14 / 65
石に花咲く
12.**
しおりを挟む
「…本当に、待っていらっしゃったの?」
寝室に足を踏み入れたシィーファは、寝台に腰かけたラディスを認めて、目を瞬かせた。
てっきり、寝ているか、寝たふりを決め込んでいると思っていたのだ。
シィーファの問いに、ラディスはぎゅっと眉間に皺を寄せ、膝の上で合わせた手を所在なさげに動かしている。
ラディスの視線は、シィーファを見ずに、床の一点に注がれていた。
「…先に、断っておくけれど…。 私は、本当に、そんなつもりで貴女を身請けしたわけではないんだ。 でも…」
考えながら、ゆっくりと言葉を紡ぐラディスは、一度言葉を切り、視線を上げる。
そして、真っ直ぐにシィーファを見つめてきた。
「今は、女性とそういうことになるのだとすれば、貴女以外いないって思っている」
「…そうですか」
それは、一時の錯覚だ、と喉から出かかったが、シィーファはその言葉を飲み込むことに成功した。
シィーファから言わせれば、彼は恐らく、生身の女の身体に、気分が高揚してそのように思っているだけだ。
シィーファが静かにベッドに近づくと、ラディスはシィーファに手を伸ばして、シィーファの手を握る。
シィーファとしては、ラディスの隣に腰かけるつもりだったのだが、ラディスに手を引かれるままに、脚を広げて座ったラディスの足の間に引き寄せられた。
ラディスは、シィーファの手を握ったままで、じっとシィーファを見上げてくる。
その、夜明けを待つかの如き、色の瞳で。
「だから、…上手く言えないけれど、私は貴女を意のままにするために貴女を身請けしたわけではなく、貴女だから、一緒に過ごしたくて…、本当に、それだけで」
ラディスの様子があまりに必死なので、シィーファはラディスが握ったシィーファの手をそっと、握り返す。
「大丈夫です。 たった三日ですけれど、貴方のことはなんとなくわかったつもりです」
シィーファの返した言葉に、ラディスの瞳が輝いたように見える。
ランプの明かりを、瞳が吸い込むか、虹彩が弾くかしたのだろうが、輝いて見えたのだ。
ラディスはいつかのように、それはどちらの大丈夫? とは問わなかった。
代わりに微笑むと、シィーファの手を恭しく掲げて、口づける。
両手の指の付け根に、交互に唇を押し付けたのだ。
「ありがとう。 …きっと私は、シィーファをほかの男に触れさせたくなかったんだ。 シィーファにも、ほかの男には触れてほしくない」
シィーファは、ラディスの主張に、思わず目を丸くしてしまった。
ただの興味と好奇心を、特別な感情と錯覚しているものと思っていたが、もしかするとこれは、独占欲や所有欲が高じたものなのだろうか?
