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第二章 立志編
第65話 冷静と情熱のあいだ
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カインとマリベルの遺体は教会へ運び込まれ、エリーナの手によって丁寧に棺桶に安置された。
リュウシンとゼクトは二人の訃報を聞きつけ駆けつけていた。
「カイン! マリベル! 嘘だろ!?」
「……クロ~これはどういう事なのかなあ?」
リュウシンは未だに信じられないといった感じで二人に語りかけ、ゼクトは怒りを抑え何が起こったのかを問いただす。
「すまん……全部俺の責任だ」
ボコッ! ガラガラガラッ!
リュウシンの拳がクロの顔面を捉え、吹き飛んだ勢いで並べてある椅子を薙ぎ倒していく。立ちあがろうとしないクロに馬乗りになり胸ぐらを掴むリュウシンをゼクトが静止する。
「だめだよリュウシン、クロの顔を見ればわかるでしょ?」
「わかってるさ! わかってるけど……」
「これはクロだけの責任じゃないよね? 僕らも同罪だよ……全員で行っていればっ!」
リュウシンはやり場のない怒りをクロにぶつけるしかなかった。それを理解しているクロも抵抗する事なく受け入れていた。しかし、ゼクトはその場に行かなかった自分達に責める権利はないと考えているのか、後悔の割合が大きかった。
「リュウシン様、ゼクト様……クロ様を責めないでください……」
「良いんだエリーナ、二人の好きなようにさせてやってくれ」
「でも……」
家族同然に生きてきた五人の内、二人が殺され痛々しい姿で帰ってきた。その悲しみと怒りは、エリーナの想像を遥かに超え立ち入ることが出来ない。
「誰がこの二人を殺した!?」
「僕もそれを知りたい」
クロはゆっくりと立ち上がり、二人に裏に停めてある馬車へついてこいと無言で誘なう。
馬車の荷台からスレイを二人の前に投げ捨て、簀巻きになったその姿を見た二人は察した。
「こいつが! クロッ! こいつがやったのか!?」
剣を抜いたリュウシンをゼクトが冷静に止める。ここでこいつを殺しては詳しい事がわからなくなるとわかっていたからだ。
ゼクトは平静を装っているが怒りのパラメータは振り切っている。辛うじて斥候という役割を担っているのもあり冷静さの大切さを誰よりもわかっている。
「リュウシン落ち着こうよ……見なよ? 片腕が無くなって、残った腕の指も全部折られてる……すぐにでも殺したかっただろうけど僕達の為に我慢してくれた。そうだよねクロ?」
「ああ、そいつは今回の依頼人で二人はそいつの取り巻きにやられたらしい。カインはマリベルを人質に取られ身動きが取れないまま嬲り殺されたそうだ……!!」
自分とエリーナのみが討伐に赴き、戻って来た時には二人が殺されていた事。悪霊とスレイが裏で繋がっていた事。目的は冒険者の殺し持ち物を剥ぎ取り売り払う事。取り巻き達は全て鏖殺した事。背後にメランコリ国の貴族が関わっている事を二人に説明した。
「冒険者の持ち物を売ったところで大した金にもならねぇだろ……こんな小物にカインとマリベルは殺されたのかよ……」
「ねえクロ? もちろん報復するんだよね?」
「当然だ、二人の無念は必ず!」
「いつだ!? いつ出発する!?」
リュウシンは涙をながし、剣先をクロに向けて叫ぶ。
「相手は貴族だ、確実に事を進める為には情報が必要になる」
「そうだね、怒りにまかせて乗り込んでも無駄死にしちゃ意味がないからね」
「何を悠長な事を!」
「リュウシン、お前は懺蛇の暗部だ。そんなお前が冷静を欠いてどうする! 報復は必ず実行する! そのためのにこいつを殺さず連れ帰ってきたんだ」
「じゃあ先ず何をしたらいいんだ!?」
「とりあえずこいつをボン爺のところに運んでくれ。そして裏ギルドに拷問を任せ情報を可能な限り吐かせろ」
「わかった」
「ゼクトはその情報を元により細かい情報を集めてくれ」
「了解」
「でもその前に……カインとマリベルが安らかに眠れるようにちゃんと葬儀をしてやろう」
二人は無言で頷くと教会の中へ戻っていった。
リュウシンとゼクトは二人の訃報を聞きつけ駆けつけていた。
「カイン! マリベル! 嘘だろ!?」
「……クロ~これはどういう事なのかなあ?」
リュウシンは未だに信じられないといった感じで二人に語りかけ、ゼクトは怒りを抑え何が起こったのかを問いただす。
「すまん……全部俺の責任だ」
ボコッ! ガラガラガラッ!
