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第二章 立志編
第22話 義賊という名の盗賊蒼穹の叡智
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「よーし! お前ら行くぞ!」
山奥の村から連れ出され十年の月日が経った。当初は色々と反発し暴れたりもしたが、徐々に自分の置かれている立場や実力差を理解出来るようになり、恭順したふりをしながら力を磨くようになった。
名前もクロウからクロに変えられた。
マクベスト曰く「何か苦労しそうな名前だな! クロの方がお前らしく嫌な感じで良くね?」という名付けた親に失礼な発言だが、クロウ本人もクロの方がしっくりくるので簡単に受け入れた。
ここでの生活は悪くはない。必要なものは揃っており、修行相手は主にマクベストだった。
彼から学んだのは人体の壊し方という物騒なものだったが、ここで生き抜くためには必須の技術だったので率先して学んだ。
クロと同じような境遇を持つ同年代の仲間もこの十年で増えていった。
「なあクロ? 今日の襲撃目標って何?」
「知らん」
「もう! カインもクロ様も! どうして何も聞いてないの!」
カインも同時期に自称義賊と称する蒼穹の叡智という名のこの盗賊団に連れてこられた。
慣れない環境での共同生活はストレスがかかる。意見が合わず、何度もいがみ合ったりもしたが、寝食を共にし生活にも慣れていくにつれ自然と打ち解けていった。
「マリベルってさ、なんで俺の事は呼び捨てなのにクロは様付けなわけ!? 格差大きくない?」
マリベルは二つ年下の十三歳で、彼女がここに来たのは三年前からだ。
「カイン、それはしょうがない事だ」
「はぁ? リュウシンそれは聞き捨てならないなおい!」
リュウシンも二人とは同年代で、遠い東方出身らしく奴隷商に連れられこの国に来ていた。
そんな彼がとある貴族の屋敷へ運搬されているところを襲撃し保護された。それはマリベルと同時期の三年前の出来事で、襲撃にはクロも参加していた経緯がある。
「完全に実力差かな? アハハッ!」
「ゼクトの言葉が一番きつい!」
ゼクトは歳が一つ下で、クロとカインより少し後に保護された。
いつもニコニコして人当たりが良いと錯覚しそうになるが、放つ言葉は辛辣なので見た目のイメージとのギャップが激しい。
このクロ、カイン、ゼクトの三人は悪童三人衆と蒼穹の叡智内では言われており問題児だった。
事あるごとにマクベストからはお仕置きという名の修行が敢行されるが、矯正される事はなかった。
そこにリュウシンが加わった事で悪童が四人となり、ついには悪童四天王と呼ばれるようになった。
お仕置きという名の修行でさらに強さを増す四人の悪童は、幹部達の頭を悩ます原因となっている。
マリベルは子供達のリーダー的存在であるクロを、絶対的な存在だとして崇めている節があり、いつも尊敬の眼差しを送っている。
いつの日かクロのお嫁さんになれたら良いなと夢を見る魔法少女であるが、クロの事以外は比較的にまともな思考をしている。
「おい! 四バカ+マリベル! お前らは別行動だからな!」
マクベストは悪童四天王のお目付役の様な立場になってしまっている。
十年前との違いは片目に傷があり、胸にも大きな切り傷が痛々しく残っていた。その傷はクロの父であるロベルに付けられた傷らしく、かなり激しい戦いだったと、後にマリエラから聞かされた。
マクベストは「お前の親父は強かった! もし、現役だったら死んでたのは俺だった」と語ってくれた。
「へいへい、それでマリベル俺らはどこ行けばいいんだ?」
「はぁ……今回の目標は正教会の神官だよ! カインはクロ様の補佐! リュウシンとゼクトは斥候! 私は遠距離からの支援!」
「また補佐かよ! もうクロ一人で良くね? 俺いる?」
「クロ様に全部やらせるつもり? 殺すよ?」
「こわっ! クロ! 何とか言ってくれよ!」
「マリベル、いつもありがとう」
「はいっ///」
カインやリュウシン、ゼクトが一緒になってバカをしてくれるおかげで、殺伐とした環境にも関わらずクロは楽しく生きている。
マリベルもなんだかんだ言いながらも、クロ以外の三人の世話を焼くのも嫌いではなかった。その証拠に、五人でいる時だけは自然な笑顔が溢れている。
