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第二章 立志編
第46話 お前の物は俺の物
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「ようこそねぇ……刺客を送っておいて何言ってんだじいさん」
「口の利き方に気をつけろ童」
首領ボンは笑顔から一瞬で殺気を纏った眼光と言葉を発し威圧してきた。齢八十を越えていそうな見た目とは裏腹に実力は未だ衰えずといった感じだろうか、圧倒的な強者のオーラを醸し出している。
「ボン爺! これはどういう事だ? あん!?」
獣人の男は首領ボンの殺気に臆することもなく問いただす。
「何見てんだ小僧! 獣人がそんなに珍しいか!? あん!?」
「お前が喧嘩屋ガロウか?」
「だったらどうした!? 殺っちまうぞこら!!」
「いや、獣人の四天王って聞いてたから虎かライオンもしくはゴリラの獣人と思ってたんだよ……」
「俺がラーテルの獣人でお前に何か迷惑かけたか!? あん!?」
まさか喧嘩屋と呼ばれるほどの暴れん坊の獣人がアナグマだったとは思いもよらなかった。
「ラーテル? アナグマだろ」
「てめぇ……」
ガロウはこめかみに青筋を立て遅いかからんと立ち上がり近づいてくる。
「まあまあガロウさん、ここでの戦闘は御法度ですよ。君、懺蛇の頭領? リーダー? ボス? のクロさんだね。君も場を弁えなさい」
「好きに呼んでもらって構わない。あんたは奴隷区画の……ドルトランドか?」
「ドルトランドさんだ。左様、私は奴隷区画の支配人ドルトランドですよ」
「ゴブリンが奴隷を取り扱ってるとは驚きだ」
「ゴブリンですか……よく間違えられますが私は皮膚が緑なだけで人間ですよ」
「う、嘘だ……ろ?」
「偏見はやめていただきたい」
見た目は完全にゴブリンそのものなのに人間だと言い張る。皮膚が緑色の人間が存在するとは思えなかったが、本人がそう言うのだから人間なのだろう。
「おい小僧……後で話しつけようや」
ガロウは噂に違わぬ喧嘩っ早い性格のようだ。
「まあ懺蛇のクロさんそこに座りなさい。ガロウもこう言っている事だ、個人的な遺恨はこの会合が終わってから好きにやればいい」
クロはやれやれといった感じで首領ボンの正面に空いているソファに腰掛けた。
「さて、今回の議題なのだが……皆知っての通りウルティマが彼に潰された」
「んなもん弱ぇあのオカマが悪いだけだ! それ以外になんかあんのか!?」
「そうですね、ウルティマ氏は四天王とは名ばかりの人物でしたからね。消えてしまっても大した問題でもありますまい」
「ふむ、では歓楽区画の分配の話しをしようか」
「分配? 何を言ってる。潰したのは俺だ、お前らに何の関係がある?」
「ありありだ小僧! それは俺達が強えからに決まってんだろ!?」
「あそこは良い稼ぎ場になりますからねぇ、そんな場所を君一人じゃ持て余すでしょう」
「そういう事だ童、大人しく我々に従え。もしかして自分が四天王の一人になれると思ってここに来てしまったのか? 残念ながらまだまだ役不足だ」
せっかく手に入れた歓楽区画を横から強奪するつもりだったようで、クロが呼ばれた理由はその通達であり、でしゃばるなという釘刺しだった。
「舐められたもんだな……」
「舐めてるのではない。単純な話しだろう? ここで生きていきたいなら従え。それだけだ」
「小僧! もう帰っていいぞ!? あっ! だめだ! 部屋の端で正座して待ってろ。後で殺してやるからよう!」
「ポッと出の組織が顔役になれるわけがないでしょう? わかりましたか? こちらの用は済んだのでもう帰りなさい」
これがスラム街を牛耳っている男達の傲慢さといえよう。自分達以外は弱者で、弱者からは何を奪っても許される世界と思っている。
「おい、ゴブリン」
「はぁ……さっきも言いましたが……」
ガンっ! ボキッ!
クロはドルトランドに蹴りを放ち、首の骨が折れる音がした。
「ちっ!」
「奴隷が一つ壊れてしまったではないですか」
クロの蹴りが首を捉える寸前にドルトランドの奴隷が間に入り身代わりになっていた。
「なかなか良い蹴りしてんじゃねえか! おいボン爺! 話し合いは決裂だな!」
「童ぁ! これは儂からの最大の譲歩で、四天王に手を出した罪を歓楽区画を手放す事で許してやろうという慈悲だぞ?」
「罪? 笑わせてくれるな。スラム街になんの罪があるというんだ。強者が法律ってなら今この場でお前ら全員を相手してやるよ」
「ガッハッハッハッ! おい小僧、俺はお前のその考え方に賛成だ! ボン爺! 耄碌したなあ! こいつはバカじゃねえ! 大不変者だ!」
ガロウはソファとテーブルを蹴り飛ばし首領ボンを挑発する。
「やれやれ……マスターボン。話が決裂したようなので私はこれで失礼しますよ」
「まてよ、お前なんで帰れると錯覚してんだ?」
クロは腰に付けた魔法袋の中から剣を取り出し構えた。
「貴様ら勝手にこの部屋を荒らしおってからに……少しお仕置きが必要なようだな」
首領ボンはソファからゆっくりと立ち上がり戦闘体勢に入いる。
部屋の中は混沌とし、護衛としてついてきた者達の殆どはこの雰囲気に呑まれ混乱状態にあった。
「口の利き方に気をつけろ童」
首領ボンは笑顔から一瞬で殺気を纏った眼光と言葉を発し威圧してきた。齢八十を越えていそうな見た目とは裏腹に実力は未だ衰えずといった感じだろうか、圧倒的な強者のオーラを醸し出している。
「ボン爺! これはどういう事だ? あん!?」
獣人の男は首領ボンの殺気に臆することもなく問いただす。
「何見てんだ小僧! 獣人がそんなに珍しいか!? あん!?」
「お前が喧嘩屋ガロウか?」
「だったらどうした!? 殺っちまうぞこら!!」
「いや、獣人の四天王って聞いてたから虎かライオンもしくはゴリラの獣人と思ってたんだよ……」
「俺がラーテルの獣人でお前に何か迷惑かけたか!? あん!?」
まさか喧嘩屋と呼ばれるほどの暴れん坊の獣人がアナグマだったとは思いもよらなかった。
「ラーテル? アナグマだろ」
「てめぇ……」
ガロウはこめかみに青筋を立て遅いかからんと立ち上がり近づいてくる。
「まあまあガロウさん、ここでの戦闘は御法度ですよ。君、懺蛇の頭領? リーダー? ボス? のクロさんだね。君も場を弁えなさい」
「好きに呼んでもらって構わない。あんたは奴隷区画の……ドルトランドか?」
「ドルトランドさんだ。左様、私は奴隷区画の支配人ドルトランドですよ」
「ゴブリンが奴隷を取り扱ってるとは驚きだ」
「ゴブリンですか……よく間違えられますが私は皮膚が緑なだけで人間ですよ」
「う、嘘だ……ろ?」
「偏見はやめていただきたい」
見た目は完全にゴブリンそのものなのに人間だと言い張る。皮膚が緑色の人間が存在するとは思えなかったが、本人がそう言うのだから人間なのだろう。
「おい小僧……後で話しつけようや」
ガロウは噂に違わぬ喧嘩っ早い性格のようだ。
「まあ懺蛇のクロさんそこに座りなさい。ガロウもこう言っている事だ、個人的な遺恨はこの会合が終わってから好きにやればいい」
クロはやれやれといった感じで首領ボンの正面に空いているソファに腰掛けた。
「さて、今回の議題なのだが……皆知っての通りウルティマが彼に潰された」
「んなもん弱ぇあのオカマが悪いだけだ! それ以外になんかあんのか!?」
「そうですね、ウルティマ氏は四天王とは名ばかりの人物でしたからね。消えてしまっても大した問題でもありますまい」
「ふむ、では歓楽区画の分配の話しをしようか」
「分配? 何を言ってる。潰したのは俺だ、お前らに何の関係がある?」
「ありありだ小僧! それは俺達が強えからに決まってんだろ!?」
「あそこは良い稼ぎ場になりますからねぇ、そんな場所を君一人じゃ持て余すでしょう」
「そういう事だ童、大人しく我々に従え。もしかして自分が四天王の一人になれると思ってここに来てしまったのか? 残念ながらまだまだ役不足だ」
せっかく手に入れた歓楽区画を横から強奪するつもりだったようで、クロが呼ばれた理由はその通達であり、でしゃばるなという釘刺しだった。
「舐められたもんだな……」
「舐めてるのではない。単純な話しだろう? ここで生きていきたいなら従え。それだけだ」
「小僧! もう帰っていいぞ!? あっ! だめだ! 部屋の端で正座して待ってろ。後で殺してやるからよう!」
「ポッと出の組織が顔役になれるわけがないでしょう? わかりましたか? こちらの用は済んだのでもう帰りなさい」
これがスラム街を牛耳っている男達の傲慢さといえよう。自分達以外は弱者で、弱者からは何を奪っても許される世界と思っている。
「おい、ゴブリン」
「はぁ……さっきも言いましたが……」
ガンっ! ボキッ!
クロはドルトランドに蹴りを放ち、首の骨が折れる音がした。
「ちっ!」
「奴隷が一つ壊れてしまったではないですか」
クロの蹴りが首を捉える寸前にドルトランドの奴隷が間に入り身代わりになっていた。
「なかなか良い蹴りしてんじゃねえか! おいボン爺! 話し合いは決裂だな!」
「童ぁ! これは儂からの最大の譲歩で、四天王に手を出した罪を歓楽区画を手放す事で許してやろうという慈悲だぞ?」
「罪? 笑わせてくれるな。スラム街になんの罪があるというんだ。強者が法律ってなら今この場でお前ら全員を相手してやるよ」
「ガッハッハッハッ! おい小僧、俺はお前のその考え方に賛成だ! ボン爺! 耄碌したなあ! こいつはバカじゃねえ! 大不変者だ!」
ガロウはソファとテーブルを蹴り飛ばし首領ボンを挑発する。
「やれやれ……マスターボン。話が決裂したようなので私はこれで失礼しますよ」
「まてよ、お前なんで帰れると錯覚してんだ?」
クロは腰に付けた魔法袋の中から剣を取り出し構えた。
「貴様ら勝手にこの部屋を荒らしおってからに……少しお仕置きが必要なようだな」
首領ボンはソファからゆっくりと立ち上がり戦闘体勢に入いる。
部屋の中は混沌とし、護衛としてついてきた者達の殆どはこの雰囲気に呑まれ混乱状態にあった。
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