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【4】過去から現在へ
2.味方
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キアラは今日も、うさぎさんのところでお手伝いをしていた。
キアラが恐れていたほど、初めての発情期は怖いものではなかった。
けれど、それはキアラがひとりではなくて、ご主人様が傍にいてくれたから。
人兎族で、人獣族のことをよく理解しているうさぎさんが傍で手助けしてくれたおかげだと思う。
人獣族が、人獣族だけのコミュニティを作って生活する理由も、なんとなくわかった。
ご主人様は、キアラのことを大切にしてくれるけれど、人獣族のことにはあまり詳しくない。
気持ちがあっても、気持ちだけにはどうにもならないことは確かにあるのだ。
猫のキアラが、ご主人様のお役に立ちたいという気持ちだけでは、ご主人様の何にもならないと気づいて、ご主人様の後をついて回って使い魔になったのだってそのためだ。
誰かの力になるためには、思うだけではなく、そのときに適した行動を取る必要がある。
それにはきっと、経験や知識も必要なのだ。
ご主人様もキアラも、その経験や知識が不足している。
だから、うさぎさんやくまのお医者さんが、キアラの体調のことをあれこれと心配してくれるのが、本当に有り難い。
キアラは幸い、お薬全般が効きやすい体質だったらしい。
発情期のお薬さえ飲んでいれば、発情期特有の症状にも悩まされずに済んだ。
発情期のフェロモンの分泌も抑えられているらしく、通常値ぎりぎりの範囲内だとくまのお医者さんは言っていた。
それでも、密室などでは空気の流れがないためにフェロモンが停滞しやすいからと、フェロモンを分解するスプレーをくれたのも、くまのお医者さんだ。
キアラの腰のポーチには、お薬のケースとフェロモン分解スプレーが入っていて、何だかキアラはそれだけで無敵になったような気さえしている。
キアラは、小さく笑った。
どうやらキアラは、形から入るタイプだったらしい。
それから、味方がいることが、こんなにも心強い。
朝は、ご主人様がうさぎさんの研究室まで送ってくれて、研究室ではうさぎさんがほとんどの時間をキアラと過ごしてくれて、周囲に目を光らせてくれている。
そうしてお手伝いが終わると、ご主人様がキアラを迎えに来てくれて、朝までご主人様と一緒に過ごす。
そのためか、レナトというあのいやなひとからの接触は、今のところ、ない。
こんこん、とノックの音がしたので、キアラはハッとしてポーチからフェロモン分解スプレーを取り出して、貴重な資料や本にかからないようにと気をつけて吹きかける。
「はい、どうぞ」
キアラが返事をすると、うさぎさんの顔が覗いた。
「キアラちゃん、わたし、所長に呼ばれたからちょっと行ってくるわ」
「はい、わかりました」
こうやって、声をかけてもらえるのも、本当に有り難い。
例えば、キアラにお姉さんがいたとしたら、こんな感じなのだろうか。
うさぎさんのようなお姉さんなら嬉しいと思う。
キアラが気を取り直して書類の整理を始めると、キィ…と扉が開く音がした。
必ずノックをするようにと張り紙がしてあるのに、と思いつつ、キアラは振り返る。
「ノック、してくだ」
言葉は、最後まで続かなかった。
キアラが恐れていたほど、初めての発情期は怖いものではなかった。
けれど、それはキアラがひとりではなくて、ご主人様が傍にいてくれたから。
人兎族で、人獣族のことをよく理解しているうさぎさんが傍で手助けしてくれたおかげだと思う。
人獣族が、人獣族だけのコミュニティを作って生活する理由も、なんとなくわかった。
ご主人様は、キアラのことを大切にしてくれるけれど、人獣族のことにはあまり詳しくない。
気持ちがあっても、気持ちだけにはどうにもならないことは確かにあるのだ。
猫のキアラが、ご主人様のお役に立ちたいという気持ちだけでは、ご主人様の何にもならないと気づいて、ご主人様の後をついて回って使い魔になったのだってそのためだ。
誰かの力になるためには、思うだけではなく、そのときに適した行動を取る必要がある。
それにはきっと、経験や知識も必要なのだ。
ご主人様もキアラも、その経験や知識が不足している。
だから、うさぎさんやくまのお医者さんが、キアラの体調のことをあれこれと心配してくれるのが、本当に有り難い。
キアラは幸い、お薬全般が効きやすい体質だったらしい。
発情期のお薬さえ飲んでいれば、発情期特有の症状にも悩まされずに済んだ。
発情期のフェロモンの分泌も抑えられているらしく、通常値ぎりぎりの範囲内だとくまのお医者さんは言っていた。
それでも、密室などでは空気の流れがないためにフェロモンが停滞しやすいからと、フェロモンを分解するスプレーをくれたのも、くまのお医者さんだ。
キアラの腰のポーチには、お薬のケースとフェロモン分解スプレーが入っていて、何だかキアラはそれだけで無敵になったような気さえしている。
キアラは、小さく笑った。
どうやらキアラは、形から入るタイプだったらしい。
それから、味方がいることが、こんなにも心強い。
朝は、ご主人様がうさぎさんの研究室まで送ってくれて、研究室ではうさぎさんがほとんどの時間をキアラと過ごしてくれて、周囲に目を光らせてくれている。
そうしてお手伝いが終わると、ご主人様がキアラを迎えに来てくれて、朝までご主人様と一緒に過ごす。
そのためか、レナトというあのいやなひとからの接触は、今のところ、ない。
こんこん、とノックの音がしたので、キアラはハッとしてポーチからフェロモン分解スプレーを取り出して、貴重な資料や本にかからないようにと気をつけて吹きかける。
「はい、どうぞ」
キアラが返事をすると、うさぎさんの顔が覗いた。
「キアラちゃん、わたし、所長に呼ばれたからちょっと行ってくるわ」
「はい、わかりました」
こうやって、声をかけてもらえるのも、本当に有り難い。
例えば、キアラにお姉さんがいたとしたら、こんな感じなのだろうか。
うさぎさんのようなお姉さんなら嬉しいと思う。
キアラが気を取り直して書類の整理を始めると、キィ…と扉が開く音がした。
必ずノックをするようにと張り紙がしてあるのに、と思いつつ、キアラは振り返る。
「ノック、してくだ」
言葉は、最後まで続かなかった。
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