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第6章
125.提案。そして始まり
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暑い夏が終わった。
いつの間にか蝉の声が聞こえなくなり、鈴虫の合唱を鳴りを潜めていく季節。
あれだけウダウダと文句の言っていた暑さも鳴りを潜め、外には冷たい風がビュウビュウと吹いている。
あれだけ夜遅くまで世界を照らしていた太陽も今では高度が下がり、夕方となろう頃には一気に紅く、数分で闇に飲まれるようになってしまった。
9月、10月、11月と二学期はまたたくま過ぎていき、気づけば12月。
学校では2学期特有の様々な行事も過ぎて残すところクリスマスと正月、おまけに終業式から始まる冬休みのみとなってしまった。
俺は目まぐるしく過ぎ去った季節を思い返しつつ、暖かな部屋でソファへとゆったり座りながら隣の少女に目を向ける。。
「はい、あ~ん!」
「……あ~」
突然、隣から楽しそうな声と共に差し出されるのはマカロン。
口元に差し出される時点で俺に渡されているのは間違えようがない。小さく声を発しながら口を開くと、口の中に甘くて上品な香りが一斉に広がる。
「ふふっ。美味しいですかぁ?」
「……うん、美味しいよ。ありがとう」
ソファーに腰掛けながら一切手を動かすこともない、まるで王様のような所業。
そんな俺をジッと見ては嬉しそうに微笑む少女。
美しくも可愛らしさを残す少女の本当に楽しそうな心が溢れる笑顔。それは誰しもが見惚れるものだろう。それがただ、俺一人だけに向けられているのだ。
しかしその笑顔も一瞬のこと。口元に目がいった途端「あっ!」と声を上げて机の上を漁りだす。
「いけない!お口に汚れがついてますよ! …………はい、ウェットティッシュです。拭きますのでジッとしていてくださいねぇ」
「んっ……取れた?」
「はい、取れました!……それでは続いて、失礼しますね」
まさに人生の絶頂。
そんな言葉を口にして嘘偽り内と示すほどの笑顔を見せた少女は、俺の返事を待つことなく自らの身体を倒して頭を膝の上へ。
膝枕だ。俺の膝に乗った彼女は目にかかった黒髪をかき上げつつ目が合うと嬉しそうにはにかむ。
少女の格好はジーンズにセーターというシンプルなもの。
しかしシンプルだからこそ、彼女が着るセーターは身体の線がしっかりと出ていてそのスタイルの良さがひと目でわかる。
「ふふっ。本当に私、今幸せです」
膝の上に乗りながら今を噛みしめるようにポツリと呟く。
"どんな状況"でもそう言ってくれるのは悪い気がしない。行き場を失った俺の手がフラフラと宙を彷徨わせていると、おもむろに彼女の手が伸びてきて、そのまま彼女の腰の上へとポスリと置かれる。
「慎也さん……私、こんなに幸せでいいんでしょうか」
「うん。俺も幸せだよ。 だから、アイさんも幸せでいいんじゃないかな」
「そうですか……よかったです」
それから何をするわけでもなく目を細める彼女――――アイさんは身体の力を抜く。
あぁ、俺もこれでよかったんだ……。そう思って天を仰ぎ目を閉じた。
いろんな事があった。
アイさんと出会い、デートをし、拘束をされ……………。
そんな色々なことが。
色々とあったが今は幸せだ。こう彼女の愛を一身に受け、何も間違ったことはなかったんだ――――。
―――――――――――――――――
―――――――――――
―――――――
「ちょっとね、そろそろ私、『いい加減にして』って言いたいことがあるの」
それは12月の休日、昼食中の発言だった。
もうすっかり行きつけとなったタワマン、その一室にあるエレナの部屋。
この数ヶ月ですっかり休日の集合場所となっていたリビングで、お昼を食べているさなか突然エレナがそんなことをいい出した。
