【R18】翡翠の鎖

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第二章.婚約編

7.この前は、しなかったこと*

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 ああ、もうこれ、脱がせる気満々だ。

 観念したリーファは、ひとつだけ、条件を付けることにした。
「ねぇ、ヴェル。 脱がせてもいいけど、お願い。 …見ないで」
 リーファを見上げるようにして、ぱちぱちと瞬きしたヴェルドライトは、にこりと笑う。


「大丈夫。 リーファも僕の全部、見ていいから」


 何が大丈夫なのかわからないし、見ていいから見せてくれ、というのは、滅茶苦茶な理論ではないだろうか。
 リーファが思考に気を取られた一瞬、下着を押さえていた手の力も抜けたのだろう。
 するり、とヴェルドライトの手によって、下着が下げられてしまう。

 股布が張り付くような不快感から解放されて、ほっとしたのも束の間。
 ヴェルドライトが熱っぽい息を吐き出した。
「ああ、もう、リーファ、こんなにとろとろにして…」


「え…?」
 ヴェルドライトの熱い視線は、彼が下げたリーファの下着に注がれている。
 何が、と彼の視線を追って、リーファは後悔した。

 引き下げられた下着の、股布の部分に、しみ…だけならまだよかったのだが、小さな水たまりができていて、どこかと透明な糸で繋がっている。
 考えなければよかったのに、あの、透明な糸の起点はどこかと考えてしまった。
 そして、それが、自分の脚の間だと、気づいてしまい、一瞬で体温が上がる。

 隠すなら、下着を引き上げればよかったのに、あまりにも恥ずかしい光景に、ほとんど反射的で、リーファは顔を両手で覆っていた。
「や、やだ」


 本当に、このときどうして悠長に顔など手で覆っていたのだろう。
 突然の、浮遊感と、平衡感覚が失われる感じ。

 恥ずかしすぎて、失神でもしそうになっているのだろうか。
 だが、背中にやわらかい感覚。
 まるで、ふわふわのソファや、ベッドに倒れ込んだときのような…。


 ベッドに、倒れ込んだときのような?


 パッと顔から手を外して目を開けば、映ったのは、天井。
 一体、何が起きたのか、と視線を彷徨わせ、またもやリーファは後悔した。


 リーファはなぜか、肩幅に脚を開いて膝立ちをした体勢のまま、ベッドに倒れこんでいたのだ。
 ヴェルドライトに向かって脚を拡げた状態で、しかも、リーファの脚の間から見えるヴェルドライトは、リーファの脚の中央を、熱のこもった目で凝視している。


 こんなの、耐えられない!


 いつの間にか下着は取り去られてしまっているので、リーファはせめてもの抵抗で、脚を閉じようと試みる、が。

「閉じないで」
 ヴェルドライトの静かな懇願に、リーファの膝に置かれた彼の手に、脚を閉じることができない。
 ヴェルドライトが少し姿勢を下げるから、リーファは思わず身構える。

「ヴェル、なに」
「この前は、しなかったことをしようと思って」
 微笑んだヴェルドライトが、信じられない場所に、顔を埋めた。


「え、…ぁア!」
 小さな悲鳴のような声が、喉の奥から零れた。
 あまりの刺激に、リーファは背を弓なりに反らせ、腰をくねらせてしまう。


 さらさらとした、彼の髪が、下腹部をくすぐって、お腹の当たりがざわざわする。
 熱く、濡れた、やわらかいものが、リーファの最も秘めたる部分――最奥へと繋がる入口を、愛撫している。


 ぴちゃ、くちゅ、と小さな水音が耳に届くのが、恥ずかしい。
 伝わる刺激に跳ねる身体を止められなくて、全身が汗ばんできて、更に恥ずかしくなる。
 悪循環だ。

「…だめ、だめ、ヴェル。 …そ、んなこと、しないで」
 声を殺すようにして、ヴェルドライトに訴えれば、ヴェルドライトはそっと顔を上げる。
「どうして? …気持ち、よく、ない?」


 顔を上げてはくれたが、ヴェルドライトの視線は、リーファの脚の間に注がれたままだ。
 そして、彼の指先は、ゆっくりとリーファの奥へと続く入口を撫でている。


「ぅ、ん、」
「教えて?」
「ァ」
 びくり、とリーファはまた小さく震える。

 やさしく、リーファの奥へと続く入口を撫でていた彼の指先が、沈んだからだ。
 螺子を回すように、旋回するように、リーファの内側を撫でながら、奥へ進む指。
 本音を隠すことなどできなかった。


「ぁ、きもち、いっ…、から、だめぇ…」
「気持ちいいなら、だめじゃないよ…」
 ヴェルドライトは嬉しそうに、目を細めて微笑み、奥まで進んだ指を揺らし始める。


「ん…」
 指が揺らされると、くぷ、くぷ、と音が立つのが、恥ずかしい。
 ヴェルドライトに、全部見られているのも、恥ずかしい。

 そう思っていたのだが、彼は再び、リーファの脚の間に顔を埋める。
「アっ…!」
 リーファは目を見開いて、仰け反った。

 先程まで、ヴェルドライトが唇で触れ、舌先でくすぐっていたのとは、別のところにキスをされた気がする。
 今、彼の指が刺激しているところよりも、少しだけ上にある、何か。
 そこに、何をされているかは、わからない。
 いや、もしかすると、ビリビリとした刺激が強烈で、何も、考えられなくなっているだけかもしれない。


 それほどに、強烈な、刺激。
 否、快感。


 一緒に、指を揺らされると、腰が浮くようで、リーファはこらえきれずに首を横に振った。
「ァ、ヴェル、だめ、それ、だめ」


 すると、ピタリとヴェルドライトの動きが止まる。
「…リーファは、気持ちいいの、きらい?」
 顔を上げたヴェルドライトが、上目遣いに尋ねてくる。

 本音を言えば、脚の間から見るなんて、しないでほしい、けれど。
 そのときのリーファは、混乱して、それどころではなかった。
 刺激が強すぎて、リーファの中の何かが壊れてしまいそうで、だめだと思ったはずなのに、いざ止められると、その刺激が恋しくなる。


 きっと、気持ちよすぎて、頭のどこか――言語機能を司るところが、壊れてしまったのだと思う。
 信じられないようなことを、そのときのリーファは口走っていたのだ。


「…すき」

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