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「お前との婚約を破棄する」
ラインハルト王子の冷たい声が宮殿の広間に響いた。
クロエは呆然としながら、目の前の光景を理解しようとする。だが、彼の次の言葉が、彼女の心を容赦なく抉った。
「お前のような悪女を聖女と認めない。今日限りで、お前は婚約者ではなくなる」
「……え?」
信じられない気持ちでラインハルトを見つめるクロエ。しかし、彼の目にはもはや愛情の欠片すらなかった。
「これからはフィーナが聖女の役目を担う。彼女はお前とは違い、心優しく純粋な女性だ」
そう言って、彼の腕の中には、クロエの妹であるフィーナが収まっていた。彼女は申し訳なさそうに見せかけた微笑みを浮かべる。
「お姉さま、ごめんなさい。でも、王子様が私を選んでくださったの……」
クロエの心臓がぎゅっと締め付けられる。
何かの間違いではないか。そう思いたかった。
けれど、周囲の貴族たちの冷たい視線が、彼女がすでに「不要な存在」となったことを突きつけていた。
「そんな……」
婚約破棄の宣言は瞬く間に広がり、クロエは王都での立場を完全に失った。彼女が聖女として尽くしてきた努力も、誰も振り返ることはなかった。
――そして、彼女はすべてを失った。
◇
行く当てもなく、クロエは王都を離れた。
実家に戻ることも許されず、助けを求めても、誰も手を差し伸べてくれなかった。これまで信じていた人々は、みなフィーナの周りに集まり、クロエを「役目を終えた者」として扱ったのだ。
気づけば、彼女は荒野をさまよっていた。
「……寒い……」
身を包むのは、王宮を追放される際に与えられた薄汚れた外套のみ。食事も満足に取れず、疲れ果てた身体は限界に近かった。
(もう……終わりなの……?)
そう思った瞬間、クロエの視界がぼやけ、膝から崩れ落ちた。
そのとき――
「……こんなところで何をしている」
低く、けれど不思議と心地よい声が耳に届いた。
意識が薄れる中、彼女は最後の力を振り絞って顔を上げる。
そこにいたのは、一人の男性だった。
漆黒のマントをまとい、鋭い金色の瞳を持つ男。荒涼とした大地の中でも、その存在だけが異質なほどに圧倒的な威厳を放っていた。
「……だれ……?」
彼女がかすれた声で尋ねると、男は少しだけ口角を上げ、こう名乗った。
「ゼノス・ルヴェイン。辺境を治める者だ」
その言葉を最後に、クロエの意識は闇に沈んだ。
クロエの意識が戻ったのは、暖炉の炎が静かに揺れる部屋だった。
温かい毛布に包まれ、ふかふかの寝台に横たわる自分の姿を認識したとき、彼女は夢を見ているのではないかと思った。
「目が覚めたか」
低く、けれど心地よい声が部屋に響く。
クロエがゆっくりと顔を上げると、金色の瞳を持つ男が椅子に腰掛け、静かにこちらを見つめていた。
「……あなたは……?」
かすれた声で問うと、男はゆるく腕を組みながら名乗った。
「ゼノス・ルヴェイン。ここから遠く離れた辺境の領主だ」
辺境の領主――その名を聞いた瞬間、クロエは驚きに目を見開いた。
ゼノス・ルヴェインといえば、「冷酷無慈悲な公爵」として知られている人物だった。反逆者や賊に容赦のない裁きを下し、その冷徹さから人々に恐れられているという噂を、クロエも王都にいた頃に何度も耳にしていた。
そんな彼が、どうして自分を助けたのか。
「……なぜ、私を……?」
クロエが問いかけると、ゼノスは静かに答えた。
「お前のことは以前から知っていた。王都の聖女、クロエ・エヴァンス。……いや、今はもう『元』聖女、か」
その言葉に、クロエはぎゅっと拳を握った。
「……私を笑いにでも来たのですか?」
自嘲気味に呟くと、ゼノスはふっと笑った。
「そんな暇はない。俺はお前の力を必要としている」
