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第二章 立志編
第36話 悪人のふりをした善人
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デニスが去った後、エリーナは笑顔でこちらの様子を伺っている。神の寵愛を受けるふだけあって見た目は美しいが、中身は少し変わっている。まさか神があんな軽い奴だとは思いもよらず、クロの事を把握していたのはさすが神と呼ばれる存在であると言えるが何もかも適当すぎる。
「えっと……エリーナさん?」
「エリーナとお呼び下さい騎士様!」
「騎士様はやめて欲しいのだが……」
「私を守る騎士様なのでは?」
どうしても、騎士や勇者など正義の名が付きそうな肩書きは虫唾が走り生理的に受け付けない。
「エリーナを守るとデニスと約束はしたからそれは安心してくれ。ただ俺の今の立場やこれからの計画に変更はない。だから今から話す内容次第では俺に嫌悪感を抱く可能性がある。だこらその場合は君からデニスに抗議して無かった事にして欲しい」
「クロ様は私の事がお嫌いですか?」
「嫌いも何も今日会ったばかりの人間を簡単に信用できるのか?」
「出来ますとも! だってクロ様はデニス様の使徒に選ばれたのですから」
「え? 使徒? どう言う事?」
「デニス様からの神託を受諾しましたでしょ? それはデニス様に代わりを下界するという意味で、それは神に選ばれた使徒にしか成せない事ですよ?」
あまりにも軽い神からのお願いだった。故に気軽に返事をしてしまったが常識的に考えると中々に重い使命を言い渡させた事になり、それは神の使徒にしかできない。
聖女を守護する者という称号が付きそうで怖い。
「まあなるようになるか……」
人間諦めも肝心、神のお墨付きと捉えればこれから行う事も、起こり得る惨劇も許可されたものだと解釈することにした。
「それで、クロ様はどうなさりたいのですが?」
「あぁ、一先ず俺の素性というか立場的な話しをする。俺は今スラム街の住民区間を根城にした懺蛇という名の組織のボスをしている」
「まあ! クロ様は偉い方だったのですね!」
「社会的には悪だと思うよ? 聖女様に言う内容ではないけど、この先俺はスラム街を掌握するつもりだ」
「悪い人達を退治するのですね!」
「間違ってはいないけど……そこに正義感はない。俺は俺のやりたいようにやって、邪魔する奴を殺す事すら厭わない」
「必要悪というものですね!」
「俺は善人ではないんだよ」
「はい! 悪人のふりをした善人です!」
正義の押し売りは嫌いだと思っていたが、自分達がやっている事も正義の押し売りなのだろうかと疑問に思う。ただクロ達の正義は利益が前提にあり不純だ。名誉があるかないかの違いでモノの捉え方は変わってくる。
「はぁ……もういいや、エリーナは戦うの嫌なんだろ?」
「私は戦いたくないわけではないのです。守るべきモノがあるのにそれを差し置いて旅に出る事の意味が私にはわからないのです。それにクロ様、私はスラム出身の孤児です。聖職者になってますが人の悪意に対して無抵抗で居るほどお人好しではありませんよ?」
蛇の道は蛇。この聖女の本質は変わってないのだと思った。であるなら仲間にするという選択肢も視野に入れて良いかもしれない。
「もうわかっていると思うが俺は転生者だ」
「はい、デニス様との会話を聞きながらそう思いました」
「転生前の世界では、ある特殊な道具を使い、擬似的に殺しを楽しむ娯楽があってな。この世界はそれに似ているんだ。だから俺は人の命を軽く見ている」
エリーナは理解しようと黙って話を聞いている。
「快楽のために殺人をするつもりはないが、俺に関わるなら必然的にそういう場面に立ち会うことになる。それは聖職者として、いや聖女として耐える事ができるのか?」
「私は……私の大切と思える人に危害が及ばないのであれば構いません」
「危害がか……わかった、こういう事だな? 神との約定により聖女エリーナとその関係者を守る事を誓う! これで良いか?」
「はいっ! どこまでもクロ様について行きます!」
神の神託とはいえ、正式にエリーナとの契約が成立した。報酬は今のところないが、簡単に顕現するデニスの事だその時に何か欲しいものがあればねだってやろうと心に誓った。
