず、特徴的なツノがなければ見分けがつかない。
「村長のモルドフ殿はご健在かな?」
「なんだ村長の知り合いか、通って良いぞ~」
「え? そんなにあっさり通して良いの?」
「なんだ小僧、魔族大陸に来るのは初めてか?」
「お、おう」
「はははっ! 非力な人族の一人や二人、何の問題もない。暴れたところで制圧なんて簡単なのさ」
「なめられたものだな」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何も」
二人は何の問題もなく村の中へと入って行った。
「若、魔族にとって人族は寿命も短い非力な生き物という認識でしかないのじゃ」
「人族もっと頑張れよ! いくらなんでも舐められすぎだろ……」
「この村は人族領とも近いのもあり、人族の実力を知っておる者が他の村に比べ多いからのう」
この村は度々過激派によって占拠され、人族領へ攻め込むための拠点にされたりする。
そのためか、攻め込んだ魔族達が戻ってきては武勇伝を語るので、この村での人族像は非力さを数で誤魔化している者達というのが一般的である。
「俺がその認識を正してやろうか……」
「若、ご自分に魔族の血が混ざっている事を忘れてはおらぬか?」
好戦的なクロに対して呆れた口調で嗜める。
村の中へと入り、村長に会うべく大きな建物へとまっすぐ突き進み到着すると、中から怒号が聞こえてきた。
「水と食料を提供しろと言ってるだろうが!」
「馬鹿者共が、貴様らに渡す物などないわい!」
「我らを愚弄するか……後悔するぞ?」
「貴様らは何度オルト様にやられた? いい加減学習したらどうじゃ?」
「貴様!!!」
どうやら揉めているのは過激派の輜重部隊らしく、戦のための食料を確保すべく村長宅へ足を運んでいるようだ。
「若! 中にいるのは過激派の連中のようじゃ、ここは一度……」
ドンッ! バキンッ!
「ぐはっ!」
中からドアが破壊され、飛んできたのは年老いた魔族の男だった。
「痛い目に遭わないうちに差し出せば良いのもを」
「ぐぬぬ……」
「あん? なんでここに人族が居る!?」
「まいったのう……」
中から筋骨隆々の三人の魔族がクロとボン爺を見つけ駆け寄ってくる。
「お、お主はもしや……ボンか?」
「大事ないか? モルドフ殿」
「すまぬ、巻き込んでしまったようだ……」
「人族と馴れ合うなど! 貴様はそれでも魔族か! ん? なんだ小僧!」
クロはボン爺とモルドフの前に護るように立ち塞がる。
「若! ここで騒ぎを起こしてしまっては!」
「バカヤロウ、見ろよこの面を! 生かして帰すって面じゃねえぞ? だったら……」
「わ、若!」
「小僧よせ!」
クロは正面に立つ魔族の男のツノを掴む。
「ふはははっ! 何の真似だ小僧?」
「んんんんっ! パワァァァァァァ!!」
バキッ!
