処刑された悪役令嬢は聖女に転生しました～今度は絶対に婚約破棄なんてされません！～

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その夜、クロエはゼルヴァンと共に密談をしていた。


「エドワード王子は、お前を味方に引き込むつもりか？」


ゼルヴァンが低く問いかける。


「ええ。彼はまだ慎重だけれど、間違いなく私の動向を注視しているわ」


「だろうな。王太子と対抗するには、聖女であるお前の存在は重要だからな」


クロエは静かに頷く。


「でも、まだ動くには早いわ。私がどちらの側につくかを明言しない限り、彼らは慎重に動くしかない……その状態を、できるだけ長く維持するの」


ゼルヴァンは満足げに鼻を鳴らした。


「策士だな、お前は」


クロエは微笑む。


（私はもう、誰かの駒になるつもりはない……）


◇


翌日、王宮では小さな騒ぎが起きていた。


「何者かが王太子殿下の部屋に忍び込もうとしたそうよ」


「まあ……！」


侍女たちの間でそんな噂が交わされていた。


クロエはその話を聞きながら、静かに考える。


（王太子の部屋に何者かが侵入……これは、偶然の事件ではないわね）


彼女はすぐにゼルヴァンに調査を命じた。


◇


その夜、ゼルヴァンが戻ってきた。


「クロエ、やはり何者かが王太子の部屋に忍び込もうとしていたのは事実だ」


「犯人は？」


「正体はまだ掴めていないが、どうやら王宮の内部の者が関与している可能性が高い」


クロエの目が鋭く光る。


（王宮内部の者……つまり、王太子の敵対勢力によるもの？）


「エドワード王子の関与は？」


ゼルヴァンは少し考えてから答えた。


「それはまだ分からん。だが、この事件が彼に有利に働くことは確かだ」


（もしエドワード王子が関与していないとしても、王太子を揺さぶる材料として利用する可能性は高いわね）


クロエは静かに息をつき、窓の外を見上げた。


（これから王宮内の均衡が崩れていく……）


それはつまり、彼女にとってさらに大きなチャンスが訪れるということでもあった。


（私は、この混乱を利用する）


クロエの瞳には、確固たる決意の光が宿っていた。