【R18】石に花咲く

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石に花咲く

28.**

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「…おわり、です?」
 動こうとしないラディスを不思議に思ったのか、ラディスの耳元で、シィーファの声が揺れた。
 その問いに、ラディスは笑ってしまった。

 ラディスの気も知らずに、随分可愛い問いだ、と。
 だから、一度腰を引き、もう一度、シィーファのなかに自身を押し込んだ。
「終わらないよ。 まだ、シィーファのなかにいるのに、わからない?」
「ぁ、うん…、わか、るぅ」
 甘い声が耳元で聞こえた。


 ほかの女性のことは知らないし、知りたいとも思わないが、シィーファがラディスを受け入れているところは狭い、と思う。
 挿入するにしても、引き抜くにしても、少し抵抗があるような感じがするのだ。
 でも、シィーファは痛そうではないし、むしろ気持ちよさそうだし、とろとろに濡れていてやわらかくて、ラディスも気持ちがいい。

 それでも、やはり、その少しの抵抗が気になるので、ラディスはゆっくりとシィーファのなかを出入りするのだ。
 だから、ラディスが達するのは、抽送の快感というよりも、純粋に、シィーファの体内に締め上げられ扱き上げられる快感のためなのだと思う。


 まあ、そういうわけで、ラディスはシィーファをがむしゃらに、めちゃくちゃに攻めて達したいとは思っていない。
 シィーファの反応から、シィーファが好きそうだと思っている奥や、浅いところを刺激して、シィーファに導いてもらえるのが一番気持ちいいのだから。


 それから、シィーファに腕を回してもらえたり、抱きしめてもらえたりしたら、もっと気持ちよくて、幸せな気持ちになれると思う。
 そう考えて、ラディスは閃いた。


 周囲に、シィーファがラディス以外に縋れるものがあるからいけないのではないか。
 つまりは、ラディス以外に縋れるものがないような状況にしてしまえばいい。


 ラディスはシィーファを抱きしめたままで、ころんと横に寝返りを打つ。
「あ、んぅ…」
 思いがけない刺激に驚いたのだろう。
 シィーファは小さく声を上げて、お腹に力を入れたらしい。
 シィーファのなかにいるラディスを包み込む力が強くなった。

 寝返りを打ったことにより、シィーファが上、ラディスが下になってベッドに横たわっているのだが、これで終わりではないのだ。
「急に動いてごめんね。 もう少し、動くから、我慢して?」
 ラディスはシィーファに断りを入れた上で、シィーファの背に右腕を回したままで、左手をベッドについて上体を起こす。
 シィーファはラディスの膝の上に、ラディスと下肢で繋がったまま、顔を合わせて座るような形になった。


「あ…」
「ん…、シィーファ…」
 体勢を変えただけ、なのだけれど、体勢を変えるということは、なかでの繋がる深さや、角度が変わるということだったらしい。
 今更ながらに、ラディスはそう思い至る。


 のけ反ったシィーファだったが、すぐにラディスの胸に顔を埋めてきた。
 顔を埋める、というよりも、姿勢を保つのが困難で倒れ込んできた、といった方が正確かもしれない。


 シィーファの手が、ラディスの素肌の胸に添えられているのは嬉しいが、シィーファの身体が、ぴく、ぴく、と震えているのが気になった。
 そればかりでなく、ラディスを包み込むシィーファも、ラディスを小さくだが、扱くような動きをしているのだ。
 まるで、ずっと、小さく、達しているような。


「大丈夫? つらい?」
 少しでも、楽になれば、と思って、シィーファの背中を撫でたのだが、逆効果だったらしい。
 シィーファは、びくりと大きく震えた。
「ん…、奥、あたる…」
 ラディスの、素肌の胸を撫でるシィーファの吐息も、熱い。
 もしかして、苦手な体勢だったのだろうか、と不安になって、ラディスは尋ねる。


「嫌い? やめる?」
 焦らそうとしたわけではない。
 純粋に、心配だったから出た問いだ。


 すると、シィーファはのろのろと顔を上げる。
 思わず、ドキリ、と心臓が跳ねた。


 潤んで、焦点の合わない瞳。
 上気した頬。 汗ばんだ肌。 薄く開いた、ぽってりとした唇。
 シィーファは、まるで達した後のように、蕩けてしっとりと色香の漂うような表情をしていたのだ。
「すき…」
「っ…」

 シィーファが、「すき」と口にした瞬間、ラディス自身を締め上げられたわけでも、扱かれたわけでもないのに、そうになって、ラディスは思わず息を詰めた。
 気を紛らわせるために、問いを重ねる。
「奥、気持ちいい?」
「きもちい…。 …よすぎて、…もう、わからない…」
 きゅう、きゅう、と断続的に反応する、シィーファの体内と言葉に、やはり小さい波ではあるが、ずっと達しっぱなしなのかもしれない、とラディスは思った。
 気持ちはいいかもしれないが、疲れるし、つらいだろう。


 だから、ラディスは、わずかに首を傾けて、シィーファを安心させようと、触れるだけのキスをした。
 そして、間近に、潤んだ蜂蜜色の瞳を覗き込む。
 潤んで融けそうに見えるし、興奮しすぎて、目の縁がうっすらと紅くなっているのも、愛しい。
「すごく気持ちよくなって、終わりにしよう?」
 ラディスが、言った途端に、何かが変わった、と感じた。
 これは直感だ。
 けれど何が変わったのかわからない。


 シィーファは相変わらず潤んだ目でラディスを見つめながら、問い返す。
「…おわり?」


 その声が、どこか不安そうで、寂しげだったから、ラディスはもう一度、シィーファの唇にキスをする。
「…今日、ね。 また、明日もしよう? 明後日も、その次も」


 座った状態で、上にはシィーファを乗せているけれど、意外と腰は動くものらしい。
 身体を揺らすようにしながら、腰を揺らすと、奥に当たるのがラディスにもわかった。
 シィーファは、その刺激に耐えられなかったのか、再びへなへなとラディスの胸に倒れこむ。


「あ、奥っ…、ラディス、ラディス、もっ…」
 声を上げたシィーファの手が、縋るものを探して、ラディスの肌を這い回る。
 それが堪らなく、下半身に響く。
 シィーファが達したらラディスももう我慢できないだろう。


 シィーファの腕は、ラディスの背に回された。
 シィーファの手は、快感に耐えるかのように、ラディスの肩を掴もうとする。
 それだけのことなのに、満たされて、幸福で、ラディスはシィーファの腰をぐいと抱き寄せて密着し、奥の奥を抉るように腰を押しつけた。


「シィーファっ…」
「んんぅっ…」
 シィーファが声を上げ、ラディスの肩に爪を立てる。
 ラディスを包み込んだシィーファが、ぢゅうぢゅうとラディスを吸い上げるようにきつく絡みつくものだから、もう、耐えられなかった。


「っ…!」


 放つ、というよりも、弾ける、といった感覚の方が近い、と思う。
 初めて、シィーファのなかで自分が弾けたときは、本当に、局部が弾けてなくなってしまうのではと思うほどの快感だった。
 今は、局部がなくなるとは思わないが、それでも、凄まじい快感で、ラディスは奥歯を噛みしめて声を呑む。


 最初の爆発のあとは、何度かにわけて、シィーファのなかに注ぐのを感じながら、ラディスはシィーファの全てを手に入れたような気分になるのだ。
 まるで、シィーファの身体のなかに、シィーファがラディスのものであるという証をつけているようだ。

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