「グァァァ!! 俺の、俺のツノがぁぁ!」
「うるせぇなあ! じゃあ返すわ!」
クロは破壊したツノの尖った部分で魔族の男の頭に返却する。
「ギァァァ!!」
「ガタガタと五月蝿ぇんだよ」
クロは頭を抑えしゃがみ込む魔族の顔を踏みつける。
「過激派か何か知らんが、頭がたけえ!」
「やってしもうたか……」
ボン爺の心配を他所に、クロは魔族相手に戦闘を開始する。
「魔王オルト様は歴代最強と言われる魔王であるが、魔族は決して一枚岩ではないのじゃよ」
魔族には魔王オルトの思想に理解を示す穏健派と、魔族こそが世界を支配するべきという過激派で二分されている。
魔族領と人族領の境界線で小さな小競り合いはあるが、大きな戦争に発展しないのは、魔王オルトによる定期的な武力行使で過激派を蹴散らし解散させているからである。
「オルト様は戦をするより内政に時間を費やし、人の心を豊かにしたいとお考えじゃ」
「これは俺の偏見かもしれないが、魔族というのは好戦的で力が全てというイメージなんだが?」
クロのイメージする魔族に対する認識は人族では一般的であり、人族領にやってくる魔族は好戦的な者しか居ないため、そのような偏見を持ってしまう。
「ふむ、それは間違いではないが排他的な考えを持つ魔族の方が少ないのじゃ。その答えは最初に寄る村でわかるはずじゃ」
魔の森の中を進むと中腹あたりに村があるらしく、今日はそこで一泊する予定となっている。
「そろそろ見えてくる頃だと……あれじゃ! 若、今日はあの村で休憩となる」
目の前に現れたのは村とは思えない重厚な壁で囲われた城塞のような場所だった。
「止まれ! む? 人族とはまた珍しいな」
門番のような魔族が仁王立ちで二人の前に立ち塞がる。
見た目は人族と然程変わらず、特徴的なツノがなければ見分けがつかない。
「村長のモルドフ殿はご健在かな?」
「なんだ村長の知り合いか、通って良いぞ~」
「え? そんなにあっさり通して良いの?」
「なんだ小僧、魔族大陸に来るのは初めてか?」
「お、おう」
「はははっ! 非力な人族の一人や二人、何の問題もない。暴れたところで制圧なんて簡単なのさ」
「なめられたものだな」
「ん? 何か言ったか?」
「いや、何も」
二人は何の問題もなく村の中へと入って行った。
「若、魔族にとって人族は寿命も短い非力な生き物という認識でしかないのじゃ」
「人族もっと頑張れよ! いくらなんでも舐められすぎだろ……」
「この村は人族領とも近いのもあり、人族の実力を知っておる者が他の村に比べ多いからのう」
この村は度々過激派によって占拠され、人族領へ攻め込むための拠点にされたりする。
そのためか、攻め込んだ魔族達が戻ってきては武勇伝を語るので、この村での人族像は非力さを数で誤魔化している者達というのが一般的である。
「俺がその認識を正してやろうか……」
「若、ご自分に魔族の血が混ざっている事を忘れてはおらぬか?」
好戦的なクロに対して呆れた口調で嗜める。
村の中へと入り、村長に会うべく大きな建物へとまっすぐ突き進み到着すると、中から怒号が聞こえてきた。
「水と食料を提供しろと言ってるだろうが!」
「馬鹿者共が、貴様らに渡す物などないわい!」
「我らを愚弄するか……後悔するぞ?」
「貴様らは何度オルト様にやられた? いい加減学習したらどうじゃ?」
「貴様!!!」
どうやら揉めているのは過激派の輜重部隊らしく、戦のための食料を確保すべく村長宅へ足を運んでいるようだ。
「若! 中にいるのは過激派の連中のようじゃ、ここは一度……」
ドンッ! バキンッ!
「ぐはっ!」
中からドアが破壊され、飛んできたのは年老いた魔族の男だった。
「痛い目に遭わないうちに差し出せば良いのもを」
「ぐぬぬ……」
「あん? なんでここに人族が居る!?」
「まいったのう……」
中から筋骨隆々の三人の魔族がクロとボン爺を見つけ駆け寄ってくる。
「お、お主はもしや……ボンか?」
「大事ないか? モルドフ殿」
「すまぬ、巻き込んでしまったようだ……」
「人族と馴れ合うなど! 貴様はそれでも魔族か! ん? なんだ小僧!」
クロはボン爺とモルドフの前に護るように立ち塞がる。
「若! ここで騒ぎを起こしてしまっては!」
「バカヤロウ、見ろよこの面を! 生かして帰すって面じゃねえぞ? だったら……」
「わ、若!」
「小僧よせ!」
クロは正面に立つ魔族の男のツノを掴む。
「ふはははっ! 何の真似だ小僧?」
「んんんんっ! パワァァァァァァ!!」
バキッ!
「グァァァ!! 俺の、俺のツノがぁぁ!」
「うるせぇなあ! じゃあ返すわ!」
クロは破壊したツノの尖った部分で魔族の男の頭に返却する。
「ギァァァ!!」
「ガタガタと五月蝿ぇんだよ」
クロは頭を抑えしゃがみ込む魔族の顔を踏みつける。
「過激派か何か知らんが、頭がたけえ!」
「やってしもうたか……」
ボン爺の心配を他所に、クロは魔族相手に戦闘を開始する。
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