つまりは、子どもが、気に入りの玩具を誰にも渡したがらない様と同じだ。
気に入りの玩具を、誰にも取られないように、自分のものにする。
目の前のこの方は、本当に、子どもなのだ。
そう思うと、母性本能というのだろうか。
ますます、自分がこの方に、女の見極め方を伝授しなければという気になった。
彼のような、容姿だけでなく恐らく家柄や血筋もよく、尚且つ真面目で誠実で優しい青年に近寄る悪い女は少なくない。
素直で純粋で、子どものような方だからこそ、聖母のような、あるいは天使のような女性と結ばれるべきだ。
そのための作法を、自分は彼に、教えるだけ。
そう、シィーファは自分を納得させる。
「脱ぎますか?」
シィーファが問うと、ラディスは動物が驚いたときに毛を逆立てるような様子になった。
そして、そっとシィーファの手から手を離すと、自分が先にベッドに上がり、シィーファの手を引く。
「…私が、脱がせたい」
ラディスがそのように希望するから、シィーファは頷く。
シィーファとしては、自分から脱ごうが、誰かに脱がせてもらおうが、あまり変わりはないと思っているので、どちらでもいい。
ラディスに手を引かれるままにベッドに上がったシィーファは、ラディスの目の前に膝立ちになった。
「どうぞ?」
今、シィーファが身に着けているのは、里の衣装ではなく、ラディスたち西洋圏の人間が着るような、上下一体となった頭から被る衣装だ。
まるで、てるてる坊主のようだな、というのがシィーファの正直な感想である。
ラディスは、一つ、細く静かに深呼吸をすると、シィーファの着ている寝間着の裾に、手をかける。
「…嫌だったら、言って」
何かに挑むような、緊張した、真剣な表情で、この期に及んでそんなことを言うから、シィーファは笑ってしまった。
「…大丈夫です。 殿方って、緊張するとだめなんですよ? だから、気楽になさって」
緊張すると何がだめか、明言は避けたが、ラディスには伝わったはずだ。
まあ、だめだったときはだめだったときで、役に立たせるやり方なんて幾らでもあるけれど、最初からそれでは、ラディスにはいささか刺激が強すぎるだろう。
「わかった、ありがとう」
ラディスは、そう微笑むと、ゆっくりとシィーファに顔を近づけてきた。
そして、そっと、シィーファの唇の端に、唇を押し当てる。
シィーファが驚いている間に、ラディスの唇はシィーファの唇に触れては、離れる。
そうされたことに、シィーファは目を見張る。
ぶわわ、と自分の頬が熱くなるのを、感じた。
ラディスは、西洋文化圏の人間らしく、キスやビズに慣れているのだろう。
【石女の一族】であり、娼婦だったシィーファこそ、そういう恋人めいた甘い戯れには慣れていない。
何となくだが、このことはラディスには気づかれてはならない。
そう思うのは、直感だ。
シィーファの唇に、軽いキスを降らせ終えたラディスは、満足したのか、シィーファの下唇を吸うようにして、離れる。
そして、シィーファの目を間近に覗き込んで、微笑んだ。
「脱がせるね…」
ラディスが、シィーファの寝間着の裾を持ち上げるから、シィーファはその動きに合わせて腕を上げる。
今日は、下着を身に着けていなかったので、あっという間にシィーファの肌がラディスに晒された。
ラディスはラディスで、もう風呂場で全部晒しているのだからと腹を括っているのか、さっさと寝間着を脱いで素肌を晒す。
ラディスは、シィーファの裸体をじっくりと、目に焼きつけるように見つめているが、シィーファもシィーファで、じっとラディスの身体を確認してしまった。
ランプのオレンジの明かりに照らされると、人体はどうしてこうも淫らに見えるのだろう。
なんだか、変な気分になってしまう。
それに、見つめるラディスの視線が、チリチリと肌を灼くように熱い気がしてくる。
あまりにまじまじとラディスが見つめるものだから、見られることが恥ずかしいような気もしてきた。
「…あの、そんなに見ないで、いただけますか」
シィーファが目を逸らしつつ小さく訴えると、ラディスはハッとした様子で頬を染めた。
「シィーファがあまりにもきれいだから」
「!?」
裸体を、きれいだなどと褒められるのは初めてで、シィーファは言葉が返せない。
ラディスはシィーファの裸体を凝視していた目を、シィーファの顔へと向けてきた。
「…どうしたの?」
綺麗な瞳にジッと見つめられて、どうしようもなくなってしまったシィーファは、小さく悲鳴を上げるしかない。
「少し、恥ずかしい、だけです」
もう、触って、愛撫して、さっさと挿入してくれればいいのに。
顔から火が出そうになっていると、ふっと微笑む気配がした。
笑うなんてひどい、という恨めしい気持ちで視線を上げたシィーファだったが、その気は殺がれてしまう。
ラディスが、あまりにもきれいな微笑みを浮かべていたからだ。
「よかった。 私だけでなくて」
思わず、見惚れていたのだが、ぬくもりが二の腕に触れてビクリとする。
すると、すぐにぬくもりが離れる。 ラディスの、手だ。
「触ったら、いやだった?」
優しく問われたシィーファは、ほとんど反射で首を横に振った。
ラディスは安堵したように微笑んで、再びシィーファの両の二の腕にそれぞれ触れる。
そして、その場で円を描き始めた。
「肌理が細かくてすべすべだ…。 少しひんやりするね、寒くない?」
ラディスの手を温かいと感じるのだから、確かにシィーファの二の腕は少しひんやりとしているのだろう。
けれど、寒いとは思わないから、首を横に振る。
「寒くありませんよ。 それに、これから熱くしてくださるでしょう?」
シィーファがラディスの目を見つめて首を揺らすと、ラディスが目を伏せて堪えるような表情になった。
「…シィーファ…。 嬉しいけれど、あまり煽らないでほしい。 割と、余裕がないから」
余裕がない、と告白されて、改めてラディスの下肢の中心を見てみれば、確かにラディスのものは緩く起ち上がりかけている。
その状態で、余裕がないのだろうか、とシィーファはまた笑ってしまった。
「まだまだ、余裕ですよ。 もっと、もっと、余裕がなくなってもらわないと」
もしかすると、そのシィーファの余裕な態度に、ラディスはむっとしたのかもしれない。
先程までの慎重な触れ方とは別人のように、シィーファに抱きつくようにして、首の付け根に顔を埋めてきた。
そこで、大きく息を吸い込まれ、吐かれて、熱い吐息が肌を撫でる感触に、肌がざわざわする。
「シィーファと一緒に寝る度に、いい匂いがするって思っていたけれど…。 いい匂いは、肌の匂いなのか。 寝るときに抱きしめて、知っていたはずなのに…。 柔らかくて、気持ちいいね」
何か、吹っ切れたのだろうか。
ラディスは、そのまま、シィーファの肌に唇を這わせ始める。
「ん…」
時に吸い上げられ、舌先が這わせられる生ぬるい感触に、震えずにはいられない。
ラディスの手も、シィーファの太腿を撫でていたかと思えば、撫でながら、徐々に上に上がっていく。
太腿の付け根、腹、そして、胸の膨らみへと。
「ふ…」
胸の膨らみを、下から持ち上げるようにして揉み込まれて、シィーファは思わず、鼻から抜けるような音を出してしまった。
媚びるようで、甘えるようなその音のせいだろうか。
何でもないことのはずなのに、身体が、異性に触れられていることを、妙に意識してしまっているような気がした。
寝室に足を踏み入れたシィーファは、寝台に腰かけたラディスを認めて、目を瞬かせた。
てっきり、寝ているか、寝たふりを決め込んでいると思っていたのだ。
シィーファの問いに、ラディスはぎゅっと眉間に皺を寄せ、膝の上で合わせた手を所在なさげに動かしている。
ラディスの視線は、シィーファを見ずに、床の一点に注がれていた。
「…先に、断っておくけれど…。 私は、本当に、そんなつもりで貴女を身請けしたわけではないんだ。 でも…」
考えながら、ゆっくりと言葉を紡ぐラディスは、一度言葉を切り、視線を上げる。
そして、真っ直ぐにシィーファを見つめてきた。
「今は、女性とそういうことになるのだとすれば、貴女以外いないって思っている」
「…そうですか」
それは、一時の錯覚だ、と喉から出かかったが、シィーファはその言葉を飲み込むことに成功した。
シィーファから言わせれば、彼は恐らく、生身の女の身体に、気分が高揚してそのように思っているだけだ。
シィーファが静かにベッドに近づくと、ラディスはシィーファに手を伸ばして、シィーファの手を握る。
シィーファとしては、ラディスの隣に腰かけるつもりだったのだが、ラディスに手を引かれるままに、脚を広げて座ったラディスの足の間に引き寄せられた。
ラディスは、シィーファの手を握ったままで、じっとシィーファを見上げてくる。
その、夜明けを待つかの如き、色の瞳で。
「だから、…上手く言えないけれど、私は貴女を意のままにするために貴女を身請けしたわけではなく、貴女だから、一緒に過ごしたくて…、本当に、それだけで」
ラディスの様子があまりに必死なので、シィーファはラディスが握ったシィーファの手をそっと、握り返す。
「大丈夫です。 たった三日ですけれど、貴方のことはなんとなくわかったつもりです」
シィーファの返した言葉に、ラディスの瞳が輝いたように見える。
ランプの明かりを、瞳が吸い込むか、虹彩が弾くかしたのだろうが、輝いて見えたのだ。
ラディスはいつかのように、それはどちらの大丈夫? とは問わなかった。
代わりに微笑むと、シィーファの手を恭しく掲げて、口づける。
両手の指の付け根に、交互に唇を押し付けたのだ。
「ありがとう。 …きっと私は、シィーファをほかの男に触れさせたくなかったんだ。 シィーファにも、ほかの男には触れてほしくない」
シィーファは、ラディスの主張に、思わず目を丸くしてしまった。
ただの興味と好奇心を、特別な感情と錯覚しているものと思っていたが、もしかするとこれは、独占欲や所有欲が高じたものなのだろうか?
つまりは、子どもが、気に入りの玩具を誰にも渡したがらない様と同じだ。
気に入りの玩具を、誰にも取られないように、自分のものにする。
目の前のこの方は、本当に、子どもなのだ。
そう思うと、母性本能というのだろうか。
ますます、自分がこの方に、女の見極め方を伝授しなければという気になった。
彼のような、容姿だけでなく恐らく家柄や血筋もよく、尚且つ真面目で誠実で優しい青年に近寄る悪い女は少なくない。
素直で純粋で、子どものような方だからこそ、聖母のような、あるいは天使のような女性と結ばれるべきだ。
そのための作法を、自分は彼に、教えるだけ。
そう、シィーファは自分を納得させる。
「脱ぎますか?」
シィーファが問うと、ラディスは動物が驚いたときに毛を逆立てるような様子になった。
そして、そっとシィーファの手から手を離すと、自分が先にベッドに上がり、シィーファの手を引く。
「…私が、脱がせたい」
ラディスがそのように希望するから、シィーファは頷く。
シィーファとしては、自分から脱ごうが、誰かに脱がせてもらおうが、あまり変わりはないと思っているので、どちらでもいい。
ラディスに手を引かれるままにベッドに上がったシィーファは、ラディスの目の前に膝立ちになった。
「どうぞ?」
今、シィーファが身に着けているのは、里の衣装ではなく、ラディスたち西洋圏の人間が着るような、上下一体となった頭から被る衣装だ。
まるで、てるてる坊主のようだな、というのがシィーファの正直な感想である。
ラディスは、一つ、細く静かに深呼吸をすると、シィーファの着ている寝間着の裾に、手をかける。
「…嫌だったら、言って」
何かに挑むような、緊張した、真剣な表情で、この期に及んでそんなことを言うから、シィーファは笑ってしまった。
「…大丈夫です。 殿方って、緊張するとだめなんですよ? だから、気楽になさって」
緊張すると何がだめか、明言は避けたが、ラディスには伝わったはずだ。
まあ、だめだったときはだめだったときで、役に立たせるやり方なんて幾らでもあるけれど、最初からそれでは、ラディスにはいささか刺激が強すぎるだろう。
「わかった、ありがとう」
ラディスは、そう微笑むと、ゆっくりとシィーファに顔を近づけてきた。
そして、そっと、シィーファの唇の端に、唇を押し当てる。
シィーファが驚いている間に、ラディスの唇はシィーファの唇に触れては、離れる。
