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173話、ビアガーデンでフルーツビール
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クランの町二日目のお昼頃。昨日お別れ食事会をした後皆で一泊し、クロエは朝食を食べたらそのまま自分の家へと戻ってしまった。
なのでいつも通り、私とベアトリスにライラで町の観光を始めていた。
クランの町は色んな土地の人々が寄り集まってできているので、市場なんかも様々な物が売っている。
それを物珍しげに見ていた時、急にベアトリスが言った。
「ビアガーデンに行きたいわ」
急になに言いだしてるんだろ。と思ってたら、ベアトリスが市場のお店とお店の間の壁を指さした。
そこには張り紙がされてあり、こう書いている。
ビアガーデン開催中。12時~24時。カゾンフラワーガーデンにて。
なるほど、ベアトリスはこの張り紙を見たからビアガーデンに行きたいと急に言いだしたのか。
でも、一つ疑問がある。
「ビアガーデンって……なに?」
「屋外でビールが飲めるイベントよ」
ビールか……つまりお酒か。
「別に行ってもいいけどさ、私お酒苦手なんだけど」
お酒好きのベアトリスが行きたがるのは分かるし、ライラもお酒飲めるからいい。でも私はお酒は苦手だから、屋外で飲むのはちょっと不安だ。しかもこんな真昼間に。
「大丈夫よ。ほらこの張り紙の下に書いてあるでしょ? フルーツビール提供中って」
「……フルーツビールってのにもピンと来ないんだけど」
言葉そのままを受け取ると、フルーツが入ってるように聞こえる。さすがにそんなわけないよね。
「ビールに果汁とかフルーツの香料が加えられているのをフルーツビールと呼ぶのよ。アルコール度数が低いのもあってジュースみたいに飲めるから、リリアでもきっと大丈夫だと思うけど」
ビールにフルーツ? ええ? 本当に?
以前飲んだ黒ビールを思い出す。ビールってあの独特の苦みと後味があるものだ。なのにフルーツの味が入ったら味のバランスが変にならないかな。
極端な話、甘くて苦いっていう変なことになりそう。
でも、こんな機会でもないと私がビアガーデンとやらに行くことは無いだろうと思うし、ベアトリスに付き合ってもいいかな。
「わかった。いいよ、行こうビアガーデン」
「やったわ!」
ベアトリスはお酒が飲めるのがそんなに嬉しいのか、ライラとハイタッチしていた。
……この二日酔い吸血鬼め。
ビアガーデンが開催されているカゾンフララーガーデンは、市場からそう遠くない場所にあった。
フラワーガーデンというだけあって、綺麗な花畑が広がっている公園だ。そこの芝生にたくさんの木製テーブル席が置かれていて、少し離れたテントでビールを販売していた。
昼間だというのに結構人でにぎわっている。お昼からお酒を飲めるなんて、こういうイベント時くらいしかないからかも。
「ビール以外にもおつまみが売ってるわね。ちょうどいいからここでお昼も食べましょう」
目に見えてウキウキしているベアトリスは、早足でビール売り場に向かった。それに遅れて私とライラはついていく。
「……本当だ。フルーツビールがある」
ベアトリスが言ったように、通常のビールの他フルーツビールも売っていた。有り難いことにアルコール度数も書かれてあり、低いのでは1パーセント未満でほぼジュースみたいなのもあった。これなら私でも飲めそう。
「おすすめある?」
ベアトリスに聞いてみる。
「私もフルーツビールは飲んだことないのよ、実は。リリアはアルコール苦手なんだし、度数が低くて甘めのがいいんじゃない? パイナップルとかどう? 甘いけど酸味もあってすっきりしてると思うわ」
「じゃあそれにしよ。ライラはどうするの?」
ライラもフルーツビールに興味あるのか、ふよふよ漂いながら見本のフルーツビールの匂いをそれぞれ嗅いでいた。
「私はりんごにするわ。とてもいい香りよ。ベアトリスは?」
「私は……ラズベリーはないのね、なら木苺にするわ」
意外にもベアトリスもフルーツビールだった。飲んだこと無いって言ってたし、そもそもフルーツビールに興味があってビアガーデンに来たかったのかも。
三人とも飲みたいビールを決めたので、後はお昼兼おつまみを買っていく。
焼き鳥、ポテトとウインナーの炒め物、イカのバター炒め、それとナッツ類を色々。
ビールとたくさんのおつまみを手にしてテーブル席へと着席する。お昼とは思えない光景だ。
三人ビールジョッキを手にして、軽くふちを打ちつけ合う。
「かんぱ~い」
ぐびっとパインのフルーツビールを一口。
しゅわっとした気持ちいい炭酸に、パインの甘みと香りが口に広がる。
ビール特有の苦みはほとんどなくて、でもやっぱりどこかビールの独特なクセがあり、ジュースのようでジュースではない感じがあった。
確かにこれはビールだ。ビールだけどフルーツをしっかり感じる。アルコール度数も低くて、私でもおいしく飲めた。
とはいえアルコールはアルコール。うっかり一気に飲み過ぎたら酔ってしまうだろうから気を付けよう。
そう自分を戒める私と違って、お酒に強いベアトリスとライラは良い飲みっぷりだった。
乾杯してからの一口目だというのに、ぐびぐび飲んでいき一気にジョッキの半分まで無くしてしまったのだ。
「っはぁ~~っ。やっぱりお酒はおいしいわねっ。こう日差しが熱い時のビールは最高だわ」
照りつける太陽の光を浴びながら、豪快にビールを飲むベアトリス。
……一応吸血鬼だよね? 吸血鬼のくせに日光浴びながらおいしそうにビール飲んでるのなんなの?
「りんごのビールおいしー! お代わりしてくるわ」
ライラもライラだ。昼間からビールがばがば飲む妖精ってなんなの。神秘性ゼロだよ。
お昼からビールを飲む吸血鬼と妖精を目の当たりにしていると、もはや白昼夢を見ているかのようだ。冷静に考えたら変な状況なんだよな、これ。
……まあいいか。今更だもんね。
ビールをそこそこにおつまみを食べていく私だった。
なのでいつも通り、私とベアトリスにライラで町の観光を始めていた。
クランの町は色んな土地の人々が寄り集まってできているので、市場なんかも様々な物が売っている。
それを物珍しげに見ていた時、急にベアトリスが言った。
「ビアガーデンに行きたいわ」
急になに言いだしてるんだろ。と思ってたら、ベアトリスが市場のお店とお店の間の壁を指さした。
そこには張り紙がされてあり、こう書いている。
ビアガーデン開催中。12時~24時。カゾンフラワーガーデンにて。
なるほど、ベアトリスはこの張り紙を見たからビアガーデンに行きたいと急に言いだしたのか。
でも、一つ疑問がある。
「ビアガーデンって……なに?」
「屋外でビールが飲めるイベントよ」
ビールか……つまりお酒か。
「別に行ってもいいけどさ、私お酒苦手なんだけど」
お酒好きのベアトリスが行きたがるのは分かるし、ライラもお酒飲めるからいい。でも私はお酒は苦手だから、屋外で飲むのはちょっと不安だ。しかもこんな真昼間に。
「大丈夫よ。ほらこの張り紙の下に書いてあるでしょ? フルーツビール提供中って」
「……フルーツビールってのにもピンと来ないんだけど」
言葉そのままを受け取ると、フルーツが入ってるように聞こえる。さすがにそんなわけないよね。
「ビールに果汁とかフルーツの香料が加えられているのをフルーツビールと呼ぶのよ。アルコール度数が低いのもあってジュースみたいに飲めるから、リリアでもきっと大丈夫だと思うけど」
ビールにフルーツ? ええ? 本当に?
