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第二章 立志編
第24話 勇者イリア
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「撤退!? クロ!!」
「何が起きてる?」
本隊からの狼煙は不測の事態が起きたという合図でもある。
『クロ、直ぐにそこを離れて! 勇者が現れたらしい』
『は?』
内情を知らない者からすれば善良な神官の馬車が盗賊に襲われている図ではあり、義賊と謳っていてもやっている事は盗賊と変わりないそういう事だ。
「はぁ……これだから勇者は」
「勇者かぁ~! 一度見てみたいな」
「やめとけ、幻想が崩れる」
勇者は正義の味方、人類の希望なんて言われているが、所詮は自己満の正義ナルシストな存在でしかない。
「なあ? 一応積荷の確認だけでもしないか?」
「カイン、お前は見たいだけだろ?」
エルフが運ばれていると事前情報で聞いていたので、男としては捨て置かない。エルフはロマンだ。
「ほらっ! 早く! 時間もないんだしよお!」
「見たらすぐに撤退するからな」
クロもなんだかんだ言いながらも男のロマンには勝てなかった。
鉄格子に覆われた布を剥ぎ取るとそこには鎖で繋がれたエルフの女性が居た。
「うぉぉ! エルフだ!」
ボコッ!
「痛え! 何するんだよクロ!」
「バカヤロウ! 怯えてんだろ!」
怯えながらもこちらを睨むエルフを見てクロは胸糞悪い気分になる。
「あ~なんだ? 信じてもらえるかわからないけど、あんたを助けにきてたんだけど……」
「あなた達は何!? 目的は何なの!?」
「ん~だから、あんたを解放するために襲ったというか」
「私を攫ってどうするの!」
「ちょっと黙れ」
「ひっ!」
時間がないのもあるが、結局は置いていくので面倒臭くなった。
「おいおいクロさんよぉ~」
「お前も黙ってろ」
「お、おう……」
「当初の目的はあんたを助けて解放するのが目的だった。しかし、どうやら勇者が襲っている俺達の仲間を攻撃してそれが台無しになった」
「えっ!? なんで勇者様が!? で、でも勇者様が来てくれたなら……」
「あ~あんまり期待するなよ? 勇者ってバカだから助けたら良いとしか思ってないからな?」
「あなた達盗賊よね? だったら……」
「普通ならね? 俺達はもう行くけど、あんたどうなるか知ってた? 伯爵に売らるところだったんだわ。それでもし、この後勇者に助けられてその伯爵に庇護されたらどうなる? そういう事」
「ちょっと待って!? それってどういう」
「あんたの運が良い事を祈るよ」
「い、いや待って!」
ドォォォォォォォンッ!!!
「おいクロ! やべえ!」
「潮時だな。じゃあなエルフさん?」
「お願い! 待って!! お願い!」
「カイン! 拠点に戻るぞ」
「いいのか?」
「これも運命だろ?」
「はぁ~そうかぁ……てか、この首どうする?」
「その辺に捨てとけ」
悲痛な叫びのエルフを置き去りにし、二人はマリベル達と合流し拠点へと引き返す事にした。
~~~~~~~~~
マクベストは困惑していた。
「なあ勇者さん達よ? あんたらが今何をしているかちゃんと理解してる?」
「黙れ外道! 善良な神官を襲い略奪をしている盗賊風情が何を言っても無駄よ!」
「いやまあ間違っちゃあいないんだが……説明したよね?」
この勇者達は話が通じない。攻撃を交わしながら何度も説明しているが、聞く耳すら持ってない。とても厄介な存在だ。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
「うおっ!」
ドォォォォォォォンッ!!!!!