「また変なこといい出した」と思いつつ目を向ければ何やらいつもと違う神妙な顔。その表情に俺も思わずゴクリと喉を鳴らす。
「どしたんエレナ。また変な思いつき?」
正面のリオがパスタをすすりながら隣に座るエレナに問いかける。
しかし当人は黙って首を振る。それでもどうせ大したことじゃないだろうと俺もパスタをすする。
「慎也さん!いけません!服にミートソースついちゃってますよ!!」
「あっ、ホントだ」
ふと俺の隣から聞こえる声に視線を下げれば、胸元には白色と対称をなすように付着した赤茶色のシミが。
やってしまった。お気に入りのシャツだったのに。
「ああっ!だめです!シミは最初が肝心なんですから!ティッシュ使わないでください!」
「大丈夫だよアイさん。随分古いシャツだし」
お気に入りではあるが古いこともまた事実。
1年以上着て少しヨレてしまっているからもう寿命ということだろう。そう呼びかけたはいいが、彼女は一切譲る気配を見せず眉をつり上げてこちらを見ている。
「駄目ですっ!シミは時間との勝負……すぐに洗濯しますから服脱いでください!!」
「別にそこまでする必要は…………いや、お願いします」
否定しようとしたがその有無を言わせぬ迫力に素直に降伏をする。
シャツを脱いだところで下にアンダーも着ている。何故か手を貸してくれるアイさんに頼りながら、俺は両手を上げて彼女に服を剥ぎ取ってもらう。
「ごめんね余計な手間を増やしちゃって」
「いえ、いいんです。………えぇ、全然構いません。スンスン……」
「…………」
受け取った服を抱きながらこちらに笑顔を向けつつ、思い切り鼻に近づけているアイさん。
「クンクン……。あぁ、慎也さんの匂いが……いっぱぁい……」
「……時間との勝負じゃなかったの?」
「――――はっ!そうでした!」
俺の隣で1人トリップしている彼女はなんとか自我を取り戻し、シャツ片手に洗面所に向かおうとする。
……しかしその足は洗面所に向かうことなく、椅子を降りて数歩進んだ段階で「あっ」と声を上げ戻ってきた。
「アイさん?」
「一つ忘れてました!慎也さん――――」
「えっ――――」
何かを思い出したかのように戻ってきた彼女は、そのまま真っ直ぐとさっきまで座っていた椅子に膝を立てたと思いきや、チュッと頬に柔らかな感触が飛び込んできた。
前触れなんてない突然のキスに目を丸くする俺に対し、彼女は口元を手で隠しながら恥ずかしそうにはにかんでみせる。
「ほっぺたにお肉がついてましたよ。それでは洗濯してきます。ご飯、食べ終わったらお昼寝しましょうね?」
「子守唄付きで」と小さく手を振りながら今度こそ洗面所に消えてしまうアイさん。
それはまるで新婚のよう。美人すぎるお嫁さんをもつとこんな感じなのかなとボーっとさっきの感覚をリフレインしていると、おもむろに正面から荒らげる声が飛び込んできた。
「これよこれ!明らかにおかしすぎるわ!!」
「あぁ、これねぇ……」
声の主はエレナ。彼女がツッコミをいれるように俺を指して声を荒らげると、リオも苦笑しつつ同意する。
「えっと、エレナ?」
「慎也!あなたおかしいとは思わないの!?もうアイと二人の関係性が謎すぎるわよ!何!?ママなの!?ママと幼児なの!?」
それはもっともな指摘。
3人との関係性。両思いでありつつも気の多さもあって誰もまだ一歩先に行けていない状況。
そんな中、最も態度が変わったのがアイさんだった。
アイさん。アイドルグループ"ストロベリーリキッド"の中で最も母性に溢れた女性。
これまでエレナの食事を作ってきたり掃除してきたり、母と思わせる状況はたしかにあった。
しかし真価を発揮したのは俺への拘束事件が終わり徐々に。まるで気づいたら絵が変わっているだまし絵のよう。彼女は冬に入る頃には、俺の全てを管理するレベルで甘やかし、世話をするようになったのだ。
ご飯は全部『あ~ん』しようとするし、頬にご飯粒がついていればキスで取ろうとする。
朝起こすのはもちろん、寝るときまで子守唄を歌うほどとなってしまった。
「慎也も慎也よ!どうして拒否しようとしないの!?」
「知ってるだろ。何度もしようとしたけど諦めたって」
「それはっ……!そうだけど……」
俺の冷静な言葉にエレナは悔しそうに唇を噛む。
もちろん俺も最初は拒否しようとした。
けれど拒否するたびに泣きそうな笑顔で『ごめんなさい』と言われるのだから俺が折れるほかなかった。
「でもこのままだったら不味いわよ。共依存でもし何らかの理由で慎也が離れたら……アイが大変なことになるわよ」
「そうだけど……エレナはなにか対策あるの?」
「ないわっ!!」
自信満々に胸を張ってみせるエレナに俺はフォークのミートボールを皿に落とす。
じゃあ八方塞がりじゃないか。そう口にしようとしたところ、リオの咳き込む声が聞こえてきて視線を向ける。
「じゃあさ、逆に押して駄目なら引いてみろってのはどう?」
「どういうことよ、それ?」
「ほら、否定されると逆に燃え上がるとかあるからさ、逆に満足行くまで自由にさせたらどうかなって」
「………!! それよっ!!」
ガタンッ!と勢いよく立ち上がったエレナは椅子を転がしながらグッと握りこぶしを作る。
リオもやってやったかのような笑顔。どうやら二人とも俺の犠牲というものはコラテラル・ダメージのようだ。
「どうしたの?なんだかガタンって音聞こえたけど……エレナ?」
「あぁアイ!いいところに!!」
「…………?」
どうやら洗濯を回してきたようだ。洗面所から戻ってきたアイさんは何故か椅子を倒して立ち上がっているエレナに肩を捕まれ、頭に疑問符が浮いている。
「いい、アイ。これからあなたには一つの作戦を遂行してもらうわ」
「作戦?」
「えぇ。名付けて、『慎也が全部受け入れる作戦』よっ!!」
元気いっぱいの宣言によって作戦の遂行が決定づけられる。
どうやら恐ろしいほどダサい作戦名によって、俺の尊厳が地に落ちることも確定してしまった―――――
いつの間にか蝉の声が聞こえなくなり、鈴虫の合唱を鳴りを潜めていく季節。
あれだけウダウダと文句の言っていた暑さも鳴りを潜め、外には冷たい風がビュウビュウと吹いている。
あれだけ夜遅くまで世界を照らしていた太陽も今では高度が下がり、夕方となろう頃には一気に紅く、数分で闇に飲まれるようになってしまった。
9月、10月、11月と二学期はまたたくま過ぎていき、気づけば12月。
学校では2学期特有の様々な行事も過ぎて残すところクリスマスと正月、おまけに終業式から始まる冬休みのみとなってしまった。
俺は目まぐるしく過ぎ去った季節を思い返しつつ、暖かな部屋でソファへとゆったり座りながら隣の少女に目を向ける。。
「はい、あ~ん!」
「……あ~」
突然、隣から楽しそうな声と共に差し出されるのはマカロン。
口元に差し出される時点で俺に渡されているのは間違えようがない。小さく声を発しながら口を開くと、口の中に甘くて上品な香りが一斉に広がる。
「ふふっ。美味しいですかぁ?」
「……うん、美味しいよ。ありがとう」
ソファーに腰掛けながら一切手を動かすこともない、まるで王様のような所業。
そんな俺をジッと見ては嬉しそうに微笑む少女。
美しくも可愛らしさを残す少女の本当に楽しそうな心が溢れる笑顔。それは誰しもが見惚れるものだろう。それがただ、俺一人だけに向けられているのだ。
しかしその笑顔も一瞬のこと。口元に目がいった途端「あっ!」と声を上げて机の上を漁りだす。
「いけない!お口に汚れがついてますよ! …………はい、ウェットティッシュです。拭きますのでジッとしていてくださいねぇ」
「んっ……取れた?」
「はい、取れました!……それでは続いて、失礼しますね」
まさに人生の絶頂。
そんな言葉を口にして嘘偽り内と示すほどの笑顔を見せた少女は、俺の返事を待つことなく自らの身体を倒して頭を膝の上へ。
膝枕だ。俺の膝に乗った彼女は目にかかった黒髪をかき上げつつ目が合うと嬉しそうにはにかむ。
少女の格好はジーンズにセーターというシンプルなもの。
しかしシンプルだからこそ、彼女が着るセーターは身体の線がしっかりと出ていてそのスタイルの良さがひと目でわかる。
「ふふっ。本当に私、今幸せです」
膝の上に乗りながら今を噛みしめるようにポツリと呟く。
"どんな状況"でもそう言ってくれるのは悪い気がしない。行き場を失った俺の手がフラフラと宙を彷徨わせていると、おもむろに彼女の手が伸びてきて、そのまま彼女の腰の上へとポスリと置かれる。
「慎也さん……私、こんなに幸せでいいんでしょうか」
「うん。俺も幸せだよ。 だから、アイさんも幸せでいいんじゃないかな」
「そうですか……よかったです」
それから何をするわけでもなく目を細める彼女――――アイさんは身体の力を抜く。
あぁ、俺もこれでよかったんだ……。そう思って天を仰ぎ目を閉じた。
いろんな事があった。
アイさんと出会い、デートをし、拘束をされ……………。
そんな色々なことが。
色々とあったが今は幸せだ。こう彼女の愛を一身に受け、何も間違ったことはなかったんだ――――。
―――――――――――――――――
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―――――――
「ちょっとね、そろそろ私、『いい加減にして』って言いたいことがあるの」
それは12月の休日、昼食中の発言だった。
もうすっかり行きつけとなったタワマン、その一室にあるエレナの部屋。
この数ヶ月ですっかり休日の集合場所となっていたリビングで、お昼を食べているさなか突然エレナがそんなことをいい出した。
「また変なこといい出した」と思いつつ目を向ければ何やらいつもと違う神妙な顔。その表情に俺も思わずゴクリと喉を鳴らす。
「どしたんエレナ。また変な思いつき?」
正面のリオがパスタをすすりながら隣に座るエレナに問いかける。
しかし当人は黙って首を振る。それでもどうせ大したことじゃないだろうと俺もパスタをすする。
「慎也さん!いけません!服にミートソースついちゃってますよ!!」
「あっ、ホントだ」
ふと俺の隣から聞こえる声に視線を下げれば、胸元には白色と対称をなすように付着した赤茶色のシミが。
やってしまった。お気に入りのシャツだったのに。
「ああっ!だめです!シミは最初が肝心なんですから!ティッシュ使わないでください!」
「大丈夫だよアイさん。随分古いシャツだし」
お気に入りではあるが古いこともまた事実。
1年以上着て少しヨレてしまっているからもう寿命ということだろう。そう呼びかけたはいいが、彼女は一切譲る気配を見せず眉をつり上げてこちらを見ている。
「駄目ですっ!シミは時間との勝負……すぐに洗濯しますから服脱いでください!!」
「別にそこまでする必要は…………いや、お願いします」
否定しようとしたがその有無を言わせぬ迫力に素直に降伏をする。
シャツを脱いだところで下にアンダーも着ている。何故か手を貸してくれるアイさんに頼りながら、俺は両手を上げて彼女に服を剥ぎ取ってもらう。
「ごめんね余計な手間を増やしちゃって」
「いえ、いいんです。………えぇ、全然構いません。スンスン……」
「…………」
受け取った服を抱きながらこちらに笑顔を向けつつ、思い切り鼻に近づけているアイさん。
「クンクン……。あぁ、慎也さんの匂いが……いっぱぁい……」
「……時間との勝負じゃなかったの?」
「――――はっ!そうでした!」
俺の隣で1人トリップしている彼女はなんとか自我を取り戻し、シャツ片手に洗面所に向かおうとする。
……しかしその足は洗面所に向かうことなく、椅子を降りて数歩進んだ段階で「あっ」と声を上げ戻ってきた。
「アイさん?」
「一つ忘れてました!慎也さん――――」
「えっ――――」
