【R18】お猫様のお気に召すまま

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【2】猫ではないキアラの新生活

10.ご主人様とえっちの練習②**

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 ご主人様の長い指が、キアラのそこに納まっているのが不思議で、キアラは思わずまじまじと見てしまった。
「本当、です…」
「大丈夫? 怖くない? 気持ち悪かったらやめるけど」

 キアラの様子や呟きを、どのように受け取ったのか、ご主人様は何度もキアラの瞼や目と目の間に唇を押し当てて尋ねてくれる。
 それがくすぐったいけれど、大切にされているようで嬉しくて、愛しくて、温かい気持ちになる。
 だから、キアラもご主人様に「もっと」とねだるように顔を擦りつけるのだ。
「怖くない、です。 変な感じ、です、けど、気持ち悪くは、ないです」

 正直、気持ちいいかどうかはまだわからなかった。
 けれど、ご主人様に触られることを嫌だと感じたことはないので、そのように告げる。
 ご主人様に触られるのは、嬉しいし、幸せだ。
 そのことを素直に伝えると、ご主人様は苦笑を隠すように、キアラの目尻に口づけるのだ。


「うん、じゃあ、今してることが、気持ちいいことだって覚えようか」


 ご主人様の提案に、キアラがきょとんとしていると、ご主人様はキアラの中から指を引き抜かれる。
 キアラの返答に、がっかりしたのだろうか。
 そう不安になっていると、ひたり、と同じ場所にまた何かが触れた。


「指、増やすよ」


 ちらと視線を向ければ、ご主人様の左の中指に薬指が添えられて、キアラの股間に当てられている。
 指一本であの違和感だったのだ。
 二本になったらどうなってしまうのだろう。
 いや、それよりもまず、キアラのそこに、ご主人様の指二本なんて入るのだろうか。
 そう懸念しつつも、キアラの口から零れる返事は、ひとつだけなのだから不思議だと思う。
「…はい」
「うん、深く息を吸って。 …ゆっくり吐いて」


 ご主人様の言葉の通りに、キアラはすぅーと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
 吐き出している間に、ぐっと脚の間に圧がかかったと感じた。
 次の瞬間には、ぐぅっとその圧が身体のなかにまでかかって、侵入してくる。


「…うぅ」
 痛くはない、けれど、キアラは思わず眉根を寄せたし、呻くような声が漏れた。
 ぎゅうっとご主人様のパジャマの胸元を掴む。


「どうした?」
 ご主人様の、怪訝そうでありながら、案じるようで優しい声が耳の近くで揺れる。
 今なら何でも言って大丈夫のような気になったので、キアラはご主人様に訴えた。


「お腹、いっぱいで、苦しいです」


 身体の中心を、無理矢理に――ではないけれど――こじ開けられてひらかれているような感じがして、苦しい。
 ご主人様は、キアラの訴えに頷きつつも、眉を下げて目尻も下げる。
「…それは困った。 俺のは、指二本よりもきっと苦しいよ」

 本当に困ったと思っているのだろう。
 ご主人様の顔は困っているし、宥めるようにキアラの瞼に唇を押し当てるのだ。

 その、ご主人様の心遣いを有難いと思いながらも、キアラは衝撃も受けていた。
 今でさえ、苦しいというのに、ご主人様と交尾…ではなかった、えっちするとなると、今よりも苦しいと?


 キアラは一度きゅっと唇を引き結んで、ごくりと唾を飲み込んだあとで、ご主人様に尋ねた。
「…もっと、苦しいですか」


 否定、してほしかったのかもしれない。
 けれど、ご主人様はこくりと頭を上下させ、頷いた。
 キアラの問いを、肯定したのだ。


「うん、きっと。 苦しいのは嫌だよね。 俺ともえっち、したくない?」


 真っすぐに、ご主人様の綺麗なロイヤルブルーサファイアの瞳がキアラの目を覗き込む。
 ご主人様の瞳の奥には、燻るような熱があるような気がした。
 けれど、それを抑え込んで、上から優しさと労りを被せて見えないようにしているのだ。
 キアラのことを、想って。
 それが、わかったから。


「…いやです、ご主人様とえっち、したいです…」


 考えるより早く、唇が動いて言葉を紡いだ。
 キアラがご主人様の表情をそっと窺うと、優しい微笑みが降ってくる。
 優しい、だけでなく、キアラの返答に安堵しているようにも見えて、キアラの胸はきゅううとなる。


 ご主人様は、キアラの肩を抱いていた右腕にぐっと力を込めてキアラをきつく抱き寄せる。
 キアラの脚の間に忍び込ませた指は、そのままに。
「うん、じゃあ、もう少し我慢。 こうして毎日触れていたら、慣れて苦しくなくなるよ」

 なぜだろう。
 瞼に触れたご主人様の唇を、祈るようだと感じた。
 それだけでなく、キアラに我慢を強いる代わりに、ご主人様も何かの我慢をしてくれているのだと理解した。
 理解すると同時に、胸の奥の奥がきゅううとなる。
 締め付けられるようなのに、痛くなくて、それなのに苦しい。
 けれど、苦くはなくて甘いのだ。


 こんな気持ちになったことは、ご主人様相手以外では、ない。
 これからもずっと、ありえないと、キアラは思う。


 だから、キアラをきつく抱きしめてくれているご主人様の胸に、甘えるように頬を摺り寄せるのだ。
「はい、頑張ります。 …だから、ご主人様」
「?」
 キアラが呼ぶと、ご主人様がキアラの顔を覗き込んでくれる。
 だからキアラは、宝石のようで綺麗なご主人様の瞳をじっと見つめるのだ。


「…キス、したいです。 して、くれますか…?」
 こういうおねだりはお嫌いだろうか。
 そう、どきどきしながら尋ねたのだが、ご主人様は口元を緩ませて、目を細める。
 優しくて、優しくて、甘くて、とろけそうで、きれいで、とても綺麗な微笑みだった。
 だから、キアラは食い入るように見つめる。
 見惚れる。


「キアラ、キス好きだよね。 俺も、キアラとのキス、好き」
 言いながらも、ご主人様の顔が近づいてきて、唇に吐息がかかったかと思うと、そのまま口づけられる。
 唇を柔らかく合わせるキスも好きだし、啄むようなキスも好きだけれど、キアラはそれよりも舌でするキスが好きだ。

 舌を出してご主人様の唇をちろと舐めると、ご主人様はキアラの舌を舐め返してくれて、そのまま舌を合わせながら唇でのキスになる。
「ん…」


 温かくて、気持ちいい。
 目を閉じたままふわふわとしたキアラが、このまま眠ってしまいたいな、くらいに考えていたときだ。
 脚の間、その奥に違和感を覚えて、ぱっと目を開く。


「っ!?ん、ん!?」
 キアラが、ご主人様の腕をとんとんと叩くと、ご主人様はキスを中断して、唇を少しだけ離した。


「キスしながらだと、ここ、やわらかくなるな。 キス、もっとしよう。 慣らしてあげる」
 すり、となかを撫でられて、キアラはびくりとする。
 けれど、もう苦しくなかったし、痛くも気持ち悪くもない。


 至近距離で視点が定まらないキアラは、ご主人様がどんな顔をしているのかわからない。
 でも、声の感じから、きっとさっきみたいな微笑みを浮かべているのだろうと思った。

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