【R18】石に花咲く

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石に花咲く

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 いれて、いいの? と尋ねたラディスに、シィーファはますます瞳を潤ませる。
 零れ落ちそうだな、とラディスが思っていると、シィーファは視線を逸らしながら、小さく頷いた。
「うん…」

 組み敷くシィーファが、いつにないくらいに素直で可愛くて、ラディスはきゅんとして思わず動きを止めた。
 だからこそ、気づいたことがあって、ラディスは目を細める。
「…腰、動いてるね」
 シィーファの腰が、ラディスのものに擦りつけるように、小さく揺れていたのだ。
 恐らく、無意識の動作だったのだろう。

「………。 !」
 シィーファはしばらくぽかんとしていたが、自分の腰が揺れていたのに気づいたらしい。
 蜂蜜色の瞳を零れそうなほどに潤ませて、頬を染め、ピタリと動きを止めた。


「…いれない?」
 シィーファは、ラディスをそろそろと見上げて、もう一度、同じ問いを投げる。
 いれてほしい、とシィーファが言っているのはわかる、けれど。
 ラディスの股間だって限界寸前、だけれど。


 ラディスだって、聞きたいのだ。
 だから、シィーファを見下ろして、問う。
「ほしい?」


 シィーファは、即答はしなかった。
 困ったように、所在なさげに瞳を揺らしたが、結局は口を開く。
「…ほしい…」
 その、甘い囀りに、ラディスのものがぐぐっとまた反り返るような感じがした。
 痛いくらいに張り詰めて、苦しい、けれど。
 もうひとつ、シィーファの口から聞きたくて、ラディスは問いを重ねる。
「何がほしいの?」


 また、シィーファは、逡巡する。
 けれど、ラディスの望み通りの返答をくれた。
「…ラディス、の…」
「…シィーファ…」
「ん…」
 上体を倒して、ラディスはシィーファの唇を吸う。

 シィーファは恐らく、キスが好きなのだ。
 そうやって、ラディスからキスをしかけると、簡単に唇を開いて、ラディスを受け容れてくれる。
 ばかりでなく、自分から舌を絡め、ラディスの唇や舌を吸ってくれるのだ。


 求められていることが実感できるから、ラディスもシィーファとキスをするのが好きだ。
 シィーファのやわらかくてふっくらとした唇を吸って離れ、シィーファの入口にラディスのものをあてがう。


「あ…」
 シィーファが、溜息のような声を漏らした。
 指を押し当てたときと同じく、シィーファの入口は、ラディスの先端部分を呑み込もうとでもするかのように、ひくついている。
 ラディスはシィーファの脚の間を唇や舌で愛撫するのが好きだが、例えばシィーファがラディスのものを口でしてくれるとしたら、こんな感じだろうか、と考える。
 やわらかくて熱く、濡れたシィーファが、ラディスの先端を吸うように動くだけでも、とても気持ちがいい。
 でも、彼女のなかは、もっとやわらかくて、熱くて、濡れていて、気持ちがいいことも、ラディスは知っているのだ。


「いれるね…」
 くっ、とまずは、先端のくびれの部分だけを、シィーファのなかに埋める。
「ぁ、…んん」
 一気に奥までいくと、シィーファは、軽く達してしまう。
 それがわかっているから、ラディスは慎重に事を進める。


「ん…、ん」
 シィーファの反応を見ながら、ゆっくり、ゆっくりと、自身を押し進める。
 もともと、速く激しくするより、ゆっくり穏やかな方が気持ちよさそうな反応をしてくれるのだが、今日はいつもよりなかがひくひくしている感じだ。

 シィーファは、まだ、ラディスがどんな方法で【お仕置き】をしようとしているかになど気づいていないはずだ。
 いつもよりも、時間をかけて、シィーファのなかに自身を収める。


「んぁ…」
 奥が好きなシィーファも、ラディスが奥まで到達したことには気づいたのだろう。
 甘い声で、啼いた。
「ふ…」
 ラディスも、思わずびくりとし、熱を逃がすために息を吐く。


 意図してやっているのかどうかわからないが、シィーファがラディスを甘く締め上げたのだ。
 中途半端な状態で放置された身体は、少しの刺激でも感じやすくなっているようで、ただ挿入しているだけでも、シィーファの身体が震えている。
「ん、ん…」
 じっとしていられないのか、身を縮ませるようにしたり、くねらせるようにしたりするシィーファが可愛らしい。
 ラディスの右手は、無意識のうちにシィーファの薄い茂みに触れていた。

