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石に花咲く
13.**
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「シィーファ、これも、痛くない?」
もう、何度目かになる問いに、シィーファは思わず笑ってしまった。
「平気です、と、先程も申し上げました」
ちゅ、ちゅ、とシィーファの瞼や頬、唇の端に口づけながら、ラディスはシィーファの胸に触れる。
胸全体をこねるようにしながら、胸の中心の尖りを指先で撫でたり、摘まんだりする。
慎重ではあるが、拙いとは思わなかった。
だから、もう少し、自信を持ってもいいと思うのに。
触れられるところが気持ちよくてシィーファが反応するたびに、ラディスは先のように尋ねてくるのだ。
ラディスはと言えば、シーファの言葉や反応に気分を害した様子もなく、かといって笑うでもなく、シィーファの唇を啄む。
キスには慣れていても、舌を使った深いキスは知らないのかもしれない。
そんなことを考えるシィーファの目を、ラディスが間近に覗き込んでくる。
思いがけず、真剣な瞳に出逢って、シィーファが瞬きを繰り返していると、ラディスは口を開く。
「…心配しているんだよ。 あんまり柔らかいから…、変に力が入って、痛くしたらいやだなって」
胸の膨らみをやわらかく撫でるようにしながら、ラディスはシィーファの胸元に唇を押し当てた。
まるで、痛くないように、とおまじないをされているようだ。
なんだか、この生き物が可愛くて、愛おしくなって、シィーファは自分の胸に顔を埋めたラディスを抱きしめる。
「…ありがとう」
自分の声が耳に届いて、シィーファは目を見張る。
何に感謝したのか、自分でもわからなかった。
そう、言おうと意識したわけでもない。
それでも、言葉は確かに、唇から零れたのである。
どうして、と考えていると、シィーファの胸元を吐息が擽る。
見れば、顔を上げたラディスは、笑っていた。
「お礼を言われるようなことじゃないよ。 シィーファが嫌なことをして、シィーファに嫌われたくないだけ」
言われている意味がわからなくて、シィーファはぽかんとしてしまった。
正確には、ラディスの言っている言葉の意味はわかるけれど、ラディスが何を思ってそう言っているのかがわからない。
例えば、シィーファが嫌なことをして、シィーファに嫌われたからと言って、ラディスにどんな不都合があるというのだろう。
むしろ、ご主人様の機嫌を取らなければならないのは、買われたシィーファの方だというのに。
シィーファのぽかんとした表情から、シィーファが何を考えているのかは伝わったのだろう。
ラディスは、「仕方ないな」とでも言うような、優しくて、甘い、微苦笑を浮かべていた。
「その顔は、わかっていないね。 今はわからなくていいよ。 わかったら、逃げられそうだから」
何か、不穏な発言をされたのはわかった。
だから、追究しようとしたのだが、できなかった。
「ぁっ…」
開いた口から出たのは、問いではなく喘ぎだったのだ。
ラディスの指先は、シィーファの胸の中央を弄んでいる。
「胸の先、小さくて可愛いね。 …すごくきれい」
ラディスは、シィーファの胸の先の尖りを、うっとりと見つめていた。
その瞳は、興味や好奇心よりも恍惚の色が濃く、熱で融けそうになっているようにも見える。
優しく指の腹で撫でられるたびに、シィーファの胸の先は固くなっていき、固くなると触れられたときの快感が増すような気がする。
「ぁ、ん」
クッと指先で押し込むようにされて、シィーファが声を上げると、ラディスはまたシィーファの瞼に口づける。
こんなの、シィーファは知らない。
甘ったるくて、居心地が悪い。 のに、ずっとこうしていたいような気もして、不思議だ。
「…痛い?」
囁くように問われ、シィーファは小さく首を横に振った。
「痛く、ないです…。 気持ち、いい…」
お腹の奥がじんわりとして、脚の間も引くつくような感じがする。
それを素直に伝えると、ラディスはすっかり尖った胸の先を、柔らかく摘まんできた。
「…これは?」
「ん…、気持ちい…」
耳元で揺れた彼の声が甘くて、耳朶に触れた吐息が熱くて、シィーファは思わず身震いする。
どうしよう。 身体が、変だ。
熱くて、何だか頭がぼうっ…とする。
もっと、もっと触ってほしい。
全然、足りない。
そう思っていると、ラディスがシィーファの胸の先を、軽く引っ張る。
「ん…」
気持ち、いい、けれど。
舐めてくれたら、吸ってくれたら、もっと気持ちいいのに。
お腹の奥がジン…として、脚の間が潤むのを感じていると、ラディスがジッと上目遣いにシィーファを見上げていた。
