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第三章 復讐編
第148話 策士策に溺れる
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「想像していたより簡単に潜入できたな」
厳戒態勢中の王城は正面と裏門には兵が集中していたが、それ以外の場所に兵は配置されておらず、真横から壁をつたい潜入する事が出来てしまった。
「王城なのにこの程度の警備って……大丈夫なのか? この国は」
とは言え、城の中にはいつも以上の警備が敷かれており、その中を動き回りヘクター王子を見つけるのは困難を極める。
「次はあの窓の所へ……よっと!」
窓の外から部屋を覗く。
その行動を何度も繰り返し、ここは十四部屋目の部屋だった。
王子の居室なのだから中心に近い所か、離れた広い敷地にあると踏んでいたが、部屋ガチャは意外に渋く、絶賛リセマラ中だ。
「ちっ! またハズレか。もっと効率的に探さないと……」
部屋ガチャにもいい加減飽きてきたクロは、意を決して部屋へと潜入した。
ドアを少しだけ開け、廊下の様子を確認すると、運良くメイド姿の女が歩いてくるのが見えた。
「女か、あまり気は進まないが……」
耳を澄まし、足音が近づくとドアを開けメイド姿の女を引き摺り込む。
「きゃっ!」
「騒ぐな、わかったら一回だけ頷け」
メイド姿の女の口を塞ぎ、ナイフをチラつかせるとメイド姿の女は頷く。
「協力してくれるなら殺さない」
メイド姿の女は小さく何度も頷く。
「第三王子の部屋の場所はわかるか? あ~目的は暗殺じゃないから、わかるなら素直に教えてくれないか? いいか? 今から手を離す。もし騒いだら……殺す」
クロはゆっくりと手を離す。
「わ、私は殺されるんですか?」
「お前、俺の話を聞いてた?」
「ひぃ! ご、ご、ご、ごめんなさい! 殺さないで!」
「だから、殺さないって言ったよね? それで知ってるの?」
「ヘ、ヘクター様のお部屋ですよね? 知ってます! でもあそこは……」
「何? 何かあるの?」
「子飼いの強そうな冒険者風の男が何人かで警備をしてます!」
「へぇ~そういうタイプの人なんだ。それで場所は?」
「こ、ここから南に向かったところにあるバラ園の先にある質素な建物です」
「ありがとう」
「うっ……」
クロはメイド姿の女を気絶させると、口を布で塞ぎ、亜空間から取り出したロープで手と足を縛り上げる。
「ん? 南どっちだ?」
ぐるぐると動き回っていた事で方向感覚を失っていた。
しばらく思考したが、何となくバラ園がありそうな方へ進み、花園を見つけたが薔薇ではなくそれはサザンカだった。
「ちくせう……紛らわしいんだよ」
カチャッ!
「動くな」
背後から首筋に剣を突きつけられ声をかけられる。
「失格だな」
「何?」
返事が返ってくると同時に素早くうつ伏せになり、両手を地面に付け力を入れると、腕を伸ばす反動で放った後ろ蹴りは後方の相手に華麗にヒットする。
「くっ!」
クロは素早く振り向き追撃を仕掛ける。
態勢を崩された相手はそのまま尻もちをつき、気付いた時には首を刎ねられていた。
「せっかくの背後を取るというアドバンテージを台無しにしてどうするよ」
捕まえて尋問したいのだろうが、こんな時間に見つけた怪しい者が大人しく言うことを聞くはずがない。
「どこだよバラ園……」
その後、花園を見つけては立ち寄るを繰り返し、四回目でやっと発見する。
「やっとかよ! ……この先って言ってたよな」
バラ園をまっすぐ奥へと進むと、メイド姿の女が言っていたように質素な建物が現れる。
「ここか」
バラ園を抜け一歩足を踏み入れると、何かに触れ切れる感触が足に伝わる。
「トラップ?」
警戒するが特に何も起こらなかったが、雲の隙間から差し込んだ月の光に反射した糸がクロの周囲に張り巡らされていた。
「何の糸だ?」
「金剛石を含んだ糸だよ」
声のする方へ振り向くと、木の上に男が立っていた。
「贅沢な糸だな」
「僕の自慢の糸だよ」
男はそう言うと、さらに糸を繰り出し逃げ場を完全に封鎖する。
「上がガラ空きだぞ?」
「通ってみたら? 出来ないと思うけど」
あきらかに罠だとわかる仕掛けだが、通らないわけにはいかず、素早く通るため足を踏み込む。
ボコ!
