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第二章 立志編
第69話 誇りを胸に
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「誰かボン爺のところにいるリュウシンに伝言を頼めるか?」
「わかりましたクロの兄貴! それで何と?」
「至急教会に来てくれ、バカ勇者一行がやってきたと」
今代の勇者がバカだという情報は懺蛇の中では共通認識である。集まってくる情報の一つひとつは勇者らしい戦果であり、その絶大な力は人類の希望と呼ばれるのに値する。しかし、それぞれを深掘りしていくと行動の浅はかさが目立ち偏った正義を振り翳した結果、最悪の事態にさせる厄災的な存在でしかない。実際に勇者以外のメンバーと遭遇しその認識が間違っていないと改めて思った。
「勇者と事を構えるんですね? 動ける奴総動員させますか?」
「バカ野郎、相手は規格外の力を持つ勇者だぞ? 人数集めたからって勝てる相手じゃない」
「クロの兄貴! それは違います! 俺達は兄貴に比べて弱いけど懺蛇なんです! 拠点潰されといて尻尾巻いて逃げるわけにはいかんのです!」
末端の構成員とは言え裏社会で生きる者。所属している組織に対する思いは強いようだ。
「手出しはするなよ? だがしかし、中途半端は嫌いだ。集めるなら懺蛇が持つ全ての暴力を集めろ」
「はい! 全組織に招集をかけます!」
「くれぐれも手は出すなと伝えろ。包囲するだけで良い」
「わかりました! おいっ! 行くぞ!」
「「「「「おうっ!」」」」
懺蛇の面々はそれぞれ面識のある組織へと走り、クロも教会へ急ごうと外は出ると野次馬達に囲まれた。
「クロさん! 俺達も力になりたい!」
「あんな奴らが勇者パーティーなんて思わなかった! スラム街の住民を舐めやがって……」
野次馬はやり取りの一部始終を見て自分達もと言わんばかりにイキリたっているが流石に一般人には危険すぎる。
「はぁ……お前ら一般人は安全なところに避難してろ! 邪魔だ!」
「クロさん……」
「でも俺達はあいつらを許せねぇ!」
表向きはスラム街の救済を掲げてはいたものの、それを拒絶されると手のひらを返し差別的な発言を繰り返す。十中八九それが本質で正義という看板がなくなればただの差別主義者でしかない。
そんな奴らとの戦闘に一般人を危険な目に合わせるわけにはいかない。クロは武器を持たない弱者、ゲーム的にいえばNPCや非戦闘職の人間には優しい。PKは無差別に人を殺し回ると勘違いされがちだが、クロがPKをするときにはある一定のルールを定めていた。
武器を持たない者を攻撃しない
歯向かってくる相手は誰であろうと殺す
徒党は組まず己の力のみで戦う
一見すると普通の事かもしれないが、PKを好む人種はただただ暴れ力を誇示する輩が多いのだ。
「その気持ちは受け取った。だから頼むから避難しててくれよな?」
「あんたがそういうなら……」
「よしっ! みんな! クロさん達が勇者を追っ払ったら宴をするぞ! それなら良いよな?」
思いのほか住民に慕われている事に感動しそうになる。
このスラム街へやって来てまだ日は浅く、あっという間に裏社会を牛耳ったので肝心なコミュニケーショは不足しがちみたいだと思っていた。しかし、ふたをあげてみればこんなも自分を支持してくれていた。
「わかった、さっさと片付けて宴会だ!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
雄叫びに似た歓声があがり鳴り止まない。クロはその歓声を背に教会へ向かうのだった。
「わかりましたクロの兄貴! それで何と?」
「至急教会に来てくれ、バカ勇者一行がやってきたと」
今代の勇者がバカだという情報は懺蛇の中では共通認識である。集まってくる情報の一つひとつは勇者らしい戦果であり、その絶大な力は人類の希望と呼ばれるのに値する。しかし、それぞれを深掘りしていくと行動の浅はかさが目立ち偏った正義を振り翳した結果、最悪の事態にさせる厄災的な存在でしかない。実際に勇者以外のメンバーと遭遇しその認識が間違っていないと改めて思った。
「勇者と事を構えるんですね? 動ける奴総動員させますか?」
「バカ野郎、相手は規格外の力を持つ勇者だぞ? 人数集めたからって勝てる相手じゃない」
「クロの兄貴! それは違います! 俺達は兄貴に比べて弱いけど懺蛇なんです! 拠点潰されといて尻尾巻いて逃げるわけにはいかんのです!」
末端の構成員とは言え裏社会で生きる者。所属している組織に対する思いは強いようだ。
「手出しはするなよ? だがしかし、中途半端は嫌いだ。集めるなら懺蛇が持つ全ての暴力を集めろ」
「はい! 全組織に招集をかけます!」
「くれぐれも手は出すなと伝えろ。包囲するだけで良い」
「わかりました! おいっ! 行くぞ!」
「「「「「おうっ!」」」」
懺蛇の面々はそれぞれ面識のある組織へと走り、クロも教会へ急ごうと外は出ると野次馬達に囲まれた。
「クロさん! 俺達も力になりたい!」
「あんな奴らが勇者パーティーなんて思わなかった! スラム街の住民を舐めやがって……」
野次馬はやり取りの一部始終を見て自分達もと言わんばかりにイキリたっているが流石に一般人には危険すぎる。
「はぁ……お前ら一般人は安全なところに避難してろ! 邪魔だ!」
「クロさん……」
「でも俺達はあいつらを許せねぇ!」
表向きはスラム街の救済を掲げてはいたものの、それを拒絶されると手のひらを返し差別的な発言を繰り返す。十中八九それが本質で正義という看板がなくなればただの差別主義者でしかない。
そんな奴らとの戦闘に一般人を危険な目に合わせるわけにはいかない。クロは武器を持たない弱者、ゲーム的にいえばNPCや非戦闘職の人間には優しい。PKは無差別に人を殺し回ると勘違いされがちだが、クロがPKをするときにはある一定のルールを定めていた。
武器を持たない者を攻撃しない
歯向かってくる相手は誰であろうと殺す
徒党は組まず己の力のみで戦う
一見すると普通の事かもしれないが、PKを好む人種はただただ暴れ力を誇示する輩が多いのだ。
「その気持ちは受け取った。だから頼むから避難しててくれよな?」
「あんたがそういうなら……」
「よしっ! みんな! クロさん達が勇者を追っ払ったら宴をするぞ! それなら良いよな?」
思いのほか住民に慕われている事に感動しそうになる。
このスラム街へやって来てまだ日は浅く、あっという間に裏社会を牛耳ったので肝心なコミュニケーショは不足しがちみたいだと思っていた。しかし、ふたをあげてみればこんなも自分を支持してくれていた。
「わかった、さっさと片付けて宴会だ!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
雄叫びに似た歓声があがり鳴り止まない。クロはその歓声を背に教会へ向かうのだった。
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