16 / 44
紅薔薇の棘
棘、ふたつ
しおりを挟む
「純粋で素直な人間ほど、暗示にかかりやすいというよねぇ…」
アルヴァートは、溜息まじりに吐き出した。
ロワイエール然り。
おそらく、紅薔薇姫もそうだし、紅薔薇姫の【ロージィちゃん】もそうだ。
アルヴァートの微かな呟きを、紅薔薇姫は拾ったのだろう。
ぱっと明るい笑顔をアルヴァートに向けてきた。
「あら、では陛下は、暗示にかけられる心配など、微塵もございませんわね」
…最近気にかかっているのは、紅薔薇姫のこの手の発言が、天然なのか嫌味なのかというところだ。
これに関しては、全くわからない。 ということは、天然なのだろうか。
「私にそのような物言いをするのは、君かオズワルドか、ジルドくらいだ」
もう一度、溜息まじりに文句を言ったというのに、紅薔薇姫はまたここで、大輪の薔薇のように笑った。
「では、重宝しなければなりませんわよ。 わたくしやオズワルド(お姉)様、ガーファンクル閣下が何も言わなくなったら、陛下を正す人間はいませんわ」
紅薔薇姫の周囲に、光が舞い踊っているようにすら、見えた。
そのような心象で、聴いた。
ああ、そう。 国を、背負うというのは、国民の生活を預かるというのは、重く、孤独なことだった。
その重責に、孤独に耐えられなかったのが、父だ。
私には、幸運にもオズワルドがいた。 ジルドもいた。 ジオークだって、ロワだっている。
もう職を下りたが、前宰相のゼヴルだって、次官のセリムだって今のアルヴァートを作ってくれた大切なひとたちだ。
多少変わってはいるが、アルヴァートに臆せず物を言う、未来の妃にして友人――アルヴァートの認識ではこうとしか言えない――の紅薔薇姫だっている。
だから、噛みしめるように、アルヴァートは笑む。
「ああ、君の言う通りだ」
私は、とても、恵まれている。
アルヴァートは、溜息まじりに吐き出した。
ロワイエール然り。
おそらく、紅薔薇姫もそうだし、紅薔薇姫の【ロージィちゃん】もそうだ。
アルヴァートの微かな呟きを、紅薔薇姫は拾ったのだろう。
ぱっと明るい笑顔をアルヴァートに向けてきた。
「あら、では陛下は、暗示にかけられる心配など、微塵もございませんわね」
…最近気にかかっているのは、紅薔薇姫のこの手の発言が、天然なのか嫌味なのかというところだ。
これに関しては、全くわからない。 ということは、天然なのだろうか。
「私にそのような物言いをするのは、君かオズワルドか、ジルドくらいだ」
もう一度、溜息まじりに文句を言ったというのに、紅薔薇姫はまたここで、大輪の薔薇のように笑った。
「では、重宝しなければなりませんわよ。 わたくしやオズワルド(お姉)様、ガーファンクル閣下が何も言わなくなったら、陛下を正す人間はいませんわ」
紅薔薇姫の周囲に、光が舞い踊っているようにすら、見えた。
そのような心象で、聴いた。
ああ、そう。 国を、背負うというのは、国民の生活を預かるというのは、重く、孤独なことだった。
その重責に、孤独に耐えられなかったのが、父だ。
私には、幸運にもオズワルドがいた。 ジルドもいた。 ジオークだって、ロワだっている。
もう職を下りたが、前宰相のゼヴルだって、次官のセリムだって今のアルヴァートを作ってくれた大切なひとたちだ。
多少変わってはいるが、アルヴァートに臆せず物を言う、未来の妃にして友人――アルヴァートの認識ではこうとしか言えない――の紅薔薇姫だっている。
だから、噛みしめるように、アルヴァートは笑む。
「ああ、君の言う通りだ」
私は、とても、恵まれている。
20
お気に入りに追加
633
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
【R18】隣のデスクの歳下後輩君にオカズに使われているらしいので、望み通りにシてあげました。
雪村 里帆
恋愛
お陰様でHOT女性向け33位、人気ランキング146位達成※隣のデスクに座る陰キャの歳下後輩君から、ある日私の卑猥なアイコラ画像を誤送信されてしまい!?彼にオカズに使われていると知り満更でもない私は彼を部屋に招き入れてお望み通りの行為をする事に…。強気な先輩ちゃん×弱気な後輩くん。でもエッチな下着を身に付けて恥ずかしくなった私は、彼に攻められてすっかり形成逆転されてしまう。
——全話ほぼ濡れ場で小難しいストーリーの設定などが無いのでストレス無く集中できます(はしがき・あとがきは含まない)
※完結直後のものです。
愛娘(JS5)とのエッチな習慣に俺の我慢は限界
レディX
恋愛
娘の美奈は(JS5)本当に可愛い。そしてファザコンだと思う。
毎朝毎晩のトイレに一緒に入り、
お風呂の後には乾燥肌の娘の体に保湿クリームを塗ってあげる。特にお尻とお股には念入りに。ここ最近はバックからお尻の肉を鷲掴みにしてお尻の穴もオマンコの穴もオシッコ穴も丸見えにして閉じたり開いたり。
そうしてたらお股からクチュクチュ水音がするようになってきた。
お風呂上がりのいい匂いと共にさっきしたばかりのオシッコの匂い、そこに別の濃厚な匂いが漂うようになってきている。
でも俺は娘にイタズラしまくってるくせに最後の一線だけは超えない事を自分に誓っていた。
でも大丈夫かなぁ。頑張れ、俺の理性。
【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました
utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。
がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。
【完結】Mにされた女はドS上司セックスに翻弄される
Lynx🐈⬛
恋愛
OLの小山内羽美は26歳の平凡な女だった。恋愛も多くはないが人並に経験を重ね、そろそろ落ち着きたいと思い始めた頃、支社から異動して来た森本律也と出会った。
律也は、支社での営業成績が良く、本社勤務に抜擢され係長として赴任して来た期待された逸材だった。そんな将来性のある律也を狙うOLは後を絶たない。羽美もその律也へ思いを寄せていたのだが………。
✱♡はHシーンです。
✱続編とは違いますが(主人公変わるので)、次回作にこの話のキャラ達を出す予定です。
✱これはシリーズ化してますが、他を読んでなくても分かる様には書いてあると思います。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる