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妖狐は永遠に泣く
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「きみ、ようかいなの?」
地べたに座る少女に、着物を着た華奢な少女が話しかけた。
なんで自分みたいな小汚い妖怪に話しかけるんだろう、妖狐である少女は目の前を一瞥した後また顔を下げた。
「これ、たべる?」
そう言われてまた顔を上げると、少女は巾着から飴を取り出した。
日の光を反射して鈍く光るそれは、とても美しく見えていた。
「・・・ん」
そっと飴玉を受け取って食べると、それはとても甘かった。
「私も妖怪になりたいなぁ」
あれからも彼女は、暇なのか妖狐の元を訪れていた。
「妖怪なんていいものじゃないよ」
「人間もいいものじゃないよ」
そうなのかもしれないが、恐怖も喜びも実際に体験しなければ真に理解するのは不可能だろう。
少女は足元に座る妖狐を見ながら、そっろ笑みを浮かべて言った。
「妖怪になったら、貴女とずっと一緒にいられるじゃない?」
そう言う少女の顔は、今まで見た何よりも輝いていた。
「ねぇ、飴玉ちょうだい?」
妖狐は雪に凍えようとも、彼女の前で儚げに微笑むのを止めない。
たとえお前のせいだと罵られ、石を投げつけられようとも、この思い出の場所を離れる事は無い。
「・・・わたしも、人間になりたいよぉ」
何があっても死ぬことの無い少女は、どれだけ縋っても逝ってしまった人に追いつく事は出来ない。
もう少女は、永遠に泣く事しか出来ない。
地べたに座る少女に、着物を着た華奢な少女が話しかけた。
なんで自分みたいな小汚い妖怪に話しかけるんだろう、妖狐である少女は目の前を一瞥した後また顔を下げた。
「これ、たべる?」
そう言われてまた顔を上げると、少女は巾着から飴を取り出した。
日の光を反射して鈍く光るそれは、とても美しく見えていた。
「・・・ん」
そっと飴玉を受け取って食べると、それはとても甘かった。
「私も妖怪になりたいなぁ」
あれからも彼女は、暇なのか妖狐の元を訪れていた。
「妖怪なんていいものじゃないよ」
「人間もいいものじゃないよ」
そうなのかもしれないが、恐怖も喜びも実際に体験しなければ真に理解するのは不可能だろう。
少女は足元に座る妖狐を見ながら、そっろ笑みを浮かべて言った。
「妖怪になったら、貴女とずっと一緒にいられるじゃない?」
そう言う少女の顔は、今まで見た何よりも輝いていた。
「ねぇ、飴玉ちょうだい?」
妖狐は雪に凍えようとも、彼女の前で儚げに微笑むのを止めない。
たとえお前のせいだと罵られ、石を投げつけられようとも、この思い出の場所を離れる事は無い。
「・・・わたしも、人間になりたいよぉ」
何があっても死ぬことの無い少女は、どれだけ縋っても逝ってしまった人に追いつく事は出来ない。
もう少女は、永遠に泣く事しか出来ない。
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