「!?」
地面から手が現れ足首を掴まれると、そのまま持ち上げられ地面に叩きつけられる。
「ガハハハっ! 罠が上にあるとは限らないんだぜ?」
地面から現れたのは筋骨隆々の男で、クロを地面に叩きつけてもまだ足首を離さない。
「こいつの糸は触れるだけでも切れるやばい糸何だぜ? うらぁぁぁ!」
男は足首を持ったまま振り回し糸へ向かい投げつける。
「だから何だよ」
クロは魔闘術で身体を強化すると、足の裏で糸を蹴り反転し、男の膝を横から蹴りつけるとぐしゃりという鈍い音が響き渡る。
「ぐぁぁぁ! 脚が!」
男の脚は内側に向かってくの字に曲がり、痛みに耐えることの出来なかった男は、膝を抱え地面に転がる。
「くそっ! 達也!」
クロは糸使いの男へ振り向くと一足飛びで糸の包囲を脱出し襲い掛からんとする。
「はっ! スキル! スパイダーストリングス!」
指先から網目状に糸が出現し、クロを捕獲しようとするが、無数の飛ぶ斬撃が糸を切り裂く。
「僕のスキルが切られた!?」
クロが放った飛ぶ斬撃は糸使いの男ではなく、土台の枝を狙っており、足場を失った男は自分が張り巡らせた糸の上に落ちる。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「か、和……」
脚をへし折られた筋骨隆々の男の目の前で無惨にも絶命する。
「う……」
呆然と眺める額にナイフが突き刺さり、この男も動きを止めた。
「また中途半端な異世界人を集めたもんだな」
この二人が異世界人だというのは名前から推察される。
「策士策に溺れるってか?」
クロは鼻で笑うと建物へと近づき、ノックもせずにドアを蹴破る。
「ずいぶんと行儀の悪い訪問者だね」
正面にある階段の最上段に整った容姿の男が座っていた。
「出迎えご苦労、お前が第三王子のヘクター?」
「そうだよ、そういう君は誰かな?」
「誰だって良いだろ」
クロは亜空間からマリエラから預かったペンダントを取り出しヘクターへと投げつける。
「これは!?」
「とりあえずさ? 一発殴らせろ」
握られた拳はプルプルと震えていた。
厳戒態勢中の王城は正面と裏門には兵が集中していたが、それ以外の場所に兵は配置されておらず、真横から壁をつたい潜入する事が出来てしまった。
「王城なのにこの程度の警備って……大丈夫なのか? この国は」
とは言え、城の中にはいつも以上の警備が敷かれており、その中を動き回りヘクター王子を見つけるのは困難を極める。
「次はあの窓の所へ……よっと!」
窓の外から部屋を覗く。
その行動を何度も繰り返し、ここは十四部屋目の部屋だった。
王子の居室なのだから中心に近い所か、離れた広い敷地にあると踏んでいたが、部屋ガチャは意外に渋く、絶賛リセマラ中だ。
「ちっ! またハズレか。もっと効率的に探さないと……」
部屋ガチャにもいい加減飽きてきたクロは、意を決して部屋へと潜入した。
ドアを少しだけ開け、廊下の様子を確認すると、運良くメイド姿の女が歩いてくるのが見えた。
「女か、あまり気は進まないが……」
耳を澄まし、足音が近づくとドアを開けメイド姿の女を引き摺り込む。
「きゃっ!」
「騒ぐな、わかったら一回だけ頷け」
メイド姿の女の口を塞ぎ、ナイフをチラつかせるとメイド姿の女は頷く。
「協力してくれるなら殺さない」
メイド姿の女は小さく何度も頷く。
「第三王子の部屋の場所はわかるか? あ~目的は暗殺じゃないから、わかるなら素直に教えてくれないか? いいか? 今から手を離す。もし騒いだら……殺す」
クロはゆっくりと手を離す。
「わ、私は殺されるんですか?」
「お前、俺の話を聞いてた?」
「ひぃ! ご、ご、ご、ごめんなさい! 殺さないで!」
「だから、殺さないって言ったよね? それで知ってるの?」
「ヘ、ヘクター様のお部屋ですよね? 知ってます! でもあそこは……」
「何? 何かあるの?」
「子飼いの強そうな冒険者風の男が何人かで警備をしてます!」
「へぇ~そういうタイプの人なんだ。それで場所は?」
「こ、ここから南に向かったところにあるバラ園の先にある質素な建物です」
「ありがとう」
「うっ……」
クロはメイド姿の女を気絶させると、口を布で塞ぎ、亜空間から取り出したロープで手と足を縛り上げる。
「ん? 南どっちだ?」
ぐるぐると動き回っていた事で方向感覚を失っていた。
しばらく思考したが、何となくバラ園がありそうな方へ進み、花園を見つけたが薔薇ではなくそれはサザンカだった。
「ちくせう……紛らわしいんだよ」
カチャッ!