「とこほでクロ様? どうして勇者をと断りになられたのです?」
なぜ勇者を断った?そんなの簡単な理由だ。
「嫌いだからだよ」
勇者プレイなんてお断りだ。
「えっと……エリーナさん?」
「エリーナとお呼び下さい騎士様!」
「騎士様はやめて欲しいのだが……」
「私を守る騎士様なのでは?」
どうしても、騎士や勇者など正義の名が付きそうな肩書きは虫唾が走り生理的に受け付けない。
「エリーナを守るとデニスと約束はしたからそれは安心してくれ。ただ俺の今の立場やこれからの計画に変更はない。だから今から話す内容次第では俺に嫌悪感を抱く可能性がある。だこらその場合は君からデニスに抗議して無かった事にして欲しい」
「クロ様は私の事がお嫌いですか?」
「嫌いも何も今日会ったばかりの人間を簡単に信用できるのか?」
「出来ますとも! だってクロ様はデニス様の使徒に選ばれたのですから」
「え? 使徒? どう言う事?」
「デニス様からの神託を受諾しましたでしょ? それはデニス様に代わりを下界するという意味で、それは神に選ばれた使徒にしか成せない事ですよ?」
あまりにも軽い神からのお願いだった。故に気軽に返事をしてしまったが常識的に考えると中々に重い使命を言い渡させた事になり、それは神の使徒にしかできない。
聖女を守護する者という称号が付きそうで怖い。
「まあなるようになるか……」
人間諦めも肝心、神のお墨付きと捉えればこれから行う事も、起こり得る惨劇も許可されたものだと解釈することにした。
「それで、クロ様はどうなさりたいのですが?」
「あぁ、一先ず俺の素性というか立場的な話しをする。俺は今スラム街の住民区間を根城にした懺蛇という名の組織のボスをしている」
「まあ! クロ様は偉い方だったのですね!」
「社会的には悪だと思うよ? 聖女様に言う内容ではないけど、この先俺はスラム街を掌握するつもりだ」
「悪い人達を退治するのですね!」
「間違ってはいないけど……そこに正義感はない。俺は俺のやりたいようにやって、邪魔する奴を殺す事すら厭わない」
「必要悪というものですね!」
「俺は善人ではないんだよ」
「はい! 悪人のふりをした善人です!」
正義の押し売りは嫌いだと思っていたが、自分達がやっている事も正義の押し売りなのだろうかと疑問に思う。ただクロ達の正義は利益が前提にあり不純だ。名誉があるかないかの違いでモノの捉え方は変わってくる。
「はぁ……もういいや、エリーナは戦うの嫌なんだろ?」
「私は戦いたくないわけではないのです。守るべきモノがあるのにそれを差し置いて旅に出る事の意味が私にはわからないのです。それにクロ様、私はスラム出身の孤児です。聖職者になってますが人の悪意に対して無抵抗で居るほどお人好しではありませんよ?」
蛇の道は蛇。この聖女の本質は変わってないのだと思った。であるなら仲間にするという選択肢も視野に入れて良いかもしれない。
「もうわかっていると思うが俺は転生者だ」
「はい、デニス様との会話を聞きながらそう思いました」
「転生前の世界では、ある特殊な道具を使い、擬似的に殺しを楽しむ娯楽があってな。この世界はそれに似ているんだ。だから俺は人の命を軽く見ている」
エリーナは理解しようと黙って話を聞いている。
「快楽のために殺人をするつもりはないが、俺に関わるなら必然的にそういう場面に立ち会うことになる。それは聖職者として、いや聖女として耐える事ができるのか?」
「私は……私の大切と思える人に危害が及ばないのであれば構いません」
「危害がか……わかった、こういう事だな? 神との約定により聖女エリーナとその関係者を守る事を誓う! これで良いか?」
「はいっ! どこまでもクロ様について行きます!」
神の神託とはいえ、正式にエリーナとの契約が成立した。報酬は今のところないが、簡単に顕現するデニスの事だその時に何か欲しいものがあればねだってやろうと心に誓った。
「とこほでクロ様? どうして勇者をと断りになられたのです?」
なぜ勇者を断った?そんなの簡単な理由だ。
「嫌いだからだよ」
勇者プレイなんてお断りだ。
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