「ねぇ、シィーファ、シィーファの可愛い実、吸ったら変?」
舐めたら変? と訊かれたシィーファは、上手く頭が回っていないせいで、何かを聞き間違えたか、認識し間違えたのだろうと思った。
「…どういう、意味ですか?」
シィーファが問い返すと、ラディスは恥ずかしそうに、うっすらと頬を染める。
「女性のここを吸うなんて…、赤ちゃんみたいだって、思わない?」
そっと、指先でシィーファの胸の先を撫でながら、ラディスは上目遣いにシィーファを見上げてきた。
胸の先を撫でるラディスの指にふるっ…とシィーファは小さく震える。
本当に、信じがたいことなのだが、ラディスは今までこういったことに染まらずに生きてきたらしい。
身体を重ねる前の段階としては、胸の先を舐めるのなど、特に変わったことではないというのに。
そこで、シィーファは、もしやもしやと思いつつ、口に出すべきか否かと悩んでいたことをついに口にしてしまう。
「あの、もしかして、初めて、なのですか?」
「え?」
シィーファの問いに、ラディスは目を瞬かせた。
吐いた唾は呑めぬ、とはこのことか、と後悔しながら、シィーファは再度口を開く。
「そんなこと、あるわけないって思っていたのですけれど…。 もしかして、女性経験が、おありで、ない?」
きれいに、間が空く。
ラディスは、そっと目を伏せて、頬を染めた。
「…ないことは、そんなにおかしい?」
もしやがもしやでなかったことに、シィーファは動揺した。
動揺していたから、言わなくていいようなことがぼろぼろと唇から飛び出してしまう。
「だって、貴方くらいの年頃の貴族の殿方で、貴方くらい容姿に恵まれていれば、女性に不自由など」
「興味がなかったから」
不自由などないはず、と最後まで口にすることはできなかった。
やけにきっぱりとした口調のラディスが、ばっさりと斬り捨てたからだ。
それ以上をシィーファが尋ねられずにいると、ラディスがもう一度、口を開いた。
「…興味が、なかったし、デメリットを挙げればきりがないけれど、メリットって何も見つからなくて、リスクを取ってまでするようなこととは、思えなかったから」
デメリット、メリット、リスク。
その言葉で、シィーファは理解する。
頭から冷水を浴びせられたように、一気に冷静になった。
シィーファはラディスにとって、デメリットがなく、メリットばかりで、リスクを取る必要もない存在、ということになる。
それは、その通りだ。
自分は、【石女の一族】なのだから。
もう、何度目かになる問いに、シィーファは思わず笑ってしまった。
「平気です、と、先程も申し上げました」
ちゅ、ちゅ、とシィーファの瞼や頬、唇の端に口づけながら、ラディスはシィーファの胸に触れる。
胸全体をこねるようにしながら、胸の中心の尖りを指先で撫でたり、摘まんだりする。
慎重ではあるが、拙いとは思わなかった。
だから、もう少し、自信を持ってもいいと思うのに。
触れられるところが気持ちよくてシィーファが反応するたびに、ラディスは先のように尋ねてくるのだ。
ラディスはと言えば、シーファの言葉や反応に気分を害した様子もなく、かといって笑うでもなく、シィーファの唇を啄む。
キスには慣れていても、舌を使った深いキスは知らないのかもしれない。
そんなことを考えるシィーファの目を、ラディスが間近に覗き込んでくる。
思いがけず、真剣な瞳に出逢って、シィーファが瞬きを繰り返していると、ラディスは口を開く。
「…心配しているんだよ。 あんまり柔らかいから…、変に力が入って、痛くしたらいやだなって」
胸の膨らみをやわらかく撫でるようにしながら、ラディスはシィーファの胸元に唇を押し当てた。
まるで、痛くないように、とおまじないをされているようだ。
なんだか、この生き物が可愛くて、愛おしくなって、シィーファは自分の胸に顔を埋めたラディスを抱きしめる。
「…ありがとう」
自分の声が耳に届いて、シィーファは目を見張る。
何に感謝したのか、自分でもわからなかった。
そう、言おうと意識したわけでもない。
それでも、言葉は確かに、唇から零れたのである。
どうして、と考えていると、シィーファの胸元を吐息が擽る。
見れば、顔を上げたラディスは、笑っていた。
「お礼を言われるようなことじゃないよ。 シィーファが嫌なことをして、シィーファに嫌われたくないだけ」
言われている意味がわからなくて、シィーファはぽかんとしてしまった。
正確には、ラディスの言っている言葉の意味はわかるけれど、ラディスが何を思ってそう言っているのかがわからない。
例えば、シィーファが嫌なことをして、シィーファに嫌われたからと言って、ラディスにどんな不都合があるというのだろう。
むしろ、ご主人様の機嫌を取らなければならないのは、買われたシィーファの方だというのに。
シィーファのぽかんとした表情から、シィーファが何を考えているのかは伝わったのだろう。
ラディスは、「仕方ないな」とでも言うような、優しくて、甘い、微苦笑を浮かべていた。
「その顔は、わかっていないね。 今はわからなくていいよ。 わかったら、逃げられそうだから」
何か、不穏な発言をされたのはわかった。
だから、追究しようとしたのだが、できなかった。
「ぁっ…」
開いた口から出たのは、問いではなく喘ぎだったのだ。
ラディスの指先は、シィーファの胸の中央を弄んでいる。
「胸の先、小さくて可愛いね。 …すごくきれい」
ラディスは、シィーファの胸の先の尖りを、うっとりと見つめていた。
その瞳は、興味や好奇心よりも恍惚の色が濃く、熱で融けそうになっているようにも見える。
優しく指の腹で撫でられるたびに、シィーファの胸の先は固くなっていき、固くなると触れられたときの快感が増すような気がする。
「ぁ、ん」
クッと指先で押し込むようにされて、シィーファが声を上げると、ラディスはまたシィーファの瞼に口づける。
こんなの、シィーファは知らない。
甘ったるくて、居心地が悪い。 のに、ずっとこうしていたいような気もして、不思議だ。
「…痛い?」
囁くように問われ、シィーファは小さく首を横に振った。
「痛く、ないです…。 気持ち、いい…」
お腹の奥がじんわりとして、脚の間も引くつくような感じがする。
それを素直に伝えると、ラディスはすっかり尖った胸の先を、柔らかく摘まんできた。
「…これは?」
「ん…、気持ちい…」
耳元で揺れた彼の声が甘くて、耳朶に触れた吐息が熱くて、シィーファは思わず身震いする。
どうしよう。 身体が、変だ。
熱くて、何だか頭がぼうっ…とする。
もっと、もっと触ってほしい。
全然、足りない。
そう思っていると、ラディスがシィーファの胸の先を、軽く引っ張る。
「ん…」
気持ち、いい、けれど。
舐めてくれたら、吸ってくれたら、もっと気持ちいいのに。
お腹の奥がジン…として、脚の間が潤むのを感じていると、ラディスがジッと上目遣いにシィーファを見上げていた。
「ねぇ、シィーファ、シィーファの可愛い実、吸ったら変?」
舐めたら変? と訊かれたシィーファは、上手く頭が回っていないせいで、何かを聞き間違えたか、認識し間違えたのだろうと思った。
「…どういう、意味ですか?」
シィーファが問い返すと、ラディスは恥ずかしそうに、うっすらと頬を染める。
「女性のここを吸うなんて…、赤ちゃんみたいだって、思わない?」
そっと、指先でシィーファの胸の先を撫でながら、ラディスは上目遣いにシィーファを見上げてきた。
胸の先を撫でるラディスの指にふるっ…とシィーファは小さく震える。
本当に、信じがたいことなのだが、ラディスは今までこういったことに染まらずに生きてきたらしい。
身体を重ねる前の段階としては、胸の先を舐めるのなど、特に変わったことではないというのに。
そこで、シィーファは、もしやもしやと思いつつ、口に出すべきか否かと悩んでいたことをついに口にしてしまう。
「あの、もしかして、初めて、なのですか?」
「え?」
シィーファの問いに、ラディスは目を瞬かせた。
吐いた唾は呑めぬ、とはこのことか、と後悔しながら、シィーファは再度口を開く。
「そんなこと、あるわけないって思っていたのですけれど…。 もしかして、女性経験が、おありで、ない?」
きれいに、間が空く。
ラディスは、そっと目を伏せて、頬を染めた。
「…ないことは、そんなにおかしい?」
もしやがもしやでなかったことに、シィーファは動揺した。
動揺していたから、言わなくていいようなことがぼろぼろと唇から飛び出してしまう。
「だって、貴方くらいの年頃の貴族の殿方で、貴方くらい容姿に恵まれていれば、女性に不自由など」
「興味がなかったから」
不自由などないはず、と最後まで口にすることはできなかった。
やけにきっぱりとした口調のラディスが、ばっさりと斬り捨てたからだ。
それ以上をシィーファが尋ねられずにいると、ラディスがもう一度、口を開いた。
「…興味が、なかったし、デメリットを挙げればきりがないけれど、メリットって何も見つからなくて、リスクを取ってまでするようなこととは、思えなかったから」
デメリット、メリット、リスク。
その言葉で、シィーファは理解する。
頭から冷水を浴びせられたように、一気に冷静になった。
シィーファはラディスにとって、デメリットがなく、メリットばかりで、リスクを取る必要もない存在、ということになる。
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