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第三章 復讐編
第131話 首都ウーツの冒険者ギルド
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「ごちそうさま」
【美味しかった】
立ち退き騒動も無事解決し、朝になった。
「なあ、クロ坊?」
「詮索はするなという約束だぞ?」
「そりゃあ……そうなんだけどさ? お礼くらい言わせておくれよ」
立ち退きの件は話し合いにより解決した。
この国へ懺蛇の勢力を延ばす考えはなかったが、拠点にしているバラバラ亭で面倒事が起きてしまうのは鬱陶しい。それなら邪魔な組織を壊滅させてやろうと思い乗り込み、一番偉そうな男を出会い頭に殺すと簡単に服従した。
「知るか」
「ふっ、ありがとうよ」
お前らのためじゃない! と言いたかったが、それも面倒なので何も言わなかった。
「じゃあ、行って来る」
「はいよ、いってらっしゃい!」
ヴィトを剣の姿に戻らせ、寄り道もせず冒険者ギルドへと向かうと、アースハイドの冒険者ギルドと同じ形の建物が見えて来る。
「作画的には大助かりだな」
そう、異世界は配慮で出来ている。
ギルド内へと入ると汗臭さと獣臭が漂う。そして、朝からお馴染みの光景が繰り広げられている。
(クソほど並んでるな)
クロは空いている受付へと向かう。
「こちらは素材受付のカウンターです」
ロボットのように淡々と話す受付の女に少しイラッとする。
「指名依頼でアースハイドから来たAランク冒険者のクロだ。ギルド長に会わせてくれ」
「はあ?」
「もう一度説明が必要か?」
「結構です、依頼受付はあちらなので」
「融通の利かない受付だな」
「規則ですから」
「暇そうだけど?」
「そうでしょうね、朝一で素材を持って来る冒険者は稀なので」
クロは無駄な時間を過ごした。
このままゴネても時間の無駄になる、そう判断したクロは行列のできている依頼受付の最後尾に並ぶ。
「長い……」
朝一の依頼受付は激混みする。
皆が報酬の良い依頼を奪い合い、ギルド内は戦場と化してしまう。結果、クロの番が来るまでに三十七分かかった。
「指名依頼でアースハイドから来たAランク冒険者のクロだ。ギルド長に会わせてくれ」
「え、指名依頼!? わざわざ並んでいたんですか!?」
「こっちに行けって言われたのだが?」
クロは先ほどの受付の女の方を指差す。
「え!? あ……大変申し訳ございません! すぐにギルド長を!」
依頼受付の女は慌ててギルド長の元へと走って行くと、二階から慌てた感じで優男が降りてきた。
「君がフェルミナ推薦の冒険者のクロ君かい!?」
「あなたがギルド長ですか?」
「紹介がまだだったね、僕の名前はツウィン! ここでギルド長をしている。どうやら……うちの職員が失礼な態度を取ったみたいですまない!」
「どこにでも融通の利かない奴はいるもんでしょ」
「そう言ってもらえると助かるよ。彼女は優秀な子ではないんだ……所謂、コネ入社って奴でね? 困ったものだよ」
無口なツンデレ受付嬢が優秀だと、いつから錯覚していた?
「こんなところで話も何だから、こっちに来てもらえるかな?」
ツウィンはフェルミナと違い、物腰が柔らかいギルド長のようだ。
顔色の悪さが気になったが、きっと色々とあるのだろうとクロは察した。
「わざわざ来てもらってありがとう、さっそく今回の依頼の内容に移ってもいいかな?」
「ええ、構わないですよ」
ツウィンはクロの顔をジッと見る。
「君、その喋り方は作ってるね?」
「目上の人には敬意を払うのは当然でしょう」
社会人としては当然の義務だ。
「何か窮屈そうに喋るなあと思ってね」
「はあ、これでいいか? 俺としてはさっさと依頼内容を知りたいんだが」
「ははっ! 違和感が苦手でね、これでしっくり来たよ」
「いいから依頼を」
「うん、大まかに言うと貴族のご令嬢の護衛なんだけどね? あまり良くない噂があるご令嬢だよね」
「良くない噂?」
「我が儘、傲慢、短気、数えたらキリがないほどの悪徳令嬢なんだよ」
(悪徳令嬢ねえ……)
「そのご令嬢本人から、命を狙われているから腕利きの護衛を!って依頼でね。色々と紹介したんだけど断られてて困ってたんだよ」
「俺はそんな事でこの国まで呼び出されたのか?」
「そう言わないでくれよ、条件が他国の冒険者でA級以上の冒険者か歴戦の傭兵、国との関わりが少なく、頭の回転が早い者っていう無理難題なんだよ」
「細かいな」
「そんな奴いるかっ!ってフェルミナに愚痴を送ったらさ? 丁度良い人材が居るって言うじゃないか! だから頼むよ? ね?」
ミッションは悪徳令嬢の護衛依頼。
(うざそうな令嬢だな……面倒くさっ!)