「それで、俺とゼクトが斥候なのはわかったが、本隊はどこに?」
「本隊は護衛の陽動と道の封鎖! 私達の目標は私腹を肥やして裏で奴隷を買い漁るベルンの神官長バスコスの殺害! そして積荷の回収よ」
「積荷?」
「クロ様、バスコスの積荷は奴隷で、情報ではエルフらしいです」
「エルフかぁ~可愛いんだろうなぁ~」
「ゼクト! 奴隷は解放した時に本人の意思でどうするか決めさせる掟だろ? 変な気を起こしたりするなよ」
「わかってるよ~カインと違ってちゃんとわかってるてぇ~アハハッ!」
「俺をなんだと思ってんだよ!」
「でも、この前勝手に連れ去ろうとして腕切り落とされそうになったよね~? あの時はクロが代わりにカインをボコボコにしたからお咎めなしになったけどね~」
「あ、あれは俺だけが悪いんじゃなくて、リュウシンも一枚絡んでたんだぞ? なのに俺だけ!」
緊張感のない会話をしながら襲撃地点までやってきた。
五人での行動が日常化している癖で、戦闘前はいつもだらけた会話をしているが、実行能力はどの隊よりも高い。
普段の行いで協調性がないと判断され、大隊に置く事が出来ずにいるが、クロを筆頭として五人だけで行動させると異常に実力を発揮するので、最近ではミッションの実行部隊となっている事が多くなっている。
「そろそろ行動に移そうか? リュウシンはゼクトの護衛と危険の排除、ゼクトは探知を全開にして目標の正確な位置を俺に飛ばしてくれ」
「「了解」」
「カインは俺と一緒に、いつものように合図をしたら暴れてくれ」
「おう!」
「マリベルは俺以外の全員に支援魔法を頼む」
「はい! 風の精霊よ神速の加護を力の精霊よ剛力の加護を与えたまえ!」
三人の身体が身体強化の魔法で光る。マリベルが使うのは精霊魔法で主に支援を得意とする。
真言により術を発動するため、強い魔法を放つ場合は詠唱が長くなってしまうのが欠点だ。
「その後はカインの援護を遠距離から頼む! リュウシンとゼクトは任務遂行後はマリベルのところまで撤退し、状況を判断して行動してくれていい。 じゃあ行こうか?」
全員の顔が戦闘モードに変わる。
「敵は容赦なく殺せ」
「「「「了解!」」」」
ミッションが開始される。
山奥の村から連れ出され十年の月日が経った。当初は色々と反発し暴れたりもしたが、徐々に自分の置かれている立場や実力差を理解出来るようになり、恭順したふりをしながら力を磨くようになった。
名前もクロウからクロに変えられた。
マクベスト曰く「何か苦労しそうな名前だな! クロの方がお前らしく嫌な感じで良くね?」という名付けた親に失礼な発言だが、クロウ本人もクロの方がしっくりくるので簡単に受け入れた。
ここでの生活は悪くはない。必要なものは揃っており、修行相手は主にマクベストだった。
彼から学んだのは人体の壊し方という物騒なものだったが、ここで生き抜くためには必須の技術だったので率先して学んだ。
クロと同じような境遇を持つ同年代の仲間もこの十年で増えていった。
「なあクロ? 今日の襲撃目標って何?」
「知らん」
「もう! カインもクロ様も! どうして何も聞いてないの!」
カインも同時期に自称義賊と称する蒼穹の叡智という名のこの盗賊団に連れてこられた。
慣れない環境での共同生活はストレスがかかる。意見が合わず、何度もいがみ合ったりもしたが、寝食を共にし生活にも慣れていくにつれ自然と打ち解けていった。
「マリベルってさ、なんで俺の事は呼び捨てなのにクロは様付けなわけ!? 格差大きくない?」
マリベルは二つ年下の十三歳で、彼女がここに来たのは三年前からだ。
「カイン、それはしょうがない事だ」
「はぁ? リュウシンそれは聞き捨てならないなおい!」
リュウシンも二人とは同年代で、遠い東方出身らしく奴隷商に連れられこの国に来ていた。
そんな彼がとある貴族の屋敷へ運搬されているところを襲撃し保護された。それはマリベルと同時期の三年前の出来事で、襲撃にはクロも参加していた経緯がある。
「完全に実力差かな? アハハッ!」
「ゼクトの言葉が一番きつい!」
ゼクトは歳が一つ下で、クロとカインより少し後に保護された。
いつもニコニコして人当たりが良いと錯覚しそうになるが、放つ言葉は辛辣なので見た目のイメージとのギャップが激しい。
