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【5】重なる想い
4.最後の砦*
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ご主人様がキアラを抱きかかえて脱衣所を歩いている間に、身体が温かい風に包まれて一瞬で乾いた。
ご主人様お得意の風の魔法だ、とすぐに気づく。
お互いに、さらりと乾いた裸の肌が触れ合う感じが慣れなくて、キアラがどぎまぎしながらご主人様に抱きついている間に、ご主人様が階段を上り始める。
どうして裸のままなのか、とか問う余裕もないままに、ご主人様に抱きかかえられたキアラが辿り着いたのは…。
寝室、だった。
「…ご主人、様…?」
問う、自分の声に表れていたのは、驚きか、動揺か。
その、どちらもか。
寝室に、自分が好きだと言っているひとと、自分を好きだと言ってくれるひとと、裸で共にいる意味を考えれば、混乱せずにもいられない。
いつも二人で眠っているベッドに、キアラの身体がそっと下ろされる。
何も身に着けていないことが恥ずかしくて、キアラは掛布にくるまろうとしたのだが、それよりも早く裸のご主人様がキアラの上に乗ってきた。
微笑んだ、ご主人様が、キアラを見下ろしている。
そう、認識した途端、キアラの心臓がドッと大きな音を立てて、体温が急上昇したように感じる。
ぐるぐる、ぐるぐるしていて、なんだかわけがわからない。
けれど、今、自分が、とてつもなく危ない状態だということは、わかる。
ああ、だからきっと、キアラの身体はそのような諸症状を訴えて、頭がぐるぐる、ぐるぐると混乱しているのだろう。
今まで、キアラは裸になっても、ご主人様が裸でキアラを抱きかかえる場面というのは、お風呂に入る以外にはなかったのだ。
こうして、ベッドでご主人様に押し倒されている状況、というのは、非常にまずい、気がする。
だって、ご主人様はとっても真摯で紳士だけれど、ご主人様だって健康な成人男性なのだ。
加えて、キアラはお薬を飲んで症状が落ち着いているとはいえ、発情期。
ご主人様が、発情期のキアラに(気持ち的な意味で)煽られない可能性がないとは言えない。
いや、もう、煽られているのかもしれない、と思いながら、キアラは見下ろしてくるご主人様の瞳を見つめ返す。
ご主人様のロイヤルブルーサファイアの瞳は熱で潤んで、溶けて、キアラの上に落ちてきそうだ。
「俺は、キアラが猫のままじゃなくてよかったと思ってる」
微笑んだご主人様に告げられた、言葉。
その言葉に、キアラの心がどんなに震えたか、ご主人様にはわからないだろう。
伝わればいいのに、と思う。
ご主人様に、そんな意図はなかったかもしれない。
けれど、キアラは、キアラがキアラのままで生まれて来てくれてよかった、と。
キアラがどんな姿であれ、キアラでいてくれてよかった、と告げてもらったような気になったのだ。
嬉しくて、胸がぎゅっとなって、苦しくて、ご主人様をぎゅっとしたくなった。
ご主人様の首に縋りついていると、ご主人様がキアラの首筋顔を埋めてくんくんとしたあとで、ちゅっちゅっと口づけてくる。
するするなでなでと、浮いた背中を撫でられて、キアラはびくりとした。
「ご主人様…、あの、あの、ですから、交尾は、だめ、です」
「…赤ちゃん出来ちゃうから、キアラは俺とえっちするの、嫌なんだっけ」
ふるふると首を横に振ったキアラに、ご主人様が頷いてくれたから、キアラはご主人様がわかってくれたのだと安堵した。
だが、キアラがほっとしている間に、ご主人様の手はキアラの尻尾の付け根に伸びて、さわさわと撫でられる。
顔をわずか傾けたご主人様が、キアラの唇に唇でそっと触れるので、キアラは目を見張ってご主人様の胸を押した。
「ぇ、えっ? ご主人様、話が違いま、っ…!」
反論するキアラの唇を、ご主人様の唇が塞ぐ。
塞ぐ、というほどではないが、ちゅっと啄むようにキアラに口づけてきたご主人様に、キアラは口を噤む格好になった。
唇と唇を重ねるだけの、優しくてふわふわとした、気持ちのいいキスから始まるのは、いつものこと。
それが、よくわからないけれど、いつの間にか唇と舌を使った、とろとろで気持ちのいいキスに変わっているのだ。
上手く頭が回らないのは一緒でも、生まれたままの姿のご主人様に押し倒されたときの混乱とは違い、頭がふやふやになって上手に物が考えられなくなる。
そんな状態でご主人様を見つめ返すと、ご主人様は人差し指と中指の間に、何か薄くて四角い袋を挟んでキアラに見せてきた。
食べ物、だろうか、と思ってキアラがそれをじっと見つめていると、ご主人様がキアラに尋ねてくる。
「…キアラは避妊具というものを知らないの?」
「ひにん、ぐ? 美味しいですか?」
耳慣れない単語に、キアラが問い返すと、ご主人様はふっと笑った。
「匂い付きのとか味付きのもあるらしいけど、美味しくはないんじゃないかな。 俺は、余計な匂いとか味がするのは嫌い」
「じゃあ、キアラも匂いや味がするのは嫌です」
キアラがご主人様に告げると、ご主人様はキアラのことを褒めるときの顔で微笑んで、もう一度キアラの唇に、唇を合わせてくれる。
そして、ご主人様はすっとキアラの上から離れた。
その隙に、と思ってキアラは掛布を手繰り寄せたのだが…。
「!」
ご主人様の脚の間のものが、キアラと一緒にお風呂に入っているときとは違う様子になっていることに気づいて、キアラは赤くなった。
ご主人様お得意の風の魔法だ、とすぐに気づく。
お互いに、さらりと乾いた裸の肌が触れ合う感じが慣れなくて、キアラがどぎまぎしながらご主人様に抱きついている間に、ご主人様が階段を上り始める。
どうして裸のままなのか、とか問う余裕もないままに、ご主人様に抱きかかえられたキアラが辿り着いたのは…。
寝室、だった。
「…ご主人、様…?」
問う、自分の声に表れていたのは、驚きか、動揺か。
その、どちらもか。
寝室に、自分が好きだと言っているひとと、自分を好きだと言ってくれるひとと、裸で共にいる意味を考えれば、混乱せずにもいられない。
いつも二人で眠っているベッドに、キアラの身体がそっと下ろされる。
何も身に着けていないことが恥ずかしくて、キアラは掛布にくるまろうとしたのだが、それよりも早く裸のご主人様がキアラの上に乗ってきた。
微笑んだ、ご主人様が、キアラを見下ろしている。
そう、認識した途端、キアラの心臓がドッと大きな音を立てて、体温が急上昇したように感じる。
ぐるぐる、ぐるぐるしていて、なんだかわけがわからない。
けれど、今、自分が、とてつもなく危ない状態だということは、わかる。
ああ、だからきっと、キアラの身体はそのような諸症状を訴えて、頭がぐるぐる、ぐるぐると混乱しているのだろう。
今まで、キアラは裸になっても、ご主人様が裸でキアラを抱きかかえる場面というのは、お風呂に入る以外にはなかったのだ。
こうして、ベッドでご主人様に押し倒されている状況、というのは、非常にまずい、気がする。
だって、ご主人様はとっても真摯で紳士だけれど、ご主人様だって健康な成人男性なのだ。
加えて、キアラはお薬を飲んで症状が落ち着いているとはいえ、発情期。
ご主人様が、発情期のキアラに(気持ち的な意味で)煽られない可能性がないとは言えない。
いや、もう、煽られているのかもしれない、と思いながら、キアラは見下ろしてくるご主人様の瞳を見つめ返す。
ご主人様のロイヤルブルーサファイアの瞳は熱で潤んで、溶けて、キアラの上に落ちてきそうだ。
「俺は、キアラが猫のままじゃなくてよかったと思ってる」
微笑んだご主人様に告げられた、言葉。
その言葉に、キアラの心がどんなに震えたか、ご主人様にはわからないだろう。
伝わればいいのに、と思う。
ご主人様に、そんな意図はなかったかもしれない。
けれど、キアラは、キアラがキアラのままで生まれて来てくれてよかった、と。
キアラがどんな姿であれ、キアラでいてくれてよかった、と告げてもらったような気になったのだ。
嬉しくて、胸がぎゅっとなって、苦しくて、ご主人様をぎゅっとしたくなった。
ご主人様の首に縋りついていると、ご主人様がキアラの首筋顔を埋めてくんくんとしたあとで、ちゅっちゅっと口づけてくる。
するするなでなでと、浮いた背中を撫でられて、キアラはびくりとした。
「ご主人様…、あの、あの、ですから、交尾は、だめ、です」
「…赤ちゃん出来ちゃうから、キアラは俺とえっちするの、嫌なんだっけ」
ふるふると首を横に振ったキアラに、ご主人様が頷いてくれたから、キアラはご主人様がわかってくれたのだと安堵した。
だが、キアラがほっとしている間に、ご主人様の手はキアラの尻尾の付け根に伸びて、さわさわと撫でられる。
顔をわずか傾けたご主人様が、キアラの唇に唇でそっと触れるので、キアラは目を見張ってご主人様の胸を押した。
「ぇ、えっ? ご主人様、話が違いま、っ…!」
反論するキアラの唇を、ご主人様の唇が塞ぐ。
塞ぐ、というほどではないが、ちゅっと啄むようにキアラに口づけてきたご主人様に、キアラは口を噤む格好になった。
唇と唇を重ねるだけの、優しくてふわふわとした、気持ちのいいキスから始まるのは、いつものこと。
それが、よくわからないけれど、いつの間にか唇と舌を使った、とろとろで気持ちのいいキスに変わっているのだ。
上手く頭が回らないのは一緒でも、生まれたままの姿のご主人様に押し倒されたときの混乱とは違い、頭がふやふやになって上手に物が考えられなくなる。
そんな状態でご主人様を見つめ返すと、ご主人様は人差し指と中指の間に、何か薄くて四角い袋を挟んでキアラに見せてきた。
食べ物、だろうか、と思ってキアラがそれをじっと見つめていると、ご主人様がキアラに尋ねてくる。
「…キアラは避妊具というものを知らないの?」
「ひにん、ぐ? 美味しいですか?」
耳慣れない単語に、キアラが問い返すと、ご主人様はふっと笑った。
「匂い付きのとか味付きのもあるらしいけど、美味しくはないんじゃないかな。 俺は、余計な匂いとか味がするのは嫌い」
「じゃあ、キアラも匂いや味がするのは嫌です」
キアラがご主人様に告げると、ご主人様はキアラのことを褒めるときの顔で微笑んで、もう一度キアラの唇に、唇を合わせてくれる。
そして、ご主人様はすっとキアラの上から離れた。
その隙に、と思ってキアラは掛布を手繰り寄せたのだが…。
「!」
ご主人様の脚の間のものが、キアラと一緒にお風呂に入っているときとは違う様子になっていることに気づいて、キアラは赤くなった。
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