「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

平山和人

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翌日から、私の猛特訓が始まった。まずは基本となる宮廷舞踏。


「ロザリー様、もう少し足をしなやかに動かしてください!」


「腕の角度が少し高すぎますわ! 優雅さを忘れずに!」


繰り返し踊るうちに、足が痛くなり、息が上がる。


(これほど大変なものだったなんて……!)


しかし、ここで諦めるわけにはいかない。


何度も何度も繰り返し、クラリス様の指導を受けながら、私は少しずつ形を整えていった。そして、舞踏会前夜――。


「ふぅ……」


長時間の練習を終え、私は王宮の廊下を歩いていた。窓の外には、静かに輝く月が浮かんでいる。


(明日が本番……)


緊張と不安で胸がいっぱいになりそうだった。


「こんな時間に散歩か?」


不意に、背後から聞き慣れた低い声がした。振り向くと、アルヴィン王子が壁に寄りかかりながら、私を見つめていた。


「アルヴィン様……」


彼はゆっくりと近づき、私の手をそっと取る。


「無理をしすぎていないか?」


「……いいえ。大丈夫ですわ」


彼の温かい手のひらに触れ、少しだけ緊張がほぐれる。


「明日は、俺の妃としてお前を紹介する」


アルヴィン王子の碧い瞳が真剣に私を捉えた。


「どんなことがあっても、俺がそばにいる。だから、怖がるな」


「……はい」


彼の言葉に励まされ、私はそっと微笑む。


「明日、お前が一番美しく輝くことを楽しみにしている」


彼は私の手の甲にそっと口づける。その仕草は優しく、そしてどこか甘い。


「……はい」


私は静かに頷き、彼の瞳を見つめ返した。


「さあ、もう戻れ。明日は早い」


彼は私を部屋まで送り届けると、静かに立ち去った。その後ろ姿を見送りながら、私はそっと自分の胸に手を当てる。


(アルヴィン様のそばにいると、心が落ち着く……)


彼に恥じないよう、明日は精一杯頑張ろう。そう心に決めたのだった。
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