何かを思い出したかのように戻ってきた彼女は、そのまま真っ直ぐとさっきまで座っていた椅子に膝を立てたと思いきや、チュッと頬に柔らかな感触が飛び込んできた。
前触れなんてない突然のキスに目を丸くする俺に対し、彼女は口元を手で隠しながら恥ずかしそうにはにかんでみせる。
「ほっぺたにお肉がついてましたよ。それでは洗濯してきます。ご飯、食べ終わったらお昼寝しましょうね?」
「子守唄付きで」と小さく手を振りながら今度こそ洗面所に消えてしまうアイさん。
それはまるで新婚のよう。美人すぎるお嫁さんをもつとこんな感じなのかなとボーっとさっきの感覚をリフレインしていると、おもむろに正面から荒らげる声が飛び込んできた。
「これよこれ!明らかにおかしすぎるわ!!」
「あぁ、これねぇ……」
声の主はエレナ。彼女がツッコミをいれるように俺を指して声を荒らげると、リオも苦笑しつつ同意する。
「えっと、エレナ?」
「慎也!あなたおかしいとは思わないの!?もうアイと二人の関係性が謎すぎるわよ!何!?ママなの!?ママと幼児なの!?」
それはもっともな指摘。
3人との関係性。両思いでありつつも気の多さもあって誰もまだ一歩先に行けていない状況。
そんな中、最も態度が変わったのがアイさんだった。
アイさん。アイドルグループ"ストロベリーリキッド"の中で最も母性に溢れた女性。
これまでエレナの食事を作ってきたり掃除してきたり、母と思わせる状況はたしかにあった。
しかし真価を発揮したのは俺への拘束事件が終わり徐々に。まるで気づいたら絵が変わっているだまし絵のよう。彼女は冬に入る頃には、俺の全てを管理するレベルで甘やかし、世話をするようになったのだ。
ご飯は全部『あ~ん』しようとするし、頬にご飯粒がついていればキスで取ろうとする。
朝起こすのはもちろん、寝るときまで子守唄を歌うほどとなってしまった。
「慎也も慎也よ!どうして拒否しようとしないの!?」
「知ってるだろ。何度もしようとしたけど諦めたって」
「それはっ……!そうだけど……」
俺の冷静な言葉にエレナは悔しそうに唇を噛む。
もちろん俺も最初は拒否しようとした。
けれど拒否するたびに泣きそうな笑顔で『ごめんなさい』と言われるのだから俺が折れるほかなかった。
「でもこのままだったら不味いわよ。共依存でもし何らかの理由で慎也が離れたら……アイが大変なことになるわよ」
「そうだけど……エレナはなにか対策あるの?」
「ないわっ!!」
自信満々に胸を張ってみせるエレナに俺はフォークのミートボールを皿に落とす。
じゃあ八方塞がりじゃないか。そう口にしようとしたところ、リオの咳き込む声が聞こえてきて視線を向ける。
「じゃあさ、逆に押して駄目なら引いてみろってのはどう?」
「どういうことよ、それ?」
「ほら、否定されると逆に燃え上がるとかあるからさ、逆に満足行くまで自由にさせたらどうかなって」
「………!! それよっ!!」
ガタンッ!と勢いよく立ち上がったエレナは椅子を転がしながらグッと握りこぶしを作る。
リオもやってやったかのような笑顔。どうやら二人とも俺の犠牲というものはコラテラル・ダメージのようだ。
「どうしたの?なんだかガタンって音聞こえたけど……エレナ?」
「あぁアイ!いいところに!!」
「…………?」
どうやら洗濯を回してきたようだ。洗面所から戻ってきたアイさんは何故か椅子を倒して立ち上がっているエレナに肩を捕まれ、頭に疑問符が浮いている。
「いい、アイ。これからあなたには一つの作戦を遂行してもらうわ」
「作戦?」
「えぇ。名付けて、『慎也が全部受け入れる作戦』よっ!!」
元気いっぱいの宣言によって作戦の遂行が決定づけられる。
どうやら恐ろしいほどダサい作戦名によって、俺の尊厳が地に落ちることも確定してしまった―――――
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