52 / 65
石に咲いた花は
vs母
しおりを挟む
ラディスは、「大丈夫だよ。 私が選んだ貴女を認めないわけがないでしょう?」となぜか自信に満ちていたが、シィーファは移動の間中、気が気でなかった。
そんなシィーファをラディスは宥めすかして、ラディスのお祖父様――ヴァルハール公爵邸へと連れてきたのである。
視界に飛び込んできた、ヴァルハール公爵邸は、ものすごいお屋敷だったのだが、どうにも、シィーファの記憶と重ならない。
シィーファが、馬車の窓からお屋敷を見つめ、瞬きを繰り返していると、ラディスは教えてくれた。
「シィーファが気に病むかな、と思って黙っていたけれど、あのあと、この屋敷の完成を待って越したんだ。 離れを取り壊したくらいでは、祖父の気持ちは治まらなかったんだろうね」
ラディスの言葉を聞きながら、シィーファはまた瞬きを繰り返してしまった。
「…どうして…」
たかが、息子の愛人一人のために、そこまでしたのだろう。
確かに、嫌な事件だったかもしれないが、あの地で暮らしていけないほどとも思えない。
シィーファとしては、好んであの地で暮らそうとは思わないけれど。
「…単純に、好みだったんだと思うよ」
さらり、と言ったラディスに、シィーファはまた、目を瞬かせる。
「何がです?」
「何だろう?」
笑顔ではぐらかしたラディスは、そのままシィーファの手を引いて、お屋敷の中へと誘ったのである。
*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○
そうして、まんまと巣に連れ込まれてしまったシィーファだったが、早速後悔していた。
屋敷に一歩足を踏み入れるや否や、執事以下数名の使用人の出迎えを受け、なんだかとんでもなく高価そうな客間らしきところに通された。
何が大丈夫なのか全くわからないが、「大丈夫大丈夫」と言うラディスの横に座り、かちんこちんになっていると、奥様が室内に入って来られたので一度席を立ち、ご挨拶をする。
席を勧められて、再びソファに腰を落ち着けたのだが、シィーファの目の前に座った奥様は、ふわふわの白い毛のついた扇で口元を隠したまま、じぃぃ~っとシィーファを見つめている。
大きな濃緑の瞳で凝視されるのが、とてつもなく居心地が悪い。
心臓が大きな音を立てているし、嫌な汗がじんわりと肌に滲む感じがする。
膝の上で拳を握って、あと数分沈黙が長引けば、失神するんじゃなかろうか、とシィーファが考え始めたときだ。
ふぅ、と小さな溜息が聞こえた。
「残念ですねぇ」
その言葉に、シィーファは凍りついた。
そう、凍りついたとしか表現できないような状態だった。
「母上」
隣でラディスが厳しい声を出して、奥様を非難しているが、わかっていたことではないか。
呼吸が浅くなって、息が苦しくて、無意識のうちにシィーファは目を閉じる。
あ、なんか本当に、失神しそうかもしれない。
そう思ったときだった。
髪に、触れられた気がして、シィーファは目を開いた。
「短い髪もふわふわで可愛らしいけれど、この髪が伸びるまで、お式はおあずけでしょう? 本当に残念」
扇で、シィーファの髪に触れ、扇ぐようにしながら、奥様は憂い顔でそんなことを仰る。
シィーファは、思わず奥様を凝視してしまった。
というと、何か?
さっきの、「残念ですねぇ」も、ラディスがシィーファを将来の妻と決めたことではなく、シィーファの髪が短いから、伸びるまで式を挙げられないことを言っただけだと?
そう理解したら、身体の力が抜けるような気がした。
いや、事実、身体の力が抜けて、ずるずるとソファに倒れ込みそうになる。
心情的には、白目を剥いた上に泡を吹いて倒れているところだ。
だが、ラディスが、シィーファの肩に腕を回して、上手に身体の面を使って支えてくれたから、ソファに倒れ込んだり、突っ伏したりせずに済んだ。
「大丈夫、シィーファ? …母上、紛らわしい言い方はおやめください」
ラディスが気づかわしげにシィーファを覗き込んで訊いてくれたが、後半、奥様に向けられた視線も声音も厳しかった。
だが、奥様はきょとんとして首を揺らしている。
「? どの辺が紛らわしかったかしら」
その返答に、シィーファは、当たり前のことを今更ながらに、実感した。
母子だ…、と。
ラディスも奥様も、物腰のやわらかさに比べ、それなりに強引…というか、ゴーイングマイウェイ、なのだ。
その奥様は、シィーファを見下ろしたままで、もう一度溜息をついた。
「人種の違いなのかしら。 あの頃から、全然変わりませんのねぇ。 【石女の一族】が魔性だというのは、いつまでもお若いところからも来ているのかしら」
「母上」
ラディスが口にしたその単語ひとつに、「そんなこと、言う必要ないだろう」という思いが込められているのがわかる。
けれど、奥様が、シィーファやシィーファの一族を、貶めたり蔑んだりする意図で言葉を発していないことも理解しているので、シィーファは口を開く。
「あの、奥様もお変わりありませんよ」
「ふふ、ありがとう」
シィーファが、何事か口にするとは思わなかったのだろうか。
奥様は、目を丸くした後で、微笑んだ。
花がゆっくりと綻ぶような笑みだな、とシィーファは思う。
だが、奥様はまた、すぐに憂い顔になり、溜息を落とすのだ。
「本当に残念。 お父様はどうして今いらっしゃらないのかしら。 貴女がこんなにお元気そうで、ラウのお嫁さんになってくれると聞いたら、それはそれは喜んだでしょうに…」
「母上、お祖父様がこの世にいないかのような物言いはおやめになってください」
「まあ、ラウったら、縁起でもない」
目の前で繰り広げられるやり取りに、シィーファは気圧されるしかない。
というか、シィーファを挟んで言葉のやり取りをしないでほしい、と思っていると、唐突に、奥様の矛先がシィーファに向いた。
「わたくしは、貴女をシィーファと呼んでいいのかしら。 あ、でも、その前に、色々と外野がうるさいでしょうから、貴女、未亡人ということにしておしまいなさいね?」
綻ぶ花のように微笑んだ奥様が、シィーファの理解が及ばないようなことを口にされるので、シィーファはようやくのことで、ひとつの単語だけを繰り返す。
「…未亡人…」
繰り返してはみたが、全く意味がわからない、と思っていると、シィーファを抱き寄せているラディスの腕に力が入った。
「私は嫌です。 シィーファは初婚で、私だけの妻です。 嘘でも、未亡人になんかしたくありません」
思いっきり私情で反対しているラディスだが、事の全容を理解しているのだろうか。
そんなことを考えていると、奥様が畳んだ扇の先でぴしりとラディスを指した。
「でも、ラウ、考えてごらんなさい? 前の夫に操立てして、今後婚姻の意思はないことを示していたけれど、ラウと運命の恋に落ちて妻になる…。 この筋書きなら、周囲にも受け容れられやすいと思いません?」
シィーファにはいまいちその話の良さがわからなかったけれど、ラディスがぐっと言葉に詰まったところを見ると、ラディスにとっては良さがわかる話だったのだろう。
数拍分悩んだようだったが、ラディスはシィーファの肩に手を置きつつ、シィーファをラディスに向き直らせて向かい合うと、謝罪でもするように目を伏せる。