「おいおい……バケモンかよ! これが勇者イリアの力か」
振り抜かれた剣から放たれた斬撃の衝撃で道が抉れ、様々なモノをなぎ倒しては破壊し見通しの良い景色となった。
「ちょっとイリア! やりすぎよ!」
勇者パーティーの一人が叫ぶ。
「あれ? 私またやっちゃった??」
勇者とは無自覚に力を行使する生き物だ。
「何が起きてる?」
本隊からの狼煙は不測の事態が起きたという合図でもある。
『クロ、直ぐにそこを離れて! 勇者が現れたらしい』
『は?』
内情を知らない者からすれば善良な神官の馬車が盗賊に襲われている図ではあり、義賊と謳っていてもやっている事は盗賊と変わりないそういう事だ。
「はぁ……これだから勇者は」
「勇者かぁ~! 一度見てみたいな」
「やめとけ、幻想が崩れる」
勇者は正義の味方、人類の希望なんて言われているが、所詮は自己満の正義ナルシストな存在でしかない。
「なあ? 一応積荷の確認だけでもしないか?」
「カイン、お前は見たいだけだろ?」
エルフが運ばれていると事前情報で聞いていたので、男としては捨て置かない。エルフはロマンだ。
「ほらっ! 早く! 時間もないんだしよお!」
「見たらすぐに撤退するからな」
クロもなんだかんだ言いながらも男のロマンには勝てなかった。
鉄格子に覆われた布を剥ぎ取るとそこには鎖で繋がれたエルフの女性が居た。
「うぉぉ! エルフだ!」
ボコッ!
「痛え! 何するんだよクロ!」
「バカヤロウ! 怯えてんだろ!」
怯えながらもこちらを睨むエルフを見てクロは胸糞悪い気分になる。
「あ~なんだ? 信じてもらえるかわからないけど、あんたを助けにきてたんだけど……」
「あなた達は何!? 目的は何なの!?」
「ん~だから、あんたを解放するために襲ったというか」
「私を攫ってどうするの!」
「ちょっと黙れ」
「ひっ!」
時間がないのもあるが、結局は置いていくので面倒臭くなった。
「おいおいクロさんよぉ~」
「お前も黙ってろ」
「お、おう……」
「当初の目的はあんたを助けて解放するのが目的だった。しかし、どうやら勇者が襲っている俺達の仲間を攻撃してそれが台無しになった」
「えっ!? なんで勇者様が!? で、でも勇者様が来てくれたなら……」
「あ~あんまり期待するなよ? 勇者ってバカだから助けたら良いとしか思ってないからな?」
「あなた達盗賊よね? だったら……」
「普通ならね? 俺達はもう行くけど、あんたどうなるか知ってた? 伯爵に売らるところだったんだわ。それでもし、この後勇者に助けられてその伯爵に庇護されたらどうなる? そういう事」
「ちょっと待って!? それってどういう」
「あんたの運が良い事を祈るよ」
「い、いや待って!」
ドォォォォォォォンッ!!!
「おいクロ! やべえ!」
「潮時だな。じゃあなエルフさん?」
「お願い! 待って!! お願い!」
「カイン! 拠点に戻るぞ」
「いいのか?」
「これも運命だろ?」
「はぁ~そうかぁ……てか、この首どうする?」
「その辺に捨てとけ」
悲痛な叫びのエルフを置き去りにし、二人はマリベル達と合流し拠点へと引き返す事にした。
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マクベストは困惑していた。
「なあ勇者さん達よ? あんたらが今何をしているかちゃんと理解してる?」
「黙れ外道! 善良な神官を襲い略奪をしている盗賊風情が何を言っても無駄よ!」
「いやまあ間違っちゃあいないんだが……説明したよね?」
この勇者達は話が通じない。攻撃を交わしながら何度も説明しているが、聞く耳すら持ってない。とても厄介な存在だ。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
「うおっ!」
ドォォォォォォォンッ!!!!!
「おいおい……バケモンかよ! これが勇者イリアの力か」
振り抜かれた剣から放たれた斬撃の衝撃で道が抉れ、様々なモノをなぎ倒しては破壊し見通しの良い景色となった。
「ちょっとイリア! やりすぎよ!」
勇者パーティーの一人が叫ぶ。
「あれ? 私またやっちゃった??」
勇者とは無自覚に力を行使する生き物だ。
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