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終着駅

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目を覚ますと、もうすっかり日は暮れていて、窓からは容赦の無い冷気が伝わってきた。
バスは次が終点であるようだ。
どれくらい寝ていたのだろうか。
頭がずっしりと重い。ゆっくりと体を起こして、首を回し背伸びをする。窓に映ったその姿に、自分が泣いていたことに気がつく。いや、初めからわかっていたのかもしれない。だから私は、10年間ここに足を踏み入れようとしなかった。自分が強くなるまでは。けじめがつくまでは。それまでは、この土地を、この場所を、気持ちの中に封印することにしたのだった。
古い1冊の本をカバンの中から取り出す。花火師を夢み、夜空に咲き散るその大火に魅了された主人公の思いが詰まった1冊のマンガ。初めて彼が私に貸してくれた、結局返すことのできなかったその1冊を片手に、朝倉杏は今日も黒い服を着て、降り立った。かつて廃れてしまったあのバス停と、名も場所も同じまま新しく作られたこの街の終点駅に。

よく晴れた夜空には、大きな月が空高くのぼり、真冬の街を照らしていた。
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