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「俺の妃になれ」
アルヴィン王子の言葉が、夜の静寂の中に響いた。
「……っ」
思わず息を呑む。冗談? それとも、酔っ払いへの気まぐれな慰め? いや、それにしては彼の瞳は真剣すぎる。
「……なぜ、私なんですの?」
震える声で問いかけると、アルヴィン王子は迷いなく答えた。
「お前に一目惚れしたからだ」
「――!!」
「初めて見た瞬間から、お前を誰にも渡したくないと思った」
まっすぐに告げられる。こんな言葉を、本当に王子が私に? 戸惑う私をよそに、アルヴィン王子は一歩近づいた。
「ロザリー、お前は聖女だろう?」
「……ええ、そうですわ」
私は神の御加護を受けた聖女として、幼い頃から人々を癒し、導くことを使命としてきた。
「聖女として、誰よりも人のために尽くしてきたお前が、こんなにも傷ついているのが許せない」
アルヴィン王子の声が低くなる。
「誰かに愛されるべきお前が、くだらない理由で捨てられるなんて、そんなの間違っている」
彼の言葉が、心の奥深くに響いた。
「俺なら、お前を大切にできる。だから、俺の妃になれ」
「……っ」
こんなにまっすぐな求愛を受けたのは、生まれて初めてだった。ラインハルト侯爵との婚約は、家同士の打算の上に成り立っていたもの。彼から一度たりとも「愛している」と言われたことはなかった。でも、アルヴィン王子は――
「なぜ……そこまで私にこだわるのです?」
絞り出すように問いかけると、アルヴィン王子は少しだけ考え、ふっと微笑んだ。
「本能だ」
「――え?」
「俺の中の何かが、お前を求めている。それだけだ」
なんて強引で、なんて真っ直ぐな言葉。でも――
(私は、本当にこのままでいいの?)
聖女であることに縛られ、ただ人のために生きるだけの人生。婚約者に捨てられ、愛を知らないまま終わる人生。それが本当に、私の望む未来?
「……ロザリー」
アルヴィン王子が、そっと私の手を取る。
「お前に、俺と生きる未来を見せてやる」
アルヴィン王子の手は温かかった。婚約破棄を言い渡され、価値がないと切り捨てられた私。そんな私を、こんなにも強く求めてくれる人がいる。けれど――
「……私は、あなたに相応しくありませんわ」
震える声でそう答える。アルカディア王国の第一王子――つまり、次期国王。そんな高貴な人の妃になるには、私はあまりにも傷つき、価値を否定されてきた。
「私はただの聖女。あなたのような方の隣に立つ資格はありません」
「資格?」
アルヴィン王子の眉がわずかに動いた。次の瞬間、私の手を引いてぐいっと引き寄せる。
「――っ!」
驚いて見上げると、すぐ目の前にアルヴィン王子の顔があった。
「俺が決める。お前が俺の隣に立つ資格があるかどうかは」
「……」
「そして、俺の決定はもう変わらない。お前は俺の妃になる」
「そんなに簡単に決めることでは――」
「簡単じゃないさ」
アルヴィン王子は苦笑しながら、でもどこか誇らしげに言う。
「俺がこんなに人を求めるのは、生まれて初めてだからな」
彼の目が、まるで獲物を捉えた猛禽のように輝いていた。
「ロザリー、お前を渡すつもりはない」
その言葉に、私の胸がぎゅっと締めつけられる。私は、愛されていいの? もう一度、誰かを信じてもいいの?
「……私は」
迷いながらも、私はそっとアルヴィン王子の手を握り返した。
「……私を、本当に幸せにしてくれますか?」
「誓う。俺はお前を、絶対に泣かせたりしない」
力強くそう断言する王子の言葉に、私はついに――
「……はい」
小さく、けれどはっきりと、頷いた。その瞬間、私の人生は大きく変わったのだった。
アルヴィン王子の言葉が、夜の静寂の中に響いた。
「……っ」
思わず息を呑む。冗談? それとも、酔っ払いへの気まぐれな慰め? いや、それにしては彼の瞳は真剣すぎる。
「……なぜ、私なんですの?」
震える声で問いかけると、アルヴィン王子は迷いなく答えた。
「お前に一目惚れしたからだ」
「――!!」
「初めて見た瞬間から、お前を誰にも渡したくないと思った」
まっすぐに告げられる。こんな言葉を、本当に王子が私に? 戸惑う私をよそに、アルヴィン王子は一歩近づいた。
「ロザリー、お前は聖女だろう?」
「……ええ、そうですわ」
私は神の御加護を受けた聖女として、幼い頃から人々を癒し、導くことを使命としてきた。
「聖女として、誰よりも人のために尽くしてきたお前が、こんなにも傷ついているのが許せない」
アルヴィン王子の声が低くなる。
「誰かに愛されるべきお前が、くだらない理由で捨てられるなんて、そんなの間違っている」
彼の言葉が、心の奥深くに響いた。
「俺なら、お前を大切にできる。だから、俺の妃になれ」
「……っ」
こんなにまっすぐな求愛を受けたのは、生まれて初めてだった。ラインハルト侯爵との婚約は、家同士の打算の上に成り立っていたもの。彼から一度たりとも「愛している」と言われたことはなかった。でも、アルヴィン王子は――
「なぜ……そこまで私にこだわるのです?」
絞り出すように問いかけると、アルヴィン王子は少しだけ考え、ふっと微笑んだ。
「本能だ」
「――え?」
「俺の中の何かが、お前を求めている。それだけだ」
なんて強引で、なんて真っ直ぐな言葉。でも――
(私は、本当にこのままでいいの?)
聖女であることに縛られ、ただ人のために生きるだけの人生。婚約者に捨てられ、愛を知らないまま終わる人生。それが本当に、私の望む未来?
「……ロザリー」
アルヴィン王子が、そっと私の手を取る。
「お前に、俺と生きる未来を見せてやる」
アルヴィン王子の手は温かかった。婚約破棄を言い渡され、価値がないと切り捨てられた私。そんな私を、こんなにも強く求めてくれる人がいる。けれど――
「……私は、あなたに相応しくありませんわ」
震える声でそう答える。アルカディア王国の第一王子――つまり、次期国王。そんな高貴な人の妃になるには、私はあまりにも傷つき、価値を否定されてきた。
「私はただの聖女。あなたのような方の隣に立つ資格はありません」
「資格?」
アルヴィン王子の眉がわずかに動いた。次の瞬間、私の手を引いてぐいっと引き寄せる。
「――っ!」
驚いて見上げると、すぐ目の前にアルヴィン王子の顔があった。
「俺が決める。お前が俺の隣に立つ資格があるかどうかは」
「……」
「そして、俺の決定はもう変わらない。お前は俺の妃になる」
「そんなに簡単に決めることでは――」
「簡単じゃないさ」
アルヴィン王子は苦笑しながら、でもどこか誇らしげに言う。
「俺がこんなに人を求めるのは、生まれて初めてだからな」
彼の目が、まるで獲物を捉えた猛禽のように輝いていた。
「ロザリー、お前を渡すつもりはない」
その言葉に、私の胸がぎゅっと締めつけられる。私は、愛されていいの? もう一度、誰かを信じてもいいの?
「……私は」
迷いながらも、私はそっとアルヴィン王子の手を握り返した。
「……私を、本当に幸せにしてくれますか?」
「誓う。俺はお前を、絶対に泣かせたりしない」
力強くそう断言する王子の言葉に、私はついに――
「……はい」
小さく、けれどはっきりと、頷いた。その瞬間、私の人生は大きく変わったのだった。
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