このクロ、カイン、ゼクトの三人は悪童三人衆と蒼穹の叡智内では言われており問題児だった。
事あるごとにマクベストからはお仕置きという名の修行が敢行されるが、矯正される事はなかった。
そこにリュウシンが加わった事で悪童が四人となり、ついには悪童四天王と呼ばれるようになった。
お仕置きという名の修行でさらに強さを増す四人の悪童は、幹部達の頭を悩ます原因となっている。
マリベルは子供達のリーダー的存在であるクロを、絶対的な存在だとして崇めている節があり、いつも尊敬の眼差しを送っている。
いつの日かクロのお嫁さんになれたら良いなと夢を見る魔法少女であるが、クロの事以外は比較的にまともな思考をしている。
「おい! 四バカ+マリベル! お前らは別行動だからな!」
マクベストは悪童四天王のお目付役の様な立場になってしまっている。
十年前との違いは片目に傷があり、胸にも大きな切り傷が痛々しく残っていた。その傷はクロの父であるロベルに付けられた傷らしく、かなり激しい戦いだったと、後にマリエラから聞かされた。
マクベストは「お前の親父は強かった! もし、現役だったら死んでたのは俺だった」と語ってくれた。
「へいへい、それでマリベル俺らはどこ行けばいいんだ?」
「はぁ……今回の目標は正教会の神官だよ! カインはクロ様の補佐! リュウシンとゼクトは斥候! 私は遠距離からの支援!」
「また補佐かよ! もうクロ一人で良くね? 俺いる?」
「クロ様に全部やらせるつもり? 殺すよ?」
「こわっ! クロ! 何とか言ってくれよ!」
「マリベル、いつもありがとう」
「はいっ///」
カインやリュウシン、ゼクトが一緒になってバカをしてくれるおかげで、殺伐とした環境にも関わらずクロは楽しく生きている。
マリベルもなんだかんだ言いながらも、クロ以外の三人の世話を焼くのも嫌いではなかった。その証拠に、五人でいる時だけは自然な笑顔が溢れている。
「それで、俺とゼクトが斥候なのはわかったが、本隊はどこに?」
「本隊は護衛の陽動と道の封鎖! 私達の目標は私腹を肥やして裏で奴隷を買い漁るベルンの神官長バスコスの殺害! そして積荷の回収よ」
「積荷?」
「クロ様、バスコスの積荷は奴隷で、情報ではエルフらしいです」
「エルフかぁ~可愛いんだろうなぁ~」
「ゼクト! 奴隷は解放した時に本人の意思でどうするか決めさせる掟だろ? 変な気を起こしたりするなよ」
「わかってるよ~カインと違ってちゃんとわかってるてぇ~アハハッ!」
「俺をなんだと思ってんだよ!」
「でも、この前勝手に連れ去ろうとして腕切り落とされそうになったよね~? あの時はクロが代わりにカインをボコボコにしたからお咎めなしになったけどね~」
「あ、あれは俺だけが悪いんじゃなくて、リュウシンも一枚絡んでたんだぞ? なのに俺だけ!」
緊張感のない会話をしながら襲撃地点までやってきた。
五人での行動が日常化している癖で、戦闘前はいつもだらけた会話をしているが、実行能力はどの隊よりも高い。
普段の行いで協調性がないと判断され、大隊に置く事が出来ずにいるが、クロを筆頭として五人だけで行動させると異常に実力を発揮するので、最近ではミッションの実行部隊となっている事が多くなっている。
「そろそろ行動に移そうか? リュウシンはゼクトの護衛と危険の排除、ゼクトは探知を全開にして目標の正確な位置を俺に飛ばしてくれ」
「「了解」」
「カインは俺と一緒に、いつものように合図をしたら暴れてくれ」
「おう!」
「マリベルは俺以外の全員に支援魔法を頼む」
「はい! 風の精霊よ神速の加護を力の精霊よ剛力の加護を与えたまえ!」
三人の身体が身体強化の魔法で光る。マリベルが使うのは精霊魔法で主に支援を得意とする。
真言により術を発動するため、強い魔法を放つ場合は詠唱が長くなってしまうのが欠点だ。
「その後はカインの援護を遠距離から頼む! リュウシンとゼクトは任務遂行後はマリベルのところまで撤退し、状況を判断して行動してくれていい。 じゃあ行こうか?」
全員の顔が戦闘モードに変わる。
「敵は容赦なく殺せ」
「「「「了解!」」」」
ミッションが開始される。
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