以前飲んだ黒ビールを思い出す。ビールってあの独特の苦みと後味があるものだ。なのにフルーツの味が入ったら味のバランスが変にならないかな。
極端な話、甘くて苦いっていう変なことになりそう。
でも、こんな機会でもないと私がビアガーデンとやらに行くことは無いだろうと思うし、ベアトリスに付き合ってもいいかな。
「わかった。いいよ、行こうビアガーデン」
「やったわ!」
ベアトリスはお酒が飲めるのがそんなに嬉しいのか、ライラとハイタッチしていた。
……この二日酔い吸血鬼め。
ビアガーデンが開催されているカゾンフララーガーデンは、市場からそう遠くない場所にあった。
フラワーガーデンというだけあって、綺麗な花畑が広がっている公園だ。そこの芝生にたくさんの木製テーブル席が置かれていて、少し離れたテントでビールを販売していた。
昼間だというのに結構人でにぎわっている。お昼からお酒を飲めるなんて、こういうイベント時くらいしかないからかも。
「ビール以外にもおつまみが売ってるわね。ちょうどいいからここでお昼も食べましょう」
目に見えてウキウキしているベアトリスは、早足でビール売り場に向かった。それに遅れて私とライラはついていく。
「……本当だ。フルーツビールがある」
ベアトリスが言ったように、通常のビールの他フルーツビールも売っていた。有り難いことにアルコール度数も書かれてあり、低いのでは1パーセント未満でほぼジュースみたいなのもあった。これなら私でも飲めそう。
「おすすめある?」
ベアトリスに聞いてみる。
「私もフルーツビールは飲んだことないのよ、実は。リリアはアルコール苦手なんだし、度数が低くて甘めのがいいんじゃない? パイナップルとかどう? 甘いけど酸味もあってすっきりしてると思うわ」
「じゃあそれにしよ。ライラはどうするの?」
ライラもフルーツビールに興味あるのか、ふよふよ漂いながら見本のフルーツビールの匂いをそれぞれ嗅いでいた。
「私はりんごにするわ。とてもいい香りよ。ベアトリスは?」
「私は……ラズベリーはないのね、なら木苺にするわ」
意外にもベアトリスもフルーツビールだった。飲んだこと無いって言ってたし、そもそもフルーツビールに興味があってビアガーデンに来たかったのかも。
三人とも飲みたいビールを決めたので、後はお昼兼おつまみを買っていく。
焼き鳥、ポテトとウインナーの炒め物、イカのバター炒め、それとナッツ類を色々。
ビールとたくさんのおつまみを手にしてテーブル席へと着席する。お昼とは思えない光景だ。
三人ビールジョッキを手にして、軽くふちを打ちつけ合う。
「かんぱ~い」
ぐびっとパインのフルーツビールを一口。
しゅわっとした気持ちいい炭酸に、パインの甘みと香りが口に広がる。
ビール特有の苦みはほとんどなくて、でもやっぱりどこかビールの独特なクセがあり、ジュースのようでジュースではない感じがあった。
確かにこれはビールだ。ビールだけどフルーツをしっかり感じる。アルコール度数も低くて、私でもおいしく飲めた。
とはいえアルコールはアルコール。うっかり一気に飲み過ぎたら酔ってしまうだろうから気を付けよう。
そう自分を戒める私と違って、お酒に強いベアトリスとライラは良い飲みっぷりだった。
乾杯してからの一口目だというのに、ぐびぐび飲んでいき一気にジョッキの半分まで無くしてしまったのだ。
「っはぁ~~っ。やっぱりお酒はおいしいわねっ。こう日差しが熱い時のビールは最高だわ」
照りつける太陽の光を浴びながら、豪快にビールを飲むベアトリス。
……一応吸血鬼だよね? 吸血鬼のくせに日光浴びながらおいしそうにビール飲んでるのなんなの?
「りんごのビールおいしー! お代わりしてくるわ」
ライラもライラだ。昼間からビールがばがば飲む妖精ってなんなの。神秘性ゼロだよ。
お昼からビールを飲む吸血鬼と妖精を目の当たりにしていると、もはや白昼夢を見ているかのようだ。冷静に考えたら変な状況なんだよな、これ。
……まあいいか。今更だもんね。
ビールをそこそこにおつまみを食べていく私だった。
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