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第二章 立志編

第31話 アースハイド帝国

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 クロ達は小さな町で冒険者となり、護衛任務でアースハイド帝国の帝都まで来ていた。

「はい、これでクエスト完了です! 報酬はあちらでお受け取り下さい!」

「ありがとう」

「あ、あの! ついでに新しいクエストを……あっ///」

 代表してクロが手続きをし、報酬を受け取った。受付嬢が引き止める言葉を遮りるように笑顔を向け、仲間達の元へ戻っていった。

「これっぽっちかよ!」

「ルーキーの俺達を雇ってくれただけでも奇跡だろ」

「そんな事言ってもよお! リュウシンは納得できるのかよ!?」

「カインは本当に冒険者に憧れてたからねぇ~現実をみてショックうけちゃったのかなぁ~?」

「世知辛いなあ冒険者……」

「もう! クロ様が言ったこと忘れたの!? 私達の目的は冒険者になってお金を稼ぐ事じゃないでしょ!」

 冒険者になったのは理由がある、というよりならざるを得なかったというのが正しい。
 身寄りもなく、後ろ盾もない若者五人が身分を証明するのは不可能であった。冒険者は色々と制約はあるがランクが低くかろうがどの国でもフリーパスになる。定期的に仕事をしないと失効するため、今回はランクが低くても実力を示す事ができれば受注可能という護衛任務にありつけた。

「変に目立ちたくはないからな、クエストの受注は最低限でいいんだ」

「まあ、冒険者になれた事だし! いいか!」

 カインは思った事をすぐに口にしているだけで、不満が強いわけではない。

「それで~? これからどうするぅ~?」

「まあ、ひとまず飯を食いながら話そう」

「賛成です!」

「俺は肉がいい!」

「そうだねぇ~お腹ぺこぺこ~」

「俺は辛い物がいい」

 何かいい感じ風の酒場に入りそれぞれ注文するし、一息つくとクロからこれからの行動指針が告げれらる。

「リュウシンは情報収集だ。特に裏関係のな」

「裏の?」

「あぁ、俺は表の名声はいらない。目立つつもりも無ければ、人助けをするつもりも無い。だから裏社会で成り上がろうと思う」

「殺しは?」

「今はまだいい。あくまでも情報収集だからな? 不用意に殺し、運悪くこの街のトップと争うのは今は避けたい」

「了解した」

「ゼクトはこの街の表の情報収集だ」

「何を優先したらいいのかなぁ~?」

「商会を中心にこの街の流行と、できれば有力な商人との伝手が欲しい」

「頑張るよぉ~」

「マリベルは給仕として潜入だ」

「はい!」

「そうだな……宿屋もしくは食堂だ」

「そこで何を?」

「冒険者の動向、把握を頼む」

「わかりました! 精一杯頑張ります!」

「カインは俺に付いてくるだけでいい」

「え? それだけ?」

「それだけ」

「………………わかった」

 それぞれの役割が決まり、クロは魔法袋の中から一ヶ月分の軍資金を渡すと解散した。

「なあクロ? その中どのくらい金貨が入ってんだ?」

「三年は遊んで暮らせるくらいだな」

「まじかよっ! いつだ! どこから盗んだ!」

 十年もの間、蒼穹の叡智に所属し給与が出ていたわけじゃない。金品を持っていても使うことがないのもあり、食料や嗜好品が与えられていた。

「お前はずっとあそこにいるつもりだったんだろうけど、俺は少なくてもあと一年したら出て行くつもりだったからな」

「は? 初耳なんだけど?」

「だからマリエラやマクベストに金品をある程度横流しして、残りは手元に置いてたんだよ」

「だから! その金品はどこから手に入れたって言ってんだよ」

「お前はバカなのか? 襲って押収した積荷からに決まってるだろ」

 クロは漠然と十年間を過ごしていたわけではない。力の使い方を覚え、この世界の成り立ちや常識を学び、旅立つ日に備えていた。その事はマリエラも知っており、四人をクロに託した理由は彼らが使えるからではなく、いつでも旅立つ準備が出来ているクロについて行けば生きていけると思ったからである。

「それで俺達はどうするんだ? とりあえず宿屋にでも泊まるのか?」

「宿代もばかにならないからな。当分は野宿だ」

「まじかよっ! 三年は遊んで暮らせる金あんだろ!?」

「はぁ~カイン、この金は俺達が成り上がるために必要な金だ。必要最低限の支出以外使うつもりはない。お前は少し考える頭を持たないと飢え死にするぞ」

「くっ! 何も言い返せねえ!」

「スラムだ、俺達の拠点はスラム。そこから這い上がる」

「穴蔵から街に出てきたからちょっと出世したなクロ」

 クロ達の新しい生活はこのスラム街から始まり、後に帝都の裏社会は五人の悪童の登場で混乱を招くことになる。
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