「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人

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舞踏会は華やかな拍手と歓声の中、無事に幕を閉じた。私はアルヴィン王子の腕に支えられながら、静かに舞踏の場を後にする。


「よくやった、ロザリー」


アルヴィン王子が低い声で囁く。


「……ありがとうございます」


私の胸の奥には、達成感と安堵が入り混じった感情が渦巻いていた。


(やり遂げた……貴族たちにも、エレノア様にも、私の覚悟を示せたはず)


けれど――


「ふふ……面白くなりそうですわ」


視線を向けると、エレノア様が静かにワイングラスを傾けていた。


「ロザリー様、今夜の踊りは素晴らしかったですわ。ですが……」


彼女の唇が、わずかに楽しげに歪む。


「王宮での試練は、これだけでは終わりませんのよ?」


「……!」


私の手を握るアルヴィン王子の指先に、力がこもる。


「エレノア、それはどういう意味だ?」


アルヴィン王子が鋭い視線を向けるが、彼女は涼しげに微笑むだけだった。


「どういう意味かしら? ただ、"この城に馴染むには時間がかかる"と言いたかっただけですわ」


「……」


私は彼女の瞳を見つめた。彼女は単なる嫉妬で私に敵意を向けているのではない。何か別の意図がある。


(王宮には、まだ私の知らない"力関係"がある……)


私は気を引き締めながら、静かに微笑み返した。


「ご忠告、ありがとうございますわ。ですが、私はもう覚悟を決めましたので」


「まあ、頼もしいことですわね」


エレノア様は満足げに微笑みながら、優雅に去っていった。その後ろ姿を見送りながら、私は心の中でそっと息を吐く。


(この舞踏会は、"終わり"ではなく、"始まり"だったのね)


王宮に生きるということは、貴族社会のしきたりや、見えない戦いの中で生き抜くということ。アルヴィン王子の妃候補として認められた以上、私はこれからさらに厳しい試練に直面するのだろう。


「……お前はよくやった」


アルヴィン王子が私の手を優しく握り直す。


「これからも、お前は俺の隣にいろ」


「はい……アルヴィン様」


私は静かに頷いた。どんな困難があろうとも、私はこの人の隣に立つと決めたのだから――。
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