「私の……力?」
「俺の領地は、病や怪我に苦しむ者が多い。王都のように優れた医師がいるわけでもなく、治療薬も限られている。だが、お前の癒しの力があれば、多くの命を救えるだろう」
クロエは驚き、そして戸惑った。
「私を……信用できるのですか? 王都では『悪女』と呼ばれ、聖女の名を奪われた私を」
「くだらんな」
ゼノスはまるで取るに足らないことを言われたかのように鼻で笑った。
「俺が見ているのは噂ではなく、お前自身だ。お前がどれほどの力を持ち、どれほどの信念を持つ女なのか――それを見極めるのは俺自身だ」
その言葉に、クロエの胸がじんわりと温かくなった。
王都では誰もが彼女を疑い、彼女の言葉を信じようとはしなかった。だが、この冷酷と噂される公爵は、最初から彼女自身を見てくれている。
「……私が、あなたの領地で役に立つのなら……」
ゼノスは満足そうに頷いた。
「いいだろう。では、明日から俺の領地で働いてもらう」
クロエは深く息を吸い込み、小さく頷いた。
◇
ゼノスの領地は、王都とはまったく異なる環境だった。
荒涼とした大地が広がり、厳しい寒さが続くこの地は、確かに「辺境」と呼ばれるのにふさわしかった。しかし、そこにはゼノスを慕う領民たちがいた。
「おお……! 聖女様が……!」
クロエが初めて村を訪れたとき、病に苦しむ人々は彼女を希望の光のように見つめた。
そして、彼女がその力を使い、病に伏せる子どもや傷ついた兵士を癒すと、人々は涙を流して感謝した。
「ありがとう、聖女様……!」
「おかげで、息子が助かった……!」
「なんとお優しいお方だ……」
その声に、クロエの胸が熱くなった。
王都では不要とされた力が、ここでは人々を救うために必要とされている。
そして、それを見守るゼノスの目は、どこか優しげだった。
「悪くないな」
「……え?」
「お前がここにいるのは、なかなかに悪くないと言ったんだ」
彼の言葉に、クロエは少しだけ微笑んだ。
「……ありがとうございます」
王都で捨てられた彼女だったが、ここでは必要とされている。それだけで、心が満たされていくようだった。
ラインハルト王子の冷たい声が宮殿の広間に響いた。
クロエは呆然としながら、目の前の光景を理解しようとする。だが、彼の次の言葉が、彼女の心を容赦なく抉った。
「お前のような悪女を聖女と認めない。今日限りで、お前は婚約者ではなくなる」
「……え?」
信じられない気持ちでラインハルトを見つめるクロエ。しかし、彼の目にはもはや愛情の欠片すらなかった。
「これからはフィーナが聖女の役目を担う。彼女はお前とは違い、心優しく純粋な女性だ」
そう言って、彼の腕の中には、クロエの妹であるフィーナが収まっていた。彼女は申し訳なさそうに見せかけた微笑みを浮かべる。
「お姉さま、ごめんなさい。でも、王子様が私を選んでくださったの……」
クロエの心臓がぎゅっと締め付けられる。
何かの間違いではないか。そう思いたかった。
けれど、周囲の貴族たちの冷たい視線が、彼女がすでに「不要な存在」となったことを突きつけていた。
「そんな……」
婚約破棄の宣言は瞬く間に広がり、クロエは王都での立場を完全に失った。彼女が聖女として尽くしてきた努力も、誰も振り返ることはなかった。
――そして、彼女はすべてを失った。
◇
行く当てもなく、クロエは王都を離れた。
実家に戻ることも許されず、助けを求めても、誰も手を差し伸べてくれなかった。これまで信じていた人々は、みなフィーナの周りに集まり、クロエを「役目を終えた者」として扱ったのだ。
気づけば、彼女は荒野をさまよっていた。
「……寒い……」
身を包むのは、王宮を追放される際に与えられた薄汚れた外套のみ。食事も満足に取れず、疲れ果てた身体は限界に近かった。
(もう……終わりなの……?)