そうされたことに、シィーファは目を見張る。
ぶわわ、と自分の頬が熱くなるのを、感じた。
ラディスは、西洋文化圏の人間らしく、キスやビズに慣れているのだろう。
【石女の一族】であり、娼婦だったシィーファこそ、そういう恋人めいた甘い戯れには慣れていない。
何となくだが、このことはラディスには気づかれてはならない。
そう思うのは、直感だ。
シィーファの唇に、軽いキスを降らせ終えたラディスは、満足したのか、シィーファの下唇を吸うようにして、離れる。
そして、シィーファの目を間近に覗き込んで、微笑んだ。
「脱がせるね…」
ラディスが、シィーファの寝間着の裾を持ち上げるから、シィーファはその動きに合わせて腕を上げる。
今日は、下着を身に着けていなかったので、あっという間にシィーファの肌がラディスに晒された。
ラディスはラディスで、もう風呂場で全部晒しているのだからと腹を括っているのか、さっさと寝間着を脱いで素肌を晒す。
ラディスは、シィーファの裸体をじっくりと、目に焼きつけるように見つめているが、シィーファもシィーファで、じっとラディスの身体を確認してしまった。
ランプのオレンジの明かりに照らされると、人体はどうしてこうも淫らに見えるのだろう。
なんだか、変な気分になってしまう。
それに、見つめるラディスの視線が、チリチリと肌を灼くように熱い気がしてくる。
あまりにまじまじとラディスが見つめるものだから、見られることが恥ずかしいような気もしてきた。
「…あの、そんなに見ないで、いただけますか」
シィーファが目を逸らしつつ小さく訴えると、ラディスはハッとした様子で頬を染めた。
「シィーファがあまりにもきれいだから」
「!?」
裸体を、きれいだなどと褒められるのは初めてで、シィーファは言葉が返せない。
ラディスはシィーファの裸体を凝視していた目を、シィーファの顔へと向けてきた。
「…どうしたの?」
綺麗な瞳にジッと見つめられて、どうしようもなくなってしまったシィーファは、小さく悲鳴を上げるしかない。
「少し、恥ずかしい、だけです」
もう、触って、愛撫して、さっさと挿入してくれればいいのに。
顔から火が出そうになっていると、ふっと微笑む気配がした。
笑うなんてひどい、という恨めしい気持ちで視線を上げたシィーファだったが、その気は殺がれてしまう。
ラディスが、あまりにもきれいな微笑みを浮かべていたからだ。
「よかった。 私だけでなくて」
思わず、見惚れていたのだが、ぬくもりが二の腕に触れてビクリとする。
すると、すぐにぬくもりが離れる。 ラディスの、手だ。
「触ったら、いやだった?」
優しく問われたシィーファは、ほとんど反射で首を横に振った。
ラディスは安堵したように微笑んで、再びシィーファの両の二の腕にそれぞれ触れる。
そして、その場で円を描き始めた。
「肌理が細かくてすべすべだ…。 少しひんやりするね、寒くない?」
ラディスの手を温かいと感じるのだから、確かにシィーファの二の腕は少しひんやりとしているのだろう。
けれど、寒いとは思わないから、首を横に振る。
「寒くありませんよ。 それに、これから熱くしてくださるでしょう?」
シィーファがラディスの目を見つめて首を揺らすと、ラディスが目を伏せて堪えるような表情になった。
「…シィーファ…。 嬉しいけれど、あまり煽らないでほしい。 割と、余裕がないから」
余裕がない、と告白されて、改めてラディスの下肢の中心を見てみれば、確かにラディスのものは緩く起ち上がりかけている。
その状態で、余裕がないのだろうか、とシィーファはまた笑ってしまった。
「まだまだ、余裕ですよ。 もっと、もっと、余裕がなくなってもらわないと」
もしかすると、そのシィーファの余裕な態度に、ラディスはむっとしたのかもしれない。
先程までの慎重な触れ方とは別人のように、シィーファに抱きつくようにして、首の付け根に顔を埋めてきた。
そこで、大きく息を吸い込まれ、吐かれて、熱い吐息が肌を撫でる感触に、肌がざわざわする。
「シィーファと一緒に寝る度に、いい匂いがするって思っていたけれど…。 いい匂いは、肌の匂いなのか。 寝るときに抱きしめて、知っていたはずなのに…。 柔らかくて、気持ちいいね」
