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157話、モニカとキャラメルポップコーン
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オラクルの町は、特殊な照明が一晩中輝いている。
これは円柱型で三メートルくらいの高さがあり、道路の左右に分かれて等間隔に設置されている。
朝は太陽の光の下で隠れるように様々な色へ変化しながら点滅し、夜はやや弱めの白色光で周囲を照らしていた。
この特殊照明も魔女の魔術が込められているとの話だ。
ウィッチカジノのオーナーが魔女で、そこにある様々なゲームが魔術を媒介にしているように、この町全体が色々な魔術が込められた用品で生活を便利にしているのだ。
その為、この町には多くの魔女が滞在しているし、多くの魔女が知人と会うために訪れたりもする。
だから、というより、魔女が多いからこそ、そういう町になったとも言えるのかも。
で、そんなオラクルの町の夜。
先ほどウィッチカジノをあらかた観光してきた私は、一人夜風に当たりながら公園のベンチに座っていた。
ライラとベアトリスはすでに宿だ。
ウィッチカジノを出た後、私はちょっと風に当たってくると二人に言い残してふらふらと町を歩き出した。
二人が追ってこなかったのは、スロットで見るも無残な大敗を喫した私を慮っての事だろう。
いや、大敗とは言うが、そんなにお金を失ったというわけではない。
でも購入したコインが全部無くなったのは事実。
あまり大きな金額ではないが、全て失ったとなると空しさが残る。
私はこういったギャンブルごとに興味はないので、これまでやったことがなかった。
だからだろうか……軽い負けでもショックが結構大きかったのだ。
実はあのマジックスロット、基本的には当たる方らしい。
そもそもウィッチカジノは楽しませる遊戯場なのだから、基本的には勝たせるような設定になっている。
それでも運が悪いと当たりが全然出ない事もある。
私が見事にそれだった。
あまりにも当たらな過ぎて、せめて一回だけでも大当たりを出したい。
そう思ってしまったのが泥沼。私はその沼からはい出せなかった。
今回のを教訓に、本当のギャンブルには絶対に手を出さないようにしようと、私はこんな公園で夜風に当たって頭を冷やしながら心に刻み込んでいたのだ。
「……はぁ、ギャンブル怖い」
この町は照明がたくさんあるから、夜空の星はあまり見えない。
その夜空に向かってぽつりと呟いた時、公園を通りかかった誰かが立ち止るのを視界の端でとらえた。
「あれ? リリア?」
「ん?」
なんだか聞き覚えのある声を聞いて、虚ろな目を向けてみる。
そこには淡い赤色を差し色にした魔女服を纏った魔女。
私より少し小さくて、相対的に魔女帽子が大きく見える。
くりっとした瞳に、ふわっとしたくせっけの髪。
「あ、モニカじゃん」
そこに居たのは、私の幼馴染モニカだった。
偶然の再開だが、以前も旅の途中で出会ったので、二度目となる今回はお互いに驚きが薄い。
「何してるのよ、こんな所で」
モニカが訝しげにしながら私に近づいてくる。
「私は今日この町に来たところだよ。モニカこそどうしてこの町にいるの? ショーでもやるの?」
モニカはルーナラクリマという魔女のマジックショーを行う団体に属している。
その公演を行うため、世界中をあちこち旅しているのだ。
「違うわよ。あっちにウィッチカジノっていう遊戯場があるの知ってる?」
「知ってる」
さっきスロットで大負けしてきた。
「そこのゲームって私達のショー用魔術を込めているのよね。だから定期的に訪れて魔術をかけなおしてるのよ。さっきまでそれやってて、今その帰り」
まさかの事実だ。あの光の魔術は確かにルーナラクリマのショーっぽかったけど。
「私はね……そのウィッチカジノのマジックスロットで外れまくったよ」
「……ああ、そう」
寂しげに黄昏る私に対して、モニカはちょっと引いていた。
「あんたまさか、ウィッチカジノで熱くなって大損したとか言わないわよね」
「さすがにそんな事はないよ。ちょっとしかコイン買ってないもん。でも、一度も当たらなかった……」
「へえ……あそこの遊戯、子供向けだから基本当たるのにね」
「当たんなかったよ……」
「……あんた、ギャンブルとか絶対にしちゃダメよ」
静かに頷いた。今それを噛みしめていたところだ。
「っていうか、久しぶりにあえたのにどんな状況よ。もうちょっと元気出しなさいよ」
モニカが私の隣に座り、手に持ってた袋を開け始めた。
「ほら、食べる?」
それはポップコーンだった。
それも普通の白っぽい塩味ではなく、溶けたキャラメルを絡めた甘いタイプ。
「ウィッチカジノから帰り際に買っといたの。あそこの料理何でもおいしいのよね~。特に七面鳥のローストが絶品」
モニカは大の肉好きだ。
あの七面鳥のローストはやはり大好物なのだろう。
「……ちょっと食べるね」
モニカが持つ袋に手を突っ込み、ポップコーンを手にしてぱくっと食べた。
甘い。ふわふわっとした食感ながらもサクサク感がある。
私に続いてモニカもキャラメルポップコーンを食べ始めた。
「そういえばライラちゃんは?」
「先にベアトリスと一緒に宿に帰ってる」
「へえ……え? ベアトリスって誰?」
「モニカも一度会った事あるよ。ほら、前ラズベリージャムパン買ってたじゃん」
「ああー! あの美人さんか。そういえばあんたと知り合いっぽかったわね。でも一緒に旅をする仲だなんて思わなかったわ」
「私もベアトリスと旅をするなんて思わなかったよ。まあなんか……久しぶりにあったら自然とね」
「ふーん、あんた達自由ね」
もきゅもきゅキャラメルポップコーンを食べながらそんな世間話。
「あ、どうせなら明日の夜一緒にごはん食べましょうよ」
「おっけー。明日の夜ね」
……なんだろう。普通に話してたら、段々と久しぶりに幼馴染と出会えたことに改めて驚きが出てくる。
「今さらだけどさ、こんな偶然に出会うってすごくない?」
「すごいわよ。まああんたがカジノで大負けして虚ろな目をしてたから、驚くタイミング完全に逃したけど」
「今からでも間に合うかな……?」
「は? 何が?」
「驚くの」
「……いや、無理でしょ。どう考えても無理でしょ」
「……だよね」
久しぶりに会ったと言うのに、なんだかすぐにいつも通りの空気感で会話ができる。
この自然な空気がスロットで大負けした私の心に響くのだった。
あとキャラメルポップコーンおいしいな。
次はごはん食べる為だけにカジノへ行こう。
そんな風に初心にかえる私だった。
これは円柱型で三メートルくらいの高さがあり、道路の左右に分かれて等間隔に設置されている。
朝は太陽の光の下で隠れるように様々な色へ変化しながら点滅し、夜はやや弱めの白色光で周囲を照らしていた。
この特殊照明も魔女の魔術が込められているとの話だ。
ウィッチカジノのオーナーが魔女で、そこにある様々なゲームが魔術を媒介にしているように、この町全体が色々な魔術が込められた用品で生活を便利にしているのだ。
その為、この町には多くの魔女が滞在しているし、多くの魔女が知人と会うために訪れたりもする。
だから、というより、魔女が多いからこそ、そういう町になったとも言えるのかも。
で、そんなオラクルの町の夜。
先ほどウィッチカジノをあらかた観光してきた私は、一人夜風に当たりながら公園のベンチに座っていた。
ライラとベアトリスはすでに宿だ。
ウィッチカジノを出た後、私はちょっと風に当たってくると二人に言い残してふらふらと町を歩き出した。
二人が追ってこなかったのは、スロットで見るも無残な大敗を喫した私を慮っての事だろう。
いや、大敗とは言うが、そんなにお金を失ったというわけではない。
でも購入したコインが全部無くなったのは事実。
あまり大きな金額ではないが、全て失ったとなると空しさが残る。
私はこういったギャンブルごとに興味はないので、これまでやったことがなかった。
だからだろうか……軽い負けでもショックが結構大きかったのだ。
実はあのマジックスロット、基本的には当たる方らしい。
そもそもウィッチカジノは楽しませる遊戯場なのだから、基本的には勝たせるような設定になっている。
それでも運が悪いと当たりが全然出ない事もある。
私が見事にそれだった。
あまりにも当たらな過ぎて、せめて一回だけでも大当たりを出したい。
そう思ってしまったのが泥沼。私はその沼からはい出せなかった。
