4 / 12
彼女のと私のはじまり
3、事件は突然に
しおりを挟む
教室のドアを開けると、もうほとんどの人が集まってきているようだった。ギリギリかと思ったが時間も少し余裕があり、どこに座ろうかと辺りを見渡す。
「後ろの方はもう埋まってしまってるから前に座りましょうか」
「そうだね。ドア付近が開いてるからそこにし……あっ!」
教室を出た時は急いでいて確認してなかったが、よく見れば別のノートを持ってきてしまっていた。普段ならとりあえず授業を受けて後で正しいノートに写し直すが、今回は前回出された課題のプリントを提出しなければならず、忘れないようにとノートにわざわざ挟んでいたのだ。
急に大声を出して慌て始めたからか、マリアだけではなく他の生徒達も驚きながらこちらをちらちらと見ている。
「ど、どうかなさったの?」
「ごめん。ノート忘れてきちゃったからすぐ取ってくる!」
「えっちょっ」
言いながら動き出すリリーにマリアは手を伸ばすが、リリーの方が動きが早くすり抜けてしまう。
「間に合うかわからないからマリアはここで待っててー!」
マリアが次の言葉を言う前に急いで教室を出てノートを取りに歩き出すと、教室の中でリリーの名前を読んでいる声が聞こえたがそのまま止まらず進んでいく。
面倒見が良いマリアのことだからすぐに教室を出ないと、心配だからと一緒に取りに行ってくれそうだし、間に合わせるつもりだが万が一の時マリアまで遅刻させる訳にはいかない。
特に次の授業のケイト先生は普段は優しい先生だが、提出物や時間に厳しく怒ると怖いと評判だ。
走れば間に合う自信があるが、ここは紳士淑女の通う学校である。廊下を全力疾走したら最後これだから平民はと言われるのが目に見えている。
「あーなんで忘れちゃんたんだろう。」
自分自身に文句を言いながら、咎められない程度の早歩きで向かうが目的の教室まではかなり遠い。
咄嗟に教室を出てしまったが、これだったら取りに行かず理由を説明して謝った方が被害が少なかったのでは…と後悔しながら階段に向かったとたん、ドンッという衝撃の後身体が宙に浮いた。
「え──」
急に足が地面から離れ身体が浮いたのと同時に今度は重力に引っ張られ下へ下へと落ちていく。階段から落ちているのだとリリーが理解したのは階段に身体を打ち付けた時だった。
「いっ、なんっ──」
魔法で衝撃を和らげようとするが痛みと混乱のせいで上手く出せず、結局少しスピードが遅くなっただけで階段の踊り場まで落ちてしまう。
「だ、誰か……」
落ちた衝撃と痛みで視界が霞む。そして意識が遠のいていく瞬間、階段の上でスカートがゆれたような気がした。
「後ろの方はもう埋まってしまってるから前に座りましょうか」
「そうだね。ドア付近が開いてるからそこにし……あっ!」
教室を出た時は急いでいて確認してなかったが、よく見れば別のノートを持ってきてしまっていた。普段ならとりあえず授業を受けて後で正しいノートに写し直すが、今回は前回出された課題のプリントを提出しなければならず、忘れないようにとノートにわざわざ挟んでいたのだ。
急に大声を出して慌て始めたからか、マリアだけではなく他の生徒達も驚きながらこちらをちらちらと見ている。
「ど、どうかなさったの?」
「ごめん。ノート忘れてきちゃったからすぐ取ってくる!」
「えっちょっ」
言いながら動き出すリリーにマリアは手を伸ばすが、リリーの方が動きが早くすり抜けてしまう。
「間に合うかわからないからマリアはここで待っててー!」
マリアが次の言葉を言う前に急いで教室を出てノートを取りに歩き出すと、教室の中でリリーの名前を読んでいる声が聞こえたがそのまま止まらず進んでいく。
面倒見が良いマリアのことだからすぐに教室を出ないと、心配だからと一緒に取りに行ってくれそうだし、間に合わせるつもりだが万が一の時マリアまで遅刻させる訳にはいかない。
特に次の授業のケイト先生は普段は優しい先生だが、提出物や時間に厳しく怒ると怖いと評判だ。
走れば間に合う自信があるが、ここは紳士淑女の通う学校である。廊下を全力疾走したら最後これだから平民はと言われるのが目に見えている。
「あーなんで忘れちゃんたんだろう。」
自分自身に文句を言いながら、咎められない程度の早歩きで向かうが目的の教室まではかなり遠い。
咄嗟に教室を出てしまったが、これだったら取りに行かず理由を説明して謝った方が被害が少なかったのでは…と後悔しながら階段に向かったとたん、ドンッという衝撃の後身体が宙に浮いた。
「え──」
急に足が地面から離れ身体が浮いたのと同時に今度は重力に引っ張られ下へ下へと落ちていく。階段から落ちているのだとリリーが理解したのは階段に身体を打ち付けた時だった。
「いっ、なんっ──」
魔法で衝撃を和らげようとするが痛みと混乱のせいで上手く出せず、結局少しスピードが遅くなっただけで階段の踊り場まで落ちてしまう。
「だ、誰か……」
落ちた衝撃と痛みで視界が霞む。そして意識が遠のいていく瞬間、階段の上でスカートがゆれたような気がした。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
冤罪で婚約破棄したくせに……今さらもう遅いです。
水垣するめ
恋愛
主人公サラ・ゴーマン公爵令嬢は第一王子のマイケル・フェネルと婚約していた。
しかしある日突然、サラはマイケルから婚約破棄される。
マイケルの隣には男爵家のララがくっついていて、「サラに脅された!」とマイケルに訴えていた。
当然冤罪だった。
以前ララに対して「あまり婚約しているマイケルに近づくのはやめたほうがいい」と忠告したのを、ララは「脅された!」と改変していた。
証拠は無い。
しかしマイケルはララの言葉を信じた。
マイケルは学園でサラを罪人として晒しあげる。
そしてサラの言い分を聞かずに一方的に婚約破棄を宣言した。
もちろん、ララの言い分は全て嘘だったため、後に冤罪が発覚することになりマイケルは周囲から非難される……。
全ては望んだ結末の為に
皐月乃 彩月
恋愛
ループする世界で、何度も何度も悲惨な目に遭う悪役令嬢。
愛しの婚約者や仲の良かった弟や友人達に裏切られ、彼女は絶望して壊れてしまった。
何故、自分がこんな目に遇わなければならないのか。
「貴方が私を殺し続けるなら、私も貴方を殺し続ける事にするわ」
壊れてしまったが故に、悪役令嬢はヒロインを殺し続ける事にした。
全ては望んだ結末を迎える為に──
※主人公が闇落ち?してます。
※カクヨムやなろうでも連載しています作:皐月乃 彩月
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう
さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」
殿下にそう告げられる
「応援いたします」
だって真実の愛ですのよ?
見つける方が奇跡です!
婚約破棄の書類ご用意いたします。
わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。
さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます!
なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか…
私の真実の愛とは誠の愛であったのか…
気の迷いであったのでは…
葛藤するが、すでに時遅し…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる