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第三章 復讐編
第140話 殺す理由と生かす理由
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「感傷に浸ってる場合じゃないな」
クロはうつ伏せになり呻いているメリッサの元へと向かう。目の端にヴィトがアイリを踏んづけたり、蹴ったりしているのが見えたが後回しにした。
「起きろよ転生者」
「く、CROW……」
「だから俺はゲームのキャラじゃないって言ってんだろ」
「やめて……殺さないで……」
話が噛み合わない原因は、メリッサが未だにゲームの世界だと勘違いをしているからである。
「細かい話は省略するぞ? ここはゲームの世界じゃない。お前がゲームの世界だと勘違いしているのは記憶の混濁による弊害だ」
「記憶の混濁……?」
「前世の記憶と今世の記憶が混ざりあって、そう勘違いしてんだよお前は」
「じゃ、じゃあ何で私はこの先起こるイベントを知ってるのよ! 全部私の知ってるゲームの展開なのよ!」
クロは頭を掻きながら面倒臭そうに答える。
「お前のそれ、未来予知のスキルだから」
「へ?」
「だから! お前は無意識に未来予知のスキルを使ってんの!」
「未来予知? そんなわけ……痛いっ! 頭が!」
「最後のピースがハマったんだろ。矛盾した内容なのに無理矢理に記憶を改竄してたんだからその反動だ」
メリッサは両手で頭を抱えうずくまるとプルプルと震え出す。
「ふふふっ……あはははっ! 見えるわ……見える! あなたの未来が!!」
「へぇ? どんな未来?」
「死ぬわ! それもそう遠くない未来」
(死を恐れている訳ではないが、死ぬ理由は知りたいな。教えてくれるかな? なんかもう壊れかけてるし)
メリッサはゆらりと立ち上がりクロの首を指差す。
「自死……ざまあみろ! 何で自死する理由まではわからないけど、あんたなんか展開…絶望して死ねばいいのよ!」
「自死か~想像できないな」
「何で……何で笑いながら死んでるのよ! おかしいじゃない! 自ら死を選んでるのに……あなたは何で笑ってるのよ!」
メリッサの頭の中で何かが見えてるのだろう。一人で激昂し頭を抱える。
「キィィィィ!!」
気の触れたメリッサは奇声をあげると、両手でクロの首を絞めようと襲いかかる。
しかし、そんな攻撃が通じるわけもなく、ひょいと躱され地面に倒れる。
「もっと早く……もっと早くに気付いていれば」
「そう? じゃあもう手遅れって事で」
「へ?」
クロはうつむき倒れているメリッサを掴むと、血塗れで死体となったミルドへ投げつける。
「大好きなお父様と一緒に死ねる幸せを噛み締めろ!」
亜空間から取り出した剣をメリッサに向け全力で投げると、メリッサの胸へと突き刺さり、ミルドと重なり合うように絶命する。
「地獄に……堕ちろ!」
最期にそう聞こえた気がした。
「地獄? この世がすでに地獄だよバカヤロウ! だからこそ俺は楽しく傲慢に生きてんだよ」
悪役ロールプレイを主体とする生き方を選んだクロには全く響かない言葉だった。
【主ぃ~、こいつ面白くな~い】
「おー悪い悪い!」
アイリはうつ伏せにされ、ヴィトに踏みつけられた状態になっていた。全身が爪で引っ掻かれており、痛々しい姿になっている。
「ん~、こいつ見覚えがあるんだよなあ!」
髪の毛を掴み持ち上げ、顔を確かめるが中々思い出せない。
「ひぃっ! あ、あ、あ、あ……ァァァァァァァァ!!」
クロの顔を見た瞬間にアイリの記憶が呼び起こされる。
「アァァァ! ごめんなさい、ごめんなさい、許してください、お願いします! もう戦いたくないです!!」
【あっ漏らした】
アイリは恐怖のあまり失禁し、震える。
「あ~思い出した、お前勇者パーティーに居た奴だな?」
「は、はいぃぃ!! ど、どうか命だけは!」
「お前、ミルドに買われたんだな……」
「……はい」
アイリの反応でミルドに買われた後の事は想像できる。
自業自得、世間知らずの成れの果て、きつい言葉で罵倒してやろうかと思ったが、クロから出た言葉は意外なものだった。
「そうか、頑張ったな」
「え?」
「良く死なずに生きたな」
アイリの目から涙が溢れ出る。
「うぅぅ……」
「お前、まだ死にたくないの?」
「死にたくないです……」
「じゃあさ?」
クロはアイリの襟首を掴むと、窓際まで引き摺り連れて行く。
塀の外には衛兵が大勢集まっており、突入の準備をしていた。
「あれに向かってどでかい魔法をぶっ放せ」
「え? あ、あれにですか?」
「出来ないのか?」
「で、出来ます! やります! やらせてください!」
「そうかそうか! よしっ! やれ!」
アイリは窓の外に向かい手を翳し詠唱を始めると、人一人分の大きさの炎の球が出来上がる。
「イグニスフレア!!」
炎の球は集まった衛兵のちょうど、ど真ん中に放たれ、衛兵達は混乱に陥る。
「や、やりました!」
「そうかご苦労さん」
ドンッ!
「え?」
クロはアイリを窓から蹴落とした。
「大丈夫、死にはしないさ」
軽傷とはいかないが、アイリは木がクッションになり一命を取り留めた。
【主ぃ~仲間にするんじゃないの?】
「戦う意志がない者を仲間にしてどうする」
【じゃあ何で殺さなかったの~?】
「さあ、何でだろうな? 俺にもよくわからん」
クロに善の心が芽生えたわけではない。アイリの命が助かった理由、それは……
「俺も間違える事があるって事だ」
【ふ~ん】
ヴィトはクロの心に憤りと悲しみが入り混じった複雑な乱れがある事に気付いた。
「お前はそこで見てろ」
【え~】
「唸れ! 弐式暗黒龍飛翔天河閃」
クロは弐式に飛び乗り衛兵へと突入する。
◇◇◇◇◇
「何だ今のは? 魔法か!」
「被害状況の報告をしろ!」
「おいっ! 今、屋敷から人が落ちたぞ!」
「生き残りか!? やむを得ん! 突入するぞ!」
「「「オォォォォォ!」」」
衛兵約千百人余りがミルド邸に突入を開始する。
「落ちたのはミルド伯爵の関係者か!?」
「わかりません!」
「必ず救出しろ! 参考人として保護するんだ!」
「た、隊長あれは!?」
「……黒い蛇!?」
「ひ、人がっ! 人が乗っているぞ!」
ドォォォォォォォンッ!
「ぐあっ!」
「くそっ! 土煙でなにも見え……ギャア!」
「死にたい奴から前にでろ、狂気の宴の始まりだ!」(エクストラスキル……懺蛇)
両手剣を持った男が狂気を纏い襲いかかる。
クロはうつ伏せになり呻いているメリッサの元へと向かう。目の端にヴィトがアイリを踏んづけたり、蹴ったりしているのが見えたが後回しにした。
「起きろよ転生者」
「く、CROW……」
「だから俺はゲームのキャラじゃないって言ってんだろ」
「やめて……殺さないで……」
話が噛み合わない原因は、メリッサが未だにゲームの世界だと勘違いをしているからである。
「細かい話は省略するぞ? ここはゲームの世界じゃない。お前がゲームの世界だと勘違いしているのは記憶の混濁による弊害だ」
「記憶の混濁……?」
「前世の記憶と今世の記憶が混ざりあって、そう勘違いしてんだよお前は」
「じゃ、じゃあ何で私はこの先起こるイベントを知ってるのよ! 全部私の知ってるゲームの展開なのよ!」
クロは頭を掻きながら面倒臭そうに答える。
「お前のそれ、未来予知のスキルだから」
「へ?」
「だから! お前は無意識に未来予知のスキルを使ってんの!」
「未来予知? そんなわけ……痛いっ! 頭が!」
「最後のピースがハマったんだろ。矛盾した内容なのに無理矢理に記憶を改竄してたんだからその反動だ」
メリッサは両手で頭を抱えうずくまるとプルプルと震え出す。
「ふふふっ……あはははっ! 見えるわ……見える! あなたの未来が!!」
「へぇ? どんな未来?」
「死ぬわ! それもそう遠くない未来」
(死を恐れている訳ではないが、死ぬ理由は知りたいな。教えてくれるかな? なんかもう壊れかけてるし)
メリッサはゆらりと立ち上がりクロの首を指差す。
「自死……ざまあみろ! 何で自死する理由まではわからないけど、あんたなんか展開…絶望して死ねばいいのよ!」
「自死か~想像できないな」
「何で……何で笑いながら死んでるのよ! おかしいじゃない! 自ら死を選んでるのに……あなたは何で笑ってるのよ!」
メリッサの頭の中で何かが見えてるのだろう。一人で激昂し頭を抱える。
「キィィィィ!!」
気の触れたメリッサは奇声をあげると、両手でクロの首を絞めようと襲いかかる。
しかし、そんな攻撃が通じるわけもなく、ひょいと躱され地面に倒れる。
「もっと早く……もっと早くに気付いていれば」
「そう? じゃあもう手遅れって事で」
「へ?」
クロはうつむき倒れているメリッサを掴むと、血塗れで死体となったミルドへ投げつける。
「大好きなお父様と一緒に死ねる幸せを噛み締めろ!」
亜空間から取り出した剣をメリッサに向け全力で投げると、メリッサの胸へと突き刺さり、ミルドと重なり合うように絶命する。
「地獄に……堕ちろ!」
最期にそう聞こえた気がした。
「地獄? この世がすでに地獄だよバカヤロウ! だからこそ俺は楽しく傲慢に生きてんだよ」
悪役ロールプレイを主体とする生き方を選んだクロには全く響かない言葉だった。
【主ぃ~、こいつ面白くな~い】
「おー悪い悪い!」
アイリはうつ伏せにされ、ヴィトに踏みつけられた状態になっていた。全身が爪で引っ掻かれており、痛々しい姿になっている。
「ん~、こいつ見覚えがあるんだよなあ!」
髪の毛を掴み持ち上げ、顔を確かめるが中々思い出せない。
「ひぃっ! あ、あ、あ、あ……ァァァァァァァァ!!」
クロの顔を見た瞬間にアイリの記憶が呼び起こされる。
「アァァァ! ごめんなさい、ごめんなさい、許してください、お願いします! もう戦いたくないです!!」
【あっ漏らした】
アイリは恐怖のあまり失禁し、震える。
「あ~思い出した、お前勇者パーティーに居た奴だな?」
「は、はいぃぃ!! ど、どうか命だけは!」
「お前、ミルドに買われたんだな……」
「……はい」
アイリの反応でミルドに買われた後の事は想像できる。
自業自得、世間知らずの成れの果て、きつい言葉で罵倒してやろうかと思ったが、クロから出た言葉は意外なものだった。
「そうか、頑張ったな」
「え?」
「良く死なずに生きたな」
アイリの目から涙が溢れ出る。
「うぅぅ……」
「お前、まだ死にたくないの?」
「死にたくないです……」
「じゃあさ?」
クロはアイリの襟首を掴むと、窓際まで引き摺り連れて行く。
塀の外には衛兵が大勢集まっており、突入の準備をしていた。
「あれに向かってどでかい魔法をぶっ放せ」
「え? あ、あれにですか?」
「出来ないのか?」
「で、出来ます! やります! やらせてください!」
「そうかそうか! よしっ! やれ!」
アイリは窓の外に向かい手を翳し詠唱を始めると、人一人分の大きさの炎の球が出来上がる。
「イグニスフレア!!」
炎の球は集まった衛兵のちょうど、ど真ん中に放たれ、衛兵達は混乱に陥る。
「や、やりました!」
「そうかご苦労さん」
ドンッ!
「え?」
クロはアイリを窓から蹴落とした。
「大丈夫、死にはしないさ」
軽傷とはいかないが、アイリは木がクッションになり一命を取り留めた。
【主ぃ~仲間にするんじゃないの?】
「戦う意志がない者を仲間にしてどうする」
【じゃあ何で殺さなかったの~?】
「さあ、何でだろうな? 俺にもよくわからん」
クロに善の心が芽生えたわけではない。アイリの命が助かった理由、それは……
「俺も間違える事があるって事だ」
【ふ~ん】
ヴィトはクロの心に憤りと悲しみが入り混じった複雑な乱れがある事に気付いた。
「お前はそこで見てろ」
【え~】
「唸れ! 弐式暗黒龍飛翔天河閃」
クロは弐式に飛び乗り衛兵へと突入する。
◇◇◇◇◇
「何だ今のは? 魔法か!」
「被害状況の報告をしろ!」
「おいっ! 今、屋敷から人が落ちたぞ!」
「生き残りか!? やむを得ん! 突入するぞ!」
「「「オォォォォォ!」」」
衛兵約千百人余りがミルド邸に突入を開始する。
「落ちたのはミルド伯爵の関係者か!?」
「わかりません!」
「必ず救出しろ! 参考人として保護するんだ!」
「た、隊長あれは!?」
「……黒い蛇!?」
「ひ、人がっ! 人が乗っているぞ!」
ドォォォォォォォンッ!
「ぐあっ!」
「くそっ! 土煙でなにも見え……ギャア!」
「死にたい奴から前にでろ、狂気の宴の始まりだ!」(エクストラスキル……懺蛇)
両手剣を持った男が狂気を纏い襲いかかる。
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