 人差し指と、中指だけを肌に触れさせて、指を交互に動かす。
 シィーファの肌の上を、指に歩かせるイメージだ。
 臍の方向へと向かって、ゆっくりと、指がシィーファの肌の上を滑るように歩く。


「ぁ、それっ…」
 その度に、シィーファが声を上げて震えるので、ラディスは微笑む。
 シィーファが震えると、豊満な乳房がふるっ…と震える。
 それを見るのも、ラディスは好きだ。


「んん、んぅ」
 シィーファがあまりに甘い声を漏らすものだから、ラディスは、ずっと、気になっていたことを口にすることにした。
「気になっていたんだけど…、私の、は…、シィーファのどこまで届いているの?」
 ラディスの言葉に、シィーファがラディスの顔を見て、真っ赤になった。
 そんなに、照れることではないのに、とラディスは微笑む。

 ラディスはシィーファの肌の上で歩みを止めていた指を、一歩、一歩、ゆっくりと、シィーファの臍へ向かって動かし始めた。
「ここには、いるのかな?…ここには?」
 指を一歩進めるごとに、肌を指先で撫でる。
 触れるか否か、を意識して撫でると、ラディスを呑み込んでいるシィーファの体内に、きゅうう、と力が入った。


「ぁ、あ、ラディスっ…」
 上擦るような声を上げ、ラディスの名を呼んだシィーファに、ラディスは、シィーファの肌の上に這わせていた指をぱっと離した。


「…ふぇ…?」
 シィーファは、肌への刺激が止んだことの意味がわからないのか、どこか呆けた表情で、間の抜けた声を発している。
 そんな表情も、声も可愛いし、快楽に素直で敏感なシィーファの身体だって大好きだ。
 けれど、そのことで複雑な思いをする日が来ることになろうとは。


「なかに私がいるのに、私の指で気持ちよくならないで」
「ん…」
 ラディスは、シィーファの奥まで収めていた自身を、今度はゆっくりと引き抜いていき、先端が少し埋まるところで揺さぶり始めた。
「ぁ、や、どうして、そこ」
 シィーファでも、流石にここまでされれば、常と何か違ったものを感じずにはいられなかったのだろう。
 ラディスに揺さぶられながらも、戸惑ったような表情で、狼狽した声を上げている。
 だから、ラディスは曖昧に微笑むのだ。

「シィーファが、奥が好きだから、かな」
「ぇ、え…? んぁ」
 ラディスの発言の意味が、シィーファにはわからなかったのだろう。


 だから、ラディスは説明を加えながら、もう一度自身を奥へと押し込んでいく。
 シィーファが、奥へと誘うように、吸いつくように反応するのが気持ちよくて、気を逸らさないとまずかったのも一因だが。
「こんなにとろとろなんだもの…。 シィーファが好きな奥をぐりぐりすると、すぐに気持ちよくなってしまうね? …こんな風に」
 あまり、乱暴なことはしたくないが、限界まで押し込むと、シィーファは逃れようと腰を引くような動きを見せる。
 だから、ラディスはいつも、シィーファの身体のどこかを抱いたり、捕まえたりして、シィーファが逃げないように押さえつけるのだ。
 そうすると、シィーファの体内が、ラディスをぎゅうぎゅうと絞り上げるような動きをする。


「ぁあ、ラディ、ス」
 普段なら、こうなったときに、絶頂に向かうシィーファを後押しするべく、シィーファの奥へ、シィーファがつらくならない程度に刺激を加える。


 例えば、ラディスが刺激を加えなくても、シィーファは自身の収縮で達することができるらしい。
 シィーファに確認したことはないが、シィーファの反応から、そうだろうとラディスは思っている。
 ラディスは、今日、まだ、シィーファを絶頂させるつもりはない。
 だから、腰を引く。


 シィーファは、享受できると思っていた快感を享受することができずに、拍子抜けした顔をしていたが、流石に、確信したらしい。
 焦らされている、もしくは、おあずけをくらわされていることを。


 おそるおそる、といった体で視線を上げて、尋ねてきた。
「…気持ち、よくなったら…、だめ?」


 あまりにも可愛い問いに、今すぐにでも再び奥まで突っ込んで腰を振りたい衝動に襲われるが、ラディスはぐっとそれを我慢する。
 我慢して、余裕のある、大人の男の仮面を被るのだ。
「ずっと、長く、気持ちよくしたいだけだよ」
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