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第二章 立志編
第82話 組織として友として
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「ゼクト、一旦出直そう……」
「…………」
クロがあっという間にスラム街を掌握した事で、ゼクトは自分も強くなったと勘違いしていた。五人で同じ時間を過ごし、同じように戦闘技術も磨いてきた。
偶々持っていたスキルが斥候に向いていただけであって、全く戦闘をしないわけけではない。常に最前線の危険なところへ潜入し、敵に見つかれば自分で対処しなければならないような死線をくぐり抜けてきた自負もある。最近は斥候というより調整が多くなり、勘が鈍っていた感もあるが増長したことでボン爺の強さを見誤り、ここが本物の戦場であれば死んでいた。
「ゼクト!」
「聞こえてるよぉ……」
二人はそれ以上の会話を止め、無言のまま部屋を出ていった。
ドンっ! ボコッ!
「ぐあ!」 「ガハッ!」
部屋を出た瞬間、ゼクトとリュウシンは正面から攻撃を受け、それぞれ左右に吹き飛んだ。
「お前らここで何をしている?」
「クロ!」
「何するんだよぉ」
目の前に立っていたのはクロだった。二人が部屋に入っている事は事前に知っていたが、中に入るか迷っていた。ボン爺により静止されるのはわかっており、自分達の行動を反省するのならそのままやり過ごすつもりでもいた。しかし、出てきた二人の顔は反省より怒りや悔しさ、そして憤りの表情をしていた。そんな二人をクロは見過ごす事が出来なかった。
「リュウシン、なんでここにいる?」
クロの感情の篭っていない声色に空気がピリつく。
「ゼクトに拘束を解いてもらって……なあ! 聞いてくれよ! 師匠……ボン爺に邪魔されたんだよ! ここに俺達の敵がいるのによお! それなのに組織の幹部である俺達に刃を向けたんだぞ!?」
「これは問題だよねぇ? 後で相談しようと思ったんだよぉ組織の幹部に対して……」
ガンッ! ガンッ!
「くっ! 何するんだよクロ!」
「二度もぶった……」
「組織として? 幹部? 組織の調和を乱してるのはお前らだろ」
「は?」
「どういう意味かなぁ? 懺蛇はスラム街のトップだよぉ?」
「組織の幹部だから我儘が通るのか? お前らが正義だと勘違いしてんのか? あ?」
「力が全てだろ! ここはそういうところだろ!」
「どうしちゃったのクロぉ?」
「その力はお前ら個人の力か? 組織の力か?」
「懺蛇っていう組織の力だろ! 俺達はそこの幹部だぞ!?」
「組織の力って言うのなら尚更だな。幹部がルールを無視して自由に振る舞った挙げ句、下部組織の者にやられてすごすごと退散してきた? 俺ならそんな奴が組織の幹部だなんて嫌だな」
「なっ!」
「何を怒ってるんだよぉ」
「リュウシン、俺はお前を拘束して待機させるように命令をした。それをゼクトは幹部特権を利用して無理矢理連れ出した。組織として俺は命令を守れなかった奴らを処分しなならばならない」
「はぁ? 何を言ってんだよ! 処分て……」
「そ、そうだょ? 連れ出しただけじゃないかぁ」
「俺の命令に反いたんだから当然だろ?」
「おいおい! それはあまりにも暴君すぎるぞ!」
「そんな恐怖政治みたいな事をしてたら誰もついてこなくなるよぉ!」
「それが組織ってもんだ。例外を認めたら割れる」
ギィィィィ
ドアが開きボン爺が出てくる。
「ゼクト、リュウシン。お主らはまだわからんようだから儂から説明するぞ? 懺蛇のボスは若であり、その命令はどんな事よりも優先される。二人が若と旧知であり家族だとしてもだ。三人だけの話なら好きにしたらよろしい。だが、組織として他の者が関わった場合は若を立てなければならぬ。ボスとしての立場があるからの、今回はそんなボスの顔に泥を塗ったのだから誰かが責任を取らねばならぬ」
「そんな……この程度の事で……」
「ね、ねえ? その処分は誰がうけるの?」
「それは若の命に反いた者、この場合は拘束し待機させるように命令された者だろう」
「なっ!」
「そんな……」
「例外は認めない。お前らにも責任はあるからな? しばらく謹慎してろ」
「何で俺らが!? 元はと言えば……」
「それが組織というものじゃ」
組織の幹部だからこそ、その重責の意味を理解しないといけない。自分達の軽率な行動で本来なら散らなくてもよい命が散ってしまう。
「リュウシン、行こう……」
二人は青ざめた顔で地上へ戻っていった。
「はぁ……困ったもんだ」
「若、出来れば情状酌量の余地をいただけぬか?」
「あ~頼んだのはボン爺のところ連中だったな? 何かしらの処分はするが命までは取らないから心配するな」
「温情に感謝いたします」
組織が急激に大きくなった事で生じた問題が自分の身内から出た事に頭が痛いクロだった。
「…………」
クロがあっという間にスラム街を掌握した事で、ゼクトは自分も強くなったと勘違いしていた。五人で同じ時間を過ごし、同じように戦闘技術も磨いてきた。
偶々持っていたスキルが斥候に向いていただけであって、全く戦闘をしないわけけではない。常に最前線の危険なところへ潜入し、敵に見つかれば自分で対処しなければならないような死線をくぐり抜けてきた自負もある。最近は斥候というより調整が多くなり、勘が鈍っていた感もあるが増長したことでボン爺の強さを見誤り、ここが本物の戦場であれば死んでいた。
「ゼクト!」
「聞こえてるよぉ……」
二人はそれ以上の会話を止め、無言のまま部屋を出ていった。
ドンっ! ボコッ!
「ぐあ!」 「ガハッ!」
部屋を出た瞬間、ゼクトとリュウシンは正面から攻撃を受け、それぞれ左右に吹き飛んだ。
「お前らここで何をしている?」
「クロ!」
「何するんだよぉ」
目の前に立っていたのはクロだった。二人が部屋に入っている事は事前に知っていたが、中に入るか迷っていた。ボン爺により静止されるのはわかっており、自分達の行動を反省するのならそのままやり過ごすつもりでもいた。しかし、出てきた二人の顔は反省より怒りや悔しさ、そして憤りの表情をしていた。そんな二人をクロは見過ごす事が出来なかった。
「リュウシン、なんでここにいる?」
クロの感情の篭っていない声色に空気がピリつく。
「ゼクトに拘束を解いてもらって……なあ! 聞いてくれよ! 師匠……ボン爺に邪魔されたんだよ! ここに俺達の敵がいるのによお! それなのに組織の幹部である俺達に刃を向けたんだぞ!?」
「これは問題だよねぇ? 後で相談しようと思ったんだよぉ組織の幹部に対して……」
ガンッ! ガンッ!
「くっ! 何するんだよクロ!」
「二度もぶった……」
「組織として? 幹部? 組織の調和を乱してるのはお前らだろ」
「は?」
「どういう意味かなぁ? 懺蛇はスラム街のトップだよぉ?」
「組織の幹部だから我儘が通るのか? お前らが正義だと勘違いしてんのか? あ?」
「力が全てだろ! ここはそういうところだろ!」
「どうしちゃったのクロぉ?」
「その力はお前ら個人の力か? 組織の力か?」
「懺蛇っていう組織の力だろ! 俺達はそこの幹部だぞ!?」
「組織の力って言うのなら尚更だな。幹部がルールを無視して自由に振る舞った挙げ句、下部組織の者にやられてすごすごと退散してきた? 俺ならそんな奴が組織の幹部だなんて嫌だな」
「なっ!」
「何を怒ってるんだよぉ」
「リュウシン、俺はお前を拘束して待機させるように命令をした。それをゼクトは幹部特権を利用して無理矢理連れ出した。組織として俺は命令を守れなかった奴らを処分しなならばならない」
「はぁ? 何を言ってんだよ! 処分て……」
「そ、そうだょ? 連れ出しただけじゃないかぁ」
「俺の命令に反いたんだから当然だろ?」
「おいおい! それはあまりにも暴君すぎるぞ!」
「そんな恐怖政治みたいな事をしてたら誰もついてこなくなるよぉ!」
「それが組織ってもんだ。例外を認めたら割れる」
ギィィィィ
ドアが開きボン爺が出てくる。
「ゼクト、リュウシン。お主らはまだわからんようだから儂から説明するぞ? 懺蛇のボスは若であり、その命令はどんな事よりも優先される。二人が若と旧知であり家族だとしてもだ。三人だけの話なら好きにしたらよろしい。だが、組織として他の者が関わった場合は若を立てなければならぬ。ボスとしての立場があるからの、今回はそんなボスの顔に泥を塗ったのだから誰かが責任を取らねばならぬ」
「そんな……この程度の事で……」
「ね、ねえ? その処分は誰がうけるの?」
「それは若の命に反いた者、この場合は拘束し待機させるように命令された者だろう」
「なっ!」
「そんな……」
「例外は認めない。お前らにも責任はあるからな? しばらく謹慎してろ」
「何で俺らが!? 元はと言えば……」
「それが組織というものじゃ」
組織の幹部だからこそ、その重責の意味を理解しないといけない。自分達の軽率な行動で本来なら散らなくてもよい命が散ってしまう。
「リュウシン、行こう……」
二人は青ざめた顔で地上へ戻っていった。
「はぁ……困ったもんだ」
「若、出来れば情状酌量の余地をいただけぬか?」
「あ~頼んだのはボン爺のところ連中だったな? 何かしらの処分はするが命までは取らないから心配するな」
「温情に感謝いたします」
組織が急激に大きくなった事で生じた問題が自分の身内から出た事に頭が痛いクロだった。
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