「名前は、メリッサ・ミルド。ミルド伯爵のご令嬢だよ」
「引き受けた」
あまりのご都合主義に驚いたが、願ってもないチャンスが到来した。
クロは即答で依頼を引き受ける。
「そ、そうかい? 助かるよ」
食い気味で即答したクロに動揺したが、ツウィンは安堵のため息をつく。
「それで、面談はいつ?」
「今からでも向かって欲しい」
「了解した」
「依頼書と、この手紙を持って行けば会えるから、よろしくね」
クロはツウィンから依頼書と手紙を受け取ると、早速屋敷へと向かうのだった。
「大丈夫かな彼は……イテテテテっ! だれか胃薬を持ってきてくれないか?」
ウーツのギルド長という役職は精神的にしんどいようだ。
ミルド伯爵の屋敷に到着すると、門番に依頼書と手紙を手渡す。
「しばし待たれよ!」
二十四分ほど待たされると、中からメイドと執事の男が出てきた。
「こちらへ」
執事の男に促されるまま屋敷内へと入ると、応接室へ通される。
この部屋へ案内される途中に、激しい戦闘があったのか、破壊され燃えた跡が痛々しい部屋があった。
(どんだけ嫌われてんだよ伯爵)
コンコン
部屋がノックされ、執事の後ろを怯えた表情で歩く女性が入ってくる。
「こちらがメリッサ・ミルド様でございます」
「メ、メリッサです……」
現れた悪徳令嬢は気の弱そうなブロンド美人だった。
(お前、確実に悪徳令嬢に転生した奴だろ)
【美味しかった】
立ち退き騒動も無事解決し、朝になった。
「なあ、クロ坊?」
「詮索はするなという約束だぞ?」
「そりゃあ……そうなんだけどさ? お礼くらい言わせておくれよ」
立ち退きの件は話し合いにより解決した。
この国へ懺蛇の勢力を延ばす考えはなかったが、拠点にしているバラバラ亭で面倒事が起きてしまうのは鬱陶しい。それなら邪魔な組織を壊滅させてやろうと思い乗り込み、一番偉そうな男を出会い頭に殺すと簡単に服従した。
「知るか」
「ふっ、ありがとうよ」
お前らのためじゃない! と言いたかったが、それも面倒なので何も言わなかった。
「じゃあ、行って来る」
「はいよ、いってらっしゃい!」
ヴィトを剣の姿に戻らせ、寄り道もせず冒険者ギルドへと向かうと、アースハイドの冒険者ギルドと同じ形の建物が見えて来る。
「作画的には大助かりだな」
そう、異世界は配慮で出来ている。
ギルド内へと入ると汗臭さと獣臭が漂う。そして、朝からお馴染みの光景が繰り広げられている。
(クソほど並んでるな)
クロは空いている受付へと向かう。
「こちらは素材受付のカウンターです」
ロボットのように淡々と話す受付の女に少しイラッとする。
「指名依頼でアースハイドから来たAランク冒険者のクロだ。ギルド長に会わせてくれ」
「はあ?」
「もう一度説明が必要か?」
「結構です、依頼受付はあちらなので」
「融通の利かない受付だな」
「規則ですから」
「暇そうだけど?」
「そうでしょうね、朝一で素材を持って来る冒険者は稀なので」
クロは無駄な時間を過ごした。
このままゴネても時間の無駄になる、そう判断したクロは行列のできている依頼受付の最後尾に並ぶ。
「長い……」
朝一の依頼受付は激混みする。
皆が報酬の良い依頼を奪い合い、ギルド内は戦場と化してしまう。結果、クロの番が来るまでに三十七分かかった。
「指名依頼でアースハイドから来たAランク冒険者のクロだ。ギルド長に会わせてくれ」
「え、指名依頼!? わざわざ並んでいたんですか!?」
「こっちに行けって言われたのだが?」
クロは先ほどの受付の女の方を指差す。
「え!? あ……大変申し訳ございません! すぐにギルド長を!」
依頼受付の女は慌ててギルド長の元へと走って行くと、二階から慌てた感じで優男が降りてきた。
「君がフェルミナ推薦の冒険者のクロ君かい!?」
「あなたがギルド長ですか?」
「紹介がまだだったね、僕の名前はツウィン! ここでギルド長をしている。どうやら……うちの職員が失礼な態度を取ったみたいですまない!」
「どこにでも融通の利かない奴はいるもんでしょ」
「そう言ってもらえると助かるよ。彼女は優秀な子ではないんだ……所謂、コネ入社って奴でね? 困ったものだよ」
無口なツンデレ受付嬢が優秀だと、いつから錯覚していた?
「こんなところで話も何だから、こっちに来てもらえるかな?」
ツウィンはフェルミナと違い、物腰が柔らかいギルド長のようだ。
顔色の悪さが気になったが、きっと色々とあるのだろうとクロは察した。
「わざわざ来てもらってありがとう、さっそく今回の依頼の内容に移ってもいいかな?」
「ええ、構わないですよ」
ツウィンはクロの顔をジッと見る。
「君、その喋り方は作ってるね?」
「目上の人には敬意を払うのは当然でしょう」
社会人としては当然の義務だ。
「何か窮屈そうに喋るなあと思ってね」
「はあ、これでいいか? 俺としてはさっさと依頼内容を知りたいんだが」
「ははっ! 違和感が苦手でね、これでしっくり来たよ」
「いいから依頼を」
「うん、大まかに言うと貴族のご令嬢の護衛なんだけどね? あまり良くない噂があるご令嬢だよね」
「良くない噂?」
「我が儘、傲慢、短気、数えたらキリがないほどの悪徳令嬢なんだよ」
(悪徳令嬢ねえ……)
「そのご令嬢本人から、命を狙われているから腕利きの護衛を!って依頼でね。色々と紹介したんだけど断られてて困ってたんだよ」
「俺はそんな事でこの国まで呼び出されたのか?」
「そう言わないでくれよ、条件が他国の冒険者でA級以上の冒険者か歴戦の傭兵、国との関わりが少なく、頭の回転が早い者っていう無理難題なんだよ」
「細かいな」
「そんな奴いるかっ!ってフェルミナに愚痴を送ったらさ? 丁度良い人材が居るって言うじゃないか! だから頼むよ? ね?」
ミッションは悪徳令嬢の護衛依頼。
(うざそうな令嬢だな……面倒くさっ!)
「名前は、メリッサ・ミルド。ミルド伯爵のご令嬢だよ」
「引き受けた」
あまりのご都合主義に驚いたが、願ってもないチャンスが到来した。
クロは即答で依頼を引き受ける。
「そ、そうかい? 助かるよ」
食い気味で即答したクロに動揺したが、ツウィンは安堵のため息をつく。
「それで、面談はいつ?」
「今からでも向かって欲しい」
「了解した」
「依頼書と、この手紙を持って行けば会えるから、よろしくね」
クロはツウィンから依頼書と手紙を受け取ると、早速屋敷へと向かうのだった。
「大丈夫かな彼は……イテテテテっ! だれか胃薬を持ってきてくれないか?」
ウーツのギルド長という役職は精神的にしんどいようだ。
ミルド伯爵の屋敷に到着すると、門番に依頼書と手紙を手渡す。
「しばし待たれよ!」
二十四分ほど待たされると、中からメイドと執事の男が出てきた。
「こちらへ」
執事の男に促されるまま屋敷内へと入ると、応接室へ通される。
この部屋へ案内される途中に、激しい戦闘があったのか、破壊され燃えた跡が痛々しい部屋があった。
(どんだけ嫌われてんだよ伯爵)
コンコン
部屋がノックされ、執事の後ろを怯えた表情で歩く女性が入ってくる。
「こちらがメリッサ・ミルド様でございます」
「メ、メリッサです……」
現れた悪徳令嬢は気の弱そうなブロンド美人だった。
(お前、確実に悪徳令嬢に転生した奴だろ)
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