「ババアはいらねぇんだよ」と婚約破棄されたアラサー聖女はイケメン王子に溺愛されます

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侍女たちに案内され、私は静かに城の奥へと進んでいった。長い回廊には豪華な絨毯が敷かれ、壁には歴代の王族の肖像画が飾られている。窓の外には、美しく整えられた庭園が広がり、月明かりが優しく照らしていた。


「こちらがロザリー様のお部屋でございます」


侍女の一人が大きな扉の前で立ち止まり、恭しく扉を開ける。中に足を踏み入れると、息を呑むほどに豪華な部屋が広がっていた。


「……これが、私の部屋？」


「はい。アルヴィン様のご命令で、特別にご用意いたしました」


天蓋付きの大きなベッドには、ふわふわのクッションと美しい刺繍の施されたシーツが敷かれている。広々とした部屋の中央には、エレガントなソファとテーブルが置かれ、壁際には大きな窓とドレッサーが並んでいた。


「まるで……夢みたい」


ぽつりと呟くと、侍女たちは微笑みながら言った。


「ロザリー様は、アルヴィン様が選ばれた大切な方ですから」


「アルヴィン様は、ロザリー様のためにこのお部屋を整えさせたのですよ」


「え……？」


思わず目を瞬かせる。


「すべて、アルヴィン様が？」


「はい。ロザリー様が少しでも快適に過ごせるようにと」


私のために、アルヴィン王子が……？ 今まで、誰かがここまで私のことを考えてくれたことがあっただろうか。胸の奥がじんわりと温かくなる。


「では、今夜はどうぞごゆっくりお休みくださいませ」


侍女たちは丁寧にお辞儀をし、静かに部屋を後にした。広い部屋に、私は一人残された。窓辺に歩み寄ると、澄んだ夜空に大きな月が浮かんでいる。


（ここが……私の新しい居場所）


たった数日前まで、私はただの聖女だった。婚約者に捨てられ、価値がないと言われ――孤独に打ちひしがれていた。だけど、今は――


「……俺のものだ」


アルヴィン王子の言葉がふと思い出される。


「ふふ……本当に強引な方」


でも、その強引さに救われたのも事実。彼は迷いなく私を求め、守ると誓ってくれた。


（私も……強くならなければ）


このまま、ただ彼に守られるだけの存在ではいられない。彼の隣に立つのなら、それにふさわしい人間にならなくては――。


「……頑張らなくちゃ」


そう決意し、私は静かに目を閉じた。まだ始まったばかりの、新しい未来。これからどんな運命が待っているのか――。