そう思った瞬間、クロエの視界がぼやけ、膝から崩れ落ちた。
そのとき――
「……こんなところで何をしている」
低く、けれど不思議と心地よい声が耳に届いた。
意識が薄れる中、彼女は最後の力を振り絞って顔を上げる。
そこにいたのは、一人の男性だった。
漆黒のマントをまとい、鋭い金色の瞳を持つ男。荒涼とした大地の中でも、その存在だけが異質なほどに圧倒的な威厳を放っていた。
「……だれ……?」
彼女がかすれた声で尋ねると、男は少しだけ口角を上げ、こう名乗った。
「ゼノス・ルヴェイン。辺境を治める者だ」
その言葉を最後に、クロエの意識は闇に沈んだ。
クロエの意識が戻ったのは、暖炉の炎が静かに揺れる部屋だった。
温かい毛布に包まれ、ふかふかの寝台に横たわる自分の姿を認識したとき、彼女は夢を見ているのではないかと思った。
「目が覚めたか」
低く、けれど心地よい声が部屋に響く。
クロエがゆっくりと顔を上げると、金色の瞳を持つ男が椅子に腰掛け、静かにこちらを見つめていた。
「……あなたは……?」
かすれた声で問うと、男はゆるく腕を組みながら名乗った。
「ゼノス・ルヴェイン。ここから遠く離れた辺境の領主だ」
辺境の領主――その名を聞いた瞬間、クロエは驚きに目を見開いた。
ゼノス・ルヴェインといえば、「冷酷無慈悲な公爵」として知られている人物だった。反逆者や賊に容赦のない裁きを下し、その冷徹さから人々に恐れられているという噂を、クロエも王都にいた頃に何度も耳にしていた。
そんな彼が、どうして自分を助けたのか。
「……なぜ、私を……?」
クロエが問いかけると、ゼノスは静かに答えた。
「お前のことは以前から知っていた。王都の聖女、クロエ・エヴァンス。……いや、今はもう『元』聖女、か」
その言葉に、クロエはぎゅっと拳を握った。
「……私を笑いにでも来たのですか?」
自嘲気味に呟くと、ゼノスはふっと笑った。
「そんな暇はない。俺はお前の力を必要としている」
「私の……力?」
「俺の領地は、病や怪我に苦しむ者が多い。王都のように優れた医師がいるわけでもなく、治療薬も限られている。だが、お前の癒しの力があれば、多くの命を救えるだろう」
クロエは驚き、そして戸惑った。
「私を……信用できるのですか? 王都では『悪女』と呼ばれ、聖女の名を奪われた私を」
「くだらんな」
ゼノスはまるで取るに足らないことを言われたかのように鼻で笑った。
「俺が見ているのは噂ではなく、お前自身だ。お前がどれほどの力を持ち、どれほどの信念を持つ女なのか――それを見極めるのは俺自身だ」
その言葉に、クロエの胸がじんわりと温かくなった。
王都では誰もが彼女を疑い、彼女の言葉を信じようとはしなかった。だが、この冷酷と噂される公爵は、最初から彼女自身を見てくれている。
「……私が、あなたの領地で役に立つのなら……」
ゼノスは満足そうに頷いた。
「いいだろう。では、明日から俺の領地で働いてもらう」
クロエは深く息を吸い込み、小さく頷いた。
◇
ゼノスの領地は、王都とはまったく異なる環境だった。
荒涼とした大地が広がり、厳しい寒さが続くこの地は、確かに「辺境」と呼ばれるのにふさわしかった。しかし、そこにはゼノスを慕う領民たちがいた。
「おお……! 聖女様が……!」
クロエが初めて村を訪れたとき、病に苦しむ人々は彼女を希望の光のように見つめた。
そして、彼女がその力を使い、病に伏せる子どもや傷ついた兵士を癒すと、人々は涙を流して感謝した。
「ありがとう、聖女様……!」
「おかげで、息子が助かった……!」
「なんとお優しいお方だ……」
その声に、クロエの胸が熱くなった。
王都では不要とされた力が、ここでは人々を救うために必要とされている。
そして、それを見守るゼノスの目は、どこか優しげだった。
「悪くないな」
「……え?」
「お前がここにいるのは、なかなかに悪くないと言ったんだ」
彼の言葉に、クロエは少しだけ微笑んだ。
「……ありがとうございます」
王都で捨てられた彼女だったが、ここでは必要とされている。それだけで、心が満たされていくようだった。
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