上 下
84 / 156
第二章 立志編

第84話 本気と書いてマジ

しおりを挟む
「なあゼクト? 俺は納得できないんだよ」

「なんだょ突然に~?」

「何で俺たちが謹慎しなくちゃならないだ!」

「リュウシン……」

 ゼクトとリュウシンは自分勝手な行動で問題を起こしたとしてクロに謹慎を言い渡され、あれから一週間が経過していた。

「だってそうだろ!? 俺達はずっと一緒にやってきた仲間だ! 調子に乗っているのはクロの方だろ!? ゼクトもそう思わないか?」

「リュウシン! 僕達は家族だよぉ? もう三人になってしまったけどねぇ。確かに最近のクロはちょっと変だけどぉ、家族がこんな事で仲違いするのは……」

「違うぞゼクト! 家族だからこそ間違いを正さなければならないんだ! このままだとクロはただの暴君になってしまう」

「じゃあどうするのさぁ?」

「ボスの座から引き摺り下ろすのさ」

「ねぇリュウシン? それはクーデターって言うんだよぉ?」

「クロの為だ! このままじゃクロも俺達も……懺蛇そのものが終わる! やるしかないんだよゼクト!」

「ん~確かにリュウシンの言う事には一理あるよねぇ……でもどうやって引き摺り下ろすのさ?」

「ゼクトの斥候としての諜報能力と、俺の暗殺術を駆使して一人になったクロを拘束、その上で自らボスの座を明け渡すと言わせればいいだろ?」

「拒否したらぁ?」

「……殺すしかない」

「本気?」

 殺すというリュウシンの発言にゼクトは一瞬怯む。

 だが、クーデターを起こすというのはそういう事なのだと改めて認識しなければならない。

「俺は本気だ! 今回の事は家族に対する態度じゃない。組織? その前に優先するべきなのは家族だろ!? うすうすは感じていたがクロは俺達の事を家族なんて思っちゃいない! 今回の事でそれがよくわかった」

「リュウシン……わかったよぉ……やるなら徹底的にやろう」

 ゼクトはリュウシンの決意を受けとめ、クロと対峙する覚悟を決める。

 ~~~~~~

「若、お知らせしなければならない事が……」

 「ボン爺のところの陰の者か? どうした?」

 勇者イリアに拠点を破壊され、行き場をなくした懺蛇の者は建設中のカジノビルの一画を改装し、居住スペースを優先的に作らせた。クロの寝室には緊急時に連絡がすぐに受け取れるように陰の人間にのみ伝えられている秘密の通路が存在する。

「懺蛇内にてクーデターの兆しあり」

「はぁ、誰だよそんな馬鹿な事考える奴は」

 伝言にきた陰の声が詰まる。

「何か嫌な予感しかしないんだが?」

 陰は意を決して答える。

「ゼクト殿とリュウシン殿です」

「あの馬鹿共がっ!」

 嫌な予感は的中したと天を仰ぎ小さく呟く。

「ボン爺を呼べ」

「御意」

 クロはベッドから出てコップに水を入れ口に含むとため息を吐き、怒り任せに壁をを殴る。

「クロ様?」

「あ~すまないエリーナ、起こしてしまったか」

 エリーナは勇者イリアとの一件以来、スラム街での二人の仲が周知された事で一緒にいる事が多くなり、建設途中のカジノビルに拠点を遷すと知るやいなや、当たり前のようについてきた。なし崩しのような形ではあるが寝室を共にする仲にまで発展していた。

「酷い顔してますよ? 何かごさいましたか?」

 クロはエリーナに伝えるべきか一瞬迷ったが、常に一緒にいるエリーナにも危険が及ぶ可能性が捨てきれないのもあり、苦虫を潰したような顔で答える。

「……ゼクトとリュウシンが裏切った」

 エリーナもあの二人に限っては裏切る事はないと思っていた。そのため、返す言葉が見つからなかった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生したら悪役令嬢の兄になったのですが、どうやら妹に執着されてます。そして何故か攻略対象からも溺愛されてます。

七彩 陽
ファンタジー
 異世界転生って主人公や何かしらイケメン体質でチートな感じじゃないの!?ゲームの中では全く名前すら聞いたことのないモブ。悪役令嬢の義兄クライヴだった。  しかしここは魔法もあるファンタジー世界!ダンジョンもあるんだって! ドキドキワクワクして、属性診断もしてもらったのにまさかの魔法使いこなせない!?  この世界を楽しみつつ、義妹が悪役にならないように後方支援すると決めたクライヴは、とにかく義妹を歪んだ性格にしないように寵愛することにした。 『乙女ゲームなんて関係ない、ハッピーエンドを目指すんだ!』と、はりきるのだが……。  実はヒロインも転生者!  クライヴはヒロインから攻略対象認定され、そのことに全く気付かず義妹は悪役令嬢まっしぐら!?  クライヴとヒロインによって、乙女ゲームは裏設定へと突入! 世界の破滅を防げるのか!?    そして何故か攻略対象(男)からも溺愛されて逃げられない!? 男なのにヒロインに!  異世界転生、痛快ラブコメディ。 どうぞよろしくお願いします!

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

処理中です...