今回のを教訓に、本当のギャンブルには絶対に手を出さないようにしようと、私はこんな公園で夜風に当たって頭を冷やしながら心に刻み込んでいたのだ。
「……はぁ、ギャンブル怖い」
この町は照明がたくさんあるから、夜空の星はあまり見えない。
その夜空に向かってぽつりと呟いた時、公園を通りかかった誰かが立ち止るのを視界の端でとらえた。
「あれ? リリア?」
「ん?」
なんだか聞き覚えのある声を聞いて、虚ろな目を向けてみる。
そこには淡い赤色を差し色にした魔女服を纏った魔女。
私より少し小さくて、相対的に魔女帽子が大きく見える。
くりっとした瞳に、ふわっとしたくせっけの髪。
「あ、モニカじゃん」
そこに居たのは、私の幼馴染モニカだった。
偶然の再開だが、以前も旅の途中で出会ったので、二度目となる今回はお互いに驚きが薄い。
「何してるのよ、こんな所で」
モニカが訝しげにしながら私に近づいてくる。
「私は今日この町に来たところだよ。モニカこそどうしてこの町にいるの? ショーでもやるの?」
モニカはルーナラクリマという魔女のマジックショーを行う団体に属している。
その公演を行うため、世界中をあちこち旅しているのだ。
「違うわよ。あっちにウィッチカジノっていう遊戯場があるの知ってる?」
「知ってる」
さっきスロットで大負けしてきた。
「そこのゲームって私達のショー用魔術を込めているのよね。だから定期的に訪れて魔術をかけなおしてるのよ。さっきまでそれやってて、今その帰り」
まさかの事実だ。あの光の魔術は確かにルーナラクリマのショーっぽかったけど。
「私はね……そのウィッチカジノのマジックスロットで外れまくったよ」
「……ああ、そう」
寂しげに黄昏る私に対して、モニカはちょっと引いていた。
「あんたまさか、ウィッチカジノで熱くなって大損したとか言わないわよね」
「さすがにそんな事はないよ。ちょっとしかコイン買ってないもん。でも、一度も当たらなかった……」
「へえ……あそこの遊戯、子供向けだから基本当たるのにね」
「当たんなかったよ……」
「……あんた、ギャンブルとか絶対にしちゃダメよ」
静かに頷いた。今それを噛みしめていたところだ。
「っていうか、久しぶりにあえたのにどんな状況よ。もうちょっと元気出しなさいよ」
モニカが私の隣に座り、手に持ってた袋を開け始めた。
「ほら、食べる?」
それはポップコーンだった。
それも普通の白っぽい塩味ではなく、溶けたキャラメルを絡めた甘いタイプ。
「ウィッチカジノから帰り際に買っといたの。あそこの料理何でもおいしいのよね~。特に七面鳥のローストが絶品」
モニカは大の肉好きだ。
あの七面鳥のローストはやはり大好物なのだろう。
「……ちょっと食べるね」
モニカが持つ袋に手を突っ込み、ポップコーンを手にしてぱくっと食べた。
甘い。ふわふわっとした食感ながらもサクサク感がある。
私に続いてモニカもキャラメルポップコーンを食べ始めた。
「そういえばライラちゃんは?」
「先にベアトリスと一緒に宿に帰ってる」
「へえ……え? ベアトリスって誰?」
「モニカも一度会った事あるよ。ほら、前ラズベリージャムパン買ってたじゃん」
「ああー! あの美人さんか。そういえばあんたと知り合いっぽかったわね。でも一緒に旅をする仲だなんて思わなかったわ」
「私もベアトリスと旅をするなんて思わなかったよ。まあなんか……久しぶりにあったら自然とね」
「ふーん、あんた達自由ね」
もきゅもきゅキャラメルポップコーンを食べながらそんな世間話。
「あ、どうせなら明日の夜一緒にごはん食べましょうよ」
「おっけー。明日の夜ね」
……なんだろう。普通に話してたら、段々と久しぶりに幼馴染と出会えたことに改めて驚きが出てくる。
「今さらだけどさ、こんな偶然に出会うってすごくない?」
「すごいわよ。まああんたがカジノで大負けして虚ろな目をしてたから、驚くタイミング完全に逃したけど」
「今からでも間に合うかな……?」
「は? 何が?」
「驚くの」
「……いや、無理でしょ。どう考えても無理でしょ」
「……だよね」
久しぶりに会ったと言うのに、なんだかすぐにいつも通りの空気感で会話ができる。
この自然な空気がスロットで大負けした私の心に響くのだった。
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