リュウシンの拳がクロの顔面を捉え、吹き飛んだ勢いで並べてある椅子を薙ぎ倒していく。立ちあがろうとしないクロに馬乗りになり胸ぐらを掴むリュウシンをゼクトが静止する。
「だめだよリュウシン、クロの顔を見ればわかるでしょ?」
「わかってるさ! わかってるけど……」
「これはクロだけの責任じゃないよね? 僕らも同罪だよ……全員で行っていればっ!」
リュウシンはやり場のない怒りをクロにぶつけるしかなかった。それを理解しているクロも抵抗する事なく受け入れていた。しかし、ゼクトはその場に行かなかった自分達に責める権利はないと考えているのか、後悔の割合が大きかった。
「リュウシン様、ゼクト様……クロ様を責めないでください……」
「良いんだエリーナ、二人の好きなようにさせてやってくれ」
「でも……」
家族同然に生きてきた五人の内、二人が殺され痛々しい姿で帰ってきた。その悲しみと怒りは、エリーナの想像を遥かに超え立ち入ることが出来ない。
「誰がこの二人を殺した!?」
「僕もそれを知りたい」
クロはゆっくりと立ち上がり、二人に裏に停めてある馬車へついてこいと無言で誘なう。
馬車の荷台からスレイを二人の前に投げ捨て、簀巻きになったその姿を見た二人は察した。
「こいつが! クロッ! こいつがやったのか!?」
剣を抜いたリュウシンをゼクトが冷静に止める。ここでこいつを殺しては詳しい事がわからなくなるとわかっていたからだ。
ゼクトは平静を装っているが怒りのパラメータは振り切っている。辛うじて斥候という役割を担っているのもあり冷静さの大切さを誰よりもわかっている。
「リュウシン落ち着こうよ……見なよ? 片腕が無くなって、残った腕の指も全部折られてる……すぐにでも殺したかっただろうけど僕達の為に我慢してくれた。そうだよねクロ?」
「ああ、そいつは今回の依頼人で二人はそいつの取り巻きにやられたらしい。カインはマリベルを人質に取られ身動きが取れないまま嬲り殺されたそうだ……!!」
自分とエリーナのみが討伐に赴き、戻って来た時には二人が殺されていた事。悪霊とスレイが裏で繋がっていた事。目的は冒険者の殺し持ち物を剥ぎ取り売り払う事。取り巻き達は全て鏖殺した事。背後にメランコリ国の貴族が関わっている事を二人に説明した。
「冒険者の持ち物を売ったところで大した金にもならねぇだろ……こんな小物にカインとマリベルは殺されたのかよ……」
「ねえクロ? もちろん報復するんだよね?」
「当然だ、二人の無念は必ず!」
「いつだ!? いつ出発する!?」
リュウシンは涙をながし、剣先をクロに向けて叫ぶ。
「相手は貴族だ、確実に事を進める為には情報が必要になる」
「そうだね、怒りにまかせて乗り込んでも無駄死にしちゃ意味がないからね」
「何を悠長な事を!」
「リュウシン、お前は懺蛇の暗部だ。そんなお前が冷静を欠いてどうする! 報復は必ず実行する! そのためのにこいつを殺さず連れ帰ってきたんだ」
「じゃあ先ず何をしたらいいんだ!?」
「とりあえずこいつをボン爺のところに運んでくれ。そして裏ギルドに拷問を任せ情報を可能な限り吐かせろ」
「わかった」
「ゼクトはその情報を元により細かい情報を集めてくれ」
「了解」
「でもその前に……カインとマリベルが安らかに眠れるようにちゃんと葬儀をしてやろう」
二人は無言で頷くと教会の中へ戻っていった。
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