「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人

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ヴェルナー王子との"直接会談"を終えた。しかし、それはさらなる波乱の始まりだった。


「貴女の未来は、本当にこの国にあるのですか?」


ヴェルナー王子の言葉が、まだ胸に残っている。


(彼は……本気で私をルクセンブルクへ迎えようとしているの?)


彼の意図は明確ではない。けれど、王宮に広がる"噂"を利用し、私の立場を揺るがそうとしていることは間違いない。


(どうすればいいの……?)


私は王妃としての責務を果たすために、この王宮に残ると決めた。なのに、ヴェルナー王子の一言で、まるで"他の道"があるかのように思えてしまう。


「……ロザリー」


ふと、アルヴィン王子が私の手を取る。彼の碧い瞳が、私をまっすぐに見つめる。


「ヴェルナーの言葉を、気にするな」


「……でも」


「俺はお前を誰にも渡さない。お前は俺の妃だ」


彼の手は、まるで誓いを立てるかのように強く、そして優しく私を包み込む。


「お前がこの国にいることを、誰にも疑わせないようにしてやる」


「アルヴィン様……」


彼の瞳には迷いがなかった。


(私は、やはりこの人の隣にいたい)


私は彼の手をしっかりと握り返す。


「私も……どんな試練があっても、アルヴィン様の隣にいます」


「……いい子だ」


アルヴィン王子が微笑み、私の頬にそっと触れる。


「なら……次の舞台は、"正式な婚約発表"だ」


「……っ!」


私は驚きながら彼を見つめる。


「正式な婚約……!」


「王宮に広がる噂を完全に払拭し、お前が俺の妃であることを全員に認めさせる」


彼はゆっくりと私の手に口づける。


「準備はいいか?」


私は息を整え、しっかりと頷いた。


「はい……!」


こうして、私とアルヴィン王子の正式な婚約発表に向けて、すべてが動き出した。





婚約発表の準備――王宮の執務室にて。


「正式な婚約発表は、一週間後に行われることが決まりましたわ」


エレノア様が優雅に紅茶を口にしながら、静かに言う。


「その日、王宮の大広間にて貴族たちを集め、国王陛下の前で発表されます」


「陛下の前で……」


私は息をのむ。


(これは、単なる噂を払拭するための発表ではない)


正式な婚約となれば、私は"王妃候補"として国全体に認められる立場になる。それはつまり――


「この発表をよく思わない者も、必ず現れますわね」


エレノア様の言葉に、私はハッとする。


「え?」


「貴族社会というものは、単純ではありませんのよ、ロザリー様」


彼女は静かに微笑みながら、ゆっくりとカップを置く。


「アルヴィン殿下の妃として、貴族たちは貴女を"どう利用できるか"を考えるでしょう」


「……!」


「そして、ヴェルナー王子の動きも、まだ終わってはいませんわ」


私は息を呑む。


(ヴェルナー王子……彼はまだ、何か仕掛けてくるの?)


「ロザリー」


アルヴィン王子が低い声で言う。


「どんなことがあろうと、お前は俺の妃になる」


彼の碧い瞳には、強い決意が宿っていた。


「王宮の貴族どもが何を言おうと、ヴェルナーが何を企もうと、関係ない」


彼は私の手を取り、しっかりと握る。


「お前の居場所は、ここだ」


「……はい」


私は彼の手を握り返し、静かに頷いた。こうして、正式な婚約発表に向けた準備が始まった。しかし――その裏では、新たな陰謀が動き出していたのだった。
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