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石に花咲く
―8 years ago①―
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そのひとは、籠の中の鳥のようで、塔の中のお姫様のようだった。
ラディスラウスはきょろきょろと周囲を見回して、大人たちに見つからないように、離れに向かう。
ラディスラウスは現在、母の実家である公爵家に身を寄せている。
表向きは、母が気の病になって弱っていくので、実家で静養を…ということだが、ラディスラウスは母が芯の強い女性であることを知っている。
気の病というのだって、儚げな己の容貌をフル活用してのことだし、弱っているというのだって、強靭な精神力で食事を拒み続けた結果だ。
そういうわけで、ラディスラウスは、母に連れられて現在、お祖父様のもとにいる。
どうやら、ラディスラウスの存在のために、王宮内が混乱しているらしいのだ。
ラディスラウスは、第五王子。
だが、先に生まれた王子たちの母親よりも、ラディスラウスの母の方が身分は上。
さらに悪いことに、ラディスラウスは優秀だったらしい。
ラディスラウスを王太子に推す声が多かったために、母はその王位継承権争いが泥沼化する前に、早々に争いから離脱した、ということのようだった。
ラディスラウスは、たまたま王家に生まれただけで、生まれたからにはできる限りのことはするつもりだったが、王になりたいとは思わなかった。
それに、ラディスラウスも優秀だったかもしれないが、ラディスラウスはもっと優秀な人間がいることを知っていた。
第一王子である、異母兄だ。
王太子になるのならば、彼が妥当だ。
だが彼の母は、貴族ではなく、国王の使用人だったらしく、その辺が問題とされているらしい。
その辺の問題をクリアにして、母曰く、この無意味で馬鹿げた王位継承権争いを終わらせるべく、お祖父様のお知恵を借りるための里帰りでもあったらしい。
さて、その里帰りも、ラディスラウスにとって最初は物珍しく楽しいものだったが、三日目にして飽きてしまった。
家庭教師の授業が終わって、何か面白いものはないだろうか、と二階に上って窓という窓から外を眺めて歩き、見つけたのだ。
公爵家の敷地内にある、いくつかの離れ。
そのひとつに、翡翠みたいな珍しい色の長い髪を垂らした女性がいることに。
使用人たちに彼女のことを尋ねると、叔父のお客様だということがわかった。
叔父――母の弟である、ディミトリスは、所謂、放蕩息子だったのだろう。
彼にとっての父親――ラディスラウスにとっては祖父にあたる、現公爵が偉大過ぎたのではないかと、ラディスラウスは思っている。
どうあがいても、超えられない目の前の壁から、逃げているのだろう。
ラディスラウスの母、彼にとっては姉にあたるエルモニカの存在も彼にとってはプレッシャーだったのかもしれない。
国王の妃になった彼女が、「男だったなら」と口にする親族がいたことも、ラディスラウスは知っている。
エルモニカが、男だったなら、公爵家も安泰だっただろう、と。
そのように比較される側の気分が、いいものでないことは、ラディスラウスにでも想像がつく。
さて、話は逸れたが、ラディスラウスは、こっそりと該当の離れに近づいて、開いていた窓からこっそりと室内を覗き込んだ。
室内には、さっきの女のひとがいた。
少し離れた場所で、母も使っているようなドレッサーの前に座って、あの綺麗な色の波打つ髪を編んでいる。
長い髪を、もくもくと編むそのひとが、ラディスラウスに気づいた様子はない。
だから、気づいてほしくて、ラディスラウスは声を上げたのだと思う。
「こんにちは!」
弾かれたように、そのひとの顔がラディスラウスに向く。
遠くからではわからなかったけれど、瞳は蜂蜜みたいな綺麗な色をしている。
波打つ髪は、そういう性質なのか、髪結い紐やリボンで結ばずとも、解けていく様子がない。
不思議だ、と思ったけれど、それ以上に驚いたのは、そのひとがびっくりするくらいに可愛らしくて綺麗だったことだ。
ラディスラウスは反射的に唇を引き結ぶ。
「…こんにちは」
そのひとは、ゆっくりと立ち上がると、ゆっくりとラディスラウスの方に向かってきて、ラディスラウスに視線を合わせると、声を潜めた。
「ここには近づいてはだめと言われなかった?」
意外なことを問われたので、ラディスラウスは目をぱちぱちとさせて、首をふるふると横に振った。
「言われてないよ。 お兄様のお客様がいるって聞いた」
ディミトリスのお客様が離れにいることを教えられてはいなかったので、もしかすると大人たちはラディスラウスをこの場所に近づけたくなかったのかもしれない。
けれど、具体的に言葉で言われたわけではないので、ラディスラウスはそのように答えた。
答えながら、気づく。
大人たちが内緒にしたいお兄様のお客様なのだから、この女性はお兄様の婚約者か何かなのだろう、と。
その、綺麗な女性が考えるような表情になってしまうので、「もう来ないで」と言われる前にと、ラディスラウスは尋ねる。
「ねぇ、お名前は?」
「…あなたのお名前は?」
問いに、問いで返されたラディスラウスは、確かに自分が名乗る前に名を訊くのは失礼かもしれない、と納得する。
「ラ…」
ぱっと口を開いたラディスラウスだったが、口を開いたままで固まる。
ラディスラウスは、自分の名前が好きではない。
それから、名前を告げることで、自分の身分が知られる危険もある。
「ウ」
だから、母がラディスラウスを呼ぶ愛称を、告げたのだと思う。
「ラウ」
その女性は、ラディスラウスが告げた名前を、繰り返してくれる。
その瞬間、ほわ、とした気持ちになった。
名前を呼ばれただけで、こんなに嬉しい気持ちになるのだ。
きっと、彼女の名前を呼んで、彼女に応えてもらえたら、もっと嬉しい気持ちになれるだろう。
そう思ったから、ラディスはもう一度問う。
「ねぇ、お名前は?」
けれど、彼女は頑なだった。
「わたしと仲良くすると叱られてしまうと思う。 だから、名前は知らない方がいいと思うの」
困った顔の彼女に、そんな風に言われた。
彼女が困っている姿は見たくないし、彼女を今困らせているのが自分だと思うと、何か悪いことをしているような気分になる。
でも、ラディスラウスは、彼女の名前が呼びたいのだ。
「そうしたら、私はあなたを何て呼べばいいの?」
少し拗ねた気持ちで、視線を落とす。
不満な気持ちのままに、唇は尖り気味だったかもしれない。
そうすれば、窓の向こうの彼女は、小さく息をつく。
困ってはいるようだけれど、とても優しい笑顔を見せてくれた。
「お好きなように」
「じゃあ、ラプンツェル!」
二階の窓から、この離れを見つけたときに、直感的に思ったことを、口にした。
彼女は軽く目を見張った後で、また、困ったように微笑んだ。
少し寂しげで、哀しげな表情に見えて、ラディスラウスは動揺する。
何か、まずいことを言ってしまったのだろうか。
でも、彼女を哀しませたり、嫌な思いにさせたりする意図はなかったのだと伝えたくて、ラディスラウスは窓枠に手をかけて、前のめりになる。
「あなたは、その離れから出てきてくれないから、塔の中のラプンツェルみたいだから、だから」
髪の毛だって、長くて波打っていて綺麗だ。
お話の中で見た、ラプンツェルと同じなのに。
「うーん、でも、ラプンツェルは少し、いや、かな」
困ったような、哀しげな微笑を浮かべた彼女に、その呼び名はいやだと言われてしまって、ラディスラウスはまた唇を尖らせた。
波打つ長い髪が、本当に、本当に綺麗なのに。
まだ、【ラプンツェル】という呼び名に未練のあったラディスラウスの思考は、髪から離れられなかったらしい。
髪の色から、思いついた言葉を、口にした。
「じゃあ、ジェイド」
その日から、ラディスラウスはジェイドと、秘密の友達になった。
ラディスラウスはきょろきょろと周囲を見回して、大人たちに見つからないように、離れに向かう。
ラディスラウスは現在、母の実家である公爵家に身を寄せている。
表向きは、母が気の病になって弱っていくので、実家で静養を…ということだが、ラディスラウスは母が芯の強い女性であることを知っている。
気の病というのだって、儚げな己の容貌をフル活用してのことだし、弱っているというのだって、強靭な精神力で食事を拒み続けた結果だ。
そういうわけで、ラディスラウスは、母に連れられて現在、お祖父様のもとにいる。
どうやら、ラディスラウスの存在のために、王宮内が混乱しているらしいのだ。
ラディスラウスは、第五王子。
だが、先に生まれた王子たちの母親よりも、ラディスラウスの母の方が身分は上。
さらに悪いことに、ラディスラウスは優秀だったらしい。
ラディスラウスを王太子に推す声が多かったために、母はその王位継承権争いが泥沼化する前に、早々に争いから離脱した、ということのようだった。
ラディスラウスは、たまたま王家に生まれただけで、生まれたからにはできる限りのことはするつもりだったが、王になりたいとは思わなかった。
それに、ラディスラウスも優秀だったかもしれないが、ラディスラウスはもっと優秀な人間がいることを知っていた。
第一王子である、異母兄だ。
王太子になるのならば、彼が妥当だ。
だが彼の母は、貴族ではなく、国王の使用人だったらしく、その辺が問題とされているらしい。
その辺の問題をクリアにして、母曰く、この無意味で馬鹿げた王位継承権争いを終わらせるべく、お祖父様のお知恵を借りるための里帰りでもあったらしい。
さて、その里帰りも、ラディスラウスにとって最初は物珍しく楽しいものだったが、三日目にして飽きてしまった。
家庭教師の授業が終わって、何か面白いものはないだろうか、と二階に上って窓という窓から外を眺めて歩き、見つけたのだ。
公爵家の敷地内にある、いくつかの離れ。
そのひとつに、翡翠みたいな珍しい色の長い髪を垂らした女性がいることに。
使用人たちに彼女のことを尋ねると、叔父のお客様だということがわかった。
叔父――母の弟である、ディミトリスは、所謂、放蕩息子だったのだろう。
彼にとっての父親――ラディスラウスにとっては祖父にあたる、現公爵が偉大過ぎたのではないかと、ラディスラウスは思っている。
どうあがいても、超えられない目の前の壁から、逃げているのだろう。
ラディスラウスの母、彼にとっては姉にあたるエルモニカの存在も彼にとってはプレッシャーだったのかもしれない。
国王の妃になった彼女が、「男だったなら」と口にする親族がいたことも、ラディスラウスは知っている。
エルモニカが、男だったなら、公爵家も安泰だっただろう、と。
そのように比較される側の気分が、いいものでないことは、ラディスラウスにでも想像がつく。
さて、話は逸れたが、ラディスラウスは、こっそりと該当の離れに近づいて、開いていた窓からこっそりと室内を覗き込んだ。
室内には、さっきの女のひとがいた。
少し離れた場所で、母も使っているようなドレッサーの前に座って、あの綺麗な色の波打つ髪を編んでいる。
長い髪を、もくもくと編むそのひとが、ラディスラウスに気づいた様子はない。
だから、気づいてほしくて、ラディスラウスは声を上げたのだと思う。
「こんにちは!」
弾かれたように、そのひとの顔がラディスラウスに向く。
遠くからではわからなかったけれど、瞳は蜂蜜みたいな綺麗な色をしている。
波打つ髪は、そういう性質なのか、髪結い紐やリボンで結ばずとも、解けていく様子がない。
不思議だ、と思ったけれど、それ以上に驚いたのは、そのひとがびっくりするくらいに可愛らしくて綺麗だったことだ。
ラディスラウスは反射的に唇を引き結ぶ。
「…こんにちは」
そのひとは、ゆっくりと立ち上がると、ゆっくりとラディスラウスの方に向かってきて、ラディスラウスに視線を合わせると、声を潜めた。
「ここには近づいてはだめと言われなかった?」
意外なことを問われたので、ラディスラウスは目をぱちぱちとさせて、首をふるふると横に振った。
「言われてないよ。 お兄様のお客様がいるって聞いた」
ディミトリスのお客様が離れにいることを教えられてはいなかったので、もしかすると大人たちはラディスラウスをこの場所に近づけたくなかったのかもしれない。
けれど、具体的に言葉で言われたわけではないので、ラディスラウスはそのように答えた。
答えながら、気づく。
大人たちが内緒にしたいお兄様のお客様なのだから、この女性はお兄様の婚約者か何かなのだろう、と。
その、綺麗な女性が考えるような表情になってしまうので、「もう来ないで」と言われる前にと、ラディスラウスは尋ねる。
「ねぇ、お名前は?」
「…あなたのお名前は?」
問いに、問いで返されたラディスラウスは、確かに自分が名乗る前に名を訊くのは失礼かもしれない、と納得する。
「ラ…」
ぱっと口を開いたラディスラウスだったが、口を開いたままで固まる。
ラディスラウスは、自分の名前が好きではない。
それから、名前を告げることで、自分の身分が知られる危険もある。
「ウ」
だから、母がラディスラウスを呼ぶ愛称を、告げたのだと思う。
「ラウ」
その女性は、ラディスラウスが告げた名前を、繰り返してくれる。
その瞬間、ほわ、とした気持ちになった。
名前を呼ばれただけで、こんなに嬉しい気持ちになるのだ。
きっと、彼女の名前を呼んで、彼女に応えてもらえたら、もっと嬉しい気持ちになれるだろう。
そう思ったから、ラディスはもう一度問う。
「ねぇ、お名前は?」
けれど、彼女は頑なだった。
「わたしと仲良くすると叱られてしまうと思う。 だから、名前は知らない方がいいと思うの」
困った顔の彼女に、そんな風に言われた。
彼女が困っている姿は見たくないし、彼女を今困らせているのが自分だと思うと、何か悪いことをしているような気分になる。
でも、ラディスラウスは、彼女の名前が呼びたいのだ。
「そうしたら、私はあなたを何て呼べばいいの?」
少し拗ねた気持ちで、視線を落とす。
不満な気持ちのままに、唇は尖り気味だったかもしれない。
そうすれば、窓の向こうの彼女は、小さく息をつく。
困ってはいるようだけれど、とても優しい笑顔を見せてくれた。
「お好きなように」
「じゃあ、ラプンツェル!」
二階の窓から、この離れを見つけたときに、直感的に思ったことを、口にした。
彼女は軽く目を見張った後で、また、困ったように微笑んだ。
少し寂しげで、哀しげな表情に見えて、ラディスラウスは動揺する。
何か、まずいことを言ってしまったのだろうか。
でも、彼女を哀しませたり、嫌な思いにさせたりする意図はなかったのだと伝えたくて、ラディスラウスは窓枠に手をかけて、前のめりになる。
「あなたは、その離れから出てきてくれないから、塔の中のラプンツェルみたいだから、だから」
髪の毛だって、長くて波打っていて綺麗だ。
お話の中で見た、ラプンツェルと同じなのに。
「うーん、でも、ラプンツェルは少し、いや、かな」
困ったような、哀しげな微笑を浮かべた彼女に、その呼び名はいやだと言われてしまって、ラディスラウスはまた唇を尖らせた。
波打つ長い髪が、本当に、本当に綺麗なのに。
まだ、【ラプンツェル】という呼び名に未練のあったラディスラウスの思考は、髪から離れられなかったらしい。
髪の色から、思いついた言葉を、口にした。
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