何か、吹っ切れたのだろうか。
ラディスは、そのまま、シィーファの肌に唇を這わせ始める。
「ん…」
時に吸い上げられ、舌先が這わせられる生ぬるい感触に、震えずにはいられない。
ラディスの手も、シィーファの太腿を撫でていたかと思えば、撫でながら、徐々に上に上がっていく。
太腿の付け根、腹、そして、胸の膨らみへと。
「ふ…」
胸の膨らみを、下から持ち上げるようにして揉み込まれて、シィーファは思わず、鼻から抜けるような音を出してしまった。
媚びるようで、甘えるようなその音のせいだろうか。
何でもないことのはずなのに、身体が、異性に触れられていることを、妙に意識してしまっているような気がした。
10
お気に入りに追加
80
あなたにおすすめの小説
ある日、憧れブランドの社長が溺愛求婚してきました
蓮恭
恋愛
恋人に裏切られ、傷心のヒロイン杏子は勤め先の美容室を去り、人気の老舗美容室に転職する。
そこで真面目に培ってきた技術を買われ、憧れのヘアケアブランドの社長である統一郎の自宅を訪問して施術をする事に……。
しかも統一郎からどうしてもと頼まれたのは、その後の杏子の人生を大きく変えてしまうような事で……⁉︎
杏子は過去の臆病な自分と決別し、統一郎との新しい一歩を踏み出せるのか?
【サクサク読める現代物溺愛系恋愛ストーリーです】

最低な出会いから濃密な愛を知る
あん蜜
恋愛
グレイン伯爵家の次女――私ソフィア・グレインは18歳になっても恋愛に興味がなく、苦手な社交活動もなんとか避けて生きてきた。しかしこのまま生きていけるはずもく、娘の今後を心配した父の計らいによって”お相手探しの会”へ参加する羽目に。しぶしぶ参加した私は、そこで出会ったベン・ブラウニー伯爵令息に強引なアプローチを受けるのだが、第一印象は本当に最悪だった……! これ以上関わりたくないと逃げようとするも、猛烈なアプローチからは逃れられず……――――。

【完結】あわよくば好きになって欲しい(短編集)
野村にれ
恋愛
番(つがい)の物語。
※短編集となります。時代背景や国が違うこともあります。
※定期的に番(つがい)の話を書きたくなるのですが、
どうしても溺愛ハッピーエンドにはならないことが多いです。

私の全てを奪ってくれた
うみすけ
恋愛
大好きな人といることで心が安らぐ。そう思い続けていた渡辺まちかは日々それだけを糧に過ごす一般人。少しばかり顔が整っているだけの彼はある日、彼女に振られ、まるで心に穴が空いたように、自分の存在の意味がわからなくなり、全てを投げ出したくなっていた。
そんな彼を救うような、そんなお話。

毎週金曜日、午後9時にホテルで
狭山雪菜
恋愛
柳瀬史恵は、輸入雑貨の通販会社の経理事務をしている28歳の女だ。
同期入社の内藤秋人は営業部のエースで、よく経費について喧嘩をしていた。そんな二人は犬猿の仲として社内でも有名だったけど、毎週金曜日になると二人の間には…?
不定期更新です。
こちらの作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。

俺様系和服社長の家庭教師になりました。
蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。
ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。
冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。
「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」
それから気づくと色の家庭教師になることに!?
期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、
俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる