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石に花咲く
36.**
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焦らされている。
おあずけをくらわされている。
シィーファは、ようやく、そう理解した。
ではどうして、と考えれば、ラディスがまだ、静かに怒っているということなのだろう。
これまで、シィーファが、【ごっこ遊び】ととらえてきたものとは、種類が異なるということだ。
「ぁあ、ぅ、ん」
四つん這いになって、膝と肘で身体を支える。
背後から揺さぶられ、与えられる刺激に、シィーファは堪らず声を上げた。
もう、どのくらいこうして揺さぶられているかわからない。
けれど、閉め切られた窓のカーテンの向こうが、暗いのがわかる。
ラディスは、枕元のランプをつけたところだった。
高いところにあった太陽が落ちて、夜を迎えようとしているのだ。
「たくさん声、出していいよ。 あとで、蜂蜜たっぷりのホットミルクを用意してもらおうね」
「んん」
ラディスはどうやら、シィーファの喉の心配をしつつも、やめるつもりはないらしい。
何もかも終えた後の埋め合わせについて言及しているのが、いい証拠だ。
「ぁあ」
うなじのあたりに吸いつかれると、ぞわぞわとしたものが背中を駆けて、シィーファは声を上げた。
ラディスに後ろからされるのは初めてだが、後ろからされること自体は、初めてではない。
けれど、そのときは、獣のように交わることへの嫌悪感が勝り、早く終わるようにと祈っていた覚えしかない。
でも、ラディスとするのは、やっぱり気持ちいいのだ。
れろ、と背筋を生温かくてぬめったやわらかいものが這って、びくっとすると同時に、シィーファは非難の声を上げる。
「やぁ、汗、かいてる、から」
だから、舐められるのは、恥ずかしい。 嫌だ。
けれど、ラディスにはいまいち伝わらなかったらしい。
「ん…、少し、しょっぱい。 けれど、嫌ではないよ」
「んぁあ…」
肩甲骨を舌で辿られ、そのままきつくちゅううっと吸われる。
ぞわぞわっ…としてシィーファが震えていると、ラディスの腰の動きが、ぴた、と止まった。
つ、とラディスの指先が、シィーファの肌を擦るようにして触れる。
「…なんか、紅い跡、ついた」
「!」
ラディスの呟きに、シィーファは頬を染めた。
恐らく、先程ラディスがシィーファの肌を擦ったのは、その赤い跡がすぐ消えるかどうかを確かめるためだったのだろう。
ラディスの言う、赤い跡は、恐らく、口づけの跡のこと。
女はシィーファが初めてだというラディスは、男女のことに関しては、知らないことの方が多かったりする。
偶然についた口づけの跡は、ラディスの興味をそそるものだったらしく、ラディスはまた、同じところを指で撫でた。
「シィーファ、これ、痛い?」
「いたく、な、ぁ…」
シィーファが痛いか痛くないかを気にしてくれるところがラディスらしい、と思っている間に、また、ラディスは腰を動かし始める、
「これ、マーキングみたい…」
興が乗ったのか、ゆさ、と後ろからシィーファを揺さぶりながら、ラディスは、シィーファの背中に唇を押しつけてきつく吸っていく。
その度に、ぞわっ…と肌が泡立ち、お腹がきゅうう、となかにいるラディスを締め付けてしまうのだ。
肘をついて姿勢を維持するのも困難になり、シィーファはぺしょ、と潰れて敷布に顔を埋めてしまった。
うなじにぢゅううっと吸いつかれて、シィーファは敷布に爪を立て、ぎゅううと渾身の力で握りしめる。
同じだけの力が、身体の中心に込められることにまで頭は回らなかったし、回っていたところでどうにかできたとは思えないけれど。
「あぁ、やらぁ…」
「あ、シィーファ、そんな締めたら、…っつぅ」
ラディスの、狼狽したような声が、シィーファの耳の近くで揺れた。
びく、びく、と反応するラディスを、身体の中に感じて、シィーファは半ば呆けながら、声を上げた。
声を、出そうと思ったわけではないのに、喉の奥から声が零れる。
「あ、あ…」
「シィーファが締めるから、また出た…」
少し、照れくさそうな様子で溜息をつきながらも、ラディスは身体を重ねたままで後ろから、ぎゅううとシィーファの身体を抱きしめてくれる。
もつれて、倒れ込むような、不自由な体勢なのに。
獣のように交わっているというのに、護られているように感じるのが、とても不思議だ。
ラディスは、ぎゅううとシィーファの身体を抱きしめたままで、シィーファの首筋に軽いキスをしながら耳へと上がっていき、シィーファの右耳を食んだところだ。
欲望を吐き出したというのに、まださほど形状の変わらないラディスはそのままシィーファのなかにいる。
ラディスに、それを引き抜く気配はない。
無意識なのか、ゆるく腰を揺らしてすら、いる。
このままラディスは、続けるつもりなのだろうか。
それを、シィーファは、別の問いに変えた。
「…ラディス、後ろからするの、好き…?」
シィーファはまだ、快感らしい快感を享受してはいない――小さな快感には何度も何度も襲われている――が、ラディスは確か、三回達したはずだ。
一度目は、正常位で。 二度目と三度目は、後背位だった。
二度目のラディスは「あ…、何これ、全然違う…」と零していて、割とすぐに達してくれた。
三度目は先の流れだが、まあ、そういうわけで、シィーファはラディスがこの体位が好きなのではないかと察したのだ。
ラディスは、体位の好き嫌いを考える機会など今までなかったのだろう。
少し、考えるような間があった後で、口を開いた。
「…好き、かも。 顔が見えないのは寂しいけれど、シィーファが抱きついてくれなくても、私が抱きしめれば、ぴったりと身体が重なれるのが、いいな」
「ぁん」
ラディスの手が交差されて、シィーファの胸に触れた。
静かに忍び寄るような動きで、シィーファは反射的に声を上げてしまう。
「抱きしめながら、ここも可愛がれるし、背中にキスだってできる」
ラディスは、シィーファの胸を揉みしだきながら、胸の先端を指の間に挟んで刺激する。
それと同時に、腰を奥に突き込むように、くっくっと揺らしながら、肩甲骨の間を強く吸われて、シィーファはぶるっと大きく震えた。
「んくぅ」
「あ、また、なか、うねってる…。 起っちゃうよ…」
余談だが、既に三回射したというのに、ラディスはまだ元気である。
このまま四度目に突入しようかという勢いだ。
若いから、というのもあるのだろうが、恐らく、行為を覚えたてだということも影響しているのだろう。
それから、若くて覚えたてではあるものの、やはりラディスは理性がよく利く性質らしい。
がむしゃらに、相手を思いやらずに、自分の快楽だけを追うような抱き方はしないのだ。
今日の行為は、【お仕置き】の名のもとに、焦らされたり、おあずけされたりはしているものの、全くシィーファを置き去りにしているわけではないと、思う。
だって、やめてほしい、とか、もうラディスとはしたくない、という方向には、気持ちが動かないのだから。
むしろ、早く気持ちよくしてほしい、なんてことまで、考えてしまう。
シィーファがラディスに、絆されているだけかもしれないが。
味わうように、ゆったりと腰を動かすラディスが、起ったのはシィーファのせい、みたいなことを言っているが、そもそも射したのに萎えていなかっただろう、と言いたい。
だが、シィーファの口から出たのは、別の言葉だった。
「もう、おっきぃ…」
ぷつっ…。
何かが、切れるような音がしたのは、気のせいだろうか。
そんなことを思っていると、無言のままに、がちがちのラディスがシィーファのなかから出ていってしまう。
腰から力が抜けて、シィーファはわずかに腰を落としたのだが、つつっ…、と何かが自分のなかを伝う感じがして、ハッとした。
おあずけをくらわされている。
シィーファは、ようやく、そう理解した。
ではどうして、と考えれば、ラディスがまだ、静かに怒っているということなのだろう。
これまで、シィーファが、【ごっこ遊び】ととらえてきたものとは、種類が異なるということだ。
「ぁあ、ぅ、ん」
四つん這いになって、膝と肘で身体を支える。
背後から揺さぶられ、与えられる刺激に、シィーファは堪らず声を上げた。
もう、どのくらいこうして揺さぶられているかわからない。
けれど、閉め切られた窓のカーテンの向こうが、暗いのがわかる。
ラディスは、枕元のランプをつけたところだった。
高いところにあった太陽が落ちて、夜を迎えようとしているのだ。
「たくさん声、出していいよ。 あとで、蜂蜜たっぷりのホットミルクを用意してもらおうね」
「んん」
ラディスはどうやら、シィーファの喉の心配をしつつも、やめるつもりはないらしい。
何もかも終えた後の埋め合わせについて言及しているのが、いい証拠だ。
「ぁあ」
うなじのあたりに吸いつかれると、ぞわぞわとしたものが背中を駆けて、シィーファは声を上げた。
ラディスに後ろからされるのは初めてだが、後ろからされること自体は、初めてではない。
けれど、そのときは、獣のように交わることへの嫌悪感が勝り、早く終わるようにと祈っていた覚えしかない。
でも、ラディスとするのは、やっぱり気持ちいいのだ。
れろ、と背筋を生温かくてぬめったやわらかいものが這って、びくっとすると同時に、シィーファは非難の声を上げる。
「やぁ、汗、かいてる、から」
だから、舐められるのは、恥ずかしい。 嫌だ。
けれど、ラディスにはいまいち伝わらなかったらしい。
「ん…、少し、しょっぱい。 けれど、嫌ではないよ」
「んぁあ…」
肩甲骨を舌で辿られ、そのままきつくちゅううっと吸われる。
ぞわぞわっ…としてシィーファが震えていると、ラディスの腰の動きが、ぴた、と止まった。
つ、とラディスの指先が、シィーファの肌を擦るようにして触れる。
「…なんか、紅い跡、ついた」
「!」
ラディスの呟きに、シィーファは頬を染めた。
恐らく、先程ラディスがシィーファの肌を擦ったのは、その赤い跡がすぐ消えるかどうかを確かめるためだったのだろう。
ラディスの言う、赤い跡は、恐らく、口づけの跡のこと。
女はシィーファが初めてだというラディスは、男女のことに関しては、知らないことの方が多かったりする。
偶然についた口づけの跡は、ラディスの興味をそそるものだったらしく、ラディスはまた、同じところを指で撫でた。
「シィーファ、これ、痛い?」
「いたく、な、ぁ…」
シィーファが痛いか痛くないかを気にしてくれるところがラディスらしい、と思っている間に、また、ラディスは腰を動かし始める、
「これ、マーキングみたい…」
興が乗ったのか、ゆさ、と後ろからシィーファを揺さぶりながら、ラディスは、シィーファの背中に唇を押しつけてきつく吸っていく。
その度に、ぞわっ…と肌が泡立ち、お腹がきゅうう、となかにいるラディスを締め付けてしまうのだ。
肘をついて姿勢を維持するのも困難になり、シィーファはぺしょ、と潰れて敷布に顔を埋めてしまった。
うなじにぢゅううっと吸いつかれて、シィーファは敷布に爪を立て、ぎゅううと渾身の力で握りしめる。
同じだけの力が、身体の中心に込められることにまで頭は回らなかったし、回っていたところでどうにかできたとは思えないけれど。
「あぁ、やらぁ…」
「あ、シィーファ、そんな締めたら、…っつぅ」
ラディスの、狼狽したような声が、シィーファの耳の近くで揺れた。
びく、びく、と反応するラディスを、身体の中に感じて、シィーファは半ば呆けながら、声を上げた。
声を、出そうと思ったわけではないのに、喉の奥から声が零れる。
「あ、あ…」
「シィーファが締めるから、また出た…」
少し、照れくさそうな様子で溜息をつきながらも、ラディスは身体を重ねたままで後ろから、ぎゅううとシィーファの身体を抱きしめてくれる。
もつれて、倒れ込むような、不自由な体勢なのに。
獣のように交わっているというのに、護られているように感じるのが、とても不思議だ。
ラディスは、ぎゅううとシィーファの身体を抱きしめたままで、シィーファの首筋に軽いキスをしながら耳へと上がっていき、シィーファの右耳を食んだところだ。
欲望を吐き出したというのに、まださほど形状の変わらないラディスはそのままシィーファのなかにいる。
ラディスに、それを引き抜く気配はない。
無意識なのか、ゆるく腰を揺らしてすら、いる。
このままラディスは、続けるつもりなのだろうか。
それを、シィーファは、別の問いに変えた。
「…ラディス、後ろからするの、好き…?」
シィーファはまだ、快感らしい快感を享受してはいない――小さな快感には何度も何度も襲われている――が、ラディスは確か、三回達したはずだ。
一度目は、正常位で。 二度目と三度目は、後背位だった。
二度目のラディスは「あ…、何これ、全然違う…」と零していて、割とすぐに達してくれた。
三度目は先の流れだが、まあ、そういうわけで、シィーファはラディスがこの体位が好きなのではないかと察したのだ。
ラディスは、体位の好き嫌いを考える機会など今までなかったのだろう。
少し、考えるような間があった後で、口を開いた。
「…好き、かも。 顔が見えないのは寂しいけれど、シィーファが抱きついてくれなくても、私が抱きしめれば、ぴったりと身体が重なれるのが、いいな」
「ぁん」
ラディスの手が交差されて、シィーファの胸に触れた。
静かに忍び寄るような動きで、シィーファは反射的に声を上げてしまう。
「抱きしめながら、ここも可愛がれるし、背中にキスだってできる」
ラディスは、シィーファの胸を揉みしだきながら、胸の先端を指の間に挟んで刺激する。
それと同時に、腰を奥に突き込むように、くっくっと揺らしながら、肩甲骨の間を強く吸われて、シィーファはぶるっと大きく震えた。
「んくぅ」
「あ、また、なか、うねってる…。 起っちゃうよ…」
余談だが、既に三回射したというのに、ラディスはまだ元気である。
このまま四度目に突入しようかという勢いだ。
若いから、というのもあるのだろうが、恐らく、行為を覚えたてだということも影響しているのだろう。
それから、若くて覚えたてではあるものの、やはりラディスは理性がよく利く性質らしい。
がむしゃらに、相手を思いやらずに、自分の快楽だけを追うような抱き方はしないのだ。
今日の行為は、【お仕置き】の名のもとに、焦らされたり、おあずけされたりはしているものの、全くシィーファを置き去りにしているわけではないと、思う。
だって、やめてほしい、とか、もうラディスとはしたくない、という方向には、気持ちが動かないのだから。
むしろ、早く気持ちよくしてほしい、なんてことまで、考えてしまう。
シィーファがラディスに、絆されているだけかもしれないが。
味わうように、ゆったりと腰を動かすラディスが、起ったのはシィーファのせい、みたいなことを言っているが、そもそも射したのに萎えていなかっただろう、と言いたい。
だが、シィーファの口から出たのは、別の言葉だった。
「もう、おっきぃ…」
ぷつっ…。
何かが、切れるような音がしたのは、気のせいだろうか。
そんなことを思っていると、無言のままに、がちがちのラディスがシィーファのなかから出ていってしまう。
腰から力が抜けて、シィーファはわずかに腰を落としたのだが、つつっ…、と何かが自分のなかを伝う感じがして、ハッとした。
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