「…シィーファ…、済まない。 母はこういうひとなんだ」
これもまた、よくわからない発言だったけれども、シィーファには全く問題のないことだったので、軽く頷く。
「あ、いえ、大丈夫です。 よく似た方を知っておりますので」
「え?」
シィーファの返答に、ラディスは伏せていた瞼を持ち上げ、目を丸くした。
そうか、自覚はないのか…、と、【よく似た方】そのひとを前に、諦めるシィーファなのであった。
そんなシィーファをラディスは宥めすかして、ラディスのお祖父様――ヴァルハール公爵邸へと連れてきたのである。
視界に飛び込んできた、ヴァルハール公爵邸は、ものすごいお屋敷だったのだが、どうにも、シィーファの記憶と重ならない。
シィーファが、馬車の窓からお屋敷を見つめ、瞬きを繰り返していると、ラディスは教えてくれた。
「シィーファが気に病むかな、と思って黙っていたけれど、あのあと、この屋敷の完成を待って越したんだ。 離れを取り壊したくらいでは、祖父の気持ちは治まらなかったんだろうね」
ラディスの言葉を聞きながら、シィーファはまた瞬きを繰り返してしまった。
「…どうして…」
たかが、息子の愛人一人のために、そこまでしたのだろう。
確かに、嫌な事件だったかもしれないが、あの地で暮らしていけないほどとも思えない。
シィーファとしては、好んであの地で暮らそうとは思わないけれど。
「…単純に、好みだったんだと思うよ」
さらり、と言ったラディスに、シィーファはまた、目を瞬かせる。
「何がです?」
「何だろう?」
笑顔ではぐらかしたラディスは、そのままシィーファの手を引いて、お屋敷の中へと誘ったのである。
*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○*:.。..。.:*●*:.。..。.:*○
そうして、まんまと巣に連れ込まれてしまったシィーファだったが、早速後悔していた。
屋敷に一歩足を踏み入れるや否や、執事以下数名の使用人の出迎えを受け、なんだかとんでもなく高価そうな客間らしきところに通された。
何が大丈夫なのか全くわからないが、「大丈夫大丈夫」と言うラディスの横に座り、かちんこちんになっていると、奥様が室内に入って来られたので一度席を立ち、ご挨拶をする。
席を勧められて、再びソファに腰を落ち着けたのだが、シィーファの目の前に座った奥様は、ふわふわの白い毛のついた扇で口元を隠したまま、じぃぃ~っとシィーファを見つめている。
大きな濃緑の瞳で凝視されるのが、とてつもなく居心地が悪い。
心臓が大きな音を立てているし、嫌な汗がじんわりと肌に滲む感じがする。
膝の上で拳を握って、あと数分沈黙が長引けば、失神するんじゃなかろうか、とシィーファが考え始めたときだ。
ふぅ、と小さな溜息が聞こえた。
「残念ですねぇ」
その言葉に、シィーファは凍りついた。
そう、凍りついたとしか表現できないような状態だった。
「母上」
隣でラディスが厳しい声を出して、奥様を非難しているが、わかっていたことではないか。
呼吸が浅くなって、息が苦しくて、無意識のうちにシィーファは目を閉じる。
あ、なんか本当に、失神しそうかもしれない。
そう思ったときだった。
髪に、触れられた気がして、シィーファは目を開いた。
「短い髪もふわふわで可愛らしいけれど、この髪が伸びるまで、お式はおあずけでしょう? 本当に残念」
扇で、シィーファの髪に触れ、扇ぐようにしながら、奥様は憂い顔でそんなことを仰る。
シィーファは、思わず奥様を凝視してしまった。
というと、何か?
さっきの、「残念ですねぇ」も、ラディスがシィーファを将来の妻と決めたことではなく、シィーファの髪が短いから、伸びるまで式を挙げられないことを言っただけだと?
