「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人

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アルヴィン王子の妃になる――。その言葉の重みを、改めて実感する朝だった。ルーク殿下の言葉通り、王族が特定の女性と毎朝食を共にするというのは、婚約の公的な宣言に等しい。


(つまり、王宮の誰もが"アルヴィン王子の妃は私"だと認識することになる……)


責任の大きさを感じつつも、それでも私は逃げるつもりはなかった。アルヴィン王子の隣に立つと決めたのだから――。


「ロザリー?」


ふと、アルヴィン王子の声に呼ばれ、私はハッと顔を上げた。


「そんなに難しい顔をするな」


彼は穏やかに微笑み、私の手を軽く握る。


「お前は俺の妃だ。それ以上のことは考えなくていい」


「……ありがとうございます」


私は彼の温もりを感じながら、静かに頷いた。


「まあまあ、兄上は相変わらずですね」


ルーク殿下が肩をすくめながら、パンを小さくちぎる。


「でもロザリーさん、これからもっと大変になりますよ?」


「……大変、とは?」


私が問い返すと、彼は意味深な笑みを浮かべた。


「今度は"王宮の公務"が待っていますからね」


「公務……」


「ええ。妃候補として正式に認められた以上、王宮の行事や外交にも関わることになります」


ルーク殿下の言葉に、アルヴィン王子が頷く。


「そうだな。まずは、来週行われる"王宮晩餐会"にお前を正式に招待する」


「晩餐会……!」


貴族や外国の要人たちが集まる、王宮で最も格式高い社交の場――。


(舞踏会や茶会とは、また違った場ね……)


「そこで、お前は正式に"未来の王妃"として紹介されることになる」


「……っ!」


緊張が走る。舞踏会や慈善祭とは違い、晩餐会には他国の貴族や王族も出席する。


(つまり、私の振る舞い一つで、アルヴィン王子の評価が変わる可能性もある……)


「プレッシャーを感じるのも分かるが、お前なら大丈夫だ」


アルヴィン王子が静かに言う。


「俺がそばにいる。だから、何も心配するな」


「……はい」


私は彼の瞳を見つめ、静かに息を整えた。王宮での新たな試練――"晩餐会"。私はまた、一つ大きな挑戦へと向かうことになる。
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