「動くな」
背後から首筋に剣を突きつけられ声をかけられる。
「失格だな」
「何?」
返事が返ってくると同時に素早くうつ伏せになり、両手を地面に付け力を入れると、腕を伸ばす反動で放った後ろ蹴りは後方の相手に華麗にヒットする。
「くっ!」
クロは素早く振り向き追撃を仕掛ける。
態勢を崩された相手はそのまま尻もちをつき、気付いた時には首を刎ねられていた。
「せっかくの背後を取るというアドバンテージを台無しにしてどうするよ」
捕まえて尋問したいのだろうが、こんな時間に見つけた怪しい者が大人しく言うことを聞くはずがない。
「どこだよバラ園……」
その後、花園を見つけては立ち寄るを繰り返し、四回目でやっと発見する。
「やっとかよ! ……この先って言ってたよな」
バラ園をまっすぐ奥へと進むと、メイド姿の女が言っていたように質素な建物が現れる。
「ここか」
バラ園を抜け一歩足を踏み入れると、何かに触れ切れる感触が足に伝わる。
「トラップ?」
警戒するが特に何も起こらなかったが、雲の隙間から差し込んだ月の光に反射した糸がクロの周囲に張り巡らされていた。
「何の糸だ?」
「金剛石を含んだ糸だよ」
声のする方へ振り向くと、木の上に男が立っていた。
「贅沢な糸だな」
「僕の自慢の糸だよ」
男はそう言うと、さらに糸を繰り出し逃げ場を完全に封鎖する。
「上がガラ空きだぞ?」
「通ってみたら? 出来ないと思うけど」
あきらかに罠だとわかる仕掛けだが、通らないわけにはいかず、素早く通るため足を踏み込む。
ボコ!
「!?」
地面から手が現れ足首を掴まれると、そのまま持ち上げられ地面に叩きつけられる。
「ガハハハっ! 罠が上にあるとは限らないんだぜ?」
地面から現れたのは筋骨隆々の男で、クロを地面に叩きつけてもまだ足首を離さない。
「こいつの糸は触れるだけでも切れるやばい糸何だぜ? うらぁぁぁ!」
男は足首を持ったまま振り回し糸へ向かい投げつける。
「だから何だよ」
クロは魔闘術で身体を強化すると、足の裏で糸を蹴り反転し、男の膝を横から蹴りつけるとぐしゃりという鈍い音が響き渡る。
「ぐぁぁぁ! 脚が!」
男の脚は内側に向かってくの字に曲がり、痛みに耐えることの出来なかった男は、膝を抱え地面に転がる。
「くそっ! 達也!」
クロは糸使いの男へ振り向くと一足飛びで糸の包囲を脱出し襲い掛からんとする。
「はっ! スキル! スパイダーストリングス!」
指先から網目状に糸が出現し、クロを捕獲しようとするが、無数の飛ぶ斬撃が糸を切り裂く。
「僕のスキルが切られた!?」
クロが放った飛ぶ斬撃は糸使いの男ではなく、土台の枝を狙っており、足場を失った男は自分が張り巡らせた糸の上に落ちる。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「か、和……」
脚をへし折られた筋骨隆々の男の目の前で無惨にも絶命する。
「う……」
呆然と眺める額にナイフが突き刺さり、この男も動きを止めた。
「また中途半端な異世界人を集めたもんだな」
この二人が異世界人だというのは名前から推察される。
「策士策に溺れるってか?」
クロは鼻で笑うと建物へと近づき、ノックもせずにドアを蹴破る。
「ずいぶんと行儀の悪い訪問者だね」
正面にある階段の最上段に整った容姿の男が座っていた。
「出迎えご苦労、お前が第三王子のヘクター?」
「そうだよ、そういう君は誰かな?」
「誰だって良いだろ」
クロは亜空間からマリエラから預かったペンダントを取り出しヘクターへと投げつける。
「これは!?」
「とりあえずさ? 一発殴らせろ」
握られた拳はプルプルと震えていた。
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