そう理解したら、身体の力が抜けるような気がした。
いや、事実、身体の力が抜けて、ずるずるとソファに倒れ込みそうになる。
心情的には、白目を剥いた上に泡を吹いて倒れているところだ。
だが、ラディスが、シィーファの肩に腕を回して、上手に身体の面を使って支えてくれたから、ソファに倒れ込んだり、突っ伏したりせずに済んだ。
「大丈夫、シィーファ? …母上、紛らわしい言い方はおやめください」
ラディスが気づかわしげにシィーファを覗き込んで訊いてくれたが、後半、奥様に向けられた視線も声音も厳しかった。
だが、奥様はきょとんとして首を揺らしている。
「? どの辺が紛らわしかったかしら」
その返答に、シィーファは、当たり前のことを今更ながらに、実感した。
母子だ…、と。
ラディスも奥様も、物腰のやわらかさに比べ、それなりに強引…というか、ゴーイングマイウェイ、なのだ。
その奥様は、シィーファを見下ろしたままで、もう一度溜息をついた。
「人種の違いなのかしら。 あの頃から、全然変わりませんのねぇ。 【石女の一族】が魔性だというのは、いつまでもお若いところからも来ているのかしら」
「母上」
ラディスが口にしたその単語ひとつに、「そんなこと、言う必要ないだろう」という思いが込められているのがわかる。
けれど、奥様が、シィーファやシィーファの一族を、貶めたり蔑んだりする意図で言葉を発していないことも理解しているので、シィーファは口を開く。
「あの、奥様もお変わりありませんよ」
「ふふ、ありがとう」
シィーファが、何事か口にするとは思わなかったのだろうか。
奥様は、目を丸くした後で、微笑んだ。
花がゆっくりと綻ぶような笑みだな、とシィーファは思う。
だが、奥様はまた、すぐに憂い顔になり、溜息を落とすのだ。
「本当に残念。 お父様はどうして今いらっしゃらないのかしら。 貴女がこんなにお元気そうで、ラウのお嫁さんになってくれると聞いたら、それはそれは喜んだでしょうに…」
「母上、お祖父様がこの世にいないかのような物言いはおやめになってください」
「まあ、ラウったら、縁起でもない」
目の前で繰り広げられるやり取りに、シィーファは気圧されるしかない。
というか、シィーファを挟んで言葉のやり取りをしないでほしい、と思っていると、唐突に、奥様の矛先がシィーファに向いた。
「わたくしは、貴女をシィーファと呼んでいいのかしら。 あ、でも、その前に、色々と外野がうるさいでしょうから、貴女、未亡人ということにしておしまいなさいね?」
綻ぶ花のように微笑んだ奥様が、シィーファの理解が及ばないようなことを口にされるので、シィーファはようやくのことで、ひとつの単語だけを繰り返す。
「…未亡人…」
繰り返してはみたが、全く意味がわからない、と思っていると、シィーファを抱き寄せているラディスの腕に力が入った。
「私は嫌です。 シィーファは初婚で、私だけの妻です。 嘘でも、未亡人になんかしたくありません」
思いっきり私情で反対しているラディスだが、事の全容を理解しているのだろうか。
そんなことを考えていると、奥様が畳んだ扇の先でぴしりとラディスを指した。
「でも、ラウ、考えてごらんなさい? 前の夫に操立てして、今後婚姻の意思はないことを示していたけれど、ラウと運命の恋に落ちて妻になる…。 この筋書きなら、周囲にも受け容れられやすいと思いません?」
シィーファにはいまいちその話の良さがわからなかったけれど、ラディスがぐっと言葉に詰まったところを見ると、ラディスにとっては良さがわかる話だったのだろう。
数拍分悩んだようだったが、ラディスはシィーファの肩に手を置きつつ、シィーファをラディスに向き直らせて向かい合うと、謝罪でもするように目を伏せる。
「…シィーファ…、済まない。 母はこういうひとなんだ」
これもまた、よくわからない発言だったけれども、シィーファには全く問題のないことだったので、軽く頷く。
「あ、いえ、大丈夫です。 よく似た方を知っておりますので」
「え?」
シィーファの返答に、ラディスは伏せていた瞼を持ち上げ、目を丸くした。
そうか、自覚はないのか…、と、【よく似た方】そのひとを前に、諦めるシィーファなのであった。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。
FLORAL-敏腕社長が可愛がるのは路地裏の花屋の店主-
さとう涼
恋愛
恋愛を封印し、花屋の店主として一心不乱に仕事に打ち込んでいた咲都。そんなある日、ひとりの男性(社長)が花を買いにくる──。出会いは偶然。だけど咲都を気に入った彼はなにかにつけて咲都と接点を持とうとしてくる。
「お昼ごはんを一緒に食べてくれるだけでいいんだよ。なにも難しいことなんてないだろう?」
「でも……」
「もしつき合ってくれたら、今回の仕事を長期プランに変更してあげるよ」
「はい?」
「とりあえず一年契約でどう?」
穏やかでやさしそうな雰囲気なのに意外に策士。最初は身分差にとまどっていた咲都だが、気づいたらすっかり彼のペースに巻き込まれていた。